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2011年09月の記事は以下のとおりです。

大阪の言葉

 私は大阪の生まれで,仕事で東京で暮らすようになりました。自分を大阪の人間が東京にゲストで来ているのだと考えていて,よそ者の気分でいるわけですが,もうすぐ東京で暮らした時間の方が長くなるという現実を突きつけられて,ショックを受けるようになってきました。

 そんなこんなで私は大阪弁ネイティブであり,バイリンガルなわけですが,言葉は文化であり,文化は人であると考えた場合,大阪の言葉というのは同じ日本語かなと思うほど,大阪の人の個性を反映しているなあと思います。

 最近はテレビでも大阪弁を耳にすることが多くて,第二公用語っぽい雰囲気さえ出てきた大阪弁ですが,単語やアクセントの違いという表面的な部分以外の相違点に注目すると,これがなかなかおもしろいのです。

 私はその方面の学者とは違いますから,専門的な知識はないし,間違っていることもあると思います。それに大阪弁を使う地域というのは狭いようで広いですから,もしかすると私の生まれ育った河内でしか使わない表現かも知れません。

 ただ,大阪弁をおもしろおかしく誇張することはしたくないので,良くやっている言い回しを書いておくようにします。

 さて,続きは大阪の言葉で書くことにしますか。


(1)助詞を省く

 なにせ,大阪弁は助詞を省くんです。名詞をずらーっと並べて,それで意味が通るんです。不思議ですわね。

例)私それたべるわ -> 私はそれを食べます
  テレビみよか -> テレビを見ましょうか
  あんた日曜日梅田いかんのか -> あなたは日曜日に梅田にいかないのですか
  めしいこ -> ご飯にいきましょう

 単語と単語との間に切れ目を入れるしゃべり方より,一息にだーっとしゃべってしもて,単語の切れ目はアクセントで切る方が大阪弁として綺麗です。

 なんちゅうても,助詞によって機能が定まるとした日本語の文法の基本概念を,根本から打ち崩す事実ですわね。いちいち文法的に正確であることを問わんと,話の前後関係や常識的なところで,それぞれの単語の役割をなんとなく理解して成り立ってるわけです。それで不思議とケンカにならんちゅうんですから,えらいもんですわね。


(2)指示代名詞が多い

 あれ,それ,これ,という指示代名詞ですが,大阪の人は年寄りでのうても多用します。

例)なにしたらあかんで -> (そういうことを)してはダメです
 
 こんな言い回しはあんまり東京ではせんので比較が難しいんですが,大阪では「あれがなにしてこないなってもうた」と,すべてが指示代名詞になってるような文章でも,聞き手は「そら難儀やな」と返事出来たりするんです。

 ま,こっちが「なにが難儀やねん」と意地悪して聞き返すと,おおむね「そらーあれや,あれがほらなにしてな」と返ってくるんもんで,こっちとしても「あーそやそや」と話を合わすんです。これで会話成立ってウソみたいでしょ,けど普通です。

 思うんですが,前後関係で話を類推することに加えて,共通の話題で話をすることが多い故に,なんとなく相手の言うてることが分かるちゅう事と,話す方は話す方で思考より先に口が動いてしまう上に,「えーっと」なんて会話を途切れさせることはなにより恥ずかしい事ですから,とりあえずワイルドカードとしての指示代名詞を当てはめるんやないでしょうか。

 いうたらあれですよ,RISCプロセッサでNOPを入れてパイプラインが乱れるのを防ぐようなもんですわね。


(3)擬音が多い

 これはもうホンマに多いです。その擬音がなくっても意味は十分通じるのに,わざわざだーっと擬音を入れるのが,大阪の人の話し方です。

例)そこの角を右にきゅっといって,行き止まりまでどーんといってから
  左にぐっといって,大きな通りに出たらまっすぐしゅーっていったら
  右手にバーンと大きな看板がでてくるで。

-> そこの角を右に曲がって,行き止まりで左に曲がり,
  大きな通りに出たらまっすぐ道なりに進むと,右手に
  おおきな看板が出てきます。


 まあ,個人差はあるんですけど,私の経験上,行き止まりに「どーん」は
8割以上の大阪人が言うのんと違いますかね。


(4)せっかち

 基本的にせっかちですね。一息で話せるように縮めて繋げて話します。

例)ちゃいます -> ちがいます
  しゃーない -> しかたがない
  どない? -> どんな感じ?
  ほっといて -> 放っておいて
  へて? -> それで?
  いてまえ -> いってしまえ

