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カテゴリー「カメラに関する濃いはなし」の検索結果は以下のとおりです。

MZ-10が壊れた -> ようやく修理出来た

 このところすっかりフィルムカメラに回帰しているのですが,せっかくいいフィルムが大量にあり,かつすぐに現像できる用意が揃っている今こそ,10年以上放置してあったフィルムカメラのメンテをする時だと,先日防湿庫からあれこれとカメラを取りだして動かしておりました。

 思い起こせば2006年頃,ジャンクカメラを買っては修理をひたすら繰り返して日々の辛さから逃げていた時期でした。久々に取りだしたカメラを見ていると,当時の事を思い出しますし,どんな壊れ方をして,なにを修理したかも,おぼろげながらに思い出します。

 MZ-10を手に取ります。ペンタックスがまだ旭光学だった時代に登場した,プラスチッキーな小型一眼レフです。コストダウンを最優先に作られた感じのあるカメラですが,このカメラの下にまだ廉価版があるというのですから,たまりません。

 この時代の中級機以下というのは,ボディもレンズもプラスチックを接着剤で貼り付けて,安く大量に作って売りまくります。恐ろしいのはそれでも性能は旧機種同等かそれ以上で,我々が失ったものは分解して修理すること,所有欲を満たす質感,長く大事に使うこと,そして中古品の価値でした。

 MZ-10などのMZシリーズも,そういう設計思想で作られたカメラではないかと思うのですが,ミラー駆動やシャッターチャージを行うモーターのピニオンが割れてしまうという情けない持病を抱えており,動作可能な個体は少なくなっているのではないかと思います。

 私のMZ-10は,2006年秋に1050円で買ってきたジャンク品が,購入時点ですでにこのギア割れで修理不能,すぐに程度の良いジャンク品2台を手に入れて,このうち1つとカバーを交換して実動品としてありました。ところが2011年の5月に同じギア割れが発生,もう一台の完動品とカバーを入れ換えていました。

 ところが昨年末,確認するとやはりギア割れと思われる原因でミラーが下がらないという問題が確認されてしまいました。もう予備機はありません。

 なんの値打ちも認められていないMZ-10を修理するのも馬鹿らしいですし,SFXnという代わりのカメラもちゃんと動いていますのでさっさと廃棄してもよかったのですが,MZ-10は大きさといい軽さといい機能と言い,安いなかでもこだわった感じが好印象で,私は捨てる気が起きませんでした。

 とにかく,MZ系ではよく知られた故障ですので,代わりのギアなど入手可能なんじゃないかと調べてみると,やはりみんな同じ悩みをもっていたようでした。

 2006年当時と違って,今はドローン用として売られている金属製のギアを使って恒久対策を行う例がたくさん見つかります。

 MZ-10のピニオンギアの規格は,モジュール0.25mm,歯数13,穴径1.5mmというものです。私もあまり詳しくなかったのですが,モジュールというのは歯の大きさを示すもので,直径を歯の数で割ったものだそうです。ということは,このピニオンの直径は13/0.25=52mmとなります。

 わずか100円ほどで真鍮製のものが簡単に手に入るという事で,MZ軽の修理としては定番に買っていたようなのですが,それも数年前の話です。旬を過ぎた今,同じギアを手に入れようと思って調べてみましたが,どこも在庫はありません。

 遅きに失したことを悔やみつつ,それこそ世界中を探してみたのですが見つからず,代わりに歯数が12と14のものが見つかったので,ダメモトでこれを買っておきました。それでも最後の1個だったようです。

 歯数が違ってきますので,直径も違ってきますから互換性が全然ありません。でもまあ,案外うまくいくかも知れませんし,ダメだった場合にはもうMZ-10をあきらめることにしましょう。

 バタバタと忙しく,あっという間に年が明けて1月も末になった先日,ようやく時間が出来たので,問題のMZ-10をばらしてみることにしました。

 ピニオンはかなり深いところまで分解しないといけないので手こずりましたが,1時間ほどかけてようやく到達,きっちりギア割れが確認出来ました。

 モーターを外し,12Tの真鍮のギアを圧入して元に戻します。手で回してみると案外うまくいきそうです。

 ところが,すでにこの段階まで分解するまでに,かなり手こずって時間がかかっており,ここから組み直す作業も,とにかくバタバタでした。焦るとろくな事はなく,組み立て順を間違える,ビスの場所がわからない,配線を切ってしまう,気が付いたら変な部品が落ちていた,などの情けないトラブルが連発です。

 ようやく組み上がったと思って電源を繋いでも,電源が入りません。

 ここで夕食。

 夕食後,落ち着いて作業を再開します。

 MZ-10は分解した状態で電源を繋いでも,電源が入りません。電池フタがしまっていることを検出するスイッチがあり,これを押さえて騙してやらないといけない事を忘れていました。

