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カテゴリー「カメラに関する濃いはなし」の検索結果は以下のとおりです。

デジタルカメラ列伝 その2~SIGMA DP1s

・DP1s(SIGMA,2009年)

 レンズメーカーとしての名声が,もはや揺るぎないものとなったシグマは,しかしながら,焦っていた。

 自分達の手塩にかけたレンズ達は,本当にその実力を出し切っているのか。画質を決めるボディが,あるいはセンサが,自分達の誇りであるレンズの真価に邪魔をしているのではないか。

 レンズ屋ふぜいがなにを言うか!ボディを作り,マウントを持つ大手カメラメーカーの嘲笑が聞こえる。

 シグマは考えていた。今のCCDにせよ,CMOSセンサにせよ,足りない情報を計算で補完している以上,それはウソである。ウソは偽色として視覚化され,しかもウソをウソで塗り固めるために,せっかくレンズが集めた情報を削るローパスフィルタまで使っている。

 こんなバカな話はない。レンズメーカーの誇りにかけて,なんとかしなければ。

 シグマは,長い旅に出る。まず銀塩時代から酷評されつつも続けていたオリジナルのボディをデジタル一眼レフとして新開発。搭載するセンサに,FoveonX3の採用を決定する。

 FoveonX3は三層構造をもつ,全ての色をピクセル単位で取り込む事の出来る希有なセンサである。ウソがない,それがすべてだった。やがてシグマは,このセンサを開発するベンチャー企業を子会社にしてまで,FoveonX3の「正直さ」に惚れ込んでいく。

 こうして誕生したSDシリーズは,唯一無二の画像を吐き出すカメラとして,その名が少しずつ知られてゆく。

 そしてシグマは考えた。このセンサを使えば,究極のコンパクトデジカメが誕生するのではないか。他社がそのレンズ設計で躊躇するAPS-Cサイズのコンパクトデジカメは,自分達だからこそ到達出来る頂ではないのか。

 無骨で飾り気のない金属ボディ,あえて明るさを欲張らずに追い込んだ性能で一眼レフも真っ青な単焦点広角レンズ,そしてウソをつかないFoveonX3。役者は揃った。

 しかしシグマは自らの見通しの甘さに,愕然とする。まともな画が出ない。

 やってもやっても,これだけの素質を持つカメラにふさわしい画像が出てこない。死屍累々,もはや場当たり的な対策でしのげるレベルの話ではないと判断した時,シグマは開発中止ではなく,もう1つの険しい道を選んだ。

 作り直す。

 大幅な発売延期の結果,ようやく我々の目に前に姿を表した究極のコンパクトデジカメ,DP1。ホワイトバランスは外れ,AFは遅く,あげくに合焦しない。露出も外しがちで,2枚目の撮影まで延々待たされる。電池も早く切れて,カメラとしては最悪といってもいい。

 しかし,出てくる画に,息を呑む。

 不自然な色の強調や過度なシャープネスなど,画像そのものは幼稚であっても,そのポテンシャルの高さに気付いた人は,まるで秘密の金鉱を掘り当てた気分がした。RAWの深い淵に静かに潜む,膨大な情報。今目の前にある画像を構成しているのは,そのほんの一部に過ぎない。

 あふれんばかりの情報にどれだけ手が届くのか,狂信者はその挑戦を,嬉々として続ける。

 被写体を選び,構図を決め,光を読み,さらに一歩前に踏み出して,シャッターを切る。渾身のRAWデータを納得ゆくまで現像し続ける。暗部に隠れた輪郭が浮かび上がり,声を上げる。1枚のJPEGを得るのに,いったい何時間かかるのか。すべては,この戦いに勝利するため。

 DPシリーズは,28mm相当のDP1シリーズと41mm相当のDP2シリーズが誕生し,それぞれが初代,s,xと,着実に進化している。

 そして志半ばで故人となったFoveonX3の生みの親からその名をもらって,4600万画素相当の新世代センサを搭載したDP1Merrill,DP2Merrillが,今,圧倒的な高画質で高い評価を得ている。

