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カテゴリー「ふと思うこと」の検索結果は以下のとおりです。

友人のミニコンポが直った理由

 友人宅のミニコンポですが,どうも直ったようです。

 昨年に同じような事があり,この時は私がうかつに落とした汗が原因と結論したのですが,今回は汗は落としていません。

 昨年はACコードを抜いて一晩放置してあったのですが,今回もそれを試してみる必要があると,友人に頼んで一晩ACコードを抜いておいてもらいました。

 すると翌日,無事に音が出たとのこと。

 ACコードを抜いて長時間しないと,マイコンのリセットがかからないのでしょう。でも,リセットがかからないからといって,ミュートしっぱなしと言うのは,なんとなくバグの匂いがプンプンするのですが・・・

 ちなみにこのミニコンポ,ビクターのNX-MD3という型名のようです。当時友人は,それなりに電気屋さんで聞き比べて品定めをしたそうで,少々値が張ったが良い買い物だったといっています。

 事実,ミニコンポとしては評価も良かったらしく,私自身もなかなか良い音になっていると思っていました。特にスピーカーの性能については,やや低音が出すぎているかなと思う以外は,定位感も良くて,それなりに評価されている理由も分かる気がします。

 CDのサーボのノイズが出てくることや,アンプ部のここ一番の底力などには不満があり,その辺はやっぱりミニコンポだなあと思っていたわけですが,スピーカーの素性の良さは,スピーカーだけでもオークションで数千円で売れることから考えても,実力はあるのでしょう。

 だから,とりあえず直ってよかったと思います。

電子工作マガジンと夏休み

 夏休みです。

 夏休みがやってくる度,その時々の出来事を思い出す人も多いと思いますが,私の場合,親から特別に電子工作予算を付けてもらえる時期だったので,それがなにより楽しみでした。

 ここ最近,初心者から団塊の世代まで,電子工作に対する老舗出版社のアプローチがそれなりに賑やかになり,私のような電子工作をライフワークとする人間にはなかなか飽きさせないものがあります。

 ところが,この手の本はそこそこ高価な割に外しがち。そこで,その志に対価を支払う感覚で買った「電子工作マガジン」に,軽く書評をしたいと思います。


 電波新聞社の「ラジオの製作」と誠文堂新光社の「初歩のラジオ」は電子工作の雑誌の両横綱で,かつてどちらの雑誌を支持していたかで派閥が出来るほど個性がはっきりしていました。

 私個人はミスプリントが多いラジオの製作には辟易させられた記憶しかありませんが,一方の初歩のラジオには戦後間もなくから活躍された大先生から,新しい回路を次々に発表する若手の先生までジャンルも難易度も幅広く,毎月何か1つは「つくってみたいな」と思う記事がでていた事もあり,初歩のラジオ派の人でした。

 だって,ラ製はジャンクの部品とか平気で使うんですもん。初ラの回路はよく考えられているものが多く,今でも「ホー」と感心させられるものがあります。

 ただ,社会的貢献という意味では,初歩のラジオがアマチュア無線の雑誌に鞍替えしてあっという間に自滅したのに対し,ラジオの製作は自らの役割にとどまらず,その別冊から始まったマイコンBASICマガジンで多くのIT技術者を産み出し,またそこから後のゲーム産業に大きな貢献をするライターを育ててきました。今に繋がる新しい産業への種をまいた功績は賞賛に値します。

 しかし時間の流れは速く,BASICマガジンもラジオの製作もやがて休刊,ラジオの製作は一度だけムックとして復活しましたが後が続かず,そのまま10年近く音沙汰無しでした。

 誠文堂新光社はその後オーディオ方面へに傾倒していきますが,電波新聞社は違っていました。かつて育てた子供達が社会に出てそれなりの地位に就いているこの頃,子供の理系離れ,工作離れを食い止める使命を自覚し,奇跡の復活を遂げました。それがこの「電子工作マガジン」です。

 前置きが長くなりましたが,7月16日に発売になった電子工作マガジンです。私が工作をするわけではありませんが,それ程の意気込みで作った雑誌なら,見応えのあるものであって欲しいと思うのですが・・・

