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電子負荷をパワーアップ

  • 2016/10/14 12:11
  • カテゴリー:make:

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 さてもう1つ,digikeyで手に入れた部品であるインフィニオンのBTS141を使うことにしましょう。

 もともとこれ,Re:load2という名前の電子負荷キットのアップグレード用に買ったものです。キットの説明ではBTS117という定格の小さなMOS-FETが使われていることになっているのですが,私が買ったキットにはBTS133という上位の定格のものが入っていました。

 これを,さらに上位のBTS141に交換し,さらに多くの電力を吸い込めるようにしようというのが,今回の目論見です。

 ここで,インフィニオンのBTS117,BTS133,BT141について簡単に書いておきます。基本的にはN-chのMOS-FETなのですが,熱や電流に対する保護回路が入っていて,外に設ける必要がありません。

 モータやソレノイドといったような決まった負荷を駆動する用途なら保護回路の設計も楽なのでしょうが,電子負荷のようにギリギリ上限を狙う必要があり,しかも発生する熱をきちんと考慮しないといけない保護回路というのは,なかなかきちんと動作させるのが大変そうです。

 それがチップの上に作り込まれているというのですから,これほど完璧なものもありません。確実に動作する保護回路のおかげで回路が極めて簡単になり,かつ確実で安全なわけですが,このキットはこの部品を選んだことで綺麗にまとまっているといってよいと思います。

 ということで,この3つの定格を並べてみます。左から順に,耐圧,定格電流,オン抵抗,最大許容損失,ジャンクションからケースまでの熱抵抗です。

BTS117 60V 3.5A 100mΩ 50W 2.5K/W
BTS133 60V 7A 50mΩ 90W 1.4K/W
BTS141 60V 12A 28mΩ 149W 0.84K/W

 見て分かるように,順に定格が大きくなっているのがわかります。

 オン抵抗が半分になると電流も倍流せるようになり,損失も倍近くを扱えるようになるわけです。

 とはいえ,電子負荷というのは完全にMOS-FETが導通状態(つまり上記のオン抵抗)になる前の,抵抗を持っている状態で使います。ドレインとソースの間に15Ωの抵抗がある状態なら,15Vをかけると1A流れるわけで,つまりここで15Wの電力を熱に変換してくれるということになります。

 そういう観点で言うと,実は電子負荷ではオン抵抗は関係がありません。

 BTS133を使っている現状の電子負荷では,15V・2Aの30Wで保護回路が働いてしまいますので,実はBTS117でも定格内です。放熱器をもっと大きくすればまだまだ吸い込める余地があるということではあるのですが,現実には無限大の放熱器は用意出来ませんし,仮に用意出来ても熱抵抗をゼロには出来ません。

 ここでBTS141にするとうれしいのが,ジャンクションからの熱抵抗の低さです。熱抵抗が大きいという事は,発生した熱を外に出すことが難しいという事になるので,よりジャンクション温度を低く維持するためには,熱抵抗を低くしないといけません。

 BTS117は2.5K/W,BTS141は0.84K/Wと大きな差がありますが,BTS141は熱抵抗が低いために,BTS117に比べるとよりジャンクションで発生した熱を外に吐き出す事が出来るので温度の上昇を小さく出来る,つまり大きな定格で使うことが出来るようになるということになります。

 ところで,BTS133はTO220で実装されているのですが,digikeyで手に入ったBTS141のパッケージはあいにくTO262でした。残念な事にTO220は生産中止で入手不可能とのことです。

 TO262はTO220ネジ留めをするフィンをカットし,足を曲げて基板に面実装を行うパッケージですので,とても似ているのですが取り付け方は全く異なります。

 TO220だと放熱器にネジ留めできたのに,TO262ではそうはいきません。

 先日購入した熱伝導型の接着剤でくっつけることを考えたのですが,絶縁が出来ないのでダメだとわかり,ちょっと考え込んでしまいました。

 TO262をTO220にする基板が売られていて,これを使えばいいように思うのですが,やっぱり間にガラスエポキシが挟まってしまうので,熱抵抗が増える方向に向かいます。それはちょっと嫌ですよね。

 で,考えた結論が,上から金属で押さえつけて密着です。これだと従来のTO220で使っていた絶縁シートをそのまま流用し,強い力で放熱器に密着させることができるでしょう。

 手頃な金属の板を探すのですが,うまい具合にタミヤの工作シリーズの,クランクの部品が発掘され,これを使うことにしました。

 放熱器にもう1つネジを切って,2本のネジで固定します。

 思った以上にしっかり固定できました。あまり強くしめると割れてしまうので程ほどにしないといけませんが,TO220での固定くらいの熱結合はしていると思います。

 あとは元通り配線するだけ。早速テストです。

 結論から言うと,安定して吸い込めるのは,従来の15V-2Aの30Wから,19.5V-2Aの19Wまで拡大しました。きりのいいところで20V-2Aなら良かったのですが,これだと15分くらいで保護回路が動作してしまいます。

 ということで,熱抵抗が1/3くらいになっているにも関わらず,吸い込める電力が3割増し程度にとどまっているのは少々不甲斐ない気もしますが,これはもう放熱器が小さくて,空冷をしていても追いつかない(事実かなり放熱器が熱くなる)言えて,もう少し大きな放熱器にした方が良い結果が得られたと思います。

 このサイズで40Wを吸い込めるんですから,無闇に大きな物にして利便性を損なうのもどうかと思いますから,これはこれでよし。

 ところでこの電子負荷ですが,電源回路や電池の性能のチェックに使うつもりで用意したものの,案外便利に使っているのが,ニッケル水素電池の放電です。

 劣化が進んで急速充電器が「不良品」と判定してしまうニッケル水素電池が増えてきたのですが,完全に放電しきってから充電するとうまくいくことがあります。

 その際の放電器に使っているのですが,0Vから動作し,電流もつまみ1つで可変出来るのでとても便利です。これだけでも電子負荷を作った甲斐があったとさえ思います。

VP-7722AにIHF-BPFを内蔵する

  • 2016/10/13 12:14
  • カテゴリー:make:

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 FMチューナーの調整のための環境を,それなりの覚悟で行ったのはいいのですが,どうも調整しきれずにモヤモヤとした気分のままに,使い続けている状態です。

 まあそのうち,今後の課題だな,と問題の棚上げをずっとし続けるわけにもいかず,特にステレオ時の歪率やS/Nの測定値が非常に悪いことに,決着を着けないといけないなと思っていました。

 測定値が悪いのは,FMのステレオ放送の方式によるものなのか,あるいは本当に実力が低いのか。

 そう,F-757にしても,KT-1100Dにしても,こんなに悪いはずがないのです。やっぱり19kHzのパイロット信号が漏れていて,これが歪率を悪化させていると考えるべきです。

 では,どうすれば正しく測定出来るのか。かつてケンウッドでFMチューナーを設計されていた方のサイトに記載があったのですが,なんでもFMチューナーの測定用に用意された,専用のフィルタを通して測定するのが正解なのだそうです。

 IHF-BPFと呼ばれるそのフィルタは,オーディオアナライザに標準搭載されることが多いので,特に断りもなくこれを使って測定を行うものなのですが,FMチューナーの測定を行うことが少ない現在,そうしたフィルタの存在は非常に希薄で,あまり話題に上がることはないように思います。

 私も偉そうなことを普段は言っていますが,やっぱり未熟者ですので,そうしたフィルタの存在をきちんと意識して測定していたとは言えません。だからFMチューナーの測定を,単純な30kHzのLPFで済ませては,結果が芳しくないと悩むことになるわけです。

 で,そのIHF-BPFですが,google先生に聞いてみても,案外ストレートな答えが出てきません。IHFという団体は名称が変わっていますし,国内の測定規格についても削除や変更があって,今どうなっているのかがよく分からないのです。

 しかし,フィルタの特性をきちんと合わせないと,公平な性能評価も出来ません。カタログに書かれた値に近づけて初期性能に戻して上げることも出来ません。やっぱり,IHF-BPFは,FMチューナーの調整環境には必須なのです。

 私のVP-7722Aには,このフィルタが標準では入っていません。オプションで内蔵できるようになっています。

 高級機なんだし最初から入っていて欲しいんですが,冷静に考えるとデジタルオーディオにも対応出来るくらいの高精度なオーディオアナライザゆえに,測定対象に合わせたフィルタを選べるようになっているんだなあと思います。

 内蔵はカードエッジコネクタに専用の基板を差し込むだけで終わります。それでフィルタ選択キーの「OPT」が有効になるという仕組みです。でも,そのオプションが今どき中古で市場に出てくる可能性はほとんどありません。

 なら,自作するか。

 IHF-BPFの特性がわかれば,それに準じたフィルタを作り,入力端子の前に置いてやるだけです。内蔵するのとは違って使い勝手はよくありませんが,なんとなくこれで十分な気がします。

 しかし,肝心な特性がよく分かりません。19kHzだけトラップするだけで済ませてもいいように思いますが,厳密に言えばIHF-BPFは400Hz以下をカットし,15kHz以上もカットして,送信されてくる音声信号以外をすべてカットするようになっているはずです。

 あーややこしい。

 ということでずっと棚上げになっていたのですが,ある時偶然,VP-7722Aのサービスマニュアルを見る機会がありました。珍しい物なのでじっくり見たのですが,ここにオプションのフィルタの回路図が出ているではありませんか。

 見てみると,そんなに難しいものではありません。2回路入りのFET入力OP-AMPであるNJM082Dが2つ使われているだけのものです。カードエッジコネクタのピン配も書かれているので,うまく作れば互換ボードを作って内蔵できそうです。

 よし,作ろう。

 とはいえ,GPSDOもNutubeも先に片付けたかったので,VP-7722A用のIHF-BPFはずっと後回しになっていました。コツコツと部品を集めて,8月頭には全部揃ったのですが,取りかかったのは9月末です。

 まず,必要な部品について。半導体は大した事はありません。どこでも売っている,安価な部品ですので足を引っ張ることはありませんでした。

 問題になるのは抵抗とコンデンサです。いずれも誤差は1%,抵抗に至ってはE96系列です。抵抗はアキバに行けばなんとか買えるとして,コンデンサは最近1%精度のフィルムコンデンサが軒並み製造中止になっているので,簡単には手に入らないでしょう。

 誤差が1%を要求しているということは,相応の性能の抵抗とコンデンサを求めているということですから,温度特性も校了しないといけません。カーボン抵抗を100本買って選別を行っても,温度特性でアウトなわけです。

 そこで,ちょっと考えました。抵抗については,多回転型の半固定抵抗(サーメット)と切りのいい値の金属皮膜抵抗を使い,指定の値の抵抗を作ります。抵抗値は実測で追い込む事になりますが,幸い秋月に50円くらいで売られているサーメットが温度特性も良くて,好都合です。

 このサーメットは横型なのですが,抵抗と組み合わせると立てて基板に取り付けることが出来ますから,今回の回路の実装にはかえって好都合です。
 
 とはいえ,安いと言っても50円です。組み合わせる金皮抵抗が10円として合計で60円ですから,アキバでE96系列の金皮抵抗を買っても,この値段以下で買えるんじゃないかと思います。

 コンデンサについては,共立エレショップで1%を可能な限り買いました。ここは数年前まで1%品のフィルムコンデンサを常備してくれたお店だったのですが,生産中止だけはいかんともしがたく,今は在庫だけが買えます。

 例えば,2000pFは1000pFを2つ並列にして作るとか,そういう工夫でなんとか揃えて行きます。1000pFのようにたくさん使うものは,多めに買って実測して,ちょうど2000pFになる組み合わせを作っておくことも可能です。