 東京やと右の方が普通なんですが,大阪ではこれを,意味を深めるのにわざわざ使います。

 相手の指摘に異を唱えるだけやったら「ちゃいます」ですけど,そこに「おまえに言われたないわ」とか「そんなはずあるかいボケ」という具合に,ちょっとした敵意を込める場合なんかに,「ちがいますー」と棒読みすんです。相手はそらー怒ります。怒りますけど,ちょっと茶目っ気もありますからね,さっと引く怒りです。

 同様に,ただやむを得ないんやったら「しゃーない」ですが,本当に心底がっかりしたときには「仕方がない」と言うんです。大阪の人間が「仕方がない」と言うたら,心から慰めたって下さい。

 そうそう,「しています」の「い」を取る事も普通です。「してます」と4つの音で言う方が楽なのか,それとも「い」を発音するのが下手くそなのか,理由はようわかりません。


(5)形容詞の「い」を省略する

 先日のニュースでも報道されてましたが,大阪では昔から形容詞の「い」は省く傾向にあります。ニュースではなにやら「相手に同意を求めないで済むので無視されても独り言として処理できることが現代人の繋がりの薄さを象徴している」などと小難しいことを言うてましたが,大阪弁ではリズムを整え,素早く綺麗に言うために,冗長な発音は避ける傾向があります。

例)くっさーえげつなー -> くさい,ひどい
  あーしんど -> ああしんどい
  さぶさぶ -> 寒い寒い
  
 その他にも,高いを「たか」,低いを「ひく」,安いを「やす」,重いを「おも」,などというのは,日常的です。


(6)強調の言葉が強烈

 「消える」を強調するのに「失せる」を付け加えて「消え失せる」ていうたりしますけど,大阪弁では強調だけで使われる言葉があります。「さらす」がそうです。ついでに「くさる」なんかもそうですかね。

例)帰れ -> いね -> いにさらせ
  なにをするのだ -> なにすんねん -> なにしくさる or なにさらしとんねん

 この時の「さらす」「くさる」には,意味はないんです。ただ,強めるだけです。

 実は,ここまで強い言い方は,最近はあまりせんように思います。本当にケンカになるくらい,強い言い方ですしね,加えて割に年寄りが使う言葉のような気がします。

 そんなもん,年寄りに「いにさらせ」て言われたら,縮み上がってしまいますよ。それでラ行を巻き舌で言うたりするんでね,年寄りは。


(7)尊敬語を作りやすい

 大阪弁には「~する」を「~しはる」と変化させて,尊敬語を作る仕組みがあります。「食べる」は「食べはる」ですし,「寝る」は「寝はる」です。

 標準語で言うところの「~される」なんですけども,標準語で「~される」を連発すると,これはもう堅苦しいてかえって嫌みになりますわね。それに受動態の「~される」と区別がつかん時が結構あるもんです。

 けども,大阪弁で「しはる」というのは,そんなにくどいもんやないんです。尊敬もあるけど,親しみもあるという感じやないでしょうか。それで,受動態の「~される」とは使い分けられるんですから,便利なもんです。

 ついでにいうと,大阪弁を含む上方の言葉には,身の回りにある物に敬称を付けることがしばしばです。おいもさん,あめちゃん,うんこさん,てな具合です。


(8)自分を下にする言い回し

 これは大阪の言葉の最も豊かな部分かなと思たりするんですが,自分を相手の目下におくような,けども謙譲語とはまたちょっと違った言い方をすることがあります。無理をお願いするときや,相手の慈悲にすがるときなど,便利に使いますね。

例)大目に見たってや -> 大目に見て下さい
  助けたってください -> 助けて下さい
  それやったって -> それを買います

  
 1つ目も,「大目に見てや」というと妙になれなれしく聞こえます。私もちょっとびっくりしました。こんな言い方されたら,許せる事でも絶対許さんと思います。「助けてや」よりも「助けたってや」の方が,相手を不愉快にせんもんです。

 3つ目はかなり高度な大阪弁です。指示代名詞には助詞がないし,動詞は「やる」に「売る」という意味を持たせてますからね。

 それを買います->それを売ってもらえませんか -> それやったって

 という変化です。私が買うのではない,相手に売ってもらうのだ,と言う相手主体の言い方です。大阪ではこういう言い方が案外多くあります。

 ところでこの表現にはちょっと面白い事があって,買った物を使う人とお金を出す人が同一の場合も,異なる場合も,同様の表現をします。

 例えば,自分でお金を出して自分で使う物を買うときに「これやったって」というと,「売ってもらう」という立場にへりくだる事になります。店員さんはもともと自分が下手に出ることを心得ているプロですから,お客さんが自分から下手に出ることで,売り手と買い手がWin-Winの関係になることを望んでいるという意志を読み取って,「ええお客さんやな」と思うわけです。確かに「売る物が変われば立場も変わる」という商都大阪ならでは,やったんかも知れません。