 無事に電源が入り,ミラーの位置が初期位置に戻りました。

 なんどかシャッターを切ってみますが,問題なさそうです。いやー12Tでもどうにかなるもんですね。

 ここからかすかな記憶を頼りに組み立てます。しかし,シャッターボタンの周りにあるレバーが反応しません。この部分の摺動バネが曲がっているのでしょう。

 何度か曲げ伸ばしして見ましたが,どうもレスポンスが悪いです。あきらめて予備機(といっても不動品)のバネと交換し,修理完了。慌てると失敗するし,かえって時間がかかってしまうという教訓を生かせず,大変な目に遭いました。

 しかし,修理出来たMZ-10は完調そのもの。翌日試写を行い,すぐに現像を行いましたが,全く問題なしです。コマ間のバラツキもなく,シャッタースピードも揃っています。露光ムラもないし,カメラとしての動作は大丈夫そうです。

 ただ,マウントの接点がちょっと接触不良っぽく,AFが動作しなくなることが1℃だけありました。接点をこすりつけて回復,今は大丈夫なようです。

 決して性能は高くなく,質感も低いですし,なにもいいところがないと思われるMZ-10ですが,不思議と使っていると楽しいカメラです。M42のレンズでも撮影可能な面倒見の良さもそうですし,被写体にもよりますが,D850に慣れた今でもMZ-10に致命的な不足を感じることはありません。

 ということで,真鍮製のピニオンは,さすがに割れてしまうことはないでしょう。長く使えることを期待しつつ,また私の防湿庫に戻っていくのでした。

私のカメラの原点とオモチャのカメラ

 父親の持ち物だったペンタックスのSPは,当時も普及機ではありましたが,生意気に50mmF1.4がくっついていました。F1.8でもなく,55mmでもないあたりにちょっとした優越感もあったわけですが,小学校に上がったかどうかという年齢の私には,そんなことより大きく重く,金属とガラスのずっしりとした重みと精密感にあふれた,自動車なんかと同じ子供が使ってはいけないものでした。

 露出さえもマニュアルという,現代的には難しいカメラを母親も自然に使いこなして写真を撮影していたわけですが,とにかくうちでは高価なものだったので,私が触ることは強く禁止されていました。

 ごくたまに持ち出されたカメラで,父に頼み込んで1枚だけ撮影させてもらった時など,もう面白くて仕方がありませんでした。

 思い起こせば,当時はフィルムも高価でしたし,現像もプリントも高価で,なかなかお金のかかる物でした。日本でカメラが普及するのに,カメラメーカーの努力をたたえることはありますが,フィルムメーカーの頑張りこそ,写真を庶民に普及させた原動力になったといえるわけで,そこに言及したものを目にすることが少ないのは,残念な事です。

 あるとき,近所のスーパーのオモチャ売り場のショーケースに,カメラが並んでいることに気が付きました。カメラとオモチャが結びつかなかった私は最初理解出来ずにいましたが,値段を見てそれがオモチャであることを理解しました。

 私の知るオモチャのカメラというのは,形だけカメラであり撮影機能を持たないものです。このことを母に話すと,母はそこにあったカメラが本当に撮影できるものであることを私に教えたのでした。そして,オモチャじゃないからあなたにはまだ早いと,欲しい欲しいとオーラを出し続ける私を諭すのです。

 今覚えているのは,一眼レフのような形で巻き上げレバーもある高級機(それでも1万円までだったと思う)と,ニコンSPのような形で巻き上げがダイヤルの廉価版(数千円だった)の2つがあったことです。

 どちらもオモチャとはいえ,当時の私には高価すぎるオモチャですので,自分で買うことは全く考えてなかったのですが,それでもダメモトでおねだりしたのだろうと思います。

 それは,全く予期しない形で,私の目の前にやってきました。

 ある日学校から帰ると,安い方のカメラが置いてありました。人生初の自分のカメラです。青い箱に入っており,ビニルレザーのソフトケースが付いています。

 カメラというハードウェアを手に入れたこともうれしかったのですが,それ以上に感激したのが,誰憚ることなく,写真を撮ることが出来るという自由を手に入れたことです。自分が写真を撮ることが出来る,自分が記録を残すことが出来る,なんだか新しい能力を瞬時に手に入れたような気がしました。

 説明書を読みますが,それまで使ったことのあるSPとは大違いで,絞りは2段階で晴れとくもりだけ,シャッター速度も開閉するものとバルブの2つしかありません。シャッターチャージなんかもありませんから,巻き上げることなく何度でもシャッターを開け閉めできます。

