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カテゴリー「カメラに関する濃いはなし」の検索結果は以下のとおりです。

秒間9コマのために

 半年もすれば高価なバッテリグリップ「MB-D18」も少しは値下がりするだろうと,年明けくらいに買おうかと思っていたのですが,やっぱり長玉を縦位置で使う時には脇を締めないと落ち着かず,結局在庫が復活した購入の翌日に買うことになったのは,先日書いた通りです。

 繰り返しますが,電池ケースにボタンがいくつか付いただけのものが実売で5万円ですから,普通は理解出来ない値段と思います。今でも思いますが,やっぱり高いです。

 ここだけの話,非純正品(悪く言えばコピー品)が出てくれば1万円以内で買えるようになるわけで,たまにしか使わないならこれでもいいかなあと思っていました。(それに,コピー品と言えば聞こえは悪いですが,純正よりも持ちやすかったり,ボタンが多かったりすれば,それはもうコピー品ではなく,上位互換品です)

 しかし,いつも装着している状態で使うわけで,本体と同じ信頼性や剛性感を持っていて欲しいと思いますし,そもそも互換品が出てくるまで待っていられないということで,結局純正品をさっさと買ったのですが,値段のことはさておき,買って満足,期待通りのものでした。

 やっぱり,縦位置の時に脇が開かないのはいいですよ,レンズを中心にクルクルまわして縦と横を持ち替えることも長年のクセで染みついていますし,大きさと重さをスポイルしてもこのオプションは必要だったと思います。

 ところで,D800の時には単三電池を使うと連射速度も向上したのですが,D850ではそうもいかず,連射速度を最速の秒間9コマにするには,EN-EL18というD4やD5用の電池を使うしかありません。

 いわく,高速の連写には大きな駆動力が必要で,そのためには高電圧が必要なのだそうです。標準のEN-EL15は2セルで7.2V,EN-EL18は3セルで10.8Vです。

 ちなみに単三8本だとニッケル水素なら9.6Vですので,EN-EL15とEN-EL18の間になりますから,本当なら秒間8コマくらいになってくれてもいいんですけど,電圧の下がり方の問題もあり,出来ないと判断したのでしょう。

 ですから,せっかく高価なMB-D18を生かすのに,安価な単三電池で機能アップしないのは残念至極,秒間9コマにするには,2万円の電池と4万円の充電器がさらに必要になります。

 考えて見て下さい,バッテリグリップと電池と電池フタと充電器で10万円です。本体が40万円ですから,秒間9コマにするなら合計50万円です。これって,ちょっと前のプロ機の金額そのものです。厳しい。D5が50万円後半になっていますから,そっちを買った方が幸せになれるんじゃないかと思ったり・・・(いやいや,そもそも50万円が非常識な金額であることに気が付かないといけませんよ)

 そこで,少し考えて見ました。

 秒間9コマに必要なものは,MB-D18に電池フタBL-5,そしてEN-EL18bという電池と,充電器MH-26aです。

 MB-D18は買いましたし,BL-5は2000円ほどなので大したことはない,問題は充電器と電池なのですが,電池は互換品か中古品で済めば1万円以内,充電器は・・・なんとかD2Hに付属していたものを使えないかと考えました。

 D2HはEN-EL4という電池です。外形はほとんど同じなのですが,電池端子の位置が左右逆になっているのと,ガイドキーが異なっているので,物理的に装着出来なくなっています。

 ただ,調べたところでは,電池端子は6ピンでピッチも配列も同じ,つまり位置が異なっているだけだということです。

 というのは,充電器のMH-26aには,EN-EL4を充電するためのアダプタが存在していて,これがどうもコネクタの位置を変えるだけのもので,配列を入れ替えるとか,なにか別の電子部品を挟むなど,特別な事はなにもないんだという話を,事前に聞いていたのです。

 ただ,バッテリの充放電特性は異なりますし,完全に良い状態で充電出来るとは思っていません。あくまで間に合わせということです。でも,試してみたいじゃないですか。

 次に,EN-EL18です。EN-EL18には無印とaとbの3つがあります。EN-EL18はD4やD800が出た頃の製品ですので2012年生まれ,すでに5年が経過している古い製品でもあります。

 今回,開封済みだけど一度も使用していない新品を見つけたので,買ってみました。5000円ほど安いだけだったのですが,怖いもの見たさでポチってしまいました。

 届いた電池を見れば,確かに未使用品です。傷一つありません。しかしカメラに装着してもまったく動作せず,認識もしません。充電もすぐに異常を検出して充電が止まります。

 これはおかしい。

 電池の電圧を調べると全く出てきません。充電を強制的に行って見ても,電流が流れません。

 おそらくですが,過放電により内部のスイッチが切れているんだと思います。こうなると,もう普通は手出しできません。裏技で内部のスイッチをONにする方法がないわけではありませんが,過放電を本当に起こしているのであれば,ここで充電を行うと爆発や発火などの事故が起きそうです。やめときましょう。

 そもそも製造から5年も経っている電池が,途中で一度も充電されずにおかれていて,過放電になっていない訳がありません。これはハズレだったということです。

 残念ですが返品の手続きを取り,代わりにヨドバシで新品を買いました。高いとは言え5000円ほど高いだけですし,ポイントを突っ込んだので,1万円くらいで買えたからよしとします。

 到着してカメラに取り付けると,ちゃんと認識しています。ただし残量は僅か7%でした。試しに連写もしてみましたが,秒間9コマに放心し,私の目は無限遠を見ておりました。

