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カテゴリー「make:」の検索結果は以下のとおりです。

「ステレオ」付録スピーカーの行き着く先

  • 2011/07/26 12:20
  • カテゴリー:make:

ファイル 494-1.jpg

 「ステレオ」の付録だったスピーカーキットと,これに合うように設計されたエンクロージャを手に入れたわけですが,その後の話です。

・アンプを作る

 なんといっても,アンプがなければ音が出ません。手持ちのアンプとしては6V6シングルがありますが,まさかこのスピーカーをでかい,おもい,熱いの三重苦の真空管アンプでならすわけにもいかず,どうしたものかと思案しておりました。

 もともと,音質に不満のあるテレビ用のスピーカーを考えていたので,そんなに爆音が出る必要もなく,また超高音質であることもないので,小さく気楽に作る事を念頭に置きます。

 最近,作りやすさ,値段の安さ,そして出来上がったアンプの音質の良さから自作愛好家に間で定番化しつつある,HT82V739を試してみます。秋月で1つ50円。大阪のシリコンハウスでもこんなもんでしょう。

 このIC,よく調べてみるとなかなか優れものです。現時点で欠点が見当たりません。電源電圧は5V単電源,出力は8Ωで1.2Wと電源電圧5Vの時に取り出せる出力としては目一杯です。

 BTLですので出力に大きなカップリングコンデンサは必要なく,部品点数も減って小さく作れる上に,低音再生能力を邪魔する物がありません。外付けの部品は入力のカップリングコンデンサ,基準電圧のカップリングコンデンサ,電源のカップリングコンデンサの3つだけです。

 CMOS構成なのでスタンバイ時の電流が少なく,わずか1uAです。CE端子を使ってやれば電源スイッチなどわざわざ設ける必要などなさそうです。

 それでいて,S/Nが70dB以上,歪み率が0.18%と,すでにHi-Fi領域といっていい性能を誇ります。部品の数が少ないという事は再現性も高いという事で,このICを5Vという低い電圧で使うだけで,十分な性能の高音質アンプをいとも簡単に作る事が出来てしまうんですね。

 しかも50円ですからね,これは安いですよ。

 実際,アンプ部を作ってみると,なかなかいい音がします。ノイズも聞こえず,歪みも少なく,低域も高域も素直に伸びており,位相特性もなかなか良さそうです。これは気に入りました。

 5V-2AのスイッチングのACアダプタを使う事にしましたが,電源の弱さとノイズが気になったので,3300uFの電解コンデンサを電源に追加しました。これでゆとりが出てきました。

 ケースはタカチの小型ケースに入れます。ABS製ですが,前後のパネルが分解できるので加工も楽です。実際の加工は基板に載せる部品が決まって,基板を固定する位置がきちんと判明する最後に行います。


・自動電源スイッチ

 テレビ用ですので,いちいち電源を入れるのは面倒ですし,音量がリモコンで変わらないのも面倒です。そこで,テレビのヘッドフォンジャックから音声信号を取り出し,音が出なくなったら自動的にスイッチが切れるようにする回路を作ります。

ファイル 494-2.jpg

 定数が中途半端な値になっているのは,あとでカットアンドトライを行ったためです。

 音声信号をまず増幅し,ダイオードで整流してからコンデンサで遅延を作り,これをもう1つのトランジスタで反転させて,アンプICのCE端子に入れてやります。

 お手本などありませんので,トランジスタを2つ使って自分でコリコリと設計します。時間のあるときにLTSpiceでシミュレーションをやりつつ,こんな物かなと言う定数を決めて,休みの日に作ってみました。

 結果,かなりの大音量を入れてやらないと,安定してスイッチがONにならないことが判明。というのは,せっかくアンプICのスタンバイ電流が1uA程度なのに,このスイッチ回路が何mAも食うようでは本末転倒なので,消費電流を絞り込んだ設計を行ったせいです。

 動作を確実にするならオペアンプを使うとか,デジタルICを使うとか手もあるのですが,それなりに大きな電流を悔います。そこでディスクリートで組んでみたのですが,なかなか上手くありません。

 消費電流と動作感度のトレードオフで,なんとか妥協できる抵抗を選んで,この回路は完成とします。

 当初の設計では,電源OFFじはアンプのスタンバイ電流も入れて28uA程度でした。しかしこれでは確実にONになってくれないので,上記の定数に変更しています。上記でおよそ60uAです。