 どうも,理系離れに一石を投ずるという話が上滑りする傾向があり,この手のスローガンを掲げるものに,純粋な面白さがないのです。特にひどいのはエレキジャックで,これはもう出すだけ無駄という感じの雑誌です。どうも「理系離れ」と言えば偉い人がすんなりokを出すような風潮があるようです。

 中を見てみると,かつてのラ製の雰囲気が再現されています。前半は二色刷。青と朱のインクも当時の感覚ですね。

 最初の方はラ製でも初心者向きの簡単な工作でしたから,まあこんなもんかと。アルミテープとステープラで基板を作るというアイデアはよいですね。記事の内容も解説も丁寧で,これはかなりよいと思います。

 徐々にレベルが上がってくることを期待しつつ,しかしちっとも上がってこないことにややがっかり。回路の動作原理の説明も少なく,せっかく人体の接近センサという珍しい部品を使っているのに,この部品についての説明が皆目なし。これではただ同じものを黙って作れといっているだけで,知的好奇心を満足させることも出来ず,およそ人は育ちません。

 そして上級者向けと呼ばれている記事2つです。ジャンク流れのLCDを使ったiPod用の外部モニタと,真空管のアンプです。これはね,もうなにを考えているのかわかりません。

 まずジャンク部品(あるいはスポットで入荷した期間限定の特価商品)を使うことについては,この部品が手に入らないと全く成立しない製作記事であるだけに,地域限定,期間限定になってしまいます。

 地域限定は通販があるのでまだどうにかなるかも知れませんが,期間限定については,雑誌には発売までのタイムラグがありますし,実際に作ってみようと思った読者が,記事を見てすぐに部品の手配を出来るとは限らないのです。後で作ろうと思った子供のがっかりした顔が目に浮かびます。

 だから,定番の部品,安定供給が期待できる部品を使うことが,この手の雑誌の記事には不可欠なのです。この記事の作者の先生は結構昔からそこそこ活躍されている方ですが,はっきりいうと当時から大した技術力もなく,切った貼ったの工作をやってるだけの人で,人を育てる記事を書けない人です。ジャンクを見つけて使うことを得意とされているようで,それはそれで誰にでも出来ることではないし,楽しいことでもありますが,私に言わせれば本人の自己満足の領域を出ないものであり,この雑誌の役割を考えるとふさわしいものとは思えません。

 また工作の雑誌には,資料的価値の存在も重要であり,少なくとも期間限定と分かっている賞味期限の短い記事は避けるべきです。最悪のケースで部品が手に入らず,作ることが出来ない場合でも,読み物として面白ければよいのですが,やってることといえばケースに穴を開けているだけでですから,電気的な解説もこの記事でなければ得られない面白さもありません。せっかくLCDを使っているのですからLCDの仕組みや外からの信号の与え方などを書いておけば,子供は次に繋げてくれるものなのに,もったいないことです。

 真空管のアンプについては,はっきりいって他の雑誌に任せればいいと思います。出力管をいろいろ交換して楽しめるシングルアンプですが,理系離れの子供や学生に音質の違いを聞き分けさせることの意味は,はっきりいってないでしょう。読者に伝えたいのは,工作の面白さですか?真空管の音質の違いですか?馬鹿馬鹿しいにも程があります。

 他の読み物についてですが,どれもいまいちです。大阪の日本橋の紹介記事も出ていますが,期待して読むと肩すかしをくらいます。どうも関係者が書かれているようで,街の価値を上げようと必死になっていますが,明らかに価値の上げ方が間違っています。子供がワクワクしながら読めるか,欲しい部品がどこで買えるのか,そういった視点で日本橋を語らなければ何の意味もないことを知るべきでしょう。

 当時のラジオの製作や初歩のラジオは,今みても大変面白いものです。それは,方針にぶれがなく,読み手の期待を適度に裏切りながら基本的にその期待から逸脱しない,そんな絶妙のバランスを自信を持って取ることが出来ていたからだと思います。

 ぜひかつてのラジオの製作には何がのせられていた,製作記事以外にどんな面白いことが書かれていたか,もう一度見直して欲しいと思います。

 子供は,今も昔も好奇心のかたまりです。なぜ?なに?どうして?が大好きな生き物である彼らが,科学や数学を敬遠し,理系離れと言われるのは,彼らのそうした空腹感に満足に応えてあげていない「かつての子供たち」の責任が大です。

 そもそも我々大人が,科学や理科に興味関心をもつきっかけをも奪っていることに,根本的な原因があります。きっかけさえあれば,子供は目を輝かせて,なぜ?なに?どうして?を連発することでしょう。ご自身を思い出してみて下さい。

 なに?そこまでいうなら,おまえが書いてみろ?