 部品が揃ったら,今度は基板です。ユニバーサル基板で作る事は決まっていましたが,コネクタをどうするかです。適合するカードエッジコネクタが手に入ると考えていなかったので。分解してコネクタから直接配線を引っ張り出して内蔵することになるだろうと思っていたのですが,実際にVP-7722Aを覗き込むと,2mmピッチ,片側10ピンのコネクタでした。

 そういえば2mmピッチのカードエッジコネクタってあったかもとジャンク箱をひっくり返すと,ありましたありました,ミニコンピュータかなにかの拡張ボードを作るための,専用ユニバーサル基板がジャンクで安く出ていたときに,5枚ほど買っておいたのが出てきました。

 基板もそのまま使えるかと思ったのですが,ベークで片面,しかも電源は配線済みということで,アナログ回路を作るにはちょっと厳しいですから,コネクタ部分だけカットして,10ピンにしました,

 これを,両面スルーホールのユニバーサル基板の端っこにくっつけます。試しにVP-7722Aに差し込んで見ると,うまく刺さってくれます。よしよし。

 ところで,回路規模はそんなに大きくはないのですが,なにせCR類が多いですし,複雑に繋がっているものですので,あまり基板が狭いと配線が綺麗に出来ず,特性が出ないかも知れません。

 こういうのって勘に頼るところが大きいわけですが,後で悩むのも面倒なので,ちょっともったいないのですが大きめの基板を使うことにしたのです。

 先に手配したサーメットと,手持ちの金皮抵抗を組み合わせて,所定の値の抵抗を作って行きます。面倒ですが一応4端子法で測定していきます。

 コンデンサも実測して組み合わせを作りました。どうしても5%品しか手に入らないものもあり,実測しても結構ずれてしまうものがありましたが,もう仕方がありません。

 部品も揃ったので,コツコツとハンダ付けです。カードエッジコネクタから入り,同じ所に出て行くので,信号の流れはU字型になります。あまりこういう配線になれていないのですが,信号の流れに沿って回路をぐるっと旋回させて配線をします。

 正負両電源を配線し,あいた部分は銅箔テープでGNDに落として,完成です。

 特に電源部分の配線間違いがあると,VP-7722Aを壊してしまうかもしれないので,組み込み前に外部に電源を用意して,正常に通電できるかどうかだけ確認してみます。

 そうすると,案の定間違ってました。正負両電源のマイナス側を逆にしていたので,OP-AMPにかかる電圧が正負の電圧の差になってしまい,まともに動かなくなっていました。
 
 これを修正,ついでに一部GNDに落ちていない配線も見つかったのでこれも修正しました。ところが電源器に繋ぐ時にうっかり間違え,電源を逆接続してしまいました。このOP-AMPはもう壊れてしまったかも知れません。

 そこも修正,今度は電流もたくさん流れないし,なにやら出力に信号も出ているようなので,もうVP-7722Aを壊すことはないでしょう。思い切って内蔵です。

 まずはOPTキーでこのフィルタに切り替わるかどうかですが,これは問題なし。

 ですが特性を見てみると,もう全然ダメです。本当なら,下の図のような特性にならないといけないのですが,19KHzのディップは全く出てきませんし,30kHz以上の帯域も-30dB程度の阻止能力しか出ていません。明らかにおかしいです。

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 配線間違いが大半だろうと何度も確認をしますが,なかなか尻尾がつかめません。電源ラインに入ったフィルタ用の15Ωが,マイナス側だけ75Ωになっていたのでこれを修正しましたが,変化はありません。

 うーん,困った。

 作っている間に調整したサーメットが狂ったかも知れないと回路から切り離して測定しますが問題なし。

 何段かになっているフィルタの回路を順番にバイパスしていき,どこの回路が正常に動いていないかを調べて,そこを重点的に確認すると・・・あったあった。

 1000pFを付けないといけない部分に,なんとまあ2700pFが付いているではありませんか。大きさも色も形もそっくり,ちょっとだけ2700pFの方が分厚いかなと思う感じなのですが,マーキングが他の部品で隠れていたため,確認が漏れていたようです。

 それにしても,部品の値を間違うとは・・・情けないです。

 交換してやると,期待通りの特性が出てきました。いや,よかったよかった。

 では,調整です。このボードには2つの半固定抵抗があります。1kHzでのゲインと15kHzでのゲインです。

 特性図を見ると,1kHzと15kHzで0dBにすればいいように思うのですが,調整を試みると15kHzでは0dBになりません。調整範囲の上限と下限を見てみると,どうも-12dBぴったりに合わせるのが正しい様な感じです。

 ということで,1kHzと15kHzのゲインを交互に調整し,1kHzで0dB,15kHzで-12dBになるように調整をします。

 調整が終わってから,改めて動作の確認です。

 先に記載した特性図とほぼ同じような特性が出ています。19kHzのノッチフィルタついては,ちょっと周波数がずれてしまっていて,一番低くなる周波数が18.8kHzになりました。残念な事に19kHzでは-50dBは出ず,-46dBくらいまで悪化します。

 これでは今ひとつなんですけども,もう追い込むのも面倒なので,このままいきます。

 歪率やS/Nを確かめましたが,どちらもフィルタの有無で差が出ません。うまく動いているようです。

 取り付け場所が狭く,基板がショートしそうなので,ここにプラスチック板を張り付けて絶縁し,完成です。

 やれやれ,やっとIHF-BPFが内蔵できました。近いうちにFMチューナーの特性を測り,調整を行おうと思います。

 そうそう,1つ書き忘れていました。

 VP-7722Aをラックから引っ張り出したのですから,digikeyで買ったリレーに交換したのです。安いリレーを外し,DS2G-S-DC5Vに交換です。

 結果は当然のことですが,問題なし。特に良くなったわけではなく,正直言って交換の必要があったのかどうかもよく分からないのですが,こういうのってしばらくしておかしくなるものだったりするので,今交換しておく事で安心が得られるならちょうどよかったと思います。