・だがしかし

 バラック状態で音が出るようになったので,スピーカーに繋いでみました。先日エッジにドライバーを突き刺して穴があいたスピーカーは,ゴム接着剤の残りを塗って,穴をふさぎました。変なよじれも出ず,まともに音が出ているのでもう良いことにします。

 音を出してみると,どうも片側だけ歪みが大きいことに気が付きました。エッジの補修を行った方ではありませんので,原因は別です。

 最初アンプを疑いましたが,左右を入れ替えて見るとスピーカーについて回るため,スピーカーが原因と断定。このスピーカーだけでならしてみると,確かに音が歪んでいます。

 おかしいなあ,ボイスコイルのリード線でもコーンに触れているのかもと裏側を見ましたが接触はありません。

 手でコーンを前後に動かしてみると・・・カスカスとこすれる音がするではありませんか。

 やってしまいました。ボイスコイルがどこかに触っているようです。それだけはないようにと気を遣って作ったのに,これだけ派手にこすれるというのは,自らの鈍くささに嫌気が差します。

 しかし,あきらめるわけにはいきません。もうこのスピーカーはテレビ用に使い道が決まっているのです。今さら「あかんかった」では済まされません。そこで禁じ手です。

 まず,コーンをいろいろな方向から,少し斜めに押し込んで,こすれないところがないか調べます。幸い,狭い範囲ですが,こすれずストロークする場所が見つかりました。

 要するに,この方向にフレームをゆがめれば,こすれなくなるわけです。フレームを少しずつペンチでゆがめますが,さすがに手強いです。昨年のP650に比べて口径も大きい分,なかなかこすれが取れません。

 悪魔が耳元でささやきます。ハンマーでやっちゃえよ,と。

 私は言われるがままハンマーを持ち,ゴンゴンとフレームを叩きます。フォステクスのエンジニアが見たら気を失うような光景です。

 しかし,なんとこすれがなくなりました。こんなあっさり行くとは思いませんでした。音を出してみると,少なくとも歪みはなくなり,左右でバランスの取れた音が出ています。これで問題は解決です。

 しばらく音を聞いていましたが,フルレンジらしい定位のよさ,そして中域のエネルギーにバランス良い周波数レンジと,大変好ましい音が出ています。大変気に入りました。


・だがしかしっ!

 喜んでテレビに繋いで,その音の良さに期待を膨らませますが,いざスピーカーを置く場所を探すと,全くありません。

 試行錯誤をしますが,そのうち嫁さんの目が怒ってくるのがわかります。そして30分ほど格闘した後,「ただでさえ危険なものであふれる我が家が,これ以上危険なもので占拠されることに,私は耐えられない!」と,決定的な一言を吐き出し,このスピーカーは,職を失うことになりました。


・そして伝説へ

 失意のうちに検討部屋に撤収した私とスピーカーとアンプ。私は,MacBookProにまともなスピーカーがないことに気が付き,新しい活躍場所として彼らに与えることにしました。音声スイッチもちょうど便利に動くことでしょう。

 PCスピーカーである以上,ローカルの音量ツマミは必要でしょう。ケースに穴をあけ,ボリュームを取り付けます。自動電源スイッチがONになるとLEDが点灯するようにしてありますし,また強制的に電源をONにするスイッチも付けますので,3つの穴がフロントにはあきました。

 問題は背面です。DCジャック,スピーカー,そして音声入力です。DCジャックは手持ちのアダプタに合致したもの,スピーカーは3.5mmのモノラルジャックを2つ使い,入力は3.5mmのステレオジャックを使います。

 それぞれ端子を基板に取り付け,基板をケースに固定することにします。まずリアパネルに基準線を入れるのですが,ゆがんだので弾き直します。2本の基準線が出来てしまったので,気をつけて作業しましょう,。

 基準線上に,ジャックの1つに合わせて穴を開けます。いい感じです。もう1つあけましょう・・・あれ,なぜゆがんでいるの???

 基準線を間違えました。

 だーっ,気をつけようといった矢先に,違う方の基準線で穴をあけてしまいました。

 仕方がありません,穴を大きくしてごまかしましょう。

 次に,入力ジャックです。気をつけて,正しい基準線上に穴をあけます。が・・・なぜゆがんでいるの???

 このジャックは先程のモノラルジャックと違う品種なので,同じ高さではありません。

 だーっ,今度ばかりはもうだめだ!