 しかし,DPシリーズを愛する狂信者にとっては,自らがRAWにたゆたう豊かな情報を引き出さねばならない事実に,変化はない。

 手伝ってくれとは言わない,むしろ邪魔をするな。

 果たして,それは誇り高きレンズメーカー,シグマ自身の声ではなかったか。

デジタルカメラ列伝 その1~Nikon D2H

 私はカメラが好きですが,デジタルカメラの時代になってから,機材の陳腐化が頭の痛い問題になってきました。

 撮像機構がリムーバブルで,規格に従って作られており,最新技術で改良が続き,その結果50年前のカメラでも最新の画像が手に入るという銀塩カメラの世界は,私にはとても居心地の良いものでした。

 もちろんデメリットもあり,これを根本から解決したのがデジタルカメラなわけですが,失ったものも大きく,あくまで趣味の世界の贅沢品として,銀塩カメラが残ってくれたらいいなあと思っています。

 そうはいっても,デジタルカメラは便利です。それに,最新の技術はもう銀塩カメラではなく,デジタルカメラのために開発されます。

 こうみえて私はデジタルカメラを手にしたのは案外早く,最初のデジカメはコダックにもOEMで供給された,チノンのES-1000で,確か1996年の事でした。

 しかし,最近は新しいものを買っていません。数年前のものをそのまま,大事に使っています。画質はもう私の要求に達しましたし,慣れて馴染んだカメラだけに,買い換えても今以上の写真が撮れる気がしないのです。

 改めて自分の愛機を並べてみると,変な機種ばかりです。僭越ながら私の愛機を紹介します。

 第1回目は,NikonのD2Hです。


・D2H(Nikon,2003年)

 「これがデジタル時代の到来なのか - 」

 それまで特殊な装置と考えられていたデジタル一眼レフは,ニコンが放ったD1シリーズによって一気にプロの世界を席巻した。保守的でありながらも,自らのメリットになる変革にはいつも貪欲な彼らの目には,確実に次の時代が見えていた。

 フィルムの時代が終わる。次のオリンピックは,全てがデジタルで残される事になるだろう。

 こうして初代皇帝D1が築いた王朝を継承し,世界中のフォトグラファーの忠誠と尊敬の独占を宿命付けられた正統後継者,D2Hが誕生する。

 最速を極めたレリーズタイムラグ,秒間8コマを支える超高速なレスポンス,新開発のセンサ「LBCAST」,デジタル一眼レフ専用設計のメカ,低消費電力化とリチウムイオン電池の採用が可能にした連続動作時間の長さ。

 しかし,時が経つにつれ,賞賛は沈黙に変わった。
 
 400万画素という当時にあっても見劣りする画素数,ラーメンどんぶりの模様が浮かび上がるといわれた未熟な画像処理,そして特に高感度域でのひどいノイズによって,ハレの舞台であったはずのアテネオリンピックで,永遠のライバルであるキヤノンの前に惨敗する。

 たなびく勝者の軍旗のように,キヤノンの「白いレンズ」がアリーナを埋め尽くす。

 その悪夢のような光景に,ニコンの伝統を信じた者は言葉を失い,ただ立ち尽くすのみ。後に「アテネの悲劇」と語り継がれることとなる。

 やがて多くのプロが,ニコンを捨てた。なぜなら彼らは写真で食わねばならない。ニコンは,彼らを引き留めることは出来なかった。

 D2Hは都を追われた。そしてその個性を深く愛する一部の狂信的アマチュアだけが,細々と使い続けていた。

 だが,D2Hの実力は,彼を愛したアマチュア達によって開花する。

 まるでリバーサルフィルムと錯覚するほどの狭いラチチュードのLBCASTは,的の中心を射貫くがごとく,適正に決めた露出によって,独特の深い色と画素数を超えた解像感ををたたき出す。

 未成熟だった画像処理は,RAWデータをPCで現像することで生まれ変わった。400万画素という画素数はデータサイズが小さく,そのハンドリングの軽さはクリエイターの思考を妨げない。