 とはいえ,レンジの切り替えがあるとレベルが変わったりしますし,オシレータの周波数のズレも大きくなっているようですので,そもそもこのVP-7722Aの程度がだいぶ悪くなってきていると考えるべきでしょう。

 もちろん,再調整をすることでなんとかなりそうな気もしますが,やっぱり面倒ですし,歪率やS/Nにそんな厳密な測定結果が欲しいわけではありませんので,とりあえずこれでいいです。

digikeyでお買い物

  • 2016/10/12 14:08
  • カテゴリー:make:

 私が電子部品を買うお店は,昔は住んでいた大阪日本橋のパーツ屋さんでしたが,引っ越しして秋葉原になり,今は時間がないのでもっぱら通販です。

 販売店側も通販の比重が増えているということもあり,通販はお店にとっても「ついで」という感覚ではないと思います。

 秋月などは送料は無料になりませんが,1000円でも10000円でも送料は500円ですので,ついついたくさんまとめ買いをしてしまいます。以前にも書きましたが,部品の在庫が増え続けていて,おそらく死ぬまでに使い切ることは不可能だと思います。

 ところで,秋月にも共立にも若松にもマルツにも売っていない部品が最近チラチラと出てくるようになりました。子供の頃は,国産の部品ばかりで工作していたので海外の部品などは目にすることもなかったのですが,1つには国内メーカーのラインナップが整理されたこと,1つにはパーツ屋さんも在庫をたくさん持たなくなったこともあってか,日本のメーカーの部品でも海外のお店なら在庫があるという事が起きるようになっています。

 先日,VP-7722Aが故障した際に,リレーを交換した話をここに書きました。パナソニックのDS2G-S-DC5Vという黄色いリレーが壊れていたので,似たような品種に交換して治ったという話なのですが,このリレーが中国製で秋月価格で100円くらいのものです。

 スペックを比較してみても,やっぱり接触抵抗が大きいようで,オーディオアナライザという測定器にはちょっと気になるポイントでした。動いているから問題ないし,このスペックの差が結果に出てくるようなこともないので別にいいと言えばいいのですが,やっぱり同じ部品に交換したいものです。

 ですがこのDS2G-S-DC5Vというリレーは,主立った日本のパーツ屋さんには売っていないのです。売っている店もあるのですが,高価な上に取り寄せになっていて,納期に数週間以上かかるという,なんとも気の長い話です。

 で,この品種をそのままgoogle先生に尋ねて見ると,digikeyなるアメリカの部品屋さんに在庫があるというではありませんか。しかも値段も高くありません。(かといって安いわけでもありませんが)

 以前,RSコンポーネンツで買い物をしようとした際,個人ではダメと言われてしまった事がありました。digieyもきっとそういう,素人お断りのお店なんだろうと決めてかかっていたのですが,調べて見るとそういうことではないらしいです。

 といいますか,ホビーストの間でdigikeyは絶賛されています。

・検索がやりやすく部品がすぐに見つかる
・在庫が膨大でここでダメならあきらめるしかないと言うレベル
・アメリカから発送されるのに,中1日で届くくらい早い。
・個人も大丈夫。
・アメリカから発送なのに,7500円以上買えば送料無料。
・支払いは銀行振り込みを使える。
・銀行振り込みならなんと後払い。従って最速で発送される。
・安い。価格表示は日本円。

 日本語で部品を検索できますし,サポートも日本で大丈夫なのですが,それでもアメリカの業者ですし,アメリカから発送されるものです。飛行機に乗って成田までやってきますし,税関を通って,「輸入」されるものです。

 10000万円以内の場合,受取人の消費税支払いを免状されるというルールもありますし,7500円以上を買えば送料を含め,税金等もすべてfdigikey持ちですから,7500円以上10000円未満であれば,本当に商品の代金だけ支払えばよいことになります。これ,結構大切なことです。

 というとで,ものは試しです。digikeyで買い物をしてみましょう。手続きは水曜日の夜9時過ぎに行いました。

 買ったものは,まずリレーのDS2G-S-DV5Vです。これを10個。そして電子負荷キットのアップグレード用に大型のMOS-FETとしてインフィニオンのBTS141を買いました。

 BTS141はTO220タイプがディスコンになっていて,ネジ留めできない面実装品のTO262しか買えませんでしたが,国内では手に入らないものなので文句は言えません。

 SI5351Aも買いましたが,秋月が250円,digikeyなら200円です。これは安い。

 あとは,先日のDC45の修理で壊れた部品です。MOS-FETのSI4652と,コモンモードチョークのWL2シリーズです。

 これらを数個ずつ買って,8600円ほどでした。秋月でもこのくらい買うことを考えると,まあこんなものでしょう。

 明けて木曜日の深夜2時過ぎには発送完了のメールが届き,朝起きてからその早さに驚愕した訳ですが,到着予定がなんと金曜日とあるではありませんか。水曜日の夜中,実質木曜日にお願いした部品がですよ,海を越えて金曜日に届けると言うんですから,魔法でも使うのかと思ってしまいます。

 UPSのトラッキングをしていると,本当に金曜日の朝には成田に到着,そこから国内配送になりました。そして16時前には自宅に配達に来てくれたようです。帰宅すると不在票が入っていました。

 UPSは土日祝日は配達をしません。再発をするには,WEBからか電話で,ヤマト運輸で土曜日に再配達してください,とお願いすると,以後はUPSからヤマトに荷物が完全に渡ってしまうので,いつものクロネコヤマトと同じ感覚で受け取ることが出来ます。

 私の場合も,土曜日の夜の時間帯に無事受け取ることが出来ました。

 届いた部品も全く問題なく,支払った金額も予定通り,さっさと銀行に振り込んで,digieyでの買い物は完了です。

 日本国内ではなかなか買えない部品を,とても検索しやすく,しかも安い値段で買うことが出来て,支払いも受け取りも納期も国内業者となにも変わるところなく,本当にこれがアメリカなのか,これで本当に儲かっているのかと,不思議になるくらいでした。

