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STAGE A120は確かにJBLらしくない

  • 2019/05/23 12:28
  • カテゴリー:散財

 先日,つらつらとオーディオ関連のニュースを見ていたら,昨年夏にJBLから,ペアで2万円を切るブックシェルフ型スピーカーが出ていたことを知りました。

 ちょうどこの頃オーディオにあまり興味がなかったこともあり見逃していたんだと思いますし,仮にちゃんと見つけていても,JBLのような「ジャズに最適」などという,ジャンルを枕詞にするようなスピーカーには手を出さなかったと思います。

 私はモニター指向が強いせいか,特定のジャンルを条件にした「定評」をあまり良い評価とはとらえていません。いろいろ理屈をこねることは出来ますが,音楽なんてのは楽しく聴けることがすべてですし,音の良し悪しは好みや環境,状況によって全然違ってくるものなので,長い時間をかけて収れんした(あるいは変化した)今の好みを直感的に信じればいいと思っています。

 不幸にして超高級オーディオにたどり着いた人は,それはそれで大いに結構ですし,屋台の軒先にかかったAMラジオの音が,ある種の懐かしさと共に深い感動を呼び起こす事だってあるでしょう。音楽,あるいは音というのは,そういうものだと思います。

 僅かとはいえ昔からオーディオに予算配分を行っている私は,幸いにして自分の好む音というのを見つけています。それを基準にしながら,新しい機材に出会うことはいくつになっても楽しいものです。

 で,そのペアで2万円切る激安のJBLですが,STAGE A120といいます。

 114mm(4.5インチ)のウーファーとアルミドームのツイーターによる2ウェイバスレフで,小型ながら低域はちゃんと出ているようですし,HDIという高級機で採用されたツイーターのデザインは,きっと好ましい音場を作ってくれるでしょう。

 それにしても,JBLのデザインは,いつも秀逸です。A120も深い木目と黒の配色が格好良く,まるで高級機のような落ち着きを見せています。KFEの廉価モデルとは大違いです。(まあKEFはコストの大半をスピーカーユニットに振り向けているという証なのですが)

 正面のバッフルの過度を落とした美しい造形は,音響的も見た目にもプラスに働きます。

 実は,今から25年近く前の1995年に,J520Mというペアで定価3万円のスピーカーLを私は買っています。大きなスピーカーが置けない環境にあり,ニアフィールドでの使用を想定した買い物でしたが,JBLに対する漠然とした憧れと価格の安さで手に入れて使っていました。

 ただ,あまり音が良かったという印象はなく,狭い帯域なりにそつなく無難にならすスピーカーだという印象でした。

 その後,実家で使われるようになっているのですが,2008年にボロボロになったウレタンエッジを交換してあります。あれから10年ですか・・・

 で,A120は確かに安く,そこが訴求されているのはわかるのですが,小さいウーファーの2ウェイで安いものというのは随分昔からラインナップされているレンジであって,なにも特別なものではないし,JBLのブランドを汚すようなものではないということです。

 ただ,4312Mは大失敗でした。ブルーバッフルの4312を見た目そのまま小さくしたこのスピーカーは随分売れたと聞きますし,私も視聴しないで衝動買いしました。

 しかし音はお世辞にもいいとは言えず,帯域は狭く,音場の再現性は低い,とてもカサカサした音がしていて,ちっとも耳が慣れてきません。やがて使うのをやめてしまいました。

 この,ブルーバッフルへとJBLブランドへの憧れを崩された苦い経験が,その後のヨーロッパ製スピーカーへの傾倒に繋がるのですが,「気のせいかも」「好みが変わったかも」と何度か聞き返してみても全く結論が変わることはなく,逆説的に自分の耳がぶれていないことがわかって,ちょっとほっとします。

 というわけで,コンシューマー向け低価格ラインのJBLは長い歴史があり,売れ筋である事から考えても決して手を抜いていないだろうし,時代に合わせた音作りを続けていると思いますので,A120に対する「JBLの音ではない」「乾いた音がしない」という評価は,私にとってはむしろ安心材料でした。