 さらに,MH-21のコネクタを取り付けて充電を行ってみたのですが,これは残念ながら,すべてのLEDが点滅して充電できませんでした。

 想像すると,MH-21が電池と通信し,返事が来ないものには充電を開始しないようになっているのだろうと思います。

 さあ困った。うちには3セル充電出来る充電器がこれ以外にありません。

 そこで,禁じ手なのですが,充電電流だけEN-EL18bに流し,後の端子はEN-EL4に繋ぐということで,MH-21を騙してみることにしました。この結果充電がスタートし,30分で9.6Vから11Vまで電圧が上昇しました。

 D850に装着してステータスを確認すると,7%から37%に容量が増えています。これで当座はなんとかなりそうです。

 気になるのは,MH-21の充電LEDが,ずっと90%のところで点滅していることです。本来は10%以下であり,50%を越える事がなかったわけですから,こんなところで点滅しているのはおかしいです。

 EN-EL4の残量が90%だったので,どうも残量は電池内蔵のマイコンと通信をして得ているようです。このあたりはもう少し検討してみます。

 とりあえず,充電出来る目処は立ちました。

 翌日,さらに充電を続けて,CC充電からCV充電に切り替わるかどうか,そして満充電を検出し自動的に充電が終了するかどうかを確認してみました。

 前日手を抜いた電流計もきちんとつなぎ,電流と電池の電圧を見ながら充電を進めます。電池電圧は10.8V程度で,ここから充電を開始すると予想度落ち1.2Aの充電電流が流れています。

 順調に電池電圧が上昇し,充電開始から1時間ほど経過して12.6V付近になった頃,電流が減り始めました。CC充電からCV充電に切り替わっています。また,12.6Vで切り替わったという事は,セルあたり4.2Vを終始電圧としていることも分かりました。

 実は,この終始電圧というのがミソで,4.3Vだと目一杯充電出来る代わりに電池の劣化が進み充放電の回数が減ってしまいますし,4.1Vだと電池の劣化が抑えられる代わりに,目一杯の充電が出来ず動作時間が短くなってしまいます。

 また,電池の素材や特性によって終始電圧の設定は変わってくる場合があり,4.2Vの電池に対し4.3Vの充電器を使ったら,簡単に電池が劣化してしまいます。

 4.2Vというのは,そういう意味では非常に無難な標準的な電圧と言えて,MH-21がこの電圧になっていることが分かってほっとしました。

 さらに充電を進めると,順調に電流が減っていきます。電流が減ると電流計での電圧降下も減るので,ちょっとずつ電池電圧もあがっていきますが,それでもほとんどかわりません。

 そして200mAを割ったときに,とうとう電流がゼロになり,充電が終了しました。充電開始から2時間15分経過していましたので,昨日の30分と合計しトータルで165分です。充電中のLEDは点滅をやめ,充電終了を示す点灯になっていました。

 EN-EL18は2500mAということですので,1200mAで定電流充電すれば約2時間で充電が終わりますが,CVモードになってからは時間がかかるものなので,160分ほどという結果は,うまい具合に充電が出来たと考えて良いでしょう。

 満充電になったというEN-EL18をD850に取り付けて電池のステータスを確認したところ,劣化もなく,容量も98%となっていました。100%でないことも気になりましたし,撮影枚数が1枚になっていたことも気になったのですが,ここは充電後にリセットされる数字なので,正しくリセットされたことをもっとはっきり確認しなければなりません。

 ということで,不安がないわけではありませんが,MH-21は1.2AのCC充電と,12.6VのCV充電を切り替える充電器であり,MB-D18もきちんと充電出来ることがわかりました。ただし,電池の温度は全く伝えてはいませんし,電池のステータスも偽情報ですので,どんな事故が起こるかわかりません。危険なので他の方はこんな方法を使わないようにお願いします。


 てなわけで,満充電になった電池で,秒間9コマを味わってみました。

 本体に内蔵した標準のEN-EL15bと,MD-B18に内蔵したEN-EL18bをメニューから切り替えて,動作の違いを見てみます。


 まず,秒間7コマと秒間9コマでは,もはや別のカメラと思うほどの感触の差があります。動作速度全体が上がり,音も大きくなります。ミラーショックが大きくなっているのには私も驚きました。

 秒間7コマの気持ちで構えていると,そのショックの大きさにびっくりしますし,当然ブレも出てくるのではないかと思います。秒間7個までも十分な場合も多いですし,音の大きさとミラーショックから,普段はEN-LN15出使うのが良さそうです。

 そして秒間9コマはやっぱり強烈で,やっぱり脳内麻薬が出てきますね。前述の通り動作速度が全体的に上がってとても機敏になりますし,駆動力も上がってぐいぐい動きます。この力強さは手に伝わって来ますし,キレも良くなります。

 力強い駆動力にそれを支える骨格,高精度なAFシステムにシャッター速度を上げられる高感度特性を持ち,高速連写に耐えうるハードウェアを持ちながら,4500万画素というトリミングも楽々こなす画素数を実現したD850は,確かにどんなシーンにも活躍し,まさに撮影領域を大きく拡大するカメラだと思います。


 ・・・しかし考えて見ると,安く済んだのは充電器を買わずに済んだと言うだけの話で,他の3つはすべてヨドバシで買ってしまいました。ヨドバシも昔は安かったんですが,今はポイントを差し引いたら他の店と同じ,という程度の割引になっているので,もうすっかりポイント無間地獄です。(ヨドバシのポイントは他の店では使えないので,結局ヨドバシで買うことになる)