 やむを得ません。もっと大きな穴を開けて,3つのジャックが通るようにしました。DCジャックの穴開けはうまくいきましたが,これはあまりに不格好です。

 そこで,カメラ修理用の薄いモルトプレーンをリアパネルと同じ大きさに切り出し,少し小さめの穴を開けて,ジャックの大穴を隠すことにしました。うん,これならばれません。

 アルミの大きめのツマミを取り付け,なんとか様になったところで,MacBookProの横に置いて音を出してみます。なかなかいい感じです。8cmのフルレンジですので,ニアフィールドでちょうどいい音がします。

 音量ツマミを付けましたから,Macからは最大音量を入れてやると,上手い具合に自動電源スイッチが動いてくれます。


・そして

ファイル 494-3.jpg

 P800というフルレンジスピーカーはバランスの取れたユニットで,これ用に作られたエンクロージャP800-EはP800をうまくならす箱に仕上がっています。設置のための底面積も小さく,MacBookProの横に置いても机が狭くなることはありません。

 1.2Wという出力には,少し小さいかなあと言う心配もありましたが,ニアフィールドで使っているとフルパワーで動かすことなど考えられません。それだけ十分なパワーを持っています。

 スピーカーが近いと気になるノイズや定位の問題も全く問題とならず,これだけ簡単にできるアンプとしては,あまりに良くできたものと感心します。

 惜しいのはテレビに使えなかったことですが,置き場所の関係ですのでこればかりはもうどうしようもありません。

 音楽を聴きながら作業をすると,私は気が散ってミスをするし,音楽も楽しめない不器用さですので,実はあまりスピーカーを欲しいと思った事はありません。しかし,作業をしないとき,BGMとして気軽に楽しむことや,他のソーズをスピーカーでちょっとならして見たいときなど,便利だと思います。

 お金も手間もかからなかったので,これはこれであり,でしょう。

さようならFCZコイル,ありがとうFCZコイル

  • 2011/06/08 16:45
  • カテゴリー:make:

 FCZコイルがとうとう製造販売停止になりました。

 今さら説明の必要もありませんが,かのJH1FCZ大久保OMが作った,アマチュアのための高周波コイルシリーズがFCZコイルです。中波,短波,超短波などのアマチュアバンドを網羅し,ケースのサイズも10mm,7mm,5mm角と揃っています。使いやすく,再現性が高く,設計する側も作る側もこのコイルを使えばもうコイルは心配なし,使いこなしのノウハウも蓄積され,全国のパーツ店で手に入る入手性の高さに安価なお値段と,至れり尽くせりのコイルです。

 その誕生は大久保OMいわく,「かつて雑誌の記事を書いたとき,コイルを自作するように書いたら,コイルがうまく作れずに,それが原因で動かないという人が出た,当時一般的だったコイルの自作は実は再現性に欠ける・・・」

 そこで,大手コイルメーカーの製品を使う事にしたのですが,コイルが結合しないようにシールドを考えないといけなくて,これもまた再現性に難あり。適当なものがないなあと考え込んだ大久保OMは,ないものは自分で作ろうと考えて,FCZコイルを手がけることになるのです。1977年の誕生から30年以上,もっとも厄介なコイルでアマチュアを支え続けてくれました。

 FCZコイルでは,アマチュア無線で使われる各バンドのコイルをバンドごとに1種類ずつ用意してあります。それぞれは突出した特殊な性能をもっているわけではありませんが,平均的性能で,むしろ汎用性を高めてあります。そして回路全体の性能は,トランジスタの性能の向上に任せています。

 そんなことが出来るのかと,高周波の素人である私などは???な訳ですが,結果は疑いようもなく,高い汎用性,シールドケースに入った使いやすさと再現性の高さで,アマチュアの電子工作には欠かせない部品となりました。

 欲しいときにすぐに手に入ること,種類を無闇に増やしたり改良を小刻みに行うのではなく,古いコイルも新しいコイルも同じものとして扱えて,昔の回路にそのまま使えることも,大久保OMの人柄を見るようでした。

 私がこのFCZコイルについて感慨深いのは,アマチュアの電子工作のために生まれ,その存在感を放ち続けた部品だからです。

 以前にも書いていますが,電子工作という趣味は,その時々のプロが使う部品のおこぼれによって,成り立っています。真空管がゲルマニウムトランジスタになり,やがてシリコントランジスタになったり,ICがTTLからCMOSに移行したことは,アマチュアの欲しい部品をメーカーが用意してくれた訳ではなく,それがプロによって大量に消費されるようになって,値段が下がり、入手が簡単になったからです。