 一方で,自分の子供にオモチャを買い与える場合,親が店員に「これやったって」と子供の前で言ったりします。店員は子供に「こうてもろてよかったなー」と言いながら品物を子供に手渡し,お金は親からもらうわけです。子供は完全に「お金」という汚い物から隔離されるんです。

 これなんかも,お金を持っている人が強いという基本的なルールを子供に教える事と,社会全体でお金という面倒くさいもんから子供を守るという,そういう思いちゅうか優しさちゅうか,そんなもんが見え隠れしてるように思います。

 これも大阪が商売人の集まりやから,と言うてしまえば簡単でしょうけど,私はそれだけやのうて,相手の立場に立つという文化が根付いているからやないかとも思ってます。


 とまあ,いくつか並べてみたんですが,共通するのは「リズム」と「想像力」と「相手に対する興味」やないかと思います。

 相手とお話をしますと,頭の中でどんどんビジュアルが沸いて出てくるのが大阪の人の会話で,話の先読みもお互いにどんどんやっていくわけです。だから助詞がなくても名詞の役割がわかるし,指示代名詞でも話がどんどん進むんです。

 極めつけが擬音で,これなんかも話し手と聞き手のイメージがうまいこと重なるんでしょう。行き止まりにぶつかったら,話し手も聞き手も「どーん」って心の中でいうてますから。

 そして,そういう「話の流れ」の基本になるのが,リズムです。流れるように話すことで会話と思考が途切れず,イメージが双方で同期するんですね。

 大阪の言葉で話をすると言うよりも,大阪の人同士で話をすると,やっぱり楽しいなと思います。まあ,繰り返しになりますけども,言葉は文化ですから,なにも大阪に限ったことではなくて,やっぱりその地域地域ごとに,独特の文化圏があって,その枠の中で話すという事が心地よいというのは,当たり前のことやないかと,そんな風に思います。

実は我が家にはiPad2があるのです

  • 2011/09/29 16:15
  • カテゴリー:散財

 一部のガジェット好きかAppleに心酔する人々だけが買うのだろうと思われたiPhoneが,これほど普及して一般的になると私は思っていませんでした。

 確かにスマートフォンは便利なのですが,その便利さを実感するにはいくつもの壁を越える必要があり,壁を乗り越えるスキルと時間(場合によってはお金も)がなければおよそ到達出来ない高みであると,そう思っていたからです。

 これだけ普及した理由はいろいろあるでしょうが,私の美学で言うと,大衆化したガジェットほど無様な物はありません。むしろ,マイノリティーであるガラケーの方が,今の私には魅力的ですらあります。

 そんな話を普段からしているものですから,私はiOSマシンが嫌いなのだと,誤解されることもあったようです。

 嫁さんは,iPad2が発売になったその日,珍しく近所の電気屋に見に行きたいと言い出しました。どうせ在庫もなく,買うことも出来ないとわかっていたのですが,展示機を少し触って,なにやら複雑な表情をしておりました。

 そしてここしばらく,自分が使っているMacBookの調子が悪いだの,レスポンスが悪いだの,(重量が)重くて家の中を持って移動するのが苦痛だの,電池が持たないだの,ACアダプタが邪魔だのと,文句をやたらというようになりました。

 だけど,iPadが欲しいとは自分からは絶対に言わないんですね。私も面白いので,ほっといたのです。

 そんなある日,私がふと「iPadってほしいか」とダイレクトに聞いてみたら,迷い中という返事です。すぐ欲しいすごく欲しいと言わないところが,どうも意地になっているみたいです。

 嫁さんは産休中ということもあり,確かに2kgもあるMacBookを持ってうろうろするのは面倒だろうと思いますし,産後はもっと大変になることでしょう。

 私も鬼ではありません。先週の木曜日,会社の帰りにiPadを買って帰って,ごくろうさんの意味も込めて,いきなりプレゼントすることにしました。

 すると,なんと涙を流して喜ぶではありませんか。

 泣くほどiPadが欲しかったのか・・・

 今にして思えば,中華製の偽iPadとか,激安のAndroidタブレットとかをすっとぼけて渡して,偽物のガンプラを得意げな顔の父親に渡されて「これじゃない」と枕をぬらした,我々の世代に共通した体験を味わってもらっても面白かったかも知れません。

 以後,彼女はMacBookをほとんど開いていません。なにをするにもiPadのようです。それだけ喜んで使ってくれるなら私もうれしいのですが,私はといいますと,これがちっともうらやましいと思わないのです。