 当時がっかりしたのは,レンズキャップがなかったことです。カメラの象徴は飛び出したレンズですが,これを守るキャップがないことが,このカメラがオモチャに過ぎないことを思い出させるのです。

 このカメラ,フィルムはボルタ版を使います。普通のカメラ屋さんには売っていなくて,おもちゃ屋さんでしか買ったことがありません。調べてみると戦前にちょっとブームになったフォーマットらしく,135フォーマットと同じ幅でコマサイズも同じ,ただ,上下にパーフォレーションはなく,127フィルムと同じく遮光紙と一緒に巻かれています。

 遮光紙には番号が印刷されており,カメラの裏蓋にあいた穴から見ることが出来るのですが,この数字が窓に出てくるまで巻き上げるのです。このフィルムを使うと,カメラの機構がとても簡単になることを簡単に想像出来ますね。

 すでにカラー全盛だった当時,私が入手出来たボルタ版はモノクロ(忘れもしないライトパンSS)でしたので,これを買ってもらい初めての撮影をしました。

 今でも覚えているのは,庭にあった桜が満開になっていたものを,1番最初に撮影したことです。とても綺麗で,とても豪華だったその桜は,被写体としてこれ以上ないものと思って,記念すべき1枚目に撮影したのでした。

 10枚という少ない枚数を撮り切り,写真屋さんに持っていきます。

 カラーのフィルムだと当時でも数日で現像が終わるのに,白黒だと1週間ほどかかると言われて,とてもがっかりしたのですが,今にして思えばボルタ版の白黒ゆえに,ラボに出さないといけないせいで時間がかかったのでしょう。

 子供心にモノクロだから安い,と思っていたのに,後日出来上がった写真を取りに行くと,カラーと同じくらいのお金を取られていました。写真は高く付く趣味だと知った瞬間です。

 果たして1枚目の桜はどうだったかというと,さっぱりでした。ちゃんと写ってはいましたが,遠くから撮影していたので桜の花の美しさはまったくわかりませんし,モノクロですので,桜のあの色も出ていません。なんだか綿を被った枯れ木の様な雑然とした写真でした。

 弟や友人,近所の様子を撮影していたのですが,10枚撮影したはずなのに何枚か足りませんし,中にはボヤーと写っているものも,おかしな光の筋が入っている物も多く,とてもがっかりしたのと同時に,もったいないことをしたと,悲しくなりました。

 これも今にして思えば,枚数が足りないのはプリントできないほどひどいコマだったこと,ボヤーとしているのは手ぶれ(そりゃバルブならぶれるでしょうよ),おかしな光の筋はフレアやゴースト,あるいはフィルム装填時のかぶりだったとわかります。今も私を悩ませる失敗が,すでにこの頃から続いていたことに驚きです。

 フィルムを買うのも自力では無理,現像になると親に泣きつくしかないという状況では,まさに10枚撮りのフィルムは宝物ですし,1枚1枚をとても大切に撮影していました。

 フィルムの入手の問題もあり,モノクロは結局3本ほど,その後入手しやすくなったカラーフィルムも4本ほどしか通していないと思います。

 隣の大きな街のデパートのオモチャ売り場に,カラーのフィルムを見つけたときはうれしくて,ようやくカラー写真デビューを果たしたときに,大人に一歩近づいた気がした物です。

 このカメラで我々親子が知った事は,カメラ本体は安くとも,フィルムはそれほど安くなく,現像に至っては普通のカメラと全く同じで,本物のカメラと同じくらいお金がかかるという事実でした。失敗も多く,画質も悪いオモチャカメラではむしろ損をした気分にさえなったのでした。

 小学校も中学年になると,SPを使えるようになってきます。それまで大人しか許されなかったフィルムの装填を初めてやって,自分で撮影出来るようになってくると,もうトイカメラの出番はありません。

 一度,高校生の時にジャンク箱から引っ張り出し,背中の丸窓を塞いでTRI-Xを詰め,撮影を試みたことがあります。それなりに写っていて驚いた事がありましたが,いかんせん単玉の50mmF8(これは今知った)では良し悪しを議論するほどのこともなく,それっきりどこかになくしてしまいました。

 ふとしたことから思い出したこのオモチャカメラですが,なんという機種だったかわからず,調べてみたのです。

 そうすると,どうもアニーJrというものらしいです。ただ,このアニーシリーズは1950年代の後半から売られている息の長いもので,派生機種も入れるとたくさんの種類があるようです。