 2SC1815や2SK241が製造中止になってしまうことは,まさにこのことを象徴しています。

 アマチュアが使う数はたかが知れています。メーカーにしてみれば誤差のようなものです。アマチュア向けにある程度まとまった数をストックして小売りしてくれるパーツ店の存在があるから,我々は高性能な部品を,安価に使えるわけです。

 しかし,FCZコイルは違います。アマチュア(法人としてのFCZ研究所がアマチュアかと言われれば厳密には違うかも知れません)が,アマチュアのために,用意した部品です。FCZコイルはプロの設計者は使いません。カスタムで作る事ができるからです。

 FCZコイルは,汎用性の高いコイルを種類を絞って作る事で,アマチュアにも安価な価格で提供可能なコイルでした。これを使う事を前提に,多くの回路が誕生し,そしてそれらは一様に高い再現性を持っていて,作者の先生が苦心の末に練り上げた作りやすさと高性能を,全国のアマチュア達が追体験出来たのです。

 FCZコイルがあるから,アマチュアは安心して高周波の回路を作る事が出来ました。でもこれからはそうはいきません。

 大久保OMは,供給出来なくなる代わりに,コイルを手作りする方法を解説してフォローしたいと言われています。大久保OMには頭が下がります。

 かつて,初歩のラジオやラジオの製作などの雑誌がベテラン設計者の回路を掲載し,全国のアマチュアがそれを作ることが盛んに行われていました。設計者と製作者は分離していて,特に製作者のスキルには個人差がありました。

 故に誰でも完成できて,性能を出せる再現性の高さが設計者には求められたのですが,雑誌が消え,雑誌を見て製作する者がいなくなり,設計者と製作者が分離しなくなりました。

 今,部品レベルで自作が出来るのは,コイルだけです。コイルの製作と回路の設計を同時に行う方が,より性能を高めることが出来るのですから,回路設計が出来る人にとって,ただ作るだけの人のために再現性の高い汎用品のコイルを使う理由はないといえます。

 そう考えて,ひょっとすると時代が変わって,FCZコイルの役目は終わったのかも知れないなあ,と思いました。

 この30年の間,日本も世界も大きく変わりました。国内で製造するのが当たり前だった電子部品は,いつしか海外で生産されるようになりました。現在のFCZコイルも中国の部材を使って作られていましたが,ここ数年はそれら部材の度重なる値上げや仕様の変更,供給ルートの確保などでご苦労があったようです。

 部材の仕様が変わるたびに,それまでと同等の性能を維持するべくマイナーチェンジを繰り返して来られましたが,今回はどうしても元の性能を確保出来なかったとのことで,製造販売を中止するに至ったということです。

 そういう私は,結局FCZコイルを買って何かを作った事がありません。1つや2つ買った記憶はあるのですが,それが今どこにあるのか覚えていません。無線や高周波の世界に背を向けたアマチュアにとっては,FCZコイルは知っていても身近でなかったといえて,だけどもその功績はやっぱり知っています。

 大久保OMがFCZ研究所を解散したとき(2007年だったと思います)もショックでしたが,FCZコイルが過去のものになった今回の話は,確実に電子工作のフェイズが移り変わったことを示すものになったと思います。寂しいものですが,常にその時手に入る新しいもので工作するのが,これまでにも繰り返されてきた電子工作の進歩に繋がると考え,くよくよせずにいきたいと思います。

 ただ,アマチュア無線の高齢化が深刻で,近寄りがたい集団になっていることは否定できないでしょう。大昔,ラジオが最先端だった時代は,その延長にアマチュア無線がありました。オーディオとコンピュータの時代になり,アマチュア無線はそれらと接点を持たない独立国家となりました。

 携帯電話とワイヤレスデータ通信の時代がやってきて,アマチュア無線がまた最先端になるかとおもいきや,高度なディジタル変調技術のせいもあってか,同じ無線の世界でもアマチュア無線の人たちの視点と,最新の無線技術の人たちの視点にズレがあるように感じます。

 同じ無線局なのにアマチュア無線家は携帯電話には疎いですし,携帯電話大好きな人がアマチュア無線をやってるという話はあまり聞きません。私の目から見て,今のアマチュア無線に技術的に見るべきものはありません。