 ごもっともです・・・

ダビング10などどこ吹く風

 6月からスタートするはずだったダビング10,暗礁に乗り上げ,期限の決まらないまま延期となるのが確実となりました。

 権利者側の意見も,メーカー側の意見も,それなりに分からなくはないのですが,お互いを辛辣に攻撃し合っている現状では,両者が問題の解決をしようと思っていないと考えざるを得ません。

 こうした議論に,利用者の意見が入りにくいことを今さら問題にするつもりはありませんが,どちらの立場の人も,ちょっと条件を変えれば利用者の立場になる,むしろ利用者としている時間の方が長いのだということを思い出してもらえればと思います。

 すでに感情論になっている中では,もうこの話はそう簡単に着陸しないだろうと,私は悲観的です。

 それなりに関心の高かったこの問題が未解決になってしまうことは残念ではありますが,でも実は利用者の中には,もうどうでもいいと思っている人も多いのではないかと思うのです。私もその一人です。

 例えばですね,20年前のFMラジオ全盛時代,週間の番組表まで買ってエアチェックに勤しんでいた頃に「1回しか録音できません」などと言われれば,随分と反対意見も出たことでしょう。

 しかし,今同じ事を言われて,どれだけの人が反対意見を言うのかなあと思うわけです。この背景を考えると,FMラジオの役割がこの20年で随分と変わって来たということを見逃すわけにはいきません。

 20年前までは,FMラジオはその高音質を生かした音楽ソースの1つでした。録音し,編集し,ライブラリとして保存する。そうした習慣が音楽ファンにきちんと存在していたからこそ,高性能なFMチューナー,高性能なカセットデッキ,日夜改良されるカセットテープが買えたのですね。

 番組制作側もこのニーズを理解していたから,エアチェック前提の番組はナレーションが曲にオーバーラップすることもなく,フェードインもフェードアウトもなし,もちろん1曲まるまる放送され,しかもきちんと送出レベルも管理されて,音楽ソースとして十分な品質を備えるよう,配慮がありました。

 今,そうした番組は非常に少なくなっています。DJを楽しむ番組が増えたこと,ヘビーローテーションに代表される,完全なプロモーションの道具と化した現実に,FMラジオはAMラジオと同じように,役割が変わったんだなあと実感します。

 そうした番組を高音質で録音し,編集,ライブラリとして保存するわけはありません。自ずと録音の市場は縮小していきます。音楽との関わりは刹那的になり,生まれてからずっとそういう付き合いしかしてこなかった世代にとって,音楽とは心に刻む物から通り過ぎる物に変わっていったと,そんな風に思います。

 同じ事がテレビで起こっているように思いませんか。

 面白い番組,残したいと思うべき番組が激減している今日,私個人はテレビの役割は変わったのだと思っていますし,結果として録画して残そうと思うこともほとんどなくなりました。

 だから,ダビング10については,もうどうでもいいです。テレビもニュースくらいしか見ていませんし,見逃しても構わないので,録画に失敗しても問題なしです。

 ということで,権利者さんもメーカーさんも,もう勝手にやってください。私はもう関心がありません。

 しかしこの点,映画は実にうまくやってますね。一日の長ありといったところでしょうか。テレビは所詮テレビですね。

完全プロ志向

 先日,薬師寺展を見て来たことを書きましたが,仏像とか高価な美術品とか,運送には必ず日通が出てきますね。

 日本通運・・・日本を代表する運送屋さんです。失敗の許されない貴重なものを運ぶときには必ず登場するスーパープロ集団で,私のような中途半端なプロ志向な人にはたまらないものがあったりします。