 切れの良いシャッターは官能的で,一度シャッターを切ると脳内麻薬が吹き出し,快楽におぼれたその体は,次のシャッターレリーズを求め続ける。

 1kgを越える重量を全く感じさせない絶妙なグリップ感は,6時間握りしめても疲れを知らず,闘い終えてカメラを置いては,腕の痛みでその撮影の過酷さを知る。

 やはり,ニコンのフラッグシップである。その血統に偽りはない。

サンヨンの実力

 先日,AF-S300mmF4Dを買ったと書きました。

 もともと,15年ほど前に買ったトキナの100-300mmF4の置き換えを狙ったもので,なにか出番があって購入したものではありません。

 置き換えを狙うというのですから,そこには「性能」というわかりやすい差がなければならず,大枚10万円を工面して手に入れたレンズですから,無理にでもその差を確かめたいと思うのも,これ人情というものです。

 そんなわけで,購入した日に,動作チェックも兼ねて室内で撮影をして,その結果両者の違いに愕然としました。その時の写真をアップしておきたいと思います。


 ややこしいので詳しくは述べませんが,嫁さんのCDラックを撮影しました。先日のオリンピックの開会式にも登場したスーパースターも在籍したバンドの,名作中の名作と称されるアルバムの背中を映したものです。撮影距離は約2mと近いところです。遠距離の場合の画質は未確認です。

 また,夜の室内ですからシャッター速度も遅くなり,当然手ぶれも入っていると思いますが,言うまでもなく手持ちで撮影することは不可能であり,一応台に置いて撮影しています。

 まず,トキナのAT-X100 100-300mmF4です。絞り優先モードでF4開放,シャッター速度は1/30,ISO感度は2800です。元々の画像サイズは3680x2456でJPEG撮って出しです。これを,フォーカスを合わせた部分を中心に356x498で切り出しました。

ファイル 583-1.jpg

 文字がモヤモヤとして,崩れています。解像度の低さだけではなく,コントラストも低くて,ソフトフォーカスレンズのようになっていますね。収差がかなりあるという感じです。解像度が低いので手ぶれも目立ちません。

 次に,AF-S 300mmF4Dです。プログラムモードでF4開放,シャッター速度は1/50秒,ISO感度は3200になっていました。元々の画像サイズは先程と同様,JPEG撮って出しで,切り出した画像のサイズも同様です。

ファイル 583-2.jpg

 一目瞭然です。解像度の高さ,コントラストの高さは,ぱっと見るだけで差が分かります。解像度の高さのせいで,ぶれもはっきりわかります。

 300mmという焦点距離で,これだけの能力を持つレンズですから,10万円という価格はお買い得価格です。いつ値上げされてもおかしくないと思いました。

 F4開放でこれだけ写るのですから,絞ればもっと良くなるでしょう。1段絞っただけでも相当違ってくるはずで,高画質な単焦点レンズのよさが生きてきます。

 少し使って見て思ったのですが,やはりこの手のレンズに,手ぶれ補正はなくてもいいかなあと感じました。確かに静物を撮影するときには便利でしょうが,そういう場合には三脚を使ってじっくり取り組むことになるでしょうし,サンヨンというレンズの持つ機動性を考えると,フィールドで動く物を狙うことも多いはずです。

 相手が動く以上,手ぶれだけ押さえ込んでもだめで,結局シャッター速度を上げて被写体ぶれも押さえないといけなくなります。なら,欲しいものは手ぶれ補正機能ではなく,高感度ということになってきます。

 D800は,それでもISO3200までならほぼ問題なく,ISO6400でも十分使えるカメラです。ISO400で1/125を切るために高価なF2.8のレンズを持ち出すことを考えると,ISO1600にして1/250を,F4で切るようにした方が,ずっと良い条件で撮影出来ます。ISO3200にして1/500,F5.6までくれば,もうなにもいう事はないです。

 そういえば,先日オリンピックの中継を見ていて気が付いたのですが,報道のカメラマンが,三脚を使わなくなっていますね。サンヨンくらいだと思われるレンズを手持ちで構えています。もちろん,相変わらず300mmF2.8を三脚なり一脚でしっかり撮影するシーンもあると思いますが,室内競技を手持ちで狙っていくというのは,やはろ機材の進歩が大きいんだろうなあとつくづく思いました。