 特に,海外製の家電製品の部品については,有効な購入先となりそうと思って開拓したdigikeyですが,部品小売りの世界的勝者として知られるだけあって,その利便性には感心しました。

 それでもまあ,国内の部品屋さんでの買い物が中心になるとは思いますが,digikeyとの上手な使い分けで,欲しい部品が買えないというストレスから脱却しようと思います。

 なお,今回買った部品を使った検討の結果は,後日。

DC45をまた修理する

  • 2016/09/27 13:32
  • カテゴリー:make:

 クリアビンを交換して絶好調なうちの主力掃除機ダイソンDC45ですが,先日の休みの日にまたまた壊れてしまいました。モーターヘッドのモーターが回らなくなってしまったのです。

 最初は,逆に回りっぱなしでした。トリガをゆるめて本体が止まっても,モーターヘッドだけは回り続けているという奇妙な状態だったのですが,とりあえず掃除だけ先にすませてしまおうと,そのまま掃除を続けていたのです。

 そのうち,別の部屋でゴム紐のようなものを巻き込んでしまいました。止まってしまったモーターヘッドからゴムを取り外したものの,今度は全く動かなくなってしまいました。

 DC45などのコードレスクリーナーは,吸引力の低さを,モーターヘッドでゴミをかき集めることでカバーして掃除機としての能力を維持していますから,モーターヘッドが壊れてしまえば,それはもうただのハンディクリーナーに過ぎません。

 これは困った。

 時間のない中で修理を試みます。

 まずはモーターヘッドが壊れていないか確認です。安定化電源を繋いだところ元気に回転しましたので,これはシロ。

 次に本体から電源が供給されているかどうかを確認します。そうすると電源ONでも0Vのままです。これならモーターは回るはずがありません。

 そして接点を確認です。確認したところ,クリアビンと本体との間の接点には問題がなく,やはり本体から電源が来ていないことがわかりました。

 こうなると分解です。

 ダイソンの製品はかなりしっかりと爪で引っかかっていますので,分解はかなり大変ですが,なんとかこじ開けました。見れば,トリガスイッチ付近に小さい基板があります。本体のモーターは元気よく回っていますので,どうもこの小さな基板があやしいです。

 基板は小さく,回路規模も大きくはありませんが,今どきの製品らしくマーキングのないチップ部品が多用されていて,回路図や部品の仕様が見つからないDC45の修理は,どうもお手上げになりそうな予感がします。(この段階で私は8割方あきらめていました)

 とりあえず,クリアビンのコネクタと基板の間の配線の断線を確認しましょう。結果はシロ。となるともう基板の中の話になります。

 パターンを追いかけていくと,8ピンのSOPの半導体にモーターヘッドが繋がっています。これがスイッチング用のMOS-FETでしょう。モーターが回らないのですから,これが壊れている可能性が大きいです。

 この半導体の品名を見ましたが,パッケージには「4620」と見慣れないロゴが刻印されています。これではさっぱりわからないのですが,試しにgoogle先生に4620で聞いてみたら,SI4620とAO4620の2つが,このパッケージでFETであると教えてくれました。

 SI4620はビシェイのN-ch MOS-FETですが,3Aクラスのショットキーダイオードも一緒に入っています。一方のAO4620はAlpha&OmegaSemiconductorという私の知らないメーカーのもので,N-chとP-chの両方が入っています。

 基板のパターンから推測するに,どうもSI4620ではないかなあという感じです。それに単純なブラシモーターを一方向に回転させるだけの話ですので,N-chとP-chを組み合わせる必要はありません。

 もう一度ロゴを見てみます。レーザーマーキングですので細かいところは潰れていますが,よくよくみると左右に膨れた中に縦棒が1つ入っています。

 もしやと思って,SI4620のオリジナルメーカーを調べて見ると,シリコニクスでした。シリコニクスはビシェイに買収されたのですが,そのシリコニクスのロゴが,まさにSの中にiが入っているものだったのです。


 基板のパターンを追いかけても矛盾はありません。

 これで間違いないでしょう。このFETは,ビシェイのSI4620DYと断定しました。

 SI4620のデータシートを見て,これに相当するものがないか探しましたが,残念な事にショットキーダイオードも入っているようなものはありませんでした。

 もうちょっと真面目に探したところ,どういう訳だか旧NECのMOS-FETが見つかりました。uPA1727です。耐圧60Vでドレイン電流が10Aもありますので,SI4620に比べると余裕があります。

 ショットキーダイオードは別に用意して外付けしますが,3Aクラスのですので手持ちのCMS01を使います。

 SI4620とuPA1727とは,FETの部分はピン互換ですので,そこも考えながらさっさと交換です。外したSI4620を半導体チェッカーで調べると,壊れていることがわかりました。uPA1727はちゃんとMOS-FETと判定されますので,チェッカーを信じてよいでしょう。

 交換が終わってドキドキしながら通電します。バッテリを差し込んだ瞬間,バッテリ端子から火花が出ましたが,まあそんなこともあるだろうと気にしません。そしてスイッチを入れますが,やっぱり電圧は0Vのまま。当然モーターも回りません。

 やっぱりダメか,と思ったところで,突然基板から「ぱちっ」という嫌な音がしました。すぐに電池を外しましたが時既に遅し。あの嫌な独特の臭いがします。

 外したuPA1727をチェッカーで調べると,ショートしていると出ました。ショットキーダイオードは無事だったのですが,MOS-FETは壊れてしまったようです。

 ということはですね,モーターが回らないのはMOS-FETの不良ですが,そのMOS-FETを壊してしまう別の理由がどっかにあるということです。その根本原因を見つけないと,修理は出来ません。