 ところで,PLCという,電灯線を使ってLANを構築するという仕組みが数年間にちょっとしたブームになりました。しかしこれは,アマチュア無線や短波ラジオで使われている周波数に大きな妨害を出す可能性があり,私も当時懸念していました。

 無論,アマチュア無線家や短波ラジオの愛好家が声を上げましたが,そんな声は無視され,公的機関からの認可を得て,各メーカーから一斉に機器が発売されたことを覚えています。

 あまり知られていませんが,理由もはっきりしないまま当局から認可の取り消しを受けた機器がいくつもありますし,実際にラジオの受信に妨害を受けたという事例もあるようですから,行政もメーカーもあまりにずさんだったといえるでしょう。

 PLCは結局,小さく安くなったWiFiに駆逐されるように,ほぼ消え去りました。懸念の声を無視してなかば強引に始めたにもかかわらずビジネスとしても失敗に終わりました。

 私は結構おおごとだと思っているのですが,社会一般の意識も低く,このことが話題に上ることはほとんどありません。大多数の人にとってアマチュア無線家や短波ラジオが関心の対象から外れていることを如実に示しているのではないでしょうか。

 果たしてこれでよいのかどうか。1970年代から80年代のアマチュア無線ブームで開局した人がほとんど電話級だったこと,JARLのやってきたこと,乱立したアマチュア無線機器メーカーのやってきたこと,電波を公共物として管理してきた行政のやってきたことなどなど,もう少し検証されてもよいのではないかなーと思います。

 ちょっと話が逸れましたが,FCZコイルの製造販売の停止と,アマチュア無線の衰退は,どうも無関係ではないと,そんな風に思うのです。

ガイガーカウンターを作る

  • 2011/06/07 11:52
  • カテゴリー:make:

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 秋月の出物でD3372というガイガーミューラー管が手に入ったことは先日書きました。先々週の土日に少し動かしてみようといろいろ検討をしたのですが,いやー,どうも勘が鈍っていけません。結局その後1週間ほど検討に集中して,先週金曜日には一応形にまとまったので,これで完成としました。

 AVRtiny2313を使った作例がソース付きで見つかったので,最初はこれをそのまま頂いて,最小限の変更を行うだけににしたのですが,きちんと理解をしないままにいじくり回したため,なかなか上手く動かず手こずりました。

 やはり全部をきちんと理解しておかないとダメですね。結局ほぼすべてを書き直しました。


(1)高圧の発生

 ガイガーミューラー管には,500V程度の直流電圧が必要です。D3372の場合,350V位から放射線の検出が始まります。電圧が高くなるほどに検出率は上がっていきますが,550Vくらいになると検出率が平坦になり,電圧を上げてもほとんど増えなくなります。この平坦な部分の電圧をプラトー電圧といいます。ガイガーミューラー管は,このプラトー電圧で使うのです。

 ガイガーミューラー管は,放射線が検出されたときに電流が流れるだけで,普段はほとんど電力を消費しません。ですので高圧の電源回路には電力を供給する力は必要がありません。

 プラトー電圧の発生にはいろいろな方法があります。秋月のキットではCMOS版の555を使って間欠発振させ,本当に必要なエネルギーだけ作るようになっています。おかげで消費電流が大変に小さく,優秀です。ただ欠点があって,なにせエネルギーが小さいので,その電圧を測定するには入力インピーダンスが10MΩ程度のテスタやオシロスコープではあっという間に「消費」されてしまい,真の値がわかりません。

 一方で,LCDバックライトによく使われた冷陰極管のインバータを流用することも行われていますが,供給エネルギーがGM管よりもずっと大きいものですから,インバータも常時発振しています。電池の電圧を100倍以上に昇圧する回路ですので,その効率の悪さを考えると,数十mA(あるいはそれ以上)の消費電流が常に流れていることはやむを得ません。

 カメラのストロボの駆動回路を改造する方法もあります。これは割合現実的で,よく行われている方法のようです。

 今回私がデッドコピーを試みた作例では,AVRで555の代わりをさせた省エネ方法がされています。周波数やパルス幅もプログラムで調整が自在なので,マイコンが使えるなら便利でしょうが,CMOSの555の消費電力にはかないませんので,結局数mAの消費電流は覚悟しないといけません。