 そう考えると,私がサンヨンを買ったのは正解だったと思います。

Ai AF-S Nikkor 300mm F4D が海外からやってきた

 先日,勢い余ってAF-S300mmF4Dを手配した,と書きましたが,手もとに届きました。

 今回の買い物はそこそこ高額だったこともそうですが,買い方が面白いものですので,ちょっとその辺も書いておこうと思います。

 まあ,別に珍しい事でも何でもないんですが・・・海外の業者から個人輸入で購入するという,この手の話としては定番の話題です。

 お願いしたのはこれまた定番のB&H。アメリカ・ニューヨークのカメラ,ビデオ,コンスーマエレクトロニクス機器のお店です。

 ここがアメリカにおける最安値かどうかはわかりませんが,海外発送をしてくれることが大前提で,日本からの買い物客にも丁寧確実,しかも迅速で海の向こうからやってくる商品が注文から僅か3日で届くという韋駄天っぷりで,大変評価が高いお店です。

 ということで,円高が長く続いてお買い得感も高く,数々の実績で名の知れたB&Hを私も一度は使って見たいと思っていたのですが,いくら円高と言っても5000円を超える送料や配達時に立て替えてもらった消費税を支払うことを考えると,あまり安い買い物であるとか,国内との差額が小さなものを買うと,かえって損になります。リスクも高く,その上国内で購入した商品と違って保証やサポートも難しくなる個人輸入は,慎重になる必要があります。

 今回,買うことにしたAF-S300mmF4Dは,国内では12円ちょっとくらいが最安値です。仮に125000円としましょうか。

 で,1ドル80円として,B&Hの売値が1149ドルですから,日本円で91920円です。その差はなんと33000円ですよ。

 うーん,そもそも91920円では,日本では中古だって買えません。

 で,実際にはUPSによる配送料62.23ドルも加わります。この段階で96898円です。これに消費税3%を支払うとすると,約99800円です。10万円として,差額はそれでも25000円です。

 その代わり,この商品はImportedということで,俗に平行輸入品と呼ばれるもので,ニコンが保証しない,非正規な商品です。初期不良があっても,故障があっても,お店の保証を使わないなら,すべて有償の修理扱いです。ここらがリスクですね。

 昨年だと,もう100ドルほど安かったのですが,タイの洪水や品不足もあってか,今はこの値段でした。それでも安いし,不良の少ないニコンのレンズですから,これは買っても良いだろうと踏んだわけです。

 ですが,日本人としてはちょっと複雑な気もしますね。もともとこのレンズは日本製で,日本の通貨「円」で作られて,売られるべきものです。

 10万円の商品を1ドル80円で輸出すれば,1250ドル。これを私が1ドル80円で買えば元の10万円になりますので,差し引きゼロに見えるのですが,ミソは日本人にとって125000円のレンズの値打ちは,アメリカ人にとって1149ドルしかないというところにあります。

 本来なら,日本で125000円のレンズは,アメリカでも1560ドルで売れて欲しいわけですね。でも,アメリカの人はこのレンズに1560ドルの値打ちはないといっていて,それで1149ドルという値段がついて売られているわけです。

 ですから,ニコンは日本国内なら125000円で売れているレンズを,アメリカでは9万円で売らねばならないことになっているのです。当然,ニコンは日本国内で売るよりも,アメリカに輸出した方が少ないお金しか手にできません。

 そして,いろいろな流通を通って,このお店に1149ドルで並びます。やがてそれを私がドルで支払って購入するのです。最終的に日本に住んでいる日本人の私は3万円も安く買えてしまうのですが,誰がこの差額を負担しているのでしょうか・・・そう,多くはニコンが負担しています。

 品物はのべで地球を一周するほど移動し,しかも飛行機や船の燃料を消費して,結局日本に戻ってきます。個人レベルの小さな事ではありますが,無駄なことをやれば儲かるなんて,根本的におかしいですよね。無駄を省かないと,儲かるはずもないのに・・・アメリカ人の価値観に合わせて安くしたレンズを,日本人が買う。本来だったら発生しないアメリカと日本を往復する運送費用と,クレジットカードのドルでの決済手数料が発生し,これが関係する会社を潤します。いわば,不必要な仕事で儲かってしまうのですね。