 ここで9割方くじけていたんですが,もうちょっと頑張って見ようと,改めてモーターヘッドの配線を調べて見ました。これまでここに電圧が出ているかどうかだけを見ていましたが,ふと導通を見てみたところ,ショートしています。

 MOS-FETもショットキーダイオードも外し,それでもショートしていますから,これはおかしいです。

 そこで,途中に入っている5mm x 10mmくらいの大きな部品を外してみました。すると導通はなくなります。なんとなく手応えを掴んだ私は,その部品のパターンを追いかけてみました。

 4端子のその部品はどうやら,コモンモードチョークのようです。コモンモードチョークですから,端子間の導通はあって当然なのですが,この部品については,4つの端子がすべて導通しています。LCRメーターで確認すると,長手方向の端子間には12uHのインダクタンスが見えていますが,短手方向の端子間は完全にショートです。

 ここまでの推測に自信はありますが,断定するにはまだ弱いです。そこでこの部品を分解してみました。すると,やっぱり2組の巻線がトロイダルコイルに巻かれている,コモンモードチョークで間違いありませんでした。

 そうすると,2点間のショートは部品の不良ということになります。

 どうせこの部品は壊れているんですから,さらに分解です。巻線を少しほどくと,ショートがなくなりました。どうも,巻線の被覆がちょっとだけむけてしまう,レアショートが起きてしまっているようです。

 この前提で,これまでに起こったことを整理します。

 まず,なんらかの原因でモーターヘッド制御用のMOS-FETが壊れてしまい,常時ONになってしまいました。このためトリガースイッチを離して本体のモーターを止めても,モーターヘッドだけは回り続けていました。

 そしてそのまま掃除を続けたわけですが,ゴムを巻き込んでしまいました。ここで普通なら保護回路が働き,モーターヘッドは止まるのですが,MOS-FETが壊れているため,保護回路によってモーターへの電源供給を止める指示をマイコンが出しても,モーターは止まってくれません。

 そのうち過電流がばーっと流れてしまい,コモンモードチョークの温度が上がっていきます。やがて高温のために被覆が溶け,ショートしてしまったところでモーターは停止,そして今度はMOS-FETに大電流が流れてMOS-FETが常時OFFで壊れたというわけです。

 だからモーターヘッドへの配線は導通してしまっていますし,MOS-FETを交換してもすぐに壊れてしまいます。

 ここで,私が推測したモーターヘッドの制御回路を記します。

20160927133331.jpg
 BBというのはモーターヘッドに繋がる配線で,基板にあったシルク印刷をそのまま書いています。

 ドレインと電源の間に入っている低抵抗(R050と書いてあるので0.05Ωでしょう)は,おそらく電流検出用の抵抗です。この抵抗に発生する電圧をマイコンが監視し,過電流を検出しているんだと思います。

 モーターとFETはバッテリーに直結されていますから,事故が起こると大惨事になるかも知れず,ちょっと怖いですね。

 さて,修理を続けましょう。まずはこのコモンモードチョークをどうするかが問題です。マーキングを見ても「WE 100」と書かれているだけでどんな部品かよくわかりません。

 ですが,DCブラシモーターに入っているコモンモードチョークと言えば,ノイズ対策です。ブラシと整流子が擦れるところで発生するノイズを押さえるために入れるものなので,私(というか我々家族)が使う分には,気にしなくていいでしょう。

 ゆえに,ここは直結です。

 あとはFETを交換して,一応完成。

 またもドキドキしながら動作確認をすると,今度は無事にモーターヘッドが回転します。よかった。修理出来ました。

 元のように組み直して(これがまた大変でした),動作確認をしてみると問題なく動作してくれています。

 ということで,どうも『巻物」に苦手意識がある私ですが,今回の故障もこいつが話をややこしくしたということで,やっぱり苦手意識は払拭出来そうにありません。

 今後,ノイズがひどく出ていて実害か出たらチョークを取り付けることにしますけど,それもまあ安全性との兼ね合いもあることですし,頭が痛いところです。

 先日のクリアビンに続き,基板のモーターヘッド制御回路まで無理に修理して延命されてしまった,我が家のDC45。私は不可能を可能にしたスーパードクター気取りで達成感もあったりするのですが,考えてみたらDC45は可愛そうなもので,そう簡単に死なせてもらえず,何度も何度も組成されて酷使されるというのは,なんだか不憫に思えてきました。

 まあ,DC45に変わる最新機種は随分と高価ですし,まだまだ頑張って欲しいというのが本当の所ですので,本体のメインモーターが死なない限りは,出来るだけ頑張って修理しようと思います。

 それにしても,回路図もない中で,よく修理できたと思います。

 

追記:

 コモンモードチョークですが,少し調べて見るとWurth Elektronikという会社のWE-SL2という部品の10uHのものであることが判明しました。データシートをみると,形状といい大きさといいマーキングといい,まさにビンゴです。


 でもこれ,信号用のもので,パワー用ではないんですよ。電流も1.6Aが最大ですし,これを1Aくらいまで流れてしまうモーターのラインに入れるのは,ちょっとどうかなあと思います。

 

 

Nutubeでヘッドホンアンプを作る

  • 2016/09/26 15:58
  • カテゴリー:make:

20160926155922.JPG

 コルグがノリタケとタッグを組んで作った,21世紀の真空管であるNutube。発表から世界中で注目され,コルグからNutubeを搭載した楽器やアンプが出ることを心待ちにする人達がいる一方で,部品としてNutube単体をぜひ買いたいという声も強くありました。

 そんな中でコルグが一般販売を計画中である事を発表,そしてついにさる9月23日に大手部品販売店で一般販売が始まりました。搭載製品よりも先に部品単体での販売が始まった事に,私などはおかしな勘ぐりを入れてしまうのですが,コルグは当初から一般販売を視野に入れていたようで,決して数は多くない自作を楽しむ人達を,ちゃんと見てくれているんだなあと,とてもうれしい気分になります。