 私が手に入れたのは1970年代の中頃から後半ですので,廃番になる寸前だったのではないでしょうか。

 今もアニーJrで検索すると,いくらでも見つかります。2000円か3000円か,それくらいで買える物なのですが,無垢な子供の高揚感に現実という冷や水を浴びせたあのカメラを,今さら懐かしいと言うだけで買い直したいとは思いません。

 でも,ボルタ版というフィルムが存在していたこと,それを1コマ1コマ宝物のように使っていたこと,そしてその時のネガが未だに私の手元に残っているという事が,私のカメラの歴史の始まりに刻み込まれていて,ふとしたことでそのことを,当時の記憶と一緒に思い出すのです。

 

GR1再評価

 1996年に登場し,高級コンパクトカメラブームの一翼を担ったリコーのGR1。

 プラスチックで出来ていて,押すだけでそれなりの写真が撮れるという,フィルム交換式「写ルンです」ともいえた安価なコンパクトカメラか,大げさな一眼レフしか選択肢かがなかった当時の日本のカメラ世界において,

小さいけど良く写る
小さいけどいろいろな撮影モードを持つ
小さいけど高い
レンズ交換できないしズームでもない

 という,それまでになかった撮影体験を提供したのが,一眼レフ並みの価格だった高級コンパクトカメラです。

 まあこれも,フィルムカメラが終焉に向かう中,突然起こったブームだったのですが,カメラの市場が縮小する中で多くのメーカーが参入し,それぞれにファンを獲得していました。

 カラーネガが主役で,ハガキよりも小さな同時プリントを数人で見る事がほとんどだった当時の多くの人にとって写真の画質など大した問題ではなく,まして写真を表現手法ととらえる人は今よりずっと少なかったこの時代,高級コンパクトカメラが一大ブームになったことを私は偶然と見ていますし,またそれは後世に非常に優秀なカメラを残してくれた点で,感謝すべきことでした。

 あれから25年,すでに製造メーカーが存在しなくなっていたり,逆に未だにコンセプトとブランドが継承されているものがあったりと,たどった軌跡にはさすがに時間が経過したなと思わせるものがありますが,変わらないのはそれぞれの機種への評価です。

 評価は直接的な賞賛もそうですが,なんといっても中古価格が正直です。CONTAX Tシリーズ,TC-1,そしてGR1シリーズなどは,おいそれと手を出せない,まさに憧れの対象です。

 私は当時のブームをリアルタイムで見ていた人ですが,なにせ一眼レフを使う事で精一杯で,撮影領域の拡張方法として小型軽量で迅速簡単な機材を導入するよりも先にやるべき事があり,あまり興味を持っていませんでした。というより,写真やカメラの本質であるとか,良し悪しについての見識が非常に貧しかったのだと思います。

 1997年の秋,あるきっかけから海外へ持ち出すカメラを選ばなくてはならなくなり,荷物を軽く小さくする必要性と,滅多にない機会ゆえ色や空気感をきちんと記録したいという相反する要求を満たすために,高級コンパクトカメラを買うことになったのでした。

 目的からカメラを選んだのは,これが最初で最後だったかも知れません。

 一声10万円の,システムとして完結している小型カメラを買うことに抵抗は強く,本当にいるんだろうか,使うのは今回だけじゃないのかと自問したり,レンズ交換はおろか,オプション類もほとんど出ていないカメラを増やしてどうする,と言う気持ちもあって,なかなか買えなかったのです。

 ふと目にとまったのは,GR1です。極端に小さく軽く,しかし雑誌の広告が謳うのはレンズと画質。デザインはそこら辺のコンパクトカメラと変わらず,メカメカした道具としての魅力も備えていません。

 でも,それがいい。

 レンズが良い,写りが良い,リバーサルで使える,プロが使っている,などといろいろな評判が聞こえてきますし,広告の写真もまた素晴らしい。コンパクトカメラなのに絞り優先AEが使える事が決め手になって,GR1は私の愛機になったのでした。

 しかし,GR1は私の手には馴染みませんでした。どうも使いこなせないのです。AFがあわない,被写界深度がわからないので絞り込んでパンフォーカスで使えないというハードウェアの問題もそうですし,出来上がった写真が自分の好みや撮影時のイメージと異なっていて,毎度がっかりしたことから,苦手意識にも似た感覚が根付いてしまいました。

 一度たりとも「よく写るなあ」と思った事がないのですから,多くの人の評価とは真逆です。きっと私の使い方がまずいのでしょう。あるいは,この眠たい,寒色系の色合いの写真が世に言う「高画質」なのかも知れません。