 いつもはなんだかんだで,他の人の使っているものを見て欲しいと思うものなのですが,今回に限っては不思議と興味もわかず,嬉々として触っているのをちらっと見ては,お気に入りのMacBookAirに視線を落とす,そんな毎日です。

 知的な生産を支援する機械としてのコンピュータは,キーボードによってその存在をアピールします。私たちは子供の頃,他の何とも違うコンピュータという存在への恐れと憧れを,ボタンがずらーっとならんだそのキーボードによって,増幅させていたのです。

 そして今,つくづく考えてみるに,iOSマシンというのはコンテンツを消費するマシンであり,MacOSXマシンというのは,コンテンツを作るマシンなわけですね。

 もちろんMacOSXでもコンテンツの消費は可能なのですが,ただ消費するだけならもっとシンプルで使いやすいマシンが作れるはずで,それがiOSマシンだったのだと思うのです。

 私は,コンテンツの消費だけではなく,コンテンツの生成もコンピュータに期待していますから,この2つを同時に同じ操作でこなすコンピュータとしてのMacOSXマシンは,手放せません。iPadやiPhoneをなんとなく物足りなく感じるのは,そういうことなのだと思います。

 iPadやiPhoneはコンテンツを消費するマシン,言い換えればそれは再生専用機です。

 それは,かつてカセットテープが自分で録音と再生を行うメディアとして当たり前だった時代に,録音機能を持たない再生専用機として発売され,大多数の関係者の予想を裏切って,以後それが文化となったWalkmanと,同じ事のように思えるのです。

次の工作テーマ

  • 2011/09/27 11:07
  • カテゴリー:make:

 歪率計,低歪み発振器,そして周波数カウンタといくつかの自作測定器がに動き出しました。周波数カウンタについては,1/10分周器を74AC390で作るなど,広帯域化を行う予定でいますが,それはまあ部品を買ってきて交換するだけの話ですので,大したことではありません。

 ですが,最後の大物が1つ控えています。安定化電源器です。

 安定化電源器については,私が12歳の時に,シリコンハウス共立のオリジナルキットで作った,1~14V・3Aの電源器が現役で,随分重宝しています。ショートなどの過電流に対する保護回路がサイリスタによる電源のカットであり,良くある電流リミッタと違って,電源器の破壊を保護するのではなく,負荷の破壊を防ぐという役割が非常に助かっています。

 当時も,0V近いところから電圧を可変出来ること,3Aから5Aくらいまでの電流を取ることができる事,電圧は15V程度まで出せることを条件に選んだキットで,この25年,本当に役に立ってくれました。

 ただ,問題がないわけではなく,もう少し電圧が上がって欲しいこと,電圧の変動が結構あるということ,負荷が重いときは電圧がやや下がるということ,あと突入電流にも律儀に保護回路が働いてしまうことです。これらは「そんなものだ」と頭に入れておけば問題になることも少ないのですが,それを差し引いてもベークライトの基板はかなり劣化が進み,なにか手を打たないとまずいなと思っていました。

 そんなおり,秋月の再販リストに,超定番の安定化電源キットが出ていました。あれ,これって販売中止になっていたのか,と改めて驚いたのですが,ひょっとするとパワートランジスタや723といった部品の確保が難しくなっているのかも知れません。今回の再販も数量限定とのことでした。

 他の買い物と一緒に買っておいたこのキットですが,なにせ電源トランスにかなり大げさな物を使う必要があり,そのままつくると大変です。そこでケースや電圧計,電流計,そして電源トランスを流用することで,中身を新規にするという作戦を考えています。

 そのためにやらねばならないことがいくつかあります。


(1)電圧の低いトランスを使いこなす

 現在使っている電源器のトランスは,16Vで3Aというものです。軽負荷なら20V位のDCが取れるだろうと思いますが,秋月のキットは入出力電位差が10Vも必要です。例えば20Vの出力が欲しかったら,入力は30Vないといけないのですが,これで3Aや5Aのトランスなんてのは,もう鉄と銅の塊そのものです。

 入力と出力の電圧差を小さくするには,まずレギュレータICの723の電源電圧を別に供給することです。16Vの巻線から取ると,負荷の重い時に電圧が下がり16Vくらいまで下がるかもしれません。パワートランジスタの駆動がダーリントン接続になっていて,しかも723内部でもう1段ダーリントン接続になっているらしく,これだけで3V近く,出力電圧に対してICの電源電圧が高くないといけません。

 そこで723の電源を分離し,これを別巻線の電源から作り,20Vほどの電圧を供給するのです。723の消費電流は大きくないので,そんなに大げさな回路にはなりません。こうすると,15V位までなら制御可能になるでしょう。