 価格は5400円と結構高価ですが,粗悪な12AX7が2000円とか3000円とかすることを考えると,まだ大量生産もおぼつかないであろうNutubeが,全数検査済みでこの値段で買えるというのは,むしろリーズナブルと言って良いんじゃないでしょうか。

 かく申す私も,Nutubeには並々ならぬ興味を抱いており,データシートを見てはあれこれと思案し,評価ボードを測定しては膝を打ったりしてして過ごしておりました。

 そしてとりあえず習作として,Nutubeのヘッドホンアンプを作ってみました。

 習作ということで,結構気軽に作ったものの,これがなかなか良く出来ていて,聞いていてとても楽しいのです。

(1)Nutubeとは

 楽器メーカーのコルグと,蛍光表示管メーカーであるノリタケが共同で開発した直熱型の双三極真空管です。開発にいたった経緯はあちこちの媒体に出ていますのでここで触れる必要もありませんが,原理的にも構造的にも真空管そのものである蛍光表示管は,多くの家電製品や自動車に多用される表示デバイスであり,量産技術も品質管理も確立しています。

 一方の真空管は100年以上の歴史がありますが,ここ30年ほど大手メーカーでの製造は止まっており,設備ごと買い取った中国やロシア,東欧のメーカーが外貨を稼ぐために昔のまま作り続けている状況が続いていました。

 主にギターアンプに使われる真空管には一定の需要があるために製造は続いているのですが,それ以外は当時の流通在庫がすべてであると言われており,その多くはすでに取り尽くされたとされています。(特にバブル期の日本人はすごかったらしい)

 ただ,現在も製造されている真空管も安泰ではなく,製造設備の老朽化による量産効率の低下や品質の劣化など,真空管を巡る状況は年々悪くなっています。

 ある楽器メーカーの方のお話では,購入した新品の真空管のうち半分くらいが不良品であり,生産台数の倍の数の真空管を調達することになってしまう,そうすると真空管1本あたりの価格は倍になってしまうので,とても高価なデバイスになってしまうのだ,ということです。性能のばらつきも大きく,経験変化も大きいので,設計者としてはこんなもの,使いたくないというのが本音のようです。

 しかし,真空管というデバイスは,原理的に半導体では考えられないほど,素直で綺麗な動作をしていて,非常によい特性を示すのです。負帰還なしでもリニアリティに優れ,歪みは出力に対して緩やかに増え,そしてその歪み成分は耳に心地よい2次高調波を多く含んでいます。

 こうした特性によって作り出される音を好ましいと思う人は多く,楽器の一部としてのギターアンプは言うに及ばず,オーディオマニアの間でも真空管のアンプは非常に好まれています。

 消費電力が大きく,特性のばらつきも大きく,寿命が短く,入手が簡単ではないという真空管には大きな魅力がありますが,かといって量産品に使うにはかなり難しい部品です。
 
 そこで,コルグは蛍光表示管に着目,すでに大量に生産され,品質にも問題がないこの表示デバイスで真空管を作る事を実現してしまったわけです。

 旧来の真空管よりも消費電力が低く長寿命,小型で熱の発生も少なく,品質のばらつきも少ない上に大量生産が可能という,夢のような真空管が,Nutubeです。


(2)Nutubeの特性

 Nutubeは直熱型の三極管なので,三極管に準じた特性を持っています。しかし1つだけ特徴的なのは,グリッドにかけるバイアスがプラスであるという事です。

 通常,グリッドはマイナスにバイアスします。もしグリッドがプラスになっていると,カソードから飛び出した電子がグリッドに吸い込まれてしまいますよね。むしろ電子を通りにくくするように,マイナスのバイアスをかけて電子の通る量を調整しないといけないわけで,それが真空管の基本的な動作原理です。

 しかしNutubeはプラスをかけます。それも,+2.0Vのバイアスの時にもっとも歪みが小さくなるんだそうです。グリッドに電流が流れても,もともとフィラメントから出てくる電子の量が少ないので大した問題にならないんだろうと思いますが,なんでバイアスをプラスにすると歪率が小さくなるのかは,不明だそうです。

 調べてみると,このバイアスによって,大きく特性が変わることがわかりました。


(3)Nutubeの考え方

 Nutubeは双三極管ですので,12AX7や12AU7,6SN7などの真空管と同じ電圧増幅管をイメージしがちですが,ここで積極的な電圧ゲインを稼ぐと言うよりは,真空管と同じ入出力特性を持つ「フィルタ」として考えるのが一番すっきりします。

 後述しますが,電圧ゲインはたかだか5倍程度です。電流も引っ張れませんので,Nutubeだけで出来る事は限られます。

 世の中には,真空管の音を再現するために,DSPを使ったエフェクタが存在しますが,このDSPの代わりにNutubeを使うという感じです。当然Nutubeだけではスピーカーもヘッドホンも鳴りません。

 ですので,Nutubeは増幅をするデバイスと言うより,真空管の音に加工するエフェクタと考えて,増幅は他のデバイスにやらせるという役割分担が最適です。

 事実,コルグの評価ボードでは,ヘッドホンはTIのヘッドホンアンプICで鳴らしています。


(3)Nutubeの使い方

 基本的には,データシートにある回路と定数を使うのが最もよい性能を引き出します。あれこれいじっても良いのですが,結局悪くにしかならないですし,無理な動作はNutubeを劣化させてしまうので,私は怖くて出来ませんでした。

 負荷抵抗は300kΩから330kΩ程度,電源電圧は12Vから15Vくらいで動かします。フィラメントは0.7Vで17mA流します。そしてグリッドのバイアスは+2.0Vが一番良くて,この状態でゲインは約14dBというのが,コルグのオススメです。

 フィラメントは,3Vで150Ωの抵抗を直列に入れるとちょうど17mA程度流れるんだそうです。2つの三極管が入っているNutubeの場合,フィラメントは並列に繋ぎますので,この抵抗は75Ωになります。