 いやはや,もう国とか関係ないなあと思います。


 それはともかく,日本時間で7月18日の夜に注文,翌日の朝には出荷されていました。時差があるとは言え早い対応です。

 そして成田に着いたのが7月20日,そしてなんとその日の夕方に届いてしまいました。2日で届いてしまうとは・・・おそるべし。

 UPSと提携するヤマトに,消費税を2700円ほど支払い,私だってしたことがない長い旅をしてやってきた,AF-S300mmF4Dを手に取ります。そうか,こいつがMJQやビリー・ジョエルのニューヨークからやってきたレンズか。

 まず,箱の大きさにびびります。嫁さんにばれないように,目に付かないうちに押し入れに入れてしまおうと思ったのですが,こんなに隠しようがありません。

 箱を開けると,ソフトケースが出てきます。そしてこの中にレンズが収まっています。大さは結構ありますが,重さは想像していたよりも軽い印象です。手で持つにも無理だ,と思うほどのことはありません。十分手持ちは可能でしょう。

 さすがにもともと18万円クラスのレンズです。プラチックが多用されているとはいえ,高級感もありますし,しっかりとした質感が好印象です。

 室内での試写を行いますが,これがもう鳥肌が出るほどの,素晴らしさです。

 F4開放から,びしっと解像感が出ています。色収差も小さく,さすが銘玉と言われているだけあります。トキナの100-300mmF4と比べてみましたが,もう比べるまでもないという感じです。誰の目にも明らかに差があります。もう完全にこの100-300mmには出番はありません。

 最初の間,AFを動かすとキーキーと音がして,やばいな初期不良かと思いましたが,そのうち音が全くしなくなって,スムーズに動くようになりました。ちょうど左手がフォーカスリングの所に来るのですが,AFモータが動作するとき,くくっとトルクがかかるのが今ひとつですが,これくらいは仕方がありませんね。

 そして,なんといっても寄れます。これもトキナの100-300mmF4では勝負にならない高性能さだと言えるでしょう。

  開放から十分シャープで使えるレンズ,色もコントラストも解像度も申し分なく,AFは高速,案外持ちやすく,振り回しやすいし,その上1.4m近くまで寄れる自由度が素晴らしく,まさしくこれは銘玉です。

 野鳥や動物,昆虫といったネイチャー系,飛行機などの飛びもの,自動車や鉄道などの動きものを捉えるのによく使われるレンズですが,なかなかどうして,人を撮影してもよいじゃないですか。ちょっと背景のボケがうるさいなあという印象がありますが,少し絞ってボケを減らしてやれば,解像度も上がってびしっと決まります。

 こういう写りがポートレートに良いかどうかは疑問ですけど,レンズの基本はやはり解像度です。300mmという焦点距離ゆえに,それなりに被写体との距離をとらないといけませんが,それだけのことをしても十分元が取れるほどの,素晴らしい写りです。これは,もっと早くに買っとけば良かったです。

D800に戸惑う私

 D800を買って約1ヶ月,外に持ち出す機会にも恵まれず,室内で細々とシャッターを切る毎日ですが,撮った写真をMacで拡大してみることも,印刷することもなく,Lightroom4で現像を行うことも,時間的に出来ずにいます。

 D800はかなり手に馴染んできましたが,それでもどうも慣れないところがあって,ちょっと困り気味です。前に使っていたD2Hとの比較をついついしてしまいがちですが,結局D2Hというカメラは優秀だったんだなあと,見直すことが多いです。

 D800でDXにクロップするとD7000相当ということで,D2Hの出番はもうないだろうと思っていましたが,二束三文で手放すくらいならサブ機,あるいは高速連写機として,残しておくことにしました。後述しますが,実はサンヨンを手配してしまったので,D800でも楽しみですが,D2Hでもどれくらいすごいか,楽しみなのです。

 
 ということで,D800について気になっていることをいくつか書いてみます。


(1)被写体に奥行きが感じられない

 とても不思議なのですが,被写体が立体に見えないのです。

 例えば円柱を撮ります。真横から撮影しても,D2Hならちゃんとそれが円柱だと分かるのですが,D800だと長方形が写っているように見えます。エッジに微妙な陰影がつかず,奥行き情報が薄まってしまうのではないかと思っています。