(2)平滑コンデンサは22000uF

 現在の電源器は,22000uFという大きな物を搭載しています。劣化が相当進んでいるように思いますが,これはまあ流用しましょう。


(3)パワートランジスタを1つ減らす

 キットの回路では,2SC5200というパワートランジスタを2パラで使っています。結果10Aという大電流の制御が可能となっていますが,トランジスタをパラで使う時にはアンバランスが起きないよう,低い抵抗を介してパラ接続します。

 しかし,この抵抗の電圧降下がバカになりません。0.1Ωですので,例えば5A流れると0.5Vです。ただでさえ重い負荷で入力電圧に余裕がないのに,こんな所で電圧が下がったらもったいないです。

 そこで,パワートランジスタを1つにします。単純に5Aまでとなりますが,そもそもトランスが3Aまでしか取れないわけですし,10A仕様にすることはオーバースペックです。パワートランジスタを1つにすれば,現在の電源器で使っている2N3055(東芝製というのが80年代らしいですね)をそのまま,放熱器ごと流用できます。

 2N3055のhFEは100以下,一方の2SC5200は160ほどあるようですが,2N3055を1つだけドライブするなら似たようなものです。回路の変更もせずにそのまま部品を流用し,しかもバランス用の抵抗もいらず電圧降下を防ぐ事も出来て,好都合です。


(4)電流制限回路

 723は,2ピンと3ピンの電圧が0.6Vになると電流制限がかかるようになっています。ということは,負荷に流れる電流を低い抵抗でモニタし,この抵抗の電圧降下を使う必要があります。

 キットの回路では,この抵抗に0.1Ωのパラ付け(0.05Ω)を使っていますが,これだと12Aで保護回路が働くので,あんまり保護してくれそうにありません。また,この回路には保護回路の動作電流調整VRが付いていますが,これは保護回路が働く電流を大きくなるように調整する物であり,12A以下に出来るわけではありません。

 私の場合,3Aで保護回路を働かせたいわけですから,ここは0.2Ωにするのが正しいです。大きくする方向の電流リミッタ調整などあっても仕方がないので,その機能は省略し,3A以上にならないようにする回路とします。

 ちょっとgoogleで調べてみたのですが,この電流検出抵抗に直列にダイオードを入れて,0.6Vをバイアスするという方法で,0Aから動作電流を可変出来るようにしている人がいます。

 なるほど,それも手だなと思いましたが,考えてみるとここで必ず0.6Vのドロップがあること,例えば3Aの電流を引っ張ったとき0.6V x 3Aで1.8Wもの電力がここで消費されるなど,あまり良くなさそうです。

 ただ,0Aからリミッタを可変出来るのは魅力ですね。3Aなんて流れたら,あっという間に炭になってしまう部品も多いです。もうちょっと考える事にしましょう。


(5)SENS端子と電流計

 回路に入った電流計は低い抵抗に見えますから,そこで電圧のドロップがおきます。当たり前の話ですが,ドロップした電圧を計って安定化する機能が,このキットにはあります。それがSENS端子ですが,フィードバックループの一部を引っ張り回すわけですから,発振しやすくなるのも道理です。気をつけなければなりません。

 同様に,電圧可変用のVRも,あまり配線を引っ張り回すと発振します。手持ちの多回転VR(1kΩ)を使うか,1回転の巻線タイプ(2kΩ)を使うか,悩ましいところです。


(6)723に供給する電源

 先程,レギュレータICの723に供給する電圧を別巻線から取る,と書きましたが,今使っている共立のキット付属の電源トランスは,0V-35V-43Vという,いかにも往年のトランジスタアンプを前提に作られたかのようなトランスです。

 共立のキットでは,35VをGNDに接地して+35Vと-8Vを作りだし制御回路に供給することで,電圧可変範囲を1V未満からスタート出来るようなっていますが,今回は単純に20V程の電圧が欲しいだけです。

 723の耐圧は40Vまで。35V巻線から整流するだけでは簡単に越えてしまう電圧だけに,なんとかしてドロップさせねばならないのですが,ここはツェナーダイオードでも使って,ローテクでみましょう。


 とまあ,プランとしてはこんなものでしょうか。723はレギュレータICとしては初期に登場した古典で,30年以上前から多くの所で使われてきました。その割には私は一度も使ったことがなく,今回の製作が最初で最後となりそうです。

 

8桁周波数カウンタの完成

  • 2011/09/25 13:47
  • カテゴリー:make:

ファイル 511-1.jpg

 8桁周波数カウンタが完成しました。

 ざっと最終的な仕様をまとめておきます。

・表示桁数 8桁
・機能 周波数,周期,周波数比,インターバル,ユニットカウンタ
・プリスケーラ 1/10および1/1000
・測定周波数帯域 0.1Hz〜10MHz(1/1)
         1Hz〜24MHz(1/10)
         100Hz〜2400MHz(1/1000)
・感度      20mVrms(1kHz)
・タイムベース TCXO(±3ppm/-20℃~60℃,±1ppm/年)
        水晶発振器(±20ppm)1/1000プリスケーラ使用時
・ウォームアップ時間 約15分
・電源 DC6VのACアダプタ(800mA)

 秋月のICM7216Bを使用した周波数カウンタのキットを作り直したものですが,これまでの不満点を改称したものになっています。

 写真は,背面から出力している10MHzのタイムベースを,1/1000プリスケーラを通して周期測定を行っている様子です。1/1000プリスケーラ使用時のタイムベースはTCXOではなく9.765625MHzの水晶発振ですが,通電後約15分でTCXOを源発振とする10MHzの周期を,100.0000nsと測定してくれています。


(1)LED表示のゴースト

 ドライバトランジスタのキャリア蓄積が問題だと思っていた8桁目のゴーストですが,結論から言うと違っていました。波形を見ると244usのON期間の後,次のONまでの時間,なだらかに電圧が落ちていて,中途半端にONになっている長く時間があります。

 原因を調べていたのですが,2SA1015のベースが5Vになりきっておらず,トランジスタがOFFし切れていないようです。そこでベースとエミッタ間に2.7kΩをつないで,確実にトランジスタがOFFするようにしました。というか,PNPトランジスタではこれは必須の抵抗でしょう。

 さらに,0.022uFのコンデンサもベースとエミッタ間に入れました。抵抗だけだとあまりに波形が汚く,他の信号が変化するときに電源が引っ張られてベースの電圧がガクガク変動しているので,それを吸収するためです。

 この結果,8桁目のゴーストは消え,また各セグメントの輝度も揃うようになりました。(コンデンサの容量を大きくすると,今度は明らかにスイッチング速度が落ちてしまい,ぼんやり点灯するようになるのです。)

 また,DPもぼやーっと点灯する事がありました。ドライバである2SC1815に同様の対策を行って,解決しました。


(2)プリアンプの改良

 もともと5Vでもミスカウントするくらいだったのですが,以下に行った改良で20mVrmsまでカウント出来るようになりました。

・初段の2SK241のソースを直接接地
・段間のコンデンサを100uFに増大
・2段目のトランジスタを2SC2901に交換
・電源電圧を5.75Vまで上げた

 本当は作り直しをしようと思ったのですが,それも面倒になったので改良することにしました。ミスカウントは,周波数というよりは立ち上がりパルスの幅がICM7216Bの限界以下になっているからのようで,これは電源電圧を上げて速度アップすることと,プリアンプの電圧も上げて余裕を持たせることで,調整を追い込むことにしました。アナログ回路は,高電圧ほど性能を出しやすいと,実感しました。

 トランジスタの交換は,手持ちのジャンク箱を見ていたら偶然ftが750MHzくらいの2SC2901が見つかったのでこれを使いました。最初は2SC3358というft=6.5GHzのトランジスタを使ってみたのですが,うまくゲインが取れず,また発振をしているような感じもあったので,やめました。


(3)1/10プリスケーラ搭載

 新規に1/10プリスケーラを取り付けました。手持ちの74HC390を使って1/10ディバイダを追加しただけですが,これで分解能を犠牲にせず,24MHzまでのカウントが出来るようになりました。これは使い勝手に大きく貢献してくれると思います。


(4)TCXOの搭載

 20年前に買ったTCXO,TCO-703Aを12.8MHzに調整(小数点以下6桁まであわせました)しなおし,これを源発振にPLLで10MHzを作るモジュールを作って,タイムベースとしました。

 このTCXOのスペックは,温度偏差が±2〜3ppm/℃,年間偏差が±1ppmというなかなかのものです。市販の安価な周波数カウンタでは,これが±5ppm位だったりしますので,そう考えると十分実用になってくれるでしょう。

 PLLがロックした場合には,左下のLEDが点灯するようになっています。VCOの制御電圧の変化で輝度が変わりますので,明るさの変動によってその安定度を見ることも可能です。

 ただし,1/1000プリスケーラ動作時は,タイムベースも通常の水晶発振で作られる9.765625MHzに切り替わりますので,TCXOの精度は出ません。この水晶発振が結構温度特性をもっているのですが,ICM7216Bと基板の間に寝かせて配置し,LSIの発熱による簡易恒温槽になることを期待しています。

 この結果,通電後約15分で規定の周波数に入ってくるようになります。もともとこの水晶発振は,1/1000のプリスケーラ用のものですから,分解能が1/1000になることを考えると,1GHz以上の高い周波数を測定する時以外は,精度を上げても表示に反映されにくいものですので,これで私は十分です。


