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GRの機能拡張ファームがリリース

 手に入れてから4ヶ月になる,GRの新しいファームがようやく登場しました。

 ようやく,というのは,出る予定になっていたものを待ちわびている様子です。しかし,別にリコーは新しいファームを出すと,事前にアナウンスをしていません。

 しかし,リコーのGRシリーズは過去に何度も機能拡張ファームをリリースして,旧機種が最新機種に搭載された機能を持つようになったりしました。GRもこれに習うだろうという暗黙の了解があります。

 これ以上に,多くのユーザーから指摘をされた問題点が,修正される機会になるだろうという期待が,いつになるかわからんけども,いずれ必ず対応されるという,これまた暗黙の了解がありました。

 今回のケースでは,プログラムモードにおける,プログラム線図の問題です。購入時にも書きましたし,多くの方が同じような不満や疑問をあちこちに書いているので詳しくは書きませんが,GRのプログラムは,F4を出来るだけ維持しようと粘る傾向があります。

 それこそ数分の一秒のシャッター速度になっても,F4に張り付き,F2.8にはなりません。ISO感度をバーンと上げて意地でもF4でいこうとします。

 せっかく開放から高い描写力を誇るレンズを搭載しているにもかかわらず,F4で粘るがゆえに,手ぶれはするわISO感度は上がって画質は低下するわで,どうも意図がわからないんですね。

 もちろん,カメラ設計者が何らかの意志を持ってこのプログラムを作ったわけですから,多分性能が最も高くなるF4を出来るだけ使うようにしたんだと思いますが,F4とF2.8の画質差よりも,シャッター速度が1段遅くなることで発生する手ぶれや,ISO感度が低下することで起こる画質低下の方がずっと問題があるわけで,やはり納得がいかないわけです。

 そしてGRにとって初めてファームウェアアップデートが昨日公開されました。結論から先に書くと,この問題も対応がなされています。


・プログラム線図の修正

 これまでは,シャッター速度がかなり下がってもF4を出来るだけ使うようになっていて,ISO感度が随分上がってしまうこととあいまって,実質的にプログラムモードは使えなかったGRでしたが,今回のファームウェアアップデートでは,ここが対策されています。

 目に付くのは,ノーマルモードと開放優先のモードの2つが選べるようになったことです。私は最初,ノーマルモードは従来のモード,そしてF2.8を優先的に使うモードを開放優先と,要望の多かったモードを「追加」したのだと思っていました。

 従来のモードの評判が悪かったとしても,メリットがあったから採用したものであったはずで,そのメリットを利用していたユーザーが不便になってしまうことは許されません。だから,従来モードと新しいモードの2つを搭載することは理にかなっています。

 ところが,プログラム線図を見てみると,どっちもF2.8に早めに切り替わっています。開放優先の方は,F2.8が可能になったらさっさと開放にするというモードになっていますが,F4まで粘る性質は線図からは読み取れません。

 何かの間違いかも,と実機で確認してみますが,やはりどちらのモードでもF4で粘るようなことはなく,F2.8を積極的に使おうとします。

 まあ,本来の姿に戻っただけという気もしますが,F4に張り付くという特殊性故に,これを便利に使っていたユーザーは,今回のファームウェアでは困ることになりそうです。

 で,2つのモードですが,確かに線図を見ていれば違いは明らかです。しかし,実際にいろいろな明るさの状況で試して見ても,あまり大きな違いを実感できません。

 結局の所,シャッター速度とISO感度を少しで稼ぎたい暗い場所でもF4を使おうしたことに従来のプログラムは問題をはらんでいたわけですし,これが解消されてしまえば,特にどちらのモードでも大差はないんじゃないかと思います。

 私の感想では,僅かとは言えF2.8とF4の画質の違いは明らかにあって,十分な明るさを確保できているのであれば,F4を使った方が好ましい写真が撮れると思っていますから,ノーマルモードでいいんじゃないかと思います。その点で言えば,従来のF4張り付きモードも残しておいて欲しかったかなと思います。わがままですかね。


・クロップモードの追加

 1600万画素,APS-Cという大型高精細のセンサを持つGRには,通常時の28mm相当に加えて,クロップをつかった35mm相当のモードを持っていました。光学系で複数の画角を持っていれば理想ですが,どうしても性能や大きさにしわ寄せがいきます。

 GRは単焦点レンズを持つこともアイデンティティですから,ここはクロップが正解でしょう。

 このプロップに,47mm相当のモードが追加されました。

 たしかに50mm付近の画角は便利な場合もあり,慣れた人には安心する画角なわけですが,同時にいかに大型高精細のセンサとはいえ,そこまでプロップして大丈夫なんかいな,と私は思いました。