 そんなわけで,あまり使う事なく20年以上が経過しました。
 
 私の個人的感情は別にして,世の中ではGR1が絶賛されています。中古価格も下がりません。昨今のフィルムカメラブームでまた評価が上がったようです。

 そんなGR1ですが,Rollei RETRO400Sで撮影をしてみました。

 なんとシャープで,なんと高いコントラストで,なんとグレイトーンが粘ることか。

 私はすっかりGR1に魅せられてしまいました。これはすごい。

 気に入らなかった色合いは,モノクロなら関係がなくなります。フィルムが持つゴリゴリとした質感を,このレンズは十二分に引っ張り出しています。

 露出も最適で,AFも問題なし。これだけの性能をこの大きさに凝縮しているGR1への印象は,完全に変わりました。

 GR1は,RETRO400Sとの相性が抜群なのでしょう。本当に惚れ惚れするような描写です。同時にRollei35でも撮影しましたが,どう考えてもGR1の圧勝です。

 ということで,再開したモノクロ写真の主役はGR1となりました。長く壊れないでいて欲しいと思いながら使っていますが,このカメラが究極のスナップシューターと呼ばれて愛されていること,そして私自身がその言葉を今になって体感できたことで,私もようやくGR1を使っています,と言えるようになったのだなあと,思いました。

 

30年ぶりにモノクロ写真を見直す

Rollei35を手に入れた
-> 未現像のカラーネガがたまってきた
-> でも現像に出すのが面倒くさい
-> モノクロなら自家現像できるのに
-> 10年ものの未撮影TRI-Xを5本ほど発掘
-> ダメモトでISO200に減感して撮影
-> 確かフジが薬品類を大量に廃番にしたときに買い置きしたものがあったはず
-> 発掘された現像剤や定着剤はことごとく酸化&吸湿で死亡
-> 仕方がないのでスーパープロドールを新規に買って現像
-> 買い置きしてあったナニワカラーキットも液が漏れている
-> あわててたまってたカラーネガも自家現像
-> 久々にやってみるとなかなか面白い,現像&定着の間は自己との対話

 という流れで,流されるまま自家現像を再開することになったのですが,なかなかこれが面白いのです。最初は仕方がなく始めたものの,現像と定着の時間は付きっ切りですから,何もすることがない貴重なこの時間はまさに「自己との対話」の時間です。思索にふけるには短すぎるし1分ごとのインターバルも煩わしいですが,成果を求められない考え事というのは短時間でも楽しいものです。

 そうこうしているうちに,デジタルに慣れきった緩んだ体を鍛え直し,本来の写真の面倒臭さを思い出すという修行の時間として,積極的に取り組むようになってきました。

 とはいえ,持続可能な状態になっていないと長続きしません。費用の問題,手間の問題など,旧来の方法からの改善箇所はいくらでもあります。

 その旧来の方法ですが,これがまた16歳の頃から変わってません。高校生で初めて写真部で試させてもらった現像のワークフローをそのまま移植し,それがずっと固定化しています。

 タンクはキングのノーベルト式で1本ずつ現像するものです。現像はコストパフォーマンスでミクロファインの原液を600mlで4回回します。時間はあるけどお金のない学生らしく定着は時間のかかるフジフィックスです。

 フィルムは成功体験から逃れられずTRI-Xで,コストに悲鳴をあげた私は100ftの長巻で1本200円以下で使っていました。

 この流れをずっと維持してきたのですが,TRI-Xにミクロファインだと眠い画像になりがちなこともあり,正直に言ってあまり楽しいものではありませんでした。かといってD-76は普通すぎてつまらないし,スーパープロドールは粒子が荒れまくるし,他の現像剤は高価だし,で,結局このままになっています。

 準備から道具を洗って片付けるまで含めると1時間コースとなるフィルムの現像は,なかなか時間のかかる優雅な趣味だと思うのですが,1時間で1本しか処理できないというのも,学生ならいいですが忙しい大人がやるには厳しいです。

 10年もののTRI-Xの残りを使い切った(コントラストが下がり粒子も荒れて散々だった)こともあり,新たに長巻をいくつか買いましたし,ここで30年ぶりに自家現像の環境を見直すことにしました。目標は楽しさアップと効率化で持続可能性を高めること,です。


 と,その前に高価になりすぎてしまったTRI-Xに代わるフィルムを探しましょう。ISO400で安いのは8000円程度のAGFA APX400です。定評あるフィルムですので,これを使う事も考えたのですが,ちょっと普通すぎるかなあと以下の3つを結局選んでみました。

(1)ORWO N74 plus
 旧東ドイツのメーカーORWOのISO400のモノクロフィルムです。安いものではないのですが,独特の味があって好む人も多いとか。もともと映画用のフィルムをメインにしているメーカーということもあり,長巻以外は売っていないそうです。私は30ftのものを購入,7本くらい作れます。