(5)電源

 従来はトランスを内蔵し,5.6Vを三端子レギュレータで作って供給していましたが,発熱やAC100Vを扱う危険もあって,好ましくありません。ケースも小さくなりましたので,今回はスイッチング式のACアダプタで6Vを供給することにしました。小さく軽く安全で,いい世の中になりました。

 この6Vから,PLLやプリスケーラなどに供給する5.0Vと,カウンタに供給する5.75Vをそれぞれ別のLDOで作り,供給しています。PLLやプリスケーラはカウンタから信号をもらいませんので,レベルコンバートの必要もありません。

(6)ケースの加工とパネル

 ケースは定番の,タカチYM-200を使っています。やや小振りのケースですが,この大きさなら使いやすいし,取り回しも楽で,かわいらしいです。正面には文字高さ10mmの7セグLED8桁と,オーバーフローとPLLのロックを示すLEDが表示部に並び,右側に機能切り替えとタイムスケールのレンジ切り替えを行うロータリースイッチ,1/10プリスケーラの切り替えスイッチに1/1000プリスケーラ用の入力切り替えスイッチがあります。トグルスイッチの下には2つの入力端子がありますが,左側は10MHzまでの入力,右側は1/1000プリスケーラ用の入力です。

 背面は,周波数比などを計るときの入力B端子(ただし2.5MHzまでなので使い道はほとんどない)と,10MHzのタイムベースを出力する端子を設けてあります。なにせうちで一番正確な時間情報です。この10MHzを基準に使いたいと思うことは,これからもいろいろ出てくる事と思います。

 パネルは,今回はプリンタで印刷を行ってみました。表示部の角穴が大きく,どうしても素人くさい加工が目立ってしまうからです。最近はインクジェットプリンタで耐候性のあるステッカーを作るシートなども市販されていて,色も綺麗に出ます。文字のにじみもなく,ご覧のように綺麗にパネルを作ることができました。

 穴あき加工済みのパネルを部品取り付け前にスキャナで取り込み,この実寸の画像にあわせて印刷用の画像を作り込んでいきます。気に入ったフォントを使って文字を入れていくのは,その昔インスタントレタリングを使って文字を入れた手間を完全に過去のものにしてくれました。


 ということで,実用レベルの測定器に仕上がりました。マルチメータの上にでも重ねて,常用することにしたいと思います。

台風15号

 ここ数日の台風15号騒ぎで,多くの地域で被害や各種影響が出ました。ニュースでもしつこくやっていたように,首都圏ではちょうど帰宅時刻と重なり,帰宅困難者が続出しました。

 かくいう私も,帰宅には大変な苦労をしました。帰宅指示が出て会社を出たのが16時30分頃,実際に家に帰り着いたのが22時。実に5時間30分もかかってしまいました。いつもなら1時間弱のところを,です。

 先の地震の時も大変でしたが,今回の帰宅の難しさは,ひょっとするとそれ以上のものがありました。1つ違っているのは,地震の際には誰もが帰宅困難者であったのに対し,今回は人によってすんなり帰れた人とそうでなかった人がいたことでしょう。

 なにせ5時間半かかった帰宅ですので,少し状況をまとめておこうと思います。

・15時30分頃 
 いつも使っている東急大井町線を含む,東急の主要各線が運休という情報。

・16時30分頃
 帰宅指示を受け,意を決して帰宅する。この段階で東急線はほとんどが運休。とりあえず大井町までいこうと決める。

・16時45分頃
 京浜東北線は蒲田~大船間で運転,山手線は東京方面が運休。しかし京浜東北線は人であふれ,ホームまでたどり着けない。そこで山手線で大崎まで行き,そこからりんかい線で大井町まで行くことにする。

・17時頃
 大混雑の山手線でなんとか大崎までたどり着く。りんかい線のホームは比較的空いている。

・17時10分頃
 折り返し運転の新木場行きに乗る。雨風がひどくなり,大井町止まりとなる。

・17時20分頃
 大井町のホームに到着。大井町線は運休していたが,雨風をしのげるように車輌は開放されていた。台風が過ぎ去るのが19時頃として,もし座れれば待つことも可能と考えていたが,あいにく立って待つことに。

・17時50分頃
 突然停電。空調も止まり,照明も消える。安全が確保出来ないためだろうか,全ての乗客が否応なしに雨風のひどいホームに放り出される。このまま座って待ちたいというお年寄りの懇願も全く聞く耳を持たず。