 先の連休中,ペンタックスのMZ-10が壊れてしまい,それを部品取りに残しておきましたが,ここからストロボ用の部品をいくつかとります。MZ-10は6Vの電源電圧ですので,昇圧比はあまり期待できないのですが,小型のトランスと高圧用のダイオードを確保します。本当は低圧側のスイッチングトランジスタも確保したかったのですが,結構VCE(sat)の大きなトランジスタが使われていたので,手持ちのMOS-FETを使うことにします。ちょっと贅沢に,2SK703です。

 このトランスを使って100倍ほど昇圧,そしてダイオードで整流し直流を作るわけですが,実は高圧を貯めるコンデンサが最大の問題です。ストロボでは大きなエネルギーが必要ですので電解コンデンサを用いますが,GM管ではほんの一瞬ですので470pFから1000pF程度あればよいとされています。

 しかし,前述の通り,これでは電圧の測定が難しいので,あえて大きめにしたのです。2.2uFで400Vのフィルムコンデンサがあったので,これを直列にし,1uFで800V相当にします。

 とりあえず高圧発生部だけ組み立て,AVRにプログラムを書き込んだところ,どうも電圧が上がってきません。いくらなんでも100V以下というのはおかしいです。クロックが低いのではとか,パルス幅を広げようとか,いろいろやってはショートに近い状態になってあわてたりしましたが,冷静に考えてみるとこんな大きなコンデンサを十分にチャージできるような回路になっていないので,電圧が上がらないのは当然のことです。

 そこで,部品箱をあさって,小学生の時に分解したテレビから取り出した,390pFで1kVのセラミックコンデンサを2つ並列に繋いで,800pF相当にしました。これで電源電圧を6.5V位にすれば,ちょうど650V程度が作れるようです。

 これが,レンズ付きフィルムのストロボから取り出したトランスだったら,もっと低い電圧から昇圧できたでしょう。おかげで高圧発生用の電源とAVRの駆動用電源を分けることになってしまいました。


(2)パルス検出

 GM管から得られたパルスは,2SC1815で受けてAVRの割り込み端子に入れます。これはトラブルもなく,あっさりOK。


(3)カウント

 問題はここからです。パルスの数を数え,1分あたりのカウント数と,それをuSv/hに換算した値をLCDに表示する部分です。繰り返しになりますが,この部分はAVRtiny2313を使います。

 ソースをよく読まずに作り始めたものですから,おかしな動作をしても原因がわからず,試行錯誤を行うとさらに混乱するという,まるで初心者のような状態になりました。

 これではいかんと,ちゃんとソースを読むわけですが,この作例では1分間あたりのカウント数は内部で持っているのみで,表示はuSv/hに換算したものを出しているだけです。

 ロシアのGM管に合わせた係数をD3372用の係数に置き換え,内部で持っている1分間あたりのカウント数も表示させます。LCDも手持ちの16文字x2行のものに交換です。しかし,どうもワークエリアをこわしているようで,文字化けはするわ,暴走するわで散々です。tiny2313でも暴走するのかと,当たり前のことに感動しました。


(4)改良

 1分あたりのカウント数を持つ事は,ガイガーカウンターとして基礎的な機能です。しかし定義に従うと,値の確定には1分かかることになり,それまで全く表示が出ないというのはちょっとまずいです。一応,カウントされるときにはLEDとブザーが動作するようになっていますが,やっぱり表示にはそれなりの更新頻度が欲しいものです。

 作例では,3秒ごとにカウントした数を20倍してずっとその値が続いたと仮定して値を求め,,それまでの平均値との平均を取って,3秒ごとに値を更新しています。この方法は非常によいやり方に見えるのですが,私には問題が多いように思います。

 例えば,ある3秒間で2カウントあったとします。その後ずっと0カウントだったという場合を考えると,最初は40と表示され,次には20,その次は10,そして5,2,1となり,結局0になります。実際には2cpmなのに,この表示だといきなり40と出た後,21秒後には0となってしまうのです。常に一定のカウント数があるような測定には有効な手段ではあっても,カウント数が変動する場合,正確な値は全然わかりません。

 かといって,本当に1分間の間数えて表示するには,時間がかかりすぎます。

 そこで考えたのは,3秒ごとのカウント数を1分間記憶しておき,その総和を1分あたりのカウント数として使うことです。3秒ごとに新しいカウント数が得られますので,これを総和に加えると同時に,一番古いカウント数を引き算することで,常に直近の1分間のカウントの合計が得られることになります。