 そんな話を同じ時期にD800Eを買った友人に話してみると,被写体の原寸大ポスターを撮影したような感じになる,と言っていました。同じような印象だと聞いて,やはりそうなのか,と思った次第。


(2)のっぺりとした画

 ノイズを無理矢理に潰した「塗り絵」とは全く違うのですが,ザラザラとした荒い粒状感がないせいか,平面的なツルツルとした画という印象です。(1)とも共通するのですが,これが被写体の立体感を損なっているように思います。

 3600万画素という高画素は,フィルムを越えたきめの細やかさを持つわけですが,もしかするとこれを手放しに喜べないのかも,知れません。

 先の友人との話で,私はD2Hの画を「挽き割り納豆のような」と表現しました。D800はすり鉢ですりつぶしたドロドロの納豆です。


(3)色が偏る

 ニコンの傾向だと友人は言っていましたが,ナチュラルで淡泊な傾向はニコンならではだとして,どうも黄色や赤に,やや偏る傾向があるように思います。特に肌色が黄色に偏るために,色の白さが損なわれるように思います。

 これがD2Hだと,ほんのり桜色になった赤ちゃんの白い顔がちゃんと再現されていて,とてもよいのです。確かに,D2Hはニコンのなかでも異端であり,独特の発色はD1同様,好む人は好むという感じです。一時期女子カメラとして中古が注目されたことがありましたが,その時も発色(と安さ)が原因でした。

 やっぱあれですね,CCDとLBCASTとCMOSで,色や画質の傾向って違うものですね。


 ここまでが,出てくる画像についての気になる点です。D2Hでは,出てくる画が想像できますから,思い通りに撮影出来ますし,結果については大きく外すか,思った通りになるかの二択です。

 D800は,出てくる画が全く想像出来ず,「ちょっと違うんだよなあ」という感想ばかりです。高い基本性能と圧倒的な高画素に救われて大きな失敗はない代わりに,自分が見ている「伝えたい」シーンを取り込めずにいて,フラストレーションがたまるのです。


(4)AFがちゃんと動いてくれない

 ハードウェアとしてはこれが最も困っています。

 AF-Sモードでシャッターボタンを半押ししAFを動作させてロック,構図を決めてから全押しするのですが,シャッターが切れません。ほとんど場合,一発で切れてくれないので,シャッターチャンスを逃してばかりです。

 なんでだろうと思ってフォーカスインジケータをよく見てみると,ファインダーで合焦しているように見えた時,丸い合焦マークではなく,前ピンと後ピンのマークが両方点滅する状態でした。つまり,合焦していないのです。

 フォーカス優先の設定なので,フォーカスが合っていないからシャッターが切れないのは当たり前の話ですが,こんなに合焦しないものかと,D800のレンズを外してD2Hに付け替え,同じ条件で試して見ました。

 結果,D2Hはほとんど迷うことなく,合焦マークが点灯し,チャンスを逃すことなくシャッターがどんどん切れます。

 一瞬,前ピンと後ピンのマークが点滅することもありますが,すぐに修正が入ってあっという間に合焦します。AFの性能はD2Hが一番だと確信しました。今や秒間8コマは珍しくないですが,当時のニコンの高速連写に対する意気込みは,並々ならぬものがあったということでしょうね。あらゆる部分が高速連写向けにチューニングされてるわけです。そりゃ快適なはずです。

 友人は,D800のAFは迷う,最後にジジジと前後してから合う傾向がある,と言っていました。確かにそんな感じです。

 AF-Cを使ったり,AF-Sでもレリーズ優先にすればシャッターは切れますが,ほぼピンぼけです。すでに,AFセンサの分解能は,3600万画素のCMOSセンサの分解能を下回っていると言われますし,3600万画素ゆえに,AFの精度を追求した結果,最後の微調整のところで時間がかかってしまうのではないかと,私と友人の意見が一致したのですが,もしこれが本当に事だとしたら,3600万画素という圧倒的な画素数がシャッターチャンスを逃すというカメラとしては致命的な問題を引き起こすということになり,非常に深刻です。