 まだ試写をしていませんが,単純計算をすると500万画素ちょっと,という画素数になります。数年前とは言いませんが,10年くらい前のコンデジなら,こんなもんだったんじゃないでしょうか。

 確かに,優秀なレンズに新しいセンサを持つ優秀なカメラから,トリミングで中央部だけ切り出すわけですから,それなりのメリットはあるでしょう。でも,そうはいっても500万画素では,使い道は限られるじゃないかと思います。

 ちょっとした事には便利かも知れませんが,せっかく28mm相当というレンズなんですから,ぐっと近寄って撮影しないともったいないですね。

 ふと思ったのですが,もしかして,これってSNS連携機能の1つなんじゃないかと。携帯電話やスマートフォンの内蔵カメラも高画素化,高画質化が進んでいますが,それでも500万画素程度の機種はまだまだありますし,実際のところ,そうした画素数でもTwitterやFacebookへのアップロードには十分すぎます。画素数よりは,ぱっと見てわかる高画質こそ重要かもしれず,それには開放から使える優秀なレンズが必要です。

 なら,画素数ではなく,GRであることが大切なわけで,そう考えると47mmクロップは実に面白い機能という事になります。

 それに,500万画素をバカに出来ません。私が昨年まで使っていたD2Hは400万画素でしたが,優秀なカメラでしたし,レンズを選べば6つ切りくらいまではいけたかも知れません。

 ある人が言っていたのですが,こういう機能をつけるなら,いっそのことクロップの段数を増やして,ズームにしちゃったらいいのに,というアイデアがあります。こうなるともうクロップじゃなくて,デジタルズームですよね。

 デジタルズームは画質の低下よりも安価に高倍率ズームを実現するちょっと後ろ向きな方法だったわけですが,クロップがそういうとらえられ方をしていないというのは,ちょっと興味深いところです。

 その点で言えば,手ぶれ補正も,センサ駆動型かレンズ駆動型かではなく,ソフトだけで処理するデジタル式をもっと高級機に導入してもよいのではないかと思います。それこそ,耐久性が求められるプロ用の超高級機に搭載されれば,撮影の幅が広がるような気もしますが・・・まあ,それはないか。


 他にもいろいろ変更点はありますが,印象に残った機能はこの2つです。シャッター速度が上がったことや,高感度行きでのノイズリダクションが強化された話は,実際に使ってみて実感できるかどうかにかかっています。今評価することは避けたいと思います。

 そうそう,まだアップデートをされていない方に,設定はリセットされないようです。もちろん,私のGRがたまたまそうだったというだけの話かも知れませんから,設定が消えても怒らないで下さいね。

GR雑感~そろそろ見えてくる残念な点

 一眼レフなみの大型・高感度なセンサを搭載し,一眼レフに迫る高性能なレンズを搭載したGR。小さく持ちやすいサイズに軽快なレスポンスも相まって,ぱっと手に取ることが増えました。

 撮影後すぐの,LCDでの確認では,その高画質っぷりに満足していたのですが,これをPCで見ればモアレが目立ち,それまで満点だったGRの評価が少し落ちています。

 そして昨日,D800と同じようなワークフローで印刷まで行ってみて,なかなか思い通りにはならないことを,強く感じました。

 そんなわけで,そろそろ新婚の夢のような時間も終わり,冷静に現実が見えてきたGRについて,思った事です。

(1)高感度特性

 D800よりも画素ピッチが大きい割には,D800よりも高感度特性は低いです。私は高感度特性を,ノイズが出始める感度,ノイズをLightroom4で除去して実用レベルに出来る感度,コントラストの低下が実用レベルに出来る感度,の3つで捉えています。

 GRの場合,まずISO3200は実用になりません。ISO400までがノイズについて問題のない感度,ISO1600までがノイズ除去可能な感度という感じです。コントラストの低下については,ISO3200が思った以上に悪く,ISO2000くらいまでかなと思っています。

 最高感度であるISO25600は,もうまったく使い物になりません。こんな感度の設定を設けた事がおかしいと思うくらい,全く駄目です。

 D800の場合,ISO800まではまず問題なく,ISO3200までなら除去が可能です。ISO25600は確かに実用レベルにはなりませんが,「ISO25600ですよ」と注釈をつければ「ほほー」というリアクションがかえってくる程度の画像が得られます。