 こういうことなら,最初からD850の購入予算に入れておけば良かったと後悔しているのですが,問題はこの大げさなシステムを,どこに担ぎ出すのかという話です。今の私には,秒間9コマだと,1回のレリーズで3枚ほど撮影出来てしまうくらいなので,明らかに体が慣れていません。

 こうなったら,もっとD850を触って,体を慣らしていくしかありません。


最近のレンズはモバイル家電だと考えていい

 D850を本気で買う予定でいる私ですが,その価格がすでに私にとっては分不相応なものであり,私の収入ではそうそう手の出せないものであることを,自覚しています。

 今ここで現金で持ち出せるのを,多くても25万円,出来る事なら20万円に押さえたいと考えた時,私が予約したお店はおよそ36万円ですので,機材の処分で15万円を作る事を考えました。

 思えば,ジャンク品からまともな新品まで,いろいろなレンズが手元にあります。買うときにはそれなりの判断をして買ったものですから,簡単に売ってしまうと言うのは難しいわけですが,そこはしきい値を調整し,処分できそうなものを並べてみました。
 予約したお店は東京中野の有名店で,ここで下取りまでお願いするつもりでいたわけですが,値段が下がってしまうのも惜しいので,さっさと宅配買い取りをお願いしました。

 売るのは,D800とバッテリーグリップ,そしてAF-S DX Zoom-Nikkor18-200mmF3.5-4.5G ED VR,AiAF35mmF2D,AiAF24mmF2.8,DP1s,TC-16A,Tamron SP AF 28-75mm F/2.8 XRです。

 事前の試算では,いろいろ難癖を付けられていいところ12万円かなあと思っていたわけですが,査定が出るとびっくりで,10万円でした。D800だけでも10万円近くで買い取ってくれる店があるなかで,これだけ用意しても10万円とは,かなり厳しいと思ったわけです。特にD800については,目立った傷もなく,箱も付属品もすべて揃っていますので,まさか7万円を割るとは思いませんでした。要するに,買い換えで玉があふれているんでしょうね。

 これだけならまあ辛抱したんですが,私が具体的なアクションを起こすきっかけになったのは,AF-S18-200の査定が,わずか2000円だったことです。新品で購入,箱も付属品もあり,傷も目立ったものはないという良品だと思っていたのですが,電話で訳を聞いてみると,どうもフォーカスリングに引っかかりがあるので,修理が必要になるという話でした。

 出たり出なかったりだと言う話でしたので,一度でも問題が出たものを「気のせいだ」と考えて高く買い取るわけにはいかないでしょうから,その辺の事情は理解するとして,それにしても2000円はちょっと残念です。

 また,AiAF35mmF2Dは,絞り羽根にグリスが回っているということで,これも3000円でした。この2つで2万円近く査定額が下がってしまったことは,純正レンズとはいえども,売れる時に売ってしまわないといかんという教訓を私に残しました。

 それなら返して下さいとお願いすると,気持ちよく返却してくれました。

 返してもらったのは,D800にバッテリグリップ,AF-S18-200mm,AiAF35mmF2Dでしたが,D800は指摘された傷もなく,私にはとても問題があるとは思えませんでした。

 AiAF35mmF2Dは,指摘通り絞り羽根にグリスがべっとりで,絞りの開閉に支障が出ています。これは指摘通りです。残念。

 問題はAF-S18-200mmです。今日はこれが本題です。

 フォーカスリングに引っかかりがあるという指摘があったわけですが,先日偶然,引っかかりを解消するには,ギアの部分を分解して指で少し回してやれば治るというWEBの記事を見て,試してみたくなりました。

 実物が戻ってきたので確かめてみると,確かにフォーカスリングに引っかかりがあります。なにか,フィルムのようなものが引っかかっている様な感じです。ズームをしても,やっぱり引っかかりがあり,一瞬ですが鏡筒内にテープのようなものがちらっと見えたことがありました。無理に回すとブチブチという音がしたりしましたので,どうもギアだけの問題ではなさそうです。

 実際にボディに取り付けてみたところ,一応AFは問題なく動作し,写りも問題ありません。ただし,VRが動作していないことに気が付きました。これは嫌な予感。

 どうせ2000円の価値しかないし,修理を15000円かけて行っても出番はなし,かといって売っても15000円程ですので,まともな修理は赤字になるので,もう捨てるしかないレンズと割り切り,分解を始めます。

 フレキを慎重に分解していき,ビスを場所を覚えながら分解していくのですが,まだ引っかかりの原因が見つかりません。ギアを手で回すこともやってみましたが,原因はこれではないようで,改善しません。

 分解を進めていくと,恐ろしいものが見えてきました。フレキがフォーカスのカムに巻き込まれて,くしゃくしゃになっています。

 しかも,そのフレキの先端が抜けてブラブラしています。どうやらこれがVRユニットにいくフレキなんじゃないかと思います。

 さらにここでズームを行うと,ズームのカムの溝にフレキの先端が入り込み,ギロチンのようにフレキが挟み込まれて,今にも切れてしまいそうです。これはもうダメだ。

 さらに分解を進めていきます。

 もう組み立て直すことは半ばあきらめていて,とうとう鏡筒から光学系が抜けた時に分かったのは,フレキが切れてしまっていて,修理不可能になっていた事でした。

 そして,その原因を仮組みしながら考えてみました。

(1)まずフレキを固定していた両面テープが経年変化で剥がれてしまった。

(2)フレキが浮き上がったところに,フォーカスのカムが引っかかった。査定中の状態はこれ。

(3)何度か繰り返しているうちに,フレキが引っ張られてVRユニット基板のコネクタからフレキが抜けてしまう。

(4)抜けたフレキの先端がズームのカムの溝に入り込んでしまった。鏡筒内に見えていたテープのようなものが見えたのは,おそらくこれ。

(5)ここでズームを行ったので,フレキがカムに巻き込まれて切れてしまった。


 フレキの剥がれ具合を見ていると,ほぼ間違いないと思います。

 長く使わずに放置していたので,この間にフレキが剥がれたものと思いますし,フレキを巻き込んで切ってしまった直接の原因は,査定中の操作にあると言えるわけですが,根本の原因は経年変化にあり,誰が操作を行っても同じ結果になったのではないかと思います。