(2)ORWO UN54
 同じくORWOでISO100です。まだ現像していないのでなんとも言えませんが,粒子が細かく,きめの細かい画像を期待しています。乳剤を見ているとかなり緑がかっている感じです。
 
(3)Rollei RETRO400S
 今回の本命です。お値段は9000円弱とこれもあまり安くはないのですが,ベースがクリアに抜けているので,スキャナとの相性が良いとのこと。確かに当たり前の話なのですが,なぜかモノクロフィルムのベースは紫だと信じて疑わなかったです。ベースの厚みが薄く,現像の時のリールへの巻取や,フィルムピッカーでフィルムを引っ張り出しにくいなど,ちょっと勝手が違います。


 次に現像液。これまでミクロファインを使っていたのですが,どうも眠い画像になりがちでしたが,基本に帰ってD-76を使おうとしたところ,これが案外高価であることが判明します。しかも1ガロンとか,薬を溶かすことすらままなりません。

 そういいつつミクロファインも値上がりしていて決して安いわけではないことを考え,仕上がりの良さと昨今の環境負荷の問題から,アスコルビン酸系のXtolを使うことにしたのですが,これがまた5リットルなんですね,

 保存性の悪いXtolを5Lも作ってしまったら,早めに使い切るために希釈現像で毎回捨てることになりますが,それだとかえって環境負荷が重いです。残念ながら候補から外れました。

 また,現像データが揃っている現像液が何だかんだで便利です。ミクロファインもスーパープロドールも安くて良い薬品ですが,なにせ日本国内しかユーザーがいないので,海外製フィルムのデータがほぼ全滅です。手探りで現像してデータを取るほどミクロファインが好きなわけでもありませんので,この2つは候補から落とします。

 さて困った。自家調合も視野に入れるかと思っていた所,それまで目もくれなかったT-MAXデベロッパーがなかなか良いことに気が付きました。

 1980年代後半,TRI-Xの後継と言われたT-MAXが発売になりますが,その高性能を発揮するには専用現像剤T-MAXデベロッパーを使う必要があると言われていました。しかしT-MAXデベロッパーは濃縮液で売られていて水で薄めるだけという手軽さの反面,価格はD-76よりずっと高いものでした。

 手間はかからないが高価という,ブルジョアっぽい感じが嫌で私はずっと避けてきたのですが,大人になった今,時間はお金で買うものになりました。というか,D-76もXtolもそれなりにするので,T-MAXデベロッパーが極端に高いわけではありません。

 ということで,保存性も良く,多くの現像データが公開されており,様々なフィルムとの相性も良いようで,仕上がりも問題なし,処理能力も高くて作るのに手間がかからないという優秀さで,現像液はT-MAXデベロッパーになりました。

 定着液はスーパーフジフィックスですが,これも今や濃縮液の時代です。水で薄めたらもう完成。特に問題はありません。

 さて,最大の問題は現像タンクです。これまで使っていたキングのノーベルト式は慣れているので買い換えなど全く考えてこなかった(中判に手を出さなかったのはこのタンクで現像できないから)のですが,もし1回の現像で2本のフィルムを処理できたらどんなにいいか,と考えるようになりました。

 しかし,キングのノーベルト式で2本あるいは3本のセットは今や入手不可能です。

 いろいろ考えた結果,世界中で定評のある,パターソンのタンクを買うことにしました。ちょっと高いですが,まあ死ぬまで使えるでしょう。

 本当は3本のものが欲しかったのですが,タンクに別売りのリール3つを買うと2万円近くなるのであきらめ,リーズナブルな2本用のセットを買いました。

 いわく,リールが秀逸で,巻取の失敗がないらしいです。

 ということで,手元に届いてから私もやってみました。ノーベルト式では,まずパトローネを分解し,フィルムを巻いたまま取りだして右手に持ち,端っこをリールに固定したら,あとは少しフィルムを斜めに持ち,右手のフィルムは押し出し,左手のリールは巻取りと,うまく歩調を合わせながらクルクルと巻いていきます。失敗することはありませんが,仮に不安があったなら,簡単にリールからほどいて巻き直しが出来ます。

 パターソンのリールは,フィルムの端っこをガイドに差し込み,リールの上半分と下半分を左右にねじるとフィルムがリールの両溝に入り進んでいきます。

 これ,便利で確実に思えるのですが,薄いベースのフィルムだと引っかかってしまうことがありました。心配になってやり直そうにもリールからフィルムをほどくことが出来ません。

 リールを分解しようにも外周のガイドがフィルムをくしゃくしゃにしますし,分解すればフィルムが一気にほどけてしまい,またくしゃくしゃになります。私はこれで何度も失敗し,ネガに折り目を付けた上に,キズやかぶり(フィルムの感光は機械的な力でも起こります)が発生しまい,散々でした。