 コントラストについても,ISO3200までは問題がありません。ですので,D800ではISO感度は3200まで自動で上がるように設定しています。

 同じような感覚でGRもISO3200まで自動にしたのですが,結果としてISO2000以降の写真は,まるでコンパクトデジカメで撮ったかのような画像になってしまいました。

 ノイズの量はもちろんですが,コントラストの低下,くすんだ色,眠い画像と,高感度特性は,この頃のデジカメにしては「悪い」という印象を持ちました。


(2)プログラム線図の問題

 プログラムモードを使っていると分かるのですが,出来るだけ絞りをF4.0にしようと頑張るのです。高感度特性が悪いくせに,簡単にISO感度を引っ張り上げてF4.0にしようとするので,最終的な画質にがっかりすることが多いです。

 室内撮影においてはこういう問題は結構深刻です。レンズはとても優秀で,F4.0が最高性能であることは分かりますが,これがF2.8になってもそんなに悪くはなりません。

 しかし,ISO400がISO800になると,これはもうかなり画質が悪化します。ここはISO400のままで,絞りをF2.8にするのが正しい選択だと思うのですが,GRのプログラム線図はそうなっていません。

 また,いかに28mm相当のレンズであっても,シャッター速度を落とすと被写体ブレが無視できません。1/15秒くらいが限度かなと思いますから,本来なら出来るだけISO感度は低く保ち,まず絞りをF2.8に開け,次にシャッター速度を1/15秒くらいまで落として,それからISO感度を変えるという仕組みにして欲しかったです。


(3)AFの問題

 プログラム線図が気に入らないなら,Aモードで撮影すれば済むだけのことではあるのですが,オートモード(緑色のカメラのマークです)でしか,顔認識AFが動作しないんですね。顔認識AFは,人の写真を撮るときには,いちいちAFポイントを動かさなくてもよいので便利なのですが,これが使えるのは結果的にプログラムモードだけになってしまうんです。

 AFポイントをもっと素早く,確実に動かせれば良いのですが,これがD800なんかとは明らかに違う弱点なんだと思います。顔認識に頼らなくても済むAフレキシブルなFか,どんなモードでも利用出来る顔認識AFか,どちらかが欲しいです。


(4)ホワイトバランス

 ホワイトバランスは,悪くはないのですが,期待していたほどではありませんでした。

 D800の場合,余程の事がない限り外しませんし,出てきた結果は大変好ましいことが多いです。オートホワイトバランスを全く信用していなかった頃は,太陽光に固定して現像時に合わせ直しをするのが普通だったのですが,D800になってからはオートを信用し,手作業によるホワイトバランスはほとんど行っていません。

 やってみるとこれが大変楽なんです。それなりの数を処理すると,いちいちグレーの部分を探してホワイトバランスを取るのはなかなか大変ですし,RAWと同時記録にしたJPEGをそのままプレビューとして使えますから,とても便利です。

 ですが,GRは案外ホワイトバランスを外しがちです。大きく外すと言うより,あまり綺麗な色に合わせてくれないという「ちょっと残念」という感じです。昼頃なら綺麗な肌色が出ていても,朝の光では青っぽい色になるんですが,顔色悪いな,と思うくらいにずれているので,オートホワイトバランスを信用出来ないなと思いました。

 D800だとこういう場合でも綺麗に合わせてくれます。朝の光であることが分かる程度にあわせてくれるので,雰囲気を維持しつつ,自然な顔色にしてくれるので助かります。

(5)ダイナミックレンジ

 D800は元々ダイナミックレンジも広く,それなりに粘ってくれるのですが,GRはそこは極普通です。RAWの場合,D800は14bit,GRは(非公式ですが)12bitです。

 この2bitの差は,結構大きいと私は見ていて,画像処理をしたときに潰れた影から画像が浮き出てくる感動,白く飛んだところからうっすら画像が見えてくる感激が,これほどのものとは思っていませんでした。

 RAWが12bitだから,という理由だけではなく,センサのダイナミックレンズそのものが一番大きな理由だと思いますが,GRのダイナミックレンジは,やはりそれほどのものではありませんでした。

 いや,正しい露出で撮影すればいいんですよ。露出補正をちゃんと面倒くさがらずにやれば,それで済む場合がほとんどですが,速写性に優れたGRですから,ついつい補正をしないで,AEを信じることも多いのです。