 さてさて,組み立てをどうしましょうか・・・VRのフレキが切れているのでVRはもう修理出来ませんが,このフレキを剥がしてしまえば引っかかりもなくなりますし,普通の高倍率ズームとしては使えるでしょう。

 しかし,ほぼ完全にフルサイズに移行している状態で,DX専用の画質も今ひとつな凡庸な高倍率ズームを,VRもなしで使うなんて,さすがにないと思います。そもそもそうした私のレンズの選び方に変化があったことから,このレンズを売ってしまおうと思ったわけですし。

 てなわけで,おもむろに絞りをユニットごと取り出した私は,娘に「こんなんいるか?」と声をかけ,絞り羽根を開けたり閉じたりして見せました。大人でもなかなか目にすることのない絞り羽根が,シュルシュルと開閉する様が面白いらしく,娘は即座に「欲しい」といって,自分で開閉して遊んでいました。

 次にレンズをいくつか取り出してみました。凸レンズなら虫眼鏡になると思っていたのですが,案外どれも曲率が小さいらしく,あまり大きく拡大出来ません。しかしそこはさすがにカメラのレンズだけに,実にクリアに歪みもなく,恐ろしいほどくっきりと画像が見えます。

 そんなわけで,発売と同時に購入した18-200は,あえなく分解されてしまいました。

 根本の原因が,フレキを固定する両面テープの剥がれだなんて,なんとまあ家電チックな話でしょうか。光学機器であるカメラのレンズは中古市場が確立していて,人は死んでもレンズは残り,何人ものオーナーの手を渡り歩くものです。

 製造時にそんなことが意図されていたかどうかは分かりませんが,そうした50年も60年も前のレンズがきちんと今も価値を持つものとして流通していることを考えると,ここ最近に作られたレンズがこうして電気的な理由でダメになっていくと,今から50年先にはどんなレンズが残るのだろうと,心配になります。

 今回のAF-S18-200も,光学系は完璧でした。しかし,プラスチックが多用され,フレキとケーブルが鏡筒内を走り回り,高度な電子回路が内蔵されている今どきのレンズは,今どきの家電品やモバイル機器と同じ程度の信頼性や寿命しか与えられておらず,せいぜい10年が限界だろうと思われる部品も使われています。

 そしてそうした部品はすぐに入手が出来なくなるほど世代交代が早く,メカ部品のように自作も出来ない状況から,その多くが使用不能になったり,価値がゼロになったりして,廃棄される運命にあります。

 カメラが家電になったことを憂う声は,今でも時々耳にしますが,レンズまで家電になってしまったことは,私には重い事実でした。

 そして,1990年代移行のレンズは,大事に持っておくのではなく,気に入ったものは使い倒し,使わないものはさっさと売ってしまうのが最善であると思いました。そう,ユーザーにも家電と同じ接し方を,求められるようになったということです。

 さて,話はいきなり変わりますが,肝心のD850・・・先日お店から電話があり,予約割り当てが私にもあり,発売日である9月8日に購入出来るとのこと。

 ニコンの初物は地雷,と言われている昨今,価格も価格なのでかなり勇気のいる予約だったわけですが,どうせ買うことになるわけですし,しばらくは値段も下がりませんから,早めに買ってその分楽しむのが良いと思いました。

 若いときと違い,もう残り時間もそんなに長くはありません。今をできるだけ無理せず楽しく生きる。カメラは入手出来ればそれでいいのではなく,それで写真が残せなければなりません。

 9月8日,楽しみです。そして,なにもトラブルがないことを,祈ります。

 

D850は最後の最強モデルになるのか

 以前から噂が出ており,半ば確定路線とも言えたD800系列の最新モデル,D850が昨日正式に発表になりました。

 開発そのものは7月末に発表になっていましたが,詳細スペックや発売日,価格などが出てきたのが昨日です。

 スペックは事前の噂通りだったのでそんなに驚くことはなかったのですが,驚いたのは発売日と価格です。発売日は9月8日とわずか2週間後ですし,価格はカメラ店での一発目価格が税込み約36万円です。

 いやなに,36万円は高いです。D800の価格が27万円くらいで始まり,D810が現在20万円前半で買えることを考えると,同じシリーズの後継機種が36万円は,やはり実質値上げだと,私などは思っています。

 しかし,世の中,安すぎる,ニコンは商売が下手,バーゲンプライスだと絶賛の嵐です。

 正直に言って,ここまで褒める気は私にはないのですが,安いという意見には私も同意します。理由は2つ。1つはD850はD800系列の最新モデルというよりもむしろ,D5の高画素機とも言える内容になっていることです。