 クロネコヤマトがキヤノンなら日通はニコンでしょうか。(佐川がどこかは勝手に考えて下さい)

 クロネコヤマトがVAIOなら,日通はThinkPadでしょうか。(佐川が・・・以下同文)

 クロネコヤマトが付属のキーボードなら,日通は東プレのRealForceでしょうか。(以下同文)

 そんなことはどうでもいいのですが,日通にはどんなものでも確実に運ぶために組織された専門家集団があり,そこには「梱包のプロ」や「チェーンブロックの達人」達が,日夜人類の至宝を安全に運んでいるんだそうです。

 まあ,どんな運送屋さんにもそういう組織や技能はあるんでしょうが,それでも私のような素人にさえ,日通の定評だけは耳にします。

 薬師寺展を見た後,友人に「日通はせっかくいい仕事をしてるんだから,もっとプロ志向であることをアピールすればええのにな,私みたいなエセプロなんか,ガンガンペリカン便を使うはずやのに」などと言っていた矢先,ペリカン便がなくなるという報道を目にしました。

 先月末,郵便事業会社と日本通運が,両社の宅配事業をする新会社「JPエクスプレス」を今年6月に発足させます。来年4月には完全統合しますが,この時「ペリカン便」のブランドは消滅し,ゆうパックに統一されることに決まったそうです。

 日通は郵便事業会社と提携関係にありましたし,日通はペリカン便では赤字続き。両社の利害が一致したということでしょう。

 実のところ,かの日通にしょーもない荷物をお願いすることに,遠慮があったのは事実でした。30年前にペリカン便として宅配に参入する時も,正直どれくらい続く物なのかと,子供心に思っていたものでした。

 宅配と言えばクロネコヤマト,という時代に,郵便小包と佐川急便が追いつき,ペリカン便がマニアックな存在であった時代は長かったわけですが,急激に身近な存在になったのが,そう,amazon.comです。

 私の記憶では,amazon.comは最初は佐川急便だったんですね。これがある時ペリカン便に変わったのです。あまり悪口をいうのはどうかと思うのですが,当時の佐川急便にはなにかと嫌な思いをしていて,これが理由でamazon.comを使わないほどでした。(余談ですが,メール便が出てきたときに,もう二度とamazon.comは使わないと神に誓いました・・・)

 ペリカン便に変わって,状況は一変しました。夜遅くまで再配達をしてくれる,時間を守ってくれる,荷物は丁寧に扱われていて,たばこ臭くない・・・

 もう1つ,個人的に,うちを担当してくれているセールスドライバーのおばちゃんが,とても良い方なんですね。いかにもトラックの運ちゃんという感じの豪快なおばちゃんですが,いつもニコニコして実にかわいらしいのです。

 おばちゃんとは荷物を受け取るときしか会話しませんし,特に世間話をするわけでもありませんが,彼女に担当が変わってからというもの,amazon.comを積極的に使うようになりました。

 ペリカン便はamazon.com以外で荷物の届くことはありませんから,amazon.comでしばらく買わないと,おばちゃんどうしてるかなあ,そろそろamazon.comで買ってみるかなあ,と,思ったりすることもしばしばです。

 夜遅くに帰宅して不在票に彼女の名前を見つけると,妙な安堵感を味わい,そして週末土曜日の再配達をインターネットで依頼し,再開を心待ちにするのです。

 最近でこそ女性のドライバーをよく見るようになりましたが,うちの地域で最初に女性が訪れたのは,ペリカン便が最初でした。古い大きな運送屋さんの割に,男女区別無しというのはなかなかやるもんだ,とそんな風に思ったことも,日通に対して好感を持った理由だったのだと思います。

 それから随分長く,amazon.comはペリカン便から変わることはなく,さすがに大口を獲得したんだから安泰だろうと思っていたのですが,やっぱamazon.comだけに,その料金は随分安く請け負っているんでしょうね。元が佐川急便で,そこからもぎ取るんですからね,相当安い料金でやっているんでしょう。