 しかし,それではやっぱり外してしまうことも多いです。

 GRで,逆光の人物を撮影しました。この段階ですでに背景は白く飛んでしまっていたのですが,顔がやや暗かったので,1/3ほど持ち上げて現像しました。

 印刷をしてがっかりしたのは,まるで,人物が下手なコラージュのように,白い背景に立体感を失って張り付いていたことでした。

 思うに,補正を賭けたときに,立体感を作る,奥行き方向に出るグラデーションが白く飛んでしまって,立体感がなくなってしまったんではないかと。D800ではさすがにこういう不自然な結果になることはありませんでしたので,横着をしないで,露出はきちんと管理しようと思いました。


(6)コントラスト

 はまったときの画像は確かに一眼レフを凌駕します。しかし,その範囲が結構狭い印象で,適正露出から外れたときにリカバー出来る範囲が案外狭いです。

 コントラストの低下は結構あるような印象で,露出で横着をすると,どうもメリハリのある画像が得られません。レンズのポテンシャルの高さは折り紙付きですし,これはセンサ(と画像処理)の性能によるものと考えるしかないでしょう。

 最近思うのですが,携帯電話搭載のカメラがいかに高性能化しても,やっぱりなんだか携帯くさいな,と思う原因は,コントラストにあるように感じるのです。無理にコントラストをあげて鮮やかにすると,今度は少ない情報を無理に加工するので,画像の破綻が起こります。

 情報量の多さは一眼レフにはかないません。同じような傾向はコンパクトデジカメにもあると感じていて,特にサイズの小さいセンサのカメラほど,こうした傾向が強いと思っています。PENTAX Qがいかに面白いカメラであっても,やはりコンデジの域を抜けられないのは,その辺にあるような気がします。

 GRの場合,なんといってもセンサがAPS-Cですから,かなり余裕があると思っていました。しかし,APS-Cの一眼レフに比べても,条件の悪化に対するコントラストの低下が,ちょっと大きいなあという印象を持っています。

 ですから,やっぱり露出は丁寧にやらないといけないです。


 てな具合です。

 いかに,D800がラフに扱えて,後でリカバーの出来るカメラであるかを強く感じました。GRはそういう意味では普通のカメラで,特に悪いわけではありません。D800が良すぎるんでしょう。

 あるいは,GRは28mm相当という画角を生かしたスナップを志向したカメラであり,人物撮影にはあまり向いていないのかもしれません。これは良し悪しと言うより,個性ですね。GRでサッカーの写真を撮るのはかなり不利なわけで,それと同じ話です。

 でも,願わくは14bitのRAWであって欲しかったなあと思います。14bitのRAWが持つ情報量の多さには,感覚的な面白さに加えて技術的な興味も尽きません。実用面でもレタッチ耐性が格段に向上することは間違いないわけですから,やっぱりGRくらいマニアックなカメラなら,14bitであって欲しかったと思います。

 

GRのローパスレスは本当に正しい選択だったのか

 GRが手もとに来てしばらくたちました。レスポンスの良さ,画像の素晴らしさ,なによりレンズの素性の良さが,すっと手に馴染むサイズに詰め込まれているGRは,使っていて楽しいカメラです。一眼レフのストイックな感じとは違う,肩の力を抜いて向き合える面白さがあります。

 出てくる画像は,さすがにD800レベルとは言いませんが,K10Dのそれを簡単に越えるものであり,もはや一眼レフを選ぶ必要性さえ霞んでしまったと思うほどです。

 ですので,本気で紙に焼いて楽しむ事を前提とした,RAWからLightroom4で現像して印刷というワークフローに乗せたいと思っていますが,GRはまだLightroomで正式対応になっていません。

 先日公開されたAdobeCameraRaw8.1RC(ACR8.1RC)からGRのプロファイルを抜き出してLightroom4で使ってみましたが,撮って出しのJPEGとはちょっと色味に違いがあるとはいえ,埋め込みのプロファイルよりはずっと自然で好ましい結果になっています。正式対応までは,これでいこうと思います。

 あとはノイズです。ビックリした事が2つあり,1つはISO3200での使い物にならないほどのノイズの多さ,もう1つはノイズリダクションがかかっているはずの撮って出しのJPEGに無視できない程のノイズが乗っていることと,処理の不自然さです。

 特にJPEGのノイズはかなり残念で,暗部のノイズは縮小してもわかるレベルですし,等倍で確認すればノイズリダクションの不自然さもよく分かります。もはやこれだけでも撮って出しのJPEGは使い物にならないと思うくらいです。

 一方のRAWは,当然ノイズまみれです。しかしLightroom4のノイズリダクションを使えば,かなり自然にノイズを目立たなく出来ます。Lightroomはノイズ除去に定評がありますが,残ったノイズがかつての高感度フィルムのような自然な残りかたをするので,ノイズリダクションを必要最小限にすることができます。