 登場時に皆腰を抜かしたD5のAFシステムと同じAFを搭載し,連写速度も最大で9コマ/秒,シャッター耐久20万回のプロ仕様です。

 中級機種には必須であるストロボをあえて内蔵せず,小型ストロボが便利にならないプロを意識し,その代わりに見やすい光学ファインダーにこだわるという姿勢は,間違いなくD800やD810とは別のユーザーを取りこもうとしています。

 思えば,D800も一眼レフのその後の方向性を決定付けた記念碑的モデルでした。いきなりジャンプアップした3600万画素にD4から移植されたAF,しかし20万円台の価格と,その後の高画素モデルのあり方を決めたと言ってもいいと思います。

 その後,ライバルのESO5Dシリーズの価格が,性能アップと共に一気に上がり,40万円を越えるようになってしまい,完全にプロに軸足を置くようになりました。ニコンもこれに追従するのではないかと思っていたのですが,D810についていえば,それはなかったと言えます。

 でも,D850の噂が聞こえてそのスペックがわかってくると,これはもプロを相手にしたカメラだな,きっとD800系が担っていたハイアマチュアは,もう1ランクしたのカメラをあてがうつもりだなと,そんな風に感じてしまい,自分の世界から外に追い出していたのでした。

 そこへ,昨日の発表です。

 36万円なら,なんとかなるんじゃないか・・・今なら発売日に手に入る・・・とりあえず予約だけはしておこう・・・

 気が付いたら,D800を買ったカメラ屋さんに,電話で予約を済ませていました。

 D800を購入したのが2012年の6月頃。あっという間に大きくなるこの時期の子供を,可能な限りの高画質で残しておきたいと,思い切って買ったものでしたが,5年を経過した現在においても,D800の画素数や画質には不満はありません。むしろ手に馴染み,クセも分かったD800は,買い換える理由を見つけられません。

 しかし,D800に対する不満や,我慢をしていることがないわけではなく,それはやはり連写速度とAFの性能,そして高感度性能でした。

 D2Hと併用すれば,大昔の失敗機のシャッターの機敏さと心地よさにD800が色褪せて見えます。単純な連写枚数ではなく,高速連写を実現するために鍛えた筋肉と骨格が持つ,ゆとりと軽快感が欲しいのです。

 AFも当時は最高性能であり,今も十分なものを持っていますが,さすがに撮影や構図に集中出来るかといえばそれは難しいです。

 そして高感度性能。ノイズがの多い少ないなんてのはもう昔の議論であり,ノイズが気にならない範囲での,発色の良さとダイナミックレンジの広さがどれくらい維持されるかが重要です。D800は,ISO800くらいが劣化のない範囲であり,ISO3200は限界ギリギリでした。

 それらが,一気に解決します。約4600万画素という強烈な画素数で最大9コマ/秒です。ブレを押さえるためのシャッターカウンターバランサーの搭載まで搭載し,強靱なバネとしなやかさを兼ね備えた,まるでバレエダンサーのようなメカに,おそらく私の脳みそはアドレナリンをドパドパ出す事でしょう。

 ソニーが撮像素子の歴史を塗り替え,人類が後世に残す画像に新しい基準を作った裏面照射CMOSセンサは高感度と高速性を両立し,これもおそらく高感度時の画質を高い次元で維持していることでしょう。

 また,これまで撮影サイズで変化していた連写速度が,フルサイズでもAPS-Cでも変化しないことにも注目です。もはや,連写速度は,画像データの転送速度によって制約されるのではないと言うことなのです。

 AFはD5からの移植ですが,測距点をただ増やしても面倒なだけ,しかし増やした測距点をデータ収集拠点と考えたニコンは本当に偉いです。複数の測距点をまとめて,AF性能を高めると言う発想は強烈です。

 AEも,一点の明るさ,多点の明るさ,やがて色まで判断するようになりましたが,すでに初期のテレビカメラと同じ画素数をもつ18万画素のAEセンサは,とうとう画像そのものを判断するようになりました。

 これに加えて,私は冷静に,もしかすると,ニコンの長い歴史の中で,ミラーボックスを持ついわゆる「一眼レフレックス」が,このモデルで終焉を迎えるのではないかと,そんな風に思っています。

 すでにデジタルカメラになることで,光学ファインダーが必須ではなくなっています。電気的に解決しないといけない問題が多く,俗に言うミラーレスカメラがまだまだ光学ファインダーを持つカメラに追いつかなかったのですが,それももう昔の話です。

 一般撮影に限って言えばすでに光学ファインダーでなくても構わないくらいに電子ファインダーの性能は改善されており,一方で電子ファインダーのもつ素晴らしいメリットが,カメラをより魅力的なものにしています。

 ニコンも本格的なミラーレスの開発を宣言しており,フィルムカメラをデジカルカメラが置き換わったように,実は一眼レフがミラーレスに置き換わることの真実味を,ニコンがイメージし始めたのではないかと思うのです。

 そんな矢先に出たD850を見ていると,出し惜しみ無しで,今一眼レフに搭載出来るものをすべて盛り込んだものと,私には見えます。それはまるで,F5に対するF100のようです。

 そう考えると,D850は,価格と性能という単純な軸のみで考えるべきではなく,私が長く親しんできた一眼レフの1つの頂点であると見えてきます。

 単なる記念碑的モデルではなく,実用モデル,あるいは戦闘用モデルとしての最強一眼レフは,もしかするとD850で終わりになるのかも,知れません。

 なら,やはり欲しい。

 9月8日が,とても楽しみです。



聖地巡礼

 先日,念願だったニコンミュージアムに行ってきました。

 お金のなかった学生時代には夢と憧れの存在だったニコンですが,その信者になってはや20年,マウント不変のメリットをしみじみ感じています。ニコンでよかった。

 そのニコンが,聖地大井町を離れて品川に移転し,その際に公開されたのがニコンミュージアムです。本社のロビーの一角に出来たもので,入場無料ですが,あくまで本社の一部ですから,平日の10時から18時までの開館となっています。