・18時頃
 大井町まで来ればなんとかなると思ったのは,大井町線は多線区との接続がなく比較的復旧が早いことを期待したのと,最悪改札を出れば食事や買い物をするのに困らないから。しかし改札の外をホームから見ると,余りのたくさんの人に改札制限がかかる可能性もあると考えた。幸い,私は乗車位置の最前列に偶然おり,私の後ろに列ができはじめたので,このままここに1時間ほどいれば,確実に運転再開直後に帰れるとふんで,このまま待つことにする。目の前の電車はパンタグラフを降ろしてしまった。

・19時頃
 状況は変わらず。雨風は弱まりつつある。

・19時30分頃
 雨風はかなり弱まり,ほとんどおさまっている。京浜東北線が動き出したのか,多くの人がホームに流れ込んで来る。「そろそろ大井町線が動くらしい」という声も聞こえる。確かにそろそろ動き出してもよいころだろう。

・20時頃
 突然「沿線の民家が倒壊の恐れがあるため運転再開の目処が立たない」とアナウンスされた。多くの人があきらめてホームから去り,列が短くなった。私はまだ列を離れない。それにしても,19時頃には悪くとも,電車に乗って待つことが出来ると思っていたが,あてが外れた。

・21時頃
 民家の倒壊を防ぐ工事を行っているというアナウンスが何度かあり,そのうち電車に照明が灯って,ドアが開いた。工事は終わったが,運転再開は線路の安全確認終了後ということらしい。

・21時9分
 駆け込みで乗り込んでくる人があまりに多くてぎゅう詰めになったが,安全確認が終わってようやく運転再開。倒壊の恐れがあった民家というのは緑が丘駅の近くという話と,下神明付近の安全確認が最後に残っていたという話が何度もあって,ようやく大井町を発車。

・21時40分頃
 二子玉川に到着。特にトラブルはなかったが,目黒線が止まっていた関係で大岡山で大混雑,東横線の関係で自由が丘でまた大混雑。私が下りた二子玉川からも乗り込む人が大勢いて,生きた心地がしなかった。

・22時頃
 帰宅。すっかり雨風はおさまり,雲も高い位置に少しあるくらい。


 とまあ,こんな感じで,家に帰ってご飯を食べて風呂から出たら,もう寝る時間になっていました。4時間じっと立ち続けた疲労感はありましたが,焦ることも怒ることもなく,まあ穏やかに過ごした時間でした。悔しいのはあと数日はもつと思った文庫本を読了してしまったことと,歩けば2時間で帰れたということでしょうか。

 この日,東急全線の運転が止まり,迂回路がほぼ完全に絶たれた状態になっていました。私が住むところは他の会社の鉄道がなく,東急がすべて止まるともう手がありません。田園都市線も大井町線と余り変わらないタイミングでしか再開しませんでしたので,電車で帰るのであれば今回の4時間待ちというのは,最善策だったことになります。

 ただ,18時頃に歩いて帰ることも考えて,IDEOSでルート探索を行っていました。ややこしい道を使うこともなく,2時間で帰ることが出来るのであれば,20時頃には帰宅できそうと,かなり迷ったのですが,19時頃には運転再開するかもしれないという期待もあったし,雨風の中を歩くのは危険ということもあって,あきらめました。しかし結果から言えば,雨風も弱まりつつあった19時頃からでも歩いて帰るのが,一番正しい方法だったかも知れないですね。

 もう1つ良かったのは,帰宅できない可能性も考えて,16時頃におにぎりを2つほど食べて,ペットボトルのお茶を飲んでおいたことです。このおかげで空腹になることなく,4時間待つことも出来ました。やはり食べ物というのは重要です。


 それにしても,気の毒なのは小さい子供を二人連れたお母さんや,お年寄りですか。前日から台風に警戒するようにとあれだけ言われていたので,休校になったか早退になったかで学生はほとんどいませんでしたが,サラリーマン以外の人があれだけ,台風に無頓着だというのは,ちょっとどうかなと思いました。

 もう1つ,東急の対応のまずさもあります。台風は突然来たわけではなく,今回はゆっくりやってきましたし,前日には東海地方で大きな被害をだし,翌日は警戒するよう言われていたわけです。しかし,これだけ長い時間運転再開出来なかったことは,東急への信頼を崩すに足る物であったと,私はつくづく思います。

 数年前,台風で出社することが難しい状況になったことがありました。この時は会社まで1時間ほど歩いたのですが,この時も「台風くらいで」という意識があったことは否めません。特にここ最近の台風は,上陸すれば確実に大きな被害を出します。自分に都合のいい勝手な想像をして台風をなめてかかることは,今後はやめようと思います。

 結論から言えば,昨日の勝ち組は,午後一に早退することでした。

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