 さて,GRをLightroomで処理する流れを確認している最中,撮影した遠景の柵に,ピンクと紫の偽色がバンバン出ていることに気が付きました。

 それまで,GRがローパスレスであることをほとんど意識しないでいたのですが,さすがにこれを見せられると,無視するわけにはいきません。

 これがRAWからLightroom4で現像して,JPEGにしたあと切り出したものです。切り出しのあと300%の拡大を行っています。偽色が派手に出ています。ローパスフィルタがないことで発生したモアレです。

ファイル 640-1.jpg

 次に撮って出しのJEPGから同じ部分を等倍で切り出したものです。RAWに比べるともやっとしていて,モアレは低減している分,解像度は低下しています。

ファイル 640-2.jpg

 そしてRAWをLightroom4で現像,モアレ低減を行ったあとJPEGにしたものです。解像度を保ったままモアレをほぼ消し去っています。

ファイル 640-3.jpg

 ローパスレスの影響は,周期的に繰り返される模様によって顕著になると思い込んでいた私は,こんな間隔の広い柵でも,偽色に気を遣って撮影しないといけなくなることに,ちょっと気が重くなりました。

 1600万画素くらいでローパスレスにする必要などない,が私の持論です。サンプリング周波数の半分のところから折り返して発生する折り返しノイズが混じってしまうと,もうどんなフィルタをつかっても完全には除去できません。だから,サンプリング周波数の半分より上の情報は,ローパスフィルタでカットしないといけません。

 ローパスレスのデジカメで発生するモアレや偽色は,要するにこの折り返しノイズですから,これを除去する方法はありません。目立たなくする方法はありますが,それはオリジナルの情報にも大きな影響を与えてしまいます。

 センサの画素ピッチが大きく,レンズの解像度が高い場合,折り返しノイズが発生するような高周波成分がセンサに届いてしまいます。だから,折り返しノイズが発生しないようにするには,ローパスフィルタで高域をカットするか,あるいはセンサの画素ピッチをもっと小さくしてサンプリング周波数をもっと高いところに持って行くしか,ありません。

 そもそも,センサの解像度が高くないのに,ローパスレスにしたところで,センサが吐き出す情報量そのものが向上するはずがありません。確かに,ローパスフィルタの特性は急峻ではないため,通過されるべき帯域の情報までカットされることがあり,それが解像感として知覚されることは否定しません。

 しかし,そうした解像感に何の意味があるかなと,私は思います。その解像感よりは,一度混じってしまうと,理論的に除去できない折り返しノイズを混入前に取り除く方が,はるかにメリットがあると思います。

 案外見落としがちなのは,ローパスフィルタにもいろいろあるということです。安物よりは高価なものの方が切れ味も良く,他の帯域の情報に影響を与えません。特性の良くないローパスフィルタは切れ味も悪いし,通過させた情報にも影響を与えるわけですから,それくらいならローパスレスにした方が良い場合もあるでしょう。

 オーディオで例えるなら,画像の拡大というは,高い周波数の音を低い周波数に変換して再生するようなもの,わかりやすく言えばテープをゆっくり回してスロー再生することです。スロー再生をして「高域が出ていない」と文句を言う人がいますか?あるいは,スロー再生のために高域成分を入れておこうと思う人がいますか?

 我々は普段,スロー再生で音楽を愉しみませんから,CDなどのデジタルオーディオでは必ず存在するローパスフィルタによる,高域の落ち方にあまり神経質にはなりません。

 デジカメの画像の場合,安易に画像の拡大ができたりするので,本来気にならない高域の落ち方が,気になる周波数帯域に出てくるので問題にされますが,やっぱり普段の写真の楽しみ方で考えると,そんなに細かい部分は見えないものです。

 ただし,オーディオにも写真にも共通することは,拡大しないと違いが分からないわけでは決してなく,「なんとなく透明感があるなあ」という感覚的なところで,その微妙な違いに気が付くことがあるとは思います。これは個人差もあるでしょうね。

 でも,それは高級なローパスフィルタに優れた記録装置,再生装置を使って実現されるべきものであり,安易にローパスフィルタを外してしまうことは,誤ったアプローチだと思います。5万円のCDプレイヤーのローパスフィルタを外してカットしても,決して100万円のCDプレイヤーにはならないのです。