 100年の歴史を持つ郵便小包と,同じく伝統ある日通の宅配事業が一緒になると言うある意味歴史的事件より,私の興味はうちの担当のおばちゃんがどうなるのか,に尽きます。引き続きうちを担当してくれればいいんですが,人員整理やら外注化やら,事業統合には何かときな臭い話がついて回るものです。

 果たしてその時,おばちゃんはまた私の前に笑顔で現れてくれるのでしょうか。

小さい会社が巨大企業に飲み込まれる時

 ここ数日で報道された技術的なニュースについて,少し感じた事を書こうと思います。

(1)パイオニアのプラズマディスプレイ事業を松下電器に統合

 パイオニアのプラズマディスプレイは,その技術力に突出した物があり,内外で高い評価を得ています。私も実物を見てみましたが,KUROの素晴らしさには,プラズマディスプレイのポテンシャルの高さを感じずにはいられません。

 私は現在主流の液晶テレビにはさっぱり魅力を感じず,特に欲しいとも思っていないのですが,大画面テレビを買うときになったら,できればプラズマディスプレイを買いたいなあと思っていました。

 松下電器の一人勝ちを見ていると,松下電器のテレビ屋としての意地を感じるのですが,技術的にというより,そのスタンス的に,パイオニアとは全く違う考え方をしていると思います。

 松下電器くらいになると,プラズマディスプレイでもそこそこの数が見込め,数を売ることで利益を出すことが現実的に可能です。でもパイオニアにはそこまでの数を見込めません。それでパイオニアはプレミアム戦略で,数は出なくとも単価を上げる作戦で乗り切ろうとしたのですが,これは素人の私でも間違いだと気が付きます。

 所詮,大画面のディスプレイ事業というのは,設備産業なのです。

 となると,やはりお金を持っていて,数を売ることの出来る会社しか継続できません。技術力の高さと製品の性能だけで生き残れるようなものでは残念ながらないということです。

 しかし,松下電器も,おそらくパイオニアには一目置いていたはずです。例えば予備発光をなくすといった,その技術力は,松下電器もライバルとしては物足りなくとも,盟友としての尊敬はあったはずです。

 しかし,そのパイオニアは,技術力とは裏腹に,それを事業に結びつけるだけの体力を持っていません。すでに決着の着いているライバルが退場するのですから,松下電器の勝利で終わっていいはずなのに,パイオニアの技術者の転籍を基本的に全員受け入れ,パイオニアの作った技術を自社に融合させるとまでいうのですから,勝者としては破格の対応であると思います。

 それだけ,パイオニアは価値があった,もっといい言い方をするとパイオニアの作った技術が優れていたのだ,ということなんだろうと思います。つまり,松下電器の技術陣が,技術者として公平だったということでもあるのでしょう。

 とはいえ,松下電器が火の車で,転籍を受け入れるだけのゆとりがないとそういう話にもなりません。ここが重要なのですが,松下電器は昨年から大量の中途採用を行っています。数百人単位,しかも長期的な採用を行っているのですが,その大部分は技術者,中でもディスプレイ事業にはかなりのてこ入れがあるようです。

 優秀な人材を確保するために,企業はお金と時間と手間を信じられないほど投入します。松下電器も例外ではなく,それだけのリソースを投入して,果たして本当に優秀な技術者なのか,優秀であっても即戦力としてディスプレイ事業に貢献してもらえるか,さっぱりわからないわけですね。

 実績のある技術者を採用できたとしても,前の会社の技術を手土産に持ってきてくれることはありません。それは契約違反ですし,マナーとしても許されません。

 ところがです,高い技術力で知られたパイオニアから,まとまった数の現役エンジニアが,その技術を手土産に転籍してくるのです。ディスプレイ事業に貢献すること間違いなしの技術者が一度に揃うなんて,千載一遇のチャンスでもあるわけです。これはおいしすぎます。

 さらに大事なことは,パイオニアのプラズマディスプレイが,理論や特許だけではなく,実際の製品,しかも量産品として市場に導入されていることです。そのエンジニアは量産品を作っています。松下電器は量産品で食べている会社ですから,量産できる技術と人でないと,値打ちがないのです。