 ということで,N74 plusは21℃6分,RETRO400Sは21℃9分で現像,どちらも良好な仕上がりでした。タンクは見た目は大きいですが,内容量は500ml程度で小さく,かつてのノーベルト式が450mlで1本だったことを考えると,温度も変化しやすいでしょうし,現像液への負担がちょっと大きいなあという印象です。

 それから,どうもリールから外すのが大変のようで,水洗後クリップで吊す時,かつてのように先にクリップで吊しておいてからリールからほどいていくことが出来ません。みんなどうしているんでしょうね。

 N74 plusはとても優しい視線を感じる画質で,コントラストは低め,粒子は細かくはないですが荒れることはありません。ただ,ダイナミックレンジがやや狭いので被写体によっては眠い感じがあります。

 私が気に入ったのはRETRO400Sで,広いダイナミックレンジに高コントラスト,明部は透明なベースのおかげでしっかり光が抜けて,暗部はコッテリと乗った分厚い銀が光を遮ります。その間のグラデーションがまた見事で,高精細であることと相まって,かなりの情報量を持っています。

 粒子は十分に細かいと思うのですが,エッジが立っているのでざらついた感じが強く,ぱっと見ると荒いように見えるかも知れません。

 とにかく,ベースフィルムが薄く透明である事で,銀のあるところとないところの明暗差が大きく取れ,結果としてグラデーションも豊富になることが,これほどモノクロフィルムを面白くするとは思いませんでした。この画質は,カラー画像から輝度情報だけを抜き取ったものとは本質的に違う,モノクロフィルムの画像だと思いました。

 特にGR1との相性が良かったです。もともとGR1のレンズはシャープで高画質ですが,そのレンズの良さがこのフィルムだと際立って見えます。Rollei35では残念ながら凡庸な画像だったので,ちょっとがっかりでした。

 ところでこのRETRO400Sは,赤外線領域まで感度があるそうです。赤外線フィルタを使えば簡易赤外線写真が撮れるくらい,と言われているのですが,そのせいでかぶりやすく,保存など管理に気を遣います。

 それにしてもRETRO400SとT-MAXデベロッパーによる画質は,これまで私が手にしてきたモノクロ写真とは別の世界にあるものでした。

 自分で現像出来る,低コストという理由で,カラーの代用としての役割を拭いきれなかった私のモノクロフィルム撮影は,ここへ来てようやくモノクロでなくてはならない理由を見つけたように思います。

 モノクロフィルムが高価になった今,もはや自家現像が手軽に出来る事しかメリットがないと思っていましたが,この重厚感を見せられると,もっと使いこなしたくなってきます。

 少しずつ日が長くなり,撮影可能時間も長くなってきました。夕方に撮影が出来ることはありがたく,楽しみな季節になってきます。それまでなんとなく使いこなせた感じがせず避けがちであったGR1にRETRO400Sを詰め込んで,どんどん持ち出してみようと思います。

 

Rollei B35のレストア

 前回の続きです。

 前玉のドナー用に手に入れたRollei B35は,前玉はカビが出ていますが他は綺麗なもので,いじっているうちに動作するようになったシャッターのフィーリングが同じB級Rollei35であるRollei35LEDよりずっと良質であることにいたく感激し,レストアを始めたのでした。

 Rollei35LEDで慣れたもので,分解と清掃は簡単でした。素人が分解した形跡はありませんでしたし,大事に使われていたのか程度も悪くありません。

 レンズは前玉こそカビがありますが他は綺麗で,シャッターも絞りも粘りはありません。ホコリの侵入だけが気になるので,分解してホコリを飛ばしましたが,やったことはそれくらいです。

 全体の動きが渋いのは清掃と注油で復活,破損箇所もありません。

 シャッタースピードも確認しましたが,すべてJISの範囲内です。優秀です。露出計もきちんと確認しましたが,これも問題なし。十分な精度が出ています。

 白いエナメル塗料でスミ入れを行い,張り皮も一度剥がして綺麗に張り直します。

 3時間後には完成していました。

 改めて見ると,Rollei35LEDよりも程度が良いです。しかもかなり使いやすいこともわかりました。Rollei35LEDはファインダーを覗き込まないと露出計を確認出来ません。これ,スナップでは結構面倒です。

 しかしB35はトップに露出計があります。連動しませんが,そんなことは全く気になりません。Rollei35シリーズの面白さはいちいちファインダーを覗き込まない速写性にもありますから,B35はRollei35と同じような使い勝手による楽しさを,電池なしえ味わえる優秀なカメラである事がわかったのです。