 話が随分逸れてしまいました。GRの話に戻しましょう。

 GRで唯一気に入らないのが,このローパスレスです。1600万画素くらいでローパスレスにされてしまうと,特殊な条件でなくてもバンバン折り返しノイズが発生します。

 最近ローパスレスが主流になりつつあり,またその独特の解像感には人気が集まっていますが,こういう弊害があることをきちんと理解していない人も多いように思います。

 上の例のように,普通に撮影してこれだけ簡単に偽色が出るのですから,レンズの性能に対してセンサの性能が低い,つまりサンプリング周波数が低すぎるという事です。ズルをしたら駄目なのです。解像度が欲しければ,センサの解像度を上げるしか方法はないのです。

 GRくらいの性能のレンズなら,1600万画素ではローパスフィルタは必要です。2400万画素くらいならいらないかも知れませんが,撮影者の工夫では発生を抑えられない,つまり撮影者が折り返しノイズを発生させるような高周波成分が入ってこないように工夫するには,APS-Cで1600万画素のセンサでは難しすぎるのです。

 RAWで撮影すれば,現像ソフトでモアレを消すことが出来るという人もいますが,消しているのではありません。目立たないように加工しているだけです。何度も言うように,一度混入した折り返しノイズは絶対に除去できません。

 折り返しノイズが混入した帯域をばっさりオリジナルごとカットし,その部分にあった情報を演算ででっちあげることで再現しているのかもしれませんし,そこは各社のノウハウなんだと思いますが,いずれにせよオリジナルを保って欲しい情報への影響は絶対に避けられません。つまり,モアレを消す代わりに,本来存在するべき大事な情報まで失われているのです。

 先程,Lightroom4でお見せしたモアレ低減は,確かに効果絶大だったのですが,実は他の領域への影響が結構あります。この部分は全体に彩度が低いので影響が目立ちませんが,他の場所でかけると,本来ならグレーの部分に別の部分の色が出てきたり,彩度が変わったりして,実用にならないレベルになります。だからこそ,Lightroom4では効果の出る範囲を指定しなくてはいけないんでしょうね。

 D800が使いやすいのは,ローパスフィルタがあるからだと思います。D800Eにしないで良かったなあとつくづく思うのは,重要ではない高域情報のために,重要な帯域に取り返しの付かない傷をつけることが正しい方法で回避されているからです。GRも同じようなポリシーで作って欲しかったと心底思います。

 どうやら,名機K-5の後継であるK-5IIとK-5IIsにおいてでも,K-5IIsのモアレの出方は結構派手なようで,その解像感と引き替えに,簡単に出てしまうモアレに,手を焼いている人が多いような感じです。

 かといってK-5IIが売れているかといえばそうではなく,売れているのはK-5IIsのようです。しかし,K-5程度の画素数でローパスレスにした理由が私にはわかりません。

 メーカーは,売れるものを作るのが仕事です。ローパスレスが売れるなら,多少の弊害には目を瞑って,ローパスレスを作って売ります。結果はユーザーの自己責任です。

 極端な例ですが,ある自動車の最高時速が150km/h,別のメーカーが180km/hで,後者の車の方がよく売れ,その理由が最高速度にあったとしましょう。するとライバルメーカーは次に190km/hに,別のメーカーは200km/hにと,最高速度競争が始まるでしょう。

 そしてその結果,自動車の危険性が高まり,事故の件数も事故の程度も大きくなっていったとしても,それは運転者の責任になります。

 でも一寸待って下さい。日本では,最高速度が150km/hでも200km/hでも,その違いを直接体験することは,出来ないはずです。不必要なスペックに踊らされた無知な消費者が,最終的に損害を被るということに気付いて欲しいです。我々は賢くあらねばなりません。

 自動車の例では,最高速度の規制と,エンジンの馬力の規制を,自動車メーカーが自主規制として制定しました。速度や馬力以外の性能も向上し,安全性も格段に上がった今では自主規制はないようですが,速度や馬力の向上に安全性がついて行けなかった時代には,そういう自主規制でユーザーが守られたこともあったのです。これもまたメーカーの責任です。

 同じ100km/hで走行するのに,最高速度が200km/hの自動車と,120km/hの自動車を比べれば,明らかに200km/hの方が余裕があって,快適で安全でしょう。でもそれは200km/hの最高速度のおかげではなく,それにふさわしい車体やブレーキを持っているからです。

 同様に,高解像度は,安易に外したローパスフィルタで得られるのではなく,レンズ,センサ,ボディの精度,画像処理エンジンなど,総合的な性能で得られるものです。

 GRの失敗は,安易なローパスレスに走ったことだと,思えてなりません。

デジタルカメラ列伝 その4~Nikon D800

・D800(Nikon,2012年)