 昨年10月にオープンしたこのミュージアムですが,ニコンのファンはもちろん,カメラ好きも巻き込んで,話題になっていました。私もいきたいなあと思いつつ,土日にオープンしていないこと,平日はなかなか時間がないこともあり,ずっと我慢をしていました。

 ですが先日,ふいに時間が出来て,念願叶って見学することが出来ました。

 個人的な話で恐縮ですが,私はこの界隈に勤務していたことがあり,品川駅からそれなりに離れたこの建物を,とても懐かしく感じていました。港南口の周りの飲み屋街をくぐり抜け,食肉処理場に隣接するこの建物に入り,2つのコンビニと本屋さんを横目に,終端に位置するニコンミュージアムまで歩いてきました。

 これまで様々なレビューに目を通していましたが,その上で到着時に感じた第一印象は,思ったほど大きい物ではないなということでした。

 ただし,よくあるショールームとは違って,歴史的なもの(それはニコンにとってと言うより産業史としても重要な物)が存在しているという点ですでに興味深いものであると前置きした上で,昨今の博物館がレジャー的な性格を強くしている(かの国立科学博物館もそういう方針で来場者数をうなぎ登りに増加させています)中,規模という制約のために,気合いを入れて見学するぞ,と言う覚悟をかき立てることはなかった,という話です。

 面積はそんなに大きくないとはいえ,その展示物は圧巻です。限られた枠の中で意味のあるものを見せよう,という非常に前向きな気持ちがとにかく前面に出ていて,作り手も楽しんでいるという好ましい手作り感が,とても親近感を感じられるものでした。

 このミュージアム,見習うべきところが多いと思います。

 無論,そんなに頑張らなくても,ニコンは歴史と伝統と技術力,そして長年に渡って世界を相手に先頭を走ってきた自負をお持ちの超一流の企業ですので,見せたい物も山ほどあったでしょう。だから,展示物を限定しても,見た者を満足させることが出来るのは当然ということかも知れません。

 しかしながら,押しつけがましい圧力のような暑苦しさは全く感じませんし,見学者を驚かそう,びっくりさせようと,自らの力を誇示するような意図も見られず,これまでの自らの仕事を客観的に並べて,過去と今とこれからを丁寧に説明しているという印象を感じました。よく考えられているなあと思います。

 さて,これまでのレビューの多くは,個人法人を問わず,カメラメーカーとしてのニコンという視点で見ているものでした。

 ニコンがこれまでに発売したカメラがずらーっと壁一面に並んでいる状況は確かに楽しいのですが,中古カメラ店を毎週(毎日)見て回っていた私としては,実のところ見たことのあるカメラばかりが並んでいる感じがあって,そんなに興奮するようなものではなかったのです。

 冷静に考えてみると,そこにあるのはその当時,お金さえ出せば手に入った民生品です。量産品である以上はそれなりの数が製造されているはずですし,カメラはその中でも廃棄されずに残っている可能性も高い工業製品ですから,博物館らしいコンディションの良さに驚くことや,珍しいカメラに感激することはあっても,ここは本丸ではないなと感じました。

 ということで,普段あまり見る事のない廉価版の一眼レフやコンパクトデジカメを楽しみ,そうはいっても一度も現物を見たことがない初代のサンニッパなどをじっくり見せてもらいました。

 私が感激したのは,後にNikonI型と呼ばれる最初のカメラの試作機(通称No.6091)が出ていた事です。長く行方不明になっていたその試作機は,ある時他のものと一緒に資料室で発見されたそうです。

 そのニュースは私のような市井のファンにとっても胸躍るものだったのですが,そんな大事な貴重な物が行方不明になってしまうことには,その当時,今を歩くことに精一杯だったあの時代なら,当然のことかもしれないと思ったりしました。

 むしろその疾走感にゾクゾクしてきます。1947年,前しか向いていない人達が作ったカメラ,それがNikonだったわけです。

 確かにそれはボロボロですが,姿形は紛れもなく,ニコンです。食べるものにも困ったあの時代に,ちょっと前まで戦争をしていた国の技術者達は,何を思ってこれを削って,組み立てたんでしょう。ああ,写真を撮っておけばよかったなあ。

 フィルムを電送するスーツケースほどの装置も初めて見ました。こういうものって,使う人はプロだけですし,中古カメラとしてはあまり価値がないので,我々はほとんど見る機会がありません。

 今でこそメカとエレクトロニクスの融合体であるカメラですが,今から30年以上も前に,すでにこうしたものを作り上げるだけの技術力があったことを,思い知らされます。

 とまあ,面白かったのはここから先です。レビューでもほとんど振れられていないので存在を事前に意識しなかったのですが,なんと貴重な物が鎮座していることか。

 まず,国産ルーリングエンジン。ほとんどの人にとって無関係なこの装置ですが,回折格子という部品を作るため,精密な「ひっかき傷」を付けるための工作機械です。回折格子は分光分析装置という機械の心臓部で,1mmあたり1000本もの線を刻み込む必要があります。

 これを製造できるのはごく限られた国でしたが,ニコンはこれにトライします。その成功と失敗の物語はニコンの公式サイトにも出ていますのでぜひ読んで頂きたいのですが,これがやがて半導体製造装置や超精密な測定器に結実するのです。