 しかも,同じB級ローライと言われるB35とLEDですが,LEDの方が随分軽いですし,華奢です。機種名もLEDはシルク印刷ですが,B35はちゃんとへこませスミ入れをしてあり,高級感があります。絞りのクリックがあるのもうれしいです。

 筐体の剛性も違いますから,シャッターの音も違います。B35の方が心地よい音がします。ファインダーもB35の方が見栄えが良く,LEDは暗く赤っぽいです。B35はそれでもRollei35を意識して作られているように思いますが,LEDはもう別物です。

 ただ,LEDが悪いとばかりも言えません。SPDを使った露出計の測光範囲は広く,反応速度も早いですし,なんと言っても連動します。B35は連動しませんし,セレン光電池の測光範囲の狭さゆえ,実質的に屋外専用と割り切らねばなりません。

 ここで,私は前玉を元に戻す結論に達していました。レンズをまた外し,交換した外枠をまた入れ換えて,元の本体に戻します。

 これでB35は綺麗な後玉と中玉と前玉が揃いましたし,LEDは元のボケボケレンズから研磨によってどれくらい救われたかがわかります。(でも時間がなかったので今回はLEDの試写はしませんでした)


 早速B35の試写を行います。光漏れもありません。シャッタースピードは全速であっていますし,露出計も十分にあてになります。

 画像も,研磨したレンズよりもコントラストは高く,発色も良いです。ただ,もっと良く写ることを期待していたので,それでもトイカメラの域を出ないことに私はがっかりしました。

 ただ,現像後のネガを見てみると,ネガのベース面にキズが走っています。圧板にトゲでもあるかと調べましたが確認出来ず,原因がはっきりしないのでもう少し調べてみる必要がありそうです。

 気が付いたのは,フードを使うと露出計に一部が被さってしまい,明らかに測光値が狂ってしまうことです。一定の割合で狂うのであれば設定をずらせばいいだけなので対応出来るのですが,光源の位置や角度によって変わってくるので,とりあえずフードなしで使うしかないようです。

 これが,センサが小さくて測光用の窓が小さいRollei35LEDなら問題ないのですが,十分な起電力を得るために面積が必要なセレン光電池だと影響が出てしまいます。

 もともと,ファインダーにも被ってしまうのでフードを使いにくいのがB級Rollei35なのですが,やっぱりフードは使いたいので,いろいろ考えさせられます。

 試写では36枚撮影しましたが,なかなかテンポも良く,楽しく撮影出来ました。外光式の露出計ですから,必ずしも連動している必要はないですし,ファインダ-を覗き込まなくてもすむ使い方は,Rollei35で楽しいとおもった撮影スタイルでした。

 それでいて軽く,持ち運びが楽ちんです。もともとLEDにはRollei35のカジュアルバージョンを期待していたのですが,その役割はむしろB35の方が適切だったようです。Rollei35LEDは,やはり別系統のカメラと言って良いかもしれません。(そう,Rollei35TEやSEですね)


 そしてつくづく思うのは,初代のRollei35の出来の良さです。巻き上げやシャッターのフィーリングは雲泥の差ですし,重さはともかく質感の高さとファインダーの良さはさすが高級機です。

 なによりレンズが素晴らしく,Tessarの名前は伊達ではありません。絞ってパンフォーカスで撮影すればスキッと写り,開けてポートレートを撮れば人がポッと浮かび上がります。この立体感と線の細さは素晴らしいです。

 対してB35のTriotarは線が太く,シャープネスもありません。透明感も落ちますし,やはり廉価版だなあという印象はどれだけ持ち上げても消えてくれそうにありません。

 残念な事に,私のRollei35はコマ間の送りのバラツキが大きくなってしまいました。最初はきれいに整っていたのに,なにが原因かよく分かりません。

 とまあ,そんなわけで9月から続いたRollei35祭りは,ようやく終了です。中古カメラフェアで手に入れた高価なRollei35は修理に散々苦労しましたし,Rollei35LEDはレンズ研磨,Rollei B35も期待していた程の写りではなく,収穫は少なかったように思います。

 結局常用するのはRollei35で,気が向いたらB35,LEDは使わなくなりそうな感じですが,それ以前の問題としていつまでフィルムを使うかを,今回の件で私は考える事になりそうです。

 ちょうど良いタイミングで,フジフイルムがACROSIIを発売することになっています。相変わらず高価なフィルムですが,自家現像できるフィルムが普通に手に入ることのありがたさを知った我々は,かつてのカラーネガフィルムの安売りが異常であり,1枚1枚を心を込めて大切に撮影することを,改めて学んだ気がします。

 

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