 そしてバイアスは安定化してある必要がありますので,12VからLDOを使って3.3Vを作り,フィラメントとバイアスに使う電圧を作る事にします。

 そして,Nutubeの特性を維持するため,出力にはFETによるバッファを1つ入れるのが良いようです。


(4)回路

 回路図は以下のようになります。

20160926160110.jpg

 全段のNutubeはデータシートにある回路そのままです。結局これが一番良いという事になりましたが,なにせバイアスによって大きく特性が変わるデバイスですので,私はバイアスを2つ切り替えられるようにしてあります。

 NormalとHighの2つのポジションで,Normalは歪みが最小になるようにバイアスを調整します。およそ+2.0Vになります。

 一方のHighは聴感上で「これはいい」と思われるところに合わせたものです,およそ+2.3Vになりました。ゲインは実測で13dB程度で,5倍弱に増幅します。

 そして2SK30ATMのソースフォロワを通し,後段のダイヤモンドバッファにはいります。ここでしっかり低いインピーダンスの負荷もドライブするのですが,このダイヤモンドバッファ,実は以前嫁さんに作ったヘッドホンアンプの回路そのままです。

 というのも,あまりに無味無臭であり,これを音楽プレイヤーの間に挟んでも挟まなくても全く違いが分からないと酷評され,引き出しの奥にしまい込んだ回路なです。

 ですが,今回のように音の加工はあくまでNutubeであり,後段は勝手な色づけをしないことが望まれる用途においては,無味無臭はむしろ有益な個性といえて,今回まさかの大抜擢となりました。

 トランジスタは下手なオーディオ用よりもローノイズで高音質と言われる2SC1815と2SA1015のコンプリ,終段は2SC3422と2SA1359です。この2SC3422と2SA1359は耐圧が低いのでオーディオ用にはあまり出てきませんが,その分電流が流せる構造になっているので,特にコレクタ電流に対してのhFEの変動が小さく,オーディオ用によく使います。

 この終段のトランジスタのエミッタには1Ωが入っています。これ,小さくすると確実に熱暴走しますので,1Ωくらいが限界だと思います。


(5)測定結果

 測定した結果です。

 消費電流は200mA@12Vです。結構電気を食ってますが,ほとんどがダイヤモンドバッファのアイドル電流です。

 周波数特性ですが,40Hzから100kHzまで-3dB以内に入っていました。アナログ入力でハイレゾ対応もクソもないんでしょうけど,これくらいワイドレンジだと今どきの音楽もちゃんと聞こえるんじゃないでしょうか。

 S/Nは1kHz,800mV出力で82dB程度です。バイアスを切り替えてもほとんど変わりません。コルグの評価ボードでは60dB程度でしたので,まずまずの性能です。

 セパレーションは1kHz,800mVで約80dBです。これもなかなかよいと思います。

 さて,問題の歪率ですが,これは手っ取り早くグラフをご覧下さい。まずはNormal Biasから。

20160926160205.jpg

 

 次はHigh Biasです。

20160926160206.jpg


 Normal Biasにおける最小歪みは,1kHz,120mVでの0.05%です。これがHigh Biasになると1kHz,800mVで0.46%となります。はっきりいえば,High Biasの方が元気もツヤもあり,前に音が出てくる感じがします。ただ,繊細さは失われ,解像感も減ってしまいます。

 特徴的なのはグラフを見れば一目瞭然で,High Biasの方が歪みは多いのですが,歪みの増加は緩やかです。Normal Biasは歪みは少なくとても優秀なのですが,急激に歪みが増えてしまいます。

 とはいえ半導体アンプほど急激に増加することはなく,Normal Biasでも300Bにあっさりと負帰還をかけたくらいの特性です。

 こんな風に,出力に対して歪みが直線的に増えるアンプというのは,我々はあまり体験しません。これが結構心地よく,私はもっぱらHigh Biasで使っています。

 なおバイアスの切り替えは,バイアスの回路に大きめの電解コンデンサが入っているために,すぐに変化しません。2秒くらいでゆるやかに変化します。そのため,バイアスを切り替えたことで急に音質の変化は起こりません。

 しかし,その変化は大きく,しばらくしてから「今どっちのポジション?」と聞けば,ほぼ100%正解します。


(6)まとめ

 習作という事で,前段はデータシートそのまま,後段は過去に作った無味無臭な電流バッファで,その間をカップリングコンデンサで繋ぐという芸のない回路ではあるのですが,一応部品は厳選し,GNDをしっかり取って,モノアンプを2台で構成するイメージで作りました。

 おかげでNutubeのカラーが素直に出てきて,半導体アンプにありがちな鋭角的な音が引っ込み,ヘッドホンで直熱3極管の音が楽しめるようになりました。もう手放せません。

 また,独自の工夫としてバイアスの切り替え機構が大変面白く,歪みの乗り方でこんなに音が変わるものかと,はっとさせられました。

 世の中には,わざわざ2次高調波を付加して,音に元気やツヤを与えるエフェクタがあります。エキサイターというのがそれなんですが,うまく使うと音が前に出て,太くなるんですね。

 真空管のアンプにはこうした「穏やかな歪み」が多く含まれていて,それが心地よさを作ると昔から言われていますが,Nutubeが目指したのはまさにこれで,ヘッドホンアンプのようなものでも,その効果が大きいことには驚きました。

 電源はスイッチング式の12VのACアダプタですから,音質改善にはまだまだ余地があると思います。
 
 ということでNutube,そのうちこれで差動を組んだり,NutubeだけでOP-AMPを作ったりする猛者が現れるでしょう。もっと電圧ゲインを取り,後段もしっかり作って,スピーカーをドライブするパワーアンプに仕上げても面白いと思います。

 Nutubeがいつまで販売されるか分かりませんが,一過性のブームで終わることなく,自作のジャンルの1つとして定着することを願ってやみません。


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