 次は双眼鏡。戦前,海軍の士官達はドイツ製の,それもツァイスの双眼鏡をありがたがったそうですが,軍需に応えるための国策企業として生まれたニコンにとっても双眼鏡は重要な製品だったはずで,特に小型のミクロンシリーズは,今でも本気で「欲しい」と思わせるものでした。(調べて見ると,復刻しているんですね)

 そして半導体製造装置。まるでビール樽のような大きな筒に,分厚く大きなレンズがびっしり何枚も何枚も詰め込まれています。そしてその筒には,なんだかよく分からないワイヤーが走り回っています。1980年代のステッパーも秋葉原で売られているような部品がちょくちょく目に付き,本当に手作りだったんだろうなあという雰囲気が漂います。

 こういう産業機器で,しかも高額なものは,本当に目にする機会がありません。カメラよりもよほど見るのが困難なもので,私はこれを見る事が出来ただけでも,もう満足でした。

 そうそう,LCDの製造装置についても,かなり力が入っていました。現在のニコンの業績は,このLCD製造装置が支えているので,ぜひ自身でアピールして欲しいなあと思っていたのですが,すでにこのミュージアムで行われていたんですね。

 確かに現在は,ニコンのキヤノンも半導体製造装置のシェアは激減し,技術的にも最先端からは遠ざかっています。しかし,実はLCDの製造装置のシェアは大きく,直接目にするテレビ用のLCDを作る機械といえば,むしろこちらの方が身近な存在と言えるのかもしれません。

 顕微鏡なども,我々の命と健康を支える光学機器です。なんというか,プロ用のマシンの,あの無骨な魅力はなんなんでしょう。

 そして書いておきたいのは,日本最古とされるレンズ原器です。1921年に指導に来ていたドイツ人技術者が磨いたものということで,私も写真でしか見たことがありませんでした。こういうものがきちんと残っていることも素晴らしいですし,こうして大事にしていることに,光学メーカーとしての誇りを感じます。

 こうして見ていると,全く初めて知るものは少ないです。少ないから駄目という話では全くなくて,これまで門外不出で,その存在は知られていたけども,一部の限られた人しか見る事が許されなかったものを,こうして勢揃いさせているんですね。

 それらは,展示用に作られたものではなく,紛れもなく本物です。本物は,その背後にあるエピソードも,雄弁に語ります。

 いや,こうした歴史的な遺産を,見せたくても持っていない会社がどれほどあるか。そして持っているからと言って,見せようと思わない会社がどれほどあるか。自分達の業績を誇示しようというだけの,薄い動機で展示内容を決める会社がどれほど多いか。

 この小さなミュージアムが語る物は,ニコンの歴史にとどまりません。本物がそこにあることの強烈な体験を,こんなに手軽に出来る事を,我々は喜ばねばなりません。

 そしてお約束,ミュージアムショップです。

 ニコンようかんはもう定番として,他に何を買うかしばらく迷ったのですが,次に来る機会はないかも知れないと思って,買って後悔することにしました。ニコンFのナノブロック,ニコントランプも一緒に買ってきました。

 ナノブロックは噂には聞いていましたが,なかなか手応えのあるピース数で,これから少しずつ作って行こうと思いますが,底板部分を組み立てただけですでに間違いを発見するなど,前途多難な感じです。でも,こういう作業って楽しいです。ナノブロックって,レゴよりも勘合の感触が良くて,パチンパチンとはめ込むのが楽しくって仕方がありません。

 トランプは一応ちゃんとしたプラスチックトランプで,2枚のジョーカーを含む54枚に,一眼レフが印刷されています。素人目に見たら同じにしか見えない2枚のカードを,「ほらシャッター速度のダイヤルの上に突起があるのとないのがあるでしょ?」と4歳の娘に語る私も正直どうかしてると思いましたが,我が家にあるニコンのカメラをトランプに見つけた時の彼女のはしゃぎように,私は父親となった世転びを再び噛みしめることになるのでした。

 1700円という値段ならもうちょっと上質なトランプであって欲しかったと思いますが,まあこんなものでしょう。

 ニコン羊羹も娘と食べました。1つ120円は微妙な値段ではありますが,噂通り味はなかなか良くて,ゴマやゆずといった,ちょっと珍しいテイストが楽しめることが,ただただニコンの名を冠するだけのオモシログッズと一線を画しています。

 加えてこれらのオリジナルグッズって,羊羹を除いて,ニコン自らが作って販売しているんですよ。ナノブロックに付属する取説も,完全にニコン製品のそれなんです。手間がかかって儲けもないこうしたグッズって,安易に外に出してしまうものだと思うのですが,製造も販売もニコン(正確にはニコンマーケティング)が手がけているところに,ニコンの真面目さを私は見ました。

 ということで,短時間で見られる上に,とても満足度の高い企業ミュージアムです。品川駅からそれなりに歩きますが,ぜひ子供を連れて見に行って下さい。私も娘を連れて行きたいと思います。


 

チェキと銀塩

 私がカメラを構えているのを見て,娘も小さなデジカメを見よう見まねで構えるようになりました。

 しかし,撮影をしても,すぐに紙になって出てくるわけではなく,LCDに表示させるには別の操作が必要になったりするので,結果を見ることが出来ずに今ひとつ楽しい者とは思えないようです。