 このこととは違いますが,D800のAFには問題があって,ようやくニコンもその問題を認めたと聞きました。ファームの更新で対応するのか,サービス対応となるのかは分かりませんが,製造過程の調整にミスをしていたということらしいので,面倒な話になるかも知れません。同時にAFの切れ味も改善されるとうれしいのですが・・・


(5)広角に戸惑う

 D2HはAPS-Cですので,広角が苦手なカメラでした。18-200mmの広角端は27mm相当ですが,そのために大きなレンズを持ち出すのも気が進まず,どうしても中望遠域で撮影するのが中心になっていました。

 しかし,D800では普通に28mmなどの広角レンズが使えます。50mmでも,当たり前ですが,本当に50mmです。

 その結果,被写体の周辺にぽっかりと空間が出てしまうことがあります。同じ50mmでもD2Hで使えば75mm相当ですので,ぱっとファインダーを覗き込めば,すでにある程度の構図の整理は済んでいます。同じレンズを使っても,50mmだと被写体は小さく,周辺に余計なものがいっぱい映り込んでいます。距離感と画角の関係を,フルサイズに合わせて再構築しないといけません。

 あれ・・・フィルム時代はみんあフルサイズだったはずなんだけどなあ。


(6)フルサイズに戸惑う

 (5)と同じ理由に帰結しますが,フルサイズゆえに,想像以上に背景がぼけてしまいます。D2Hのつもりでちょうどよいボケ具合だと想像して絞っても,結果は思った以上にぼけています。

 センサのサイズが違うのですから当たり前なのですが,APS-Cではついつい絞りを開けがち(逆の見方をすると,フルサイズのつもりで絞ればぼけにくい)ですから,その癖が染みついてフルサイズを使っていると,どうしても開けすぎてぼけすぎるのです。

 これもフィルム時代には結構鍛えたつもりだったのですが,慣れというのは恐ろしいです。


 ということで,D800を使うのは,ストレスとの闘いです。

 D2Hのつもりで手に取れば,手に取った瞬間の印象が大きく重く,ファインダーを覗けば遠く小さく見えて,AFはなかなか合焦せず,シャッターボタンを押してもシャッターは切れずにチャンスを逃してしまい,しかも出来上がった写真は黄色にかぶり,過剰にぼけた大きな空白が小さな被写体を取り囲んでいる・・・

 気を取り直してD2Hを使うと,思い通りに撮影出来ます。実に快適です。K10Dでも思い通りです。

 こんなに違うものなんですね。

 今さらD800を放棄するわけにもいきません。慣れていくしかないのですが,果たして自分の思い通りになるのは,いつのことか・・・

 ところでところで,最初にサンヨンを手配したと書きました。

 詳しいことは届いてから書きますが,手配したのは現行のサンヨン,AF-S300mmF4Dです。欲しかったのですよ,これ,数年前から。

 10年ほど前に発売された古いレンズですが,その分価格も当時のもので比較的安く,しかしその画質,光学性能は圧倒的,飛びものを撮る人には「これ以外はない」と言われる定番のレンズです。

 人気も高く,中古の買い取りもこの時代のレンズとしては結構高めのようで,新品が13万円ほどなのに,中古が10万円ほどということで,中古の値段が下がらないのは人気がある証拠です。

 300mmといえばサンニッパですが,まるで新興宗教のツボみたいな大きさと重さは機動性を大きく損ないますし,値段も目を剥くような高さです。あんな高価なものを外で振り回すなんて,わたしゃー気が知れません。

 サンヨンは手で持てるサイズで値段も手頃ですし,冷静に考えてみるとF4とF2.8は1段しか違いません。言うまでもなくサンニッパは,シャープネスはもちろん,ボケの大きさや1段絞ってもF4というゆとりに凄さがあるのですが,手もとでISO感度をさっさと切り替えられるデジタル時代において,以前ほど1段のゆとりが現場で役立つシーンは,そんなにないように思います。

 安いレンズが高いレンズに画質で大きく見劣りするというのが世の常ではありますが,ニコンのAF-S300mmF4Dについてはちょっと事情が違うようで,サンニッパは別格としても,開放からびしっと決まる高画質で,ホントに悪い評判を全く聞かないのです。