 ニコンのフルサイズ初号機にして,その高感度特性から「肉眼では見えない物を見る道具」として,新しい撮影領域にフォトグラファーを解き放った,名機D3。そしてその血統を受け継ぐ弟,D700。デジタル一眼レフとしての完成度の高さ,大きさと性能の卓越したバランス,そしてこなれた価格でプロ・アマチュアを問わず,D700を絶賛する声は止むことがない。

 当然,その後継には大きな期待がかかる。D3にはD4という正統後継者が間違いなく登場し,苛烈なるロンドンオリンピックを闘うことになる。ならば当然,D700の後継機はD4の弟であろうと,誰もがそう考えていた。

 一方,タイを襲った洪水は,主力工場を彼の地に持つニコンにも想像以上の被害を与えた。新製品発表のスケジュールも大きくずれ,D700は予定通りその製品寿命を全うしたが,その後継機の発表は2012年にずれ込み,主力機不在の「空白期間」に,期待と不安が多くの噂を世界中にまき散らした。

 ジグソーパズルのピースが徐々に埋まっていくように,時間が経つにつれてD700の後継機の姿が少しずつ浮かび上がる。

 本当にこれがD700の後継機?

 未完成のパズルは,そこに前代未聞のデジタル一眼レフの輪郭を,浮かび上がらせていた。

 3630万画素という驚異的な画素数。名前はD800,というらしい。しかも,ローパスフィルタを持たないモデルが別に用意されるというのだ。

 くだらない噂だと一笑に付すフォトグラファーが多かったのは,D700の後継に求めるものが,画素数ではなかったことを意味していた。むしろ高画素化で失う物こそが,D700の後継に,まさに求められるものであったからだ。

 果たして,2012年2月,噂は現実になった。

 しかし,不安は杞憂に終わった。

 そして,絶賛に変わってゆく。

 前代未聞の3630万画素は,従来のデジタル一眼レフを越えたばかりか,フラグシップであるD4にすら届かない高みである。絶対なるこの個性をして,誰がこんな高画素を欲しがるのか,という批判を繰り出す者は,「中判の画質を狙っています」という生みの親の心に触れて,沈黙せざるを得なかった。

 高感度特性が犠牲になる,という批判もまた正しい物に思われた。それほどD3やD700の切り開いた世界は,全く違う象限に存在したのである。高画素化と感度は相反する要素であり,しかるに我々は高画素化を求めているのではない,と彼らは叫び,自らがたどり着いた,その素晴らしい世界を失う事に,心底恐れを抱いた。

 常用感度ISO6400,拡張感度ISO25600。この数字に見覚えがある人ほど,恐れは期待に変わってゆく。そう,名機D3と同じ。D800の否定はすなわち,D3の否定であり,自らが住む世界への肯定はすなわち,D800への肯定である。

 だが,ノイズにまみれた高感度など存在の価値はないと,口の悪い者はなおそう言った。

 しかしそこにあったのは,センサの高いポテンシャルとこれを最大限に引き出す画像処理が織りなす,新しい地平であった。

 高画素と高感度の両立こそ「肉眼で見えない物を見る道具」の正常進化でなくて,なんであるというのか。どちらか一方だけを高めたところで,その先にあるのは所詮は一歩前に過ぎないことに,ようやく皆が気付いた。

 それでも批判の声は止まない。高画素になればブレが目立つ。

 笑止。

 なぜ,己が技量の低さを顧みない声に,いかなる説得力も存在しないことに気が付かないか!

 レンズの性能が追いつかない。高画素なんて無駄。

 笑止。

 なぜ,これまで捨てざるを得なかった,レンズの個性をも飲み込む「力」であることに気が付かないか!50年前のMicroNikkorは,D800によって往年の切れ味を再び我々の眼前に突きつけたではないか!

 連写速度が足りない。

 三度笑止。

 連写速度というスペックの本質は,高速連写に必要な筋肉とこれに耐えうる骨格を持つことであり,高速なレスポンスを手に入れたかどうか,つまり1秒間に何コマ撮影出来るかではなく,1コマをどれくらい短い時間で撮影出来るかにある。6コマ/秒のD800が持つ体躯は,アスリートのそれである!