 ということで,結論から言うと,パイオニアの技術は間違いなく生きると思います。彼らの技術は尊敬を受けていますし,その技術を生み育てた人もそのまま残ります。松下が持つ大量生産を行う技術,製造能力と組み合わせれば,まず間違いなく進化したプラズマディスプレイが世に出てくるでしょう。

 松下電器での扱いにもよりますが,パイオニアからの転籍者のモチベーションもそれほど下がらないでしょう。むしろ,プラズマディスプレイ陣営の大同団結と考える前向きな技術者もでてくるのではないかと,私などは感じます。

 また,パネルの性能以外にも,松下電器は基礎研究能力,半導体の開発能力で世界の先端にいます。パネルの高いポテンシャルを生かし切る駆動技術,そしてテレビ屋としての画造りのノウハウが結集し,これまでにない高画質を見せてくれるはずです。

 松下電器が勝者として奢らず,パイオニアが敗者として卑屈にならず,偉い人はともかくせめて技術者は技術に公平であり続け,お互いの仕事を尊敬し合って,よりよい物を作るという最終目的に向かって突き進んで欲しいと,私は願ってやみません。


(2)アップルが買収した会社

 先日,アップルが決算を発表しましたが,例によって絶好調だったようです。いちいち数字は書きませんが,絶好調であることはもはや当たり前で,以前のような大騒ぎもないようです。

 私も決算についてはそんなに興味もないのですが,問題は同時に出た話で,P.A. Semiという半導体会社を買収したという事実です。

 P.A. Semiという会社,私は直接話をしたことはないのですが,あるルートで一度紹介を受けたことがありますし,個人的にも興味のある会社でしたので,それが今頃,しかもアップルに買収されるという形でお目にかかるとは考えてもみませんでした。

 このP.A. Semiという会社,さすがに普段は偉そうなアナリスト達もノーマークだったようで,過小評価も過大評価も様々です。そういう少ない情報からアップルの買収劇を邪推する話もあちこちで出ていて,ちょっとうんざり気味です。

 P.A. Semiは,低消費電力マイクロプロセッサの開発を目的に設立されたファブレスの半導体会社です。ISSCCでも論文を発表するなど,技術的には定評のあるベンチャーです。

 DECはその昔,世界最速のマイクロプロセッサであるAlphaをVAX11の先にある21世紀の理想郷として開発,その割り切ったデザインに起因するソフトウェア開発上の制約と引き替えに手に入れた爆速クロックで,尖ったユーザーからの支持を受けていました。

 Aplhaは結局終焉,その遺伝子は多くの設計者が移籍したAMDでK7やK8に受け継がれるのですが,DECはAlphaとは別に,低消費電力プロセッサでも強烈な製品を作っていました。

 それがStrongARMです。ARMはイギリスのプロセッサメーカーで,低消費電力で動作する組み込みプロセッサとして世界を席巻しています。自身は製造を行わず,その代わりどこで作っても同じ性能が出るように設計を行っていることで,世界中の会社がARMのライセンスを購入して,作りまくっています。

 ARMにとってその設計データは最重要資産です。製造に必要な形で提供されるデータはいわばソースリストではないため,中身についてはさっぱりわかりません。

 ただ,ARMは,世界で数社だけ,その中身を公開しています。

 ARMが技術力を認め,内部を改編することを許している,本当に特別な会社,その1つが当時のDECだったのです。

 改編した内容はARMにもフィードバックされ,次の世代のARMプロセッサにも反映されます。もちろん,多額のライセンス料も必要でしょうが,お金だけではどうにもならないものでもあります。

 DECは,当時のARMプロセッサを改良し,組み込みプロセッサとしてはにわかに信じがたい高クロックと,考えられないような低い消費電力を両立させて,これをStrongARMと名付けました。

 ARM7から改良されたStrongARMの成果は,後のARM9にも取り入れられることになります。

 しかし,DECは解体され,StrongARMのチームはライセンスごとインテルの手に渡ります。当時,インテルはStrongARMそのものより,欲しくても手に入らなかったARMのライセンスを手にれるのが目的だったと言われるほど,この当時いろいろな憶測を生みました。後にStrongARMはXScaleと呼ばれ,それなりの進化を遂げますが,破竹の勢いで急成長するBroadcomに売却,組み込みプロセッサから撤退するのかと騒がれた直後にXScaleと競合する組み込み用x86プロセッサであるATOMを発表するという流れに,妙な納得をした記憶があります。