 そこでふと思い出したのが,チェキです。

 フジフイルムが独自仕様で作った名刺サイズのインスタントフィルムである,インスタックスminiを,安価でポップなデザインのカメラに仕上げて出したものがチェキで,今から15年ほど前の話だったと思います。

 私は,福袋か何かで手に入れたものを嫁さんにあげたのですが,物持ちの良い嫁さんはまだそれを持っており,押し入れを探して引っ張り出してきました。

 残念ながらフィルムはもう死んでいます。撮影してもなにも出てきません。

 そこでちょっと時間を見つけて,渋谷のカメラ屋さんに出向くと,とてもわかりやすいところに売られていました。10枚入りが2パックで1500円ほどだったと思います。

 それにしても,チェキのカメラ本体がまだまだ結構な種類があり,それなりの値段で売られているんですね。チェキが実は人気があり,今でも新製品が出ては売れて続けているという話は聞いたことがありますが,コンパクトデジカメがここ数年で「なかったことになる」ほど市場が縮小しているのに対し,立派なものだと思います。

 本体がこれだけ出ているのなら,フィルムの方はまだまだ安泰だと思いながら,買って帰りました。早速チェキに装填し,撮影してみます。

 沈胴式のレンズを引っ張ると電源が入ります。フォーカスはパンフォーカス,絞りもなくて,明るさに応じてフラッシュが自動で動作します。結局操作するのは,レリーズボタンだけです。

 これで本当に綺麗に写るのかと思いきや,考えてみるとこれほど大きな撮像エリアを持つデジカメはそうそうなく,レンズの解像度が低くても高画質,無理をしない設計が出来るから素直な描写と,大きなフォーマットである事のメリットはそれなりにあるだろうと,ウイーンと吐き出されてきたフィルムをしばらく眺めてみます。

 お,ゆっくりゆっくり画像が浮かび上がってきました。最初は青,そして緑,最後に赤が出てきて,綺麗な色調に整います。こんなもんかな,と思うところから,さらにくっきりと発色し,びっくりするほど綺麗な写真が出てきました。

 娘も,この変化に大はしゃぎ。チェキから吐き出された白い紙に,じわじわと画像が浮かび上がってくるのを,ワクワクしながら見ています。

 そうそう,インスタントカメラの面白さは,今も昔もこれなんですよ。

 銀塩時代は言うに及ばず,実はデジカメになっても,結局紙に出す事は,すぐに出来ません。自分で出来る人も限られています。だから,チェキの優位性,チェキの面白さといったオリジナリティは,今も昔も変わっていないんですね。ここに気が付くのが遅すぎました。

 そもそも紙に出すことはないんじゃないのか,と言う話もありますが,LCDに出してもみんなで見られるわけではないし,カメラ本体を持っていないとみることが出来ません。データを渡せばいいと言う話ですが,それでもそのデータを表示する機械がなければ,タダの数字の羅列です。

 人間の目にダイレクトに届く媒体は,やっぱり紙なんだなあと思います。

 ずっと遊んでいるわけではありませんが,娘はチェキで何枚か写真を撮りました。結果がジワジワと浮かび上がる楽しさは,直感的で説明不要な面白さがあります。これはいいですね。

 そんなことを考えていると,最近網にかからなくなった銀塩関係のニュースをふと見る事がありました。2014年の春にコダックがフィルムを値上げし,さらに2015年の初めに再度の値上げを行いました。

 今や,モノクロフィルムの100ft缶を買うと,15000円ほどするんですね。私が今冷凍庫で保管しているTRI-Xの100fは,確か3000円中頃の値札がついていたと思います。36枚撮りのT-MAXだって,1000円近くするんだそうです。

 ほんの数年前,カラーフィルムが1本100円で売られていたことが,ウソのようです。

 銀塩は,それを表現手段にする芸術家,それを楽しむ高尚なホビーになると以前からずっと思っていましたし,この結果は予想通り,販売が停止しないだけ予想以上の結果であると言って良いほどだと思いますが,それでもモノクロのフィルムが1本1000円というのは,さすがにおいそれと使えません。

 中判のフィルムは値上げがさらにすごいらしく,数倍の値段に改定されたケースもあるようです。35mmフィルムはデジタルに完全に置き換え出来るとしても,中判についてはまだまだデジタルは追いつかず,独自性が発揮されると思っていただけに,需要減少を理由に値上げされることについては,想像以上の厳しさでした。

 フィルムがこれだけ贅沢品になると,それまで頑張っていた銀塩カメラのユーザーが,もうくじけてしまうんじゃないかと思います。だから処分しようとする人が出てきます。

 でも,当時は非常に高価で,思い入れも一杯詰まった銀塩カメラはもはや二束三文の価値しかなく,本体よりもずっと安い値段で買った50mmの標準レンズの方の買い取り価格の方が高いという事が起きているようです。

 実のところ,私も時々フィルムを使いたい時があるのですが,冷凍庫からフィルムを出す前に,はて現像をどうするかなと思い至って,結局フィルムを出さずに終わってしまうのです。というのも,以前はお願いしていた近所のカメラ屋さんが少し前に閉店し,現像をお願い出来る場所が遠くになってしまったからです。

 フィルムの価格が上がる,打っている場所が限られる,現像してくれるところも探さないといけない,という環境の変化が,ジワジワと我々の周囲に迫ってきます。気が付いたら,もう銀塩カメラは,実用的な価値を失っているのです。

 かつて,ディスクカメラのボディを中古カメラ点で見ては,ゴミにしか見えなかったことをふと思い出し,これがまさかライカやニコンでも起きてしまうようになることを,私はため息をつきながら反芻するのです。 

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