 そんなことより,3630万画素を支える,ずば抜けた基本スペックを見よ。

 20万回の寿命を誇るシャッターユニット,D4譲りの51点AF,一昔前のデジカメと同じ91万画素のRGBセンサによる高精度AE,野外での撮影を躊躇しない防塵防滴,プロ機の証ともいえるファインダー視野率約100%。

 作例をみた我々は,さらに驚愕する。拡大をする,拡大をする,さらに拡大をする。

 しかし,拡大をする度に,新しい情報がせり出してくる。鬱蒼とした森を表現した写真が内包する,それを構成するコケの一本一本までを取り込む緻密さに畏怖を抱き,震えが止まらない。

 D800は,過去の何にも似ていない,孤高のカメラとなった。D800が切り開く世界は,まだ人類が到達しない新しい世界であり,あらゆるものとの比較はナンセンスである。

 D800にとって不幸だったのは,それが安価であることだ。孤高のカメラは,いつの時代も常に使い手を選ぶ。こんなカメラが,品薄で入手困難など,あってはならない。

 だが,おそらく我々は後生に胸を張って言えるであろう。我々の日々の営みはそれまでとは比べものにならない情報量をもって,記録されるようになる。それはすなわち,D800があまねく広まることで現実になる,人類の夢であると。

デジタルカメラ列伝 その3~PENTAX K10D

・K10D(PENTAX,2006年)

 King of SLR ---

 かつて,戦争に敗れ貧しく疲弊した東の国に,アサヒフレックスと名付けられたカメラが生まれた。彼の国が世界のカメラを席巻する,その種が蒔かれた瞬間である。

 日本で初めての一眼レフを生んだ小さな工場は,やがて創業者が「一眼レフの王たれ」と夢を託した,ASAHI PENTAX Kを誕生させる。ドイツの名門の血を引くマウントを引き継ぎ,忠誠を誓う宰相Takumarも,もちろんそばにひかえている。

 そう,レンジファインダーを備えたカメラが,すべての頂点だった時代の話である。

 次なる王は,長く続いたドイツ生まれのマウントから脱却し,新しいマウントを備えた次世代カメラとして生まれた。ASAHI PENTAX K2と名付けられたその一眼レフには,当時考え得るあらゆる可能性を盛り込んだマウントが備えられていた。

 高性能レンズの設計を容易にする大口径,連動ピンを内部に持つ信頼性,プラクチカマウントと同じフランジバックを引き継いで,簡単なマウントアダプタでも完璧な精度が出る巧妙な仕組み。そして門外不出であるはずの仕様の公開。

 最新の高性能レンズと,過去のレンズ資産との共存。全てのレンズが跪く。誇り高き王にふさわしく,そのマウントはKマウントを名乗った。

 かように,ペンタックスにとって,Kとは,特別である。

 Kとは,これすなわち王である。しかるに妥協があってはならない。

 6x7や6x4.5といった中判フォーマットの最高級機でさえ,Kを名乗る事は許されなかった。この事実は,重い。

 時は流れ,旭光学はペンタックスになり,ASAHI PENTAXはPETAXになった。しかしペンタックスはあえいでいた。銀塩時代から続く不振と,高度化する技術に振り回される。先頭集団からの遅れは開き,買収の噂は絶えず,事業撤退の危機と隣り合わせの状況に,玉座の主がいないまま,ペンタックスは疲弊してゆく。

 そんな中生まれた待望のデジタル一眼レフ*istDは,高い評価を受けながらも,その凡庸さゆえ,会社を救いはしなかった。続く機種にも,迷いがある。

 まだだ,まだKを名乗ってはいけない。

 満を持して誕生した三人目の王は,K10Dと言った。

 防塵防滴という鎧をLXから譲り受けた新しき王K10Dは,伝統の小型軽量のボディを纏って我々の眼前に姿を現し,玉座に着いた。

 王者のマウントに忠誠を誓うあまたのレンズに,K10Dは1000万画素の高画質と,センサ駆動式手ぶれ補正を分け隔てなく与えた。かつて祖父が苦楽を共にしたTakumarにも,王はねぎらいの言葉と共にその手をさしのべることを厭わず,のみならず,すでに没落したドイツの名門に生まれたカビだらけの老兵にさえ,最新技術の恩恵を与え賜うた。

 ペンタックスのAFレンズには,古いものでもMTFのデータが書き込まれている。今すぐ役に立つ事はなくとも,いずれきっと役に立つときが来る,そう信じて,生みの親たちはMTFのデータ密かに埋め込んだ。

 Z-1とMZ-Sから受け継いだMTF優先プログラムAEによって,眠り続けたMTFデータは覚醒しその真価を発動させた。K10Dを通して設計者のメッセージを受けとった我々は,そのレンズの真の姿に触れる。

 ペンタックスの王は,常にレンズと共にある。誇らしげに,瞳に王冠を奢った御旗を掲げて。

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