 いずれにせよ,インテルが買収を行う段階で,自由闊達な文化を謳歌していたDECのエンジニアの多くは,インテルへの移籍を断り,AMDに行くか,別の会社を立ち上げることになります。

 その1つに,AlchemySemiconductorという会社がありました。StrongARMの設計者が結集したこの半導体会社は,ARMの高額なライセンスフィーに納得出来ず,MIPSで低消費電力の組み込みプロセッサを作り上げることにしました。

 出来上がったAu1500などの組み込みプロセッサは,評判通りの低消費電力と処理能力を両立させ,個人的には当時ARMをしのぐ性能だったと記憶しています。

 Alchemyは結局AMDに買収されてしまいますが,同じようにStrongARMを手がけたエンジニアが興した会社が,P.A. Semiなのです。

 創業者でCEOのDan DobberpuhlさんはStrongARMの設計者です。StrongARMはその設計ツールもDEC社内で作られたもので,それゆえ極限の性能をたたき出していたのですが,P.A. Semiは市販のツールで,強力で低消費電力のプロセッサを作ることにしているそうです。

 そして彼らが選んだプロセッサアーキテクチャが,POWERです。IBMがPOWERをオープンにしたこと,その性能が高いことが決め手になったということなのですが,やはりPOWERの持つプロセッサとしての素性の良さがあったのではないかと思います。

 完成したプロセッサの性能は,PowerPC970互換で,クロック2GHzのデュアルコア,周辺チップを取り込みつつ消費電力は13Wと,これを使えばPowerBookG5(しかもDualコア!)があっという間に完成してしまうんではないかと思われるようなものになっています。うーん,これは欲しいかも。

 こんな会社だから,アップルが買収したというニュースが流れると,それはちょっとした憶測合戦になるのです。インテルを裏切るのか,iPhoneに採用されるだろう,UMPCに参戦するではないか,などなど・・・

 でも,アップルは彼らのプロセッサ,つまり製品に魅力があるわけではないと思います。自前でプロセッサを作ることのメリットはないですし,まして外販まで考えたプロセッサメーカーになろうというのもばかげた話です。

 では結局何が欲しかったのかというと,やはり彼らの高い技術力です。間違いなく世界を代表するプロセッサアーキテクトがいる会社です。半導体の設計能力も最先端。こういう人材を半導体会社でないセットメーカーがまとめて手に入れるのは,やはりなかなか難しいものですが,彼らのような人たちが生み出す「カスタムLSI」を作って製品の差別化を図ることは,セットメーカーとしては非常に重要な戦略です。

 アップルはこれまで,こなれた部品を上手に使って,差別化はソフトウェア,とりわけ優れたユーザーインターフェースで行って他を圧倒してきたわけですね。カスタムLSIというハードウェアで差別化を図って優位に立ってきたのがソニーや松下などの日本のメーカーであり,特にポータブル音楽プレイヤーではソニーが熱心に取り組んできたものです。

 結果はご承知の通り,ハードウェアの負けでした。大事なことは,ハードウェアかソフトウェアか,という択一の選択の結果,ハードウェアが敗北したということです。どちらも可能なリソースがあるなら,最強であることに代わりはありません。

 アップルが,世界屈指の半導体スペシャリストを囲い込んだ事実は,アップルにソフトウェア,ユーザーインターフェースに次ぐ第3の差別化技術をもたらすこととなり,私の目には彼らの戦略転換のメッセージに聞こえるのです。

 現実的に,ポータブル音楽プレイヤーの伸びが鈍化しています。この結果NANDフラッシュの需要も減るだろうという予測が出ているくらいで,アップルもiPodでいつまで食べていけるか,不安になっていてもおかしくはないです。

 iPhoneで食べていけるのか,それとも別の物を仕込んでいるのか・・・これから仕込むのかも知れませんが,いずれにせよアップルが次の一手を打ってくることは,間違いないと思います。それも,他社の真似できないような「独自ハードウェア」をひっさげて・・・

 

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