 なにより2万円以下です。最近の海外スピーカーの価格低下は止まらず,JBLでも1本1万円以下にしないといけないというのは,ちょっと深刻かも知れません。

 ただ,主にアメリカではホームシアター用のスピーカーとして,小型ブックシェルフの需要があります。サラウンドが5.1chから7.1chに移行すると,フロントは2本でもリアやサイドに4本も必要になるので,単価を下げて欲しいと言う圧力が強まっているんだと思いますし,一方でソースの高音質化も顕著になっているので,性能面でもごまかしや妥協は出来なくなっているんでしょう。。

 A120はリアやサイドのサブスピーカーとして使われる事を念頭に置いてあって,ブラケットが標準添付されていたりしますし,背面のバスレフポートを塞ぐプラグも付属しています。

 一回り大きなサイズのA130にはそうした付属品はなく,バスレフ専用のメインスピーカーとして使う事が想定されているわけで,3000円の価格差以上に,その立ち位置が異なっていることも認識すべきでしょう。

 私はそうしたA120の位置付けに興味がありましたし,ここまできたら最小サイズのJBLを聞いてみたいじゃないですか。だから迷わずA120を買うことにしました。

 お値段は16000円弱。1本8000円ほどですので,もう破格でしょう。

 届いて見ると,まず作りの良さに感心しました。逆に作りの乱暴さを批判する人もいますが,私の個体はとても良く出来ていて,綺麗に仕上がっていました。

 ずっしりと重く,指で弾いてもコツコツといい音を立てています。これは期待出来そうです。

 で,実際に音を出してみますが,これがまた今どきの帯域の広い,定位感のあるいい音を出すのです。低域は伸びているというよりも小型ブックシェルフのバスレフらしいタイトで元気な音ですし,高域も自然に繋がって出てきていて,ハイハットの音で解像感の高さを印象づけます。肝心な中域には艶もあり,音も散らばりません。

 サイズが小さいのでスケール感こそありませんが,その音場の再現性は大したもので,音を出した瞬間に「おっ」と思いました。これはいいです。

 いわゆる分解能はそれほど高くはないと思いますし,全帯域で定位感が抜群というわけではありません。帯域もやっぱり狭いなと感じますし,音の密度は低く,物足りなさはあります。小さいスピーカーにありがちな設置の難しさはついてまわります。

 しかし,目を瞑って聞けば,これがあの大きさの,あの値段のスピーカーから出ているとは思えないくらい,よく鳴っています。デザインもJBLのハイエンドと共通の高級感のあるもので,いかにもいい音がしそうな印象も与えてくれます。

 気のせいかと思って,4312Mにつなぎ替えますが,もう全然ダメ。4312Mは二度と聞かないだろうなと思いました。

 パイオニアのPE-101と専用のエンクロージャでも聞いてみましたが,フルレンジスピーカーらしい帯域の狭さはあるものの,その音場の再現性と艶は素晴らしく,PE-101を見直しました。それでもA120の圧勝です。

 音の傾向からいって,A120はかつてのJBLのアイデンティティである,Jazz向けの乾いた音とは逆の方向に向いていて,小さいエンクロージャから無理に音を出そうとする不自然さが,らしくないと言われる理由ではないかと思います。

 しかし,今のスピーカーに求められている音の方向に素直に従った結果でもあり,それをこの値段でやってのける(しかもこの仕上げでです)JBLは,やっぱりすごいんじゃないかなと思いました。

 ということで,うちでは,私の作業部屋のメインになりそうです。本気で聞くというよりも他の作業中に楽しく聞くという目的は,案外音場の再現性が求められるし,音そのものもよくないと,気が散って仕方がありません。

 確かに,この音のために,わざわざJBLを選ぶ必要はありません。この音なら,国産メーカーも含めていくらでも選択肢はあると思います。

 でも,そこはやっぱりJBLのコンスーマー用スピーカーです。大衆がどんな音を好むのか,よく分かっていると思いました。この価格,そしてこの大きさでは,頭1つ飛び出た選択肢になるでしょう。

 とても気に入りました。
 

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