 ズーム全盛の現代において,わざわざ単焦点のレンズを買うなんていうのは馬鹿にされるかもしれないですが,いかにズームレンズが単焦点に匹敵する性能を持つようになったとはいえ,それは最新のズームレンズに限った話。お値段も随分高くなりますし,大きく重たくなるものです。

 私の場合,ズームを使うのが下手くそで,結局ワイド端とテレ端の2箇所で使うだけだったりします。なら,70-200/F2.8VR買うよりサンヨンでしょう。

 私は銀塩の頃に,トキナのAT-X100-300mmF4というMFのズームを買って,今でも持っています。一応300mmでF4ですし,見た目に立派なレンズなので手もとに置いて,何も知らない知り合いを威嚇しているわけですが,これも15年ほど前にフジヤカメラで4万円の特価をしているときに買いました。

 特に300mmという望遠を使うシーンが日常的にあったわけではないのでそんなに出番はなかったのですが,望遠のMFがなかなか大変だったことと,ISO400程度ではシャッタースピードを稼ぎつつ絞ることも出来ずに,もやーっとした眠たい画質になりがちで,あまり良い印象があるレンズではありません。

 ですが,一眼レフの存在意義の1つに,望遠,超望遠レンズが使えるというのがあると私は信じていて,一眼レフを持っているからには300mmクラスは持っておくべきと思っているのです。

 この時代のズームはまだまだ単焦点にはかなわず,利便性によって画質が犠牲になることが当たり前でした。ですから,開放だと甘い画質ですし,色収差も派手に出ます。

 D2Hをメインに使っている頃,やはりレンズ類のてこ入れを行っていたとき,このAF-S300mmF4Dが欲しくて,かなり真剣に迷いました。ですが,300mmを今すぐ使うという状況でもなかったため,購入に踏み切らずに,今日まできてしまったわけですね。

 しかし,D800を買った今,思い切って買うことにしました。

 理由ですが,1つに娘が生まれて,これから出番が必ず出てくるであろうということ。遠方から狙うことも多くなるだろうし,D800に見合う望遠系のレンズで最も安いものは,おそらくこれしかありません。

 もう1つは,今を逃すと後々後悔するであろうということです。以前からこのレンズは手ぶれ補正がないことを指摘する声が高く,設計の古いレンズであることも手伝って,手ぶれ補正付きにリニューアルされることは間違いないと,ずっと言われ続けていました。

 同時に噂になっていた85mmF1.4などのレンズがGレンズになってリニューアルされたのに,不思議とこのレンズだけは現行のままです。

 これだけ長い間リニューアルされないのはきっと理由があります。説得力のある理由が,手ぶれ補正を入れてしまうと,今のレンズの性能に劣ってしまうため,と言うものです。

 昨今のレンズ設計技術に加えて,こなれてきた手ぶれ補正技術,そしてナノクリスタルコートを施せば,D800も一安心のサンヨンが出来る事は間違いないと思うのですが,おそらく倍近い値段になってしまうことは避けられない中で,性能を最低でも維持,出来れば向上させないといけないという大きな課題が突きつけられていて,これが非常に高いハードルになっているのではないか,というわけです。

 なるほど,手ぶれ補正の光学系を入れれば確実に画質は低下しますし,今のサンヨンは画質について特に不満も聞かれないほどの銘玉ですから,お値段が上がった分きちんと性能向上させないと,納得しません。それで時間がかかっているんじゃないでしょうか。

 とはいえ,リニューアルも一巡し,現行のサンヨンも随分古くなっていますので,大幅に光学系を見直した手ぶれ補正付き(ついでに絞りリングはなくなって)の高級レンズとして,登場することは自明でしょう。そうなったら現行のサンヨンは即座にディスコンです。

 そうなると,この光学性能をこの価格で手に入れる機会を失うことになります。そしてその時は,確実に近づいています。

 いずれ買うものなのですから,今買っておいたほうが良いです。

 ということで,結構簡単に購入を決めてしまいました。

 買い方も今回は新しい方法を試しています。このあたりも後日。

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