 過去の値の総和から,過去の値を引き算するだけですので,総和が最終的に負の数になることはありえません。そして平均を取る場合の問題点であった,最初の3秒で2カウント,それ以後ずっと0カウント言う場合の表示は,最初の1分間の間は常に2と表示され,1分を越えると0になります。

 バックグラウンドのような,1から3カウント程度の場合でも,直近の1分間の総カウント数がちゃんと表示されます。平均を用いる方法では,1カウント程度なら数秒で0になってしまいます。

 ただ,やはり欠点はあって,常に一定の線量を放出する放射線源の測定を行うと,その値が安定するのに1分かかってしまうのです。例えば1分間で200カウントの放射線源があった場合,3秒ごとに10カウント,1分間で200カウントとなります。

 しかし,平均を用いる方法では即座に200と出てくれます。急激な放射線を即座に知らせる能力に長けてはいても,それが本当の値である保証がないことは私には大問題に思えて,この方法は使わないことにしたのです。

 それに,値が安定するまでに1分間かかるとはいえ,増え方を見ていれば大体想像も付きますし,突発的な変動でも一定の場合でも,癖を掴めばそれなりの値を知る事が出来そうです。

 さらに,カウント数をゼロにしてカウントし直すボタンを取り付けてみましたが,変数を初期化した後の計数値がおかしく,どうも負の数を取ってしまう場合があるようなのです。初期化の関係か,割り込みの関係かといろいろ追いかけてはいるのですが,さっぱり理由がつかめません。

 実は,今回のプログラムはなかなか手こずってしまいました。uSv/hへの換算のために文字列操作を行っていますが,そこで確保した配列の影響もあってか,明らかにRAMを壊しているような挙動が起こっていました。

 配列のサイズを調整してなんとか動くようになったり,プログラムの最適化を行ったりしてなんとか3秒おきの更新には問題がなくなったものの,なにか機能を追加すると問題が出てくるような状態で,落ち着いてくれません。

 やむなくgoogle先生に聞いてみると,特にtiny2313ではこういう,コンパイラを使った場合の原因不明の挙動不審が話題になることがあるらしいのです。かつてGPSクロックを作ったときは,割り込みで使う変数にvolatile宣言をしなかったために動かなかったので,今回も自分の間違いを徹底的に疑っては見たもの,やっぱりよくわかりません。

 確実にAVRとコンパイラのせいだとは言えませんが,配列を使う時などは要注意のようで,配列を小さくすると正常に動いたりする今回のケースでは,やはりAVRとコンパイラの限界と考えた方がいいかもしれません。

 冷静に考えてみると,tiny2313のRAMはわずか128バイト。割り込みを使うとレジスタの待避などで数十バイト使うということですから,残り100バイト弱です。ここに配列を含む様々なワークエリアを置けば,そりゃ何かの拍子にあふれることもあるでしょう。

 AVRは確かに高機能だし,制約の少ないごく普通のC言語ですらすら書けてしまうワンチップマイコンですが,ハードウェアのリソースをソフトウェアは越える事が出来ないという,ごく当たり前の事を忘れていました。

 アセンブラならこういう問題は起きないはずで,C言語を使ってプログラムを作ることの窮屈さを,10年ぶりに感じました。

 結局有効な対策が見つからず,値のクリア機能は断念しました。負の数になって明らかにおかしい数値になっているならまだよいのですが,もっともらしい数字が出ている場合に,それが正しいのか誤りなのか判断出来ないことは最悪といってよいと思います。

 代わりに,このスイッチはAVRのリセット端子に繋げて,完全なリセットとすることにしました。入力ピンが1つ空いてしまいましたが,別になにか機能を付けることもしませんし,メモリもカツカツなので,もうこれでいいです。

 最終的に,流用したコードはほぼなくなり,ほとんど書き直してしまいました。


(5)完成に向けて

 まず,高圧発生回路への電源と,AVRへの電源を別の電圧で供給する問題を解決しないといけません。高圧発生側は約7V,AVRへは5Vです。

 ところで高圧側はそのエネルギーが小さく,手持ちの機材では直接電圧を測定出来ないため,実験用の電源器で高圧発生回路への電源電圧を可変し,レンズの放射線の測定値がばらつかないような電圧を選びました。この電圧を与えたとき高圧側にプラトー電圧が発生しているはずという根拠によって,6.5Vから7.0Vを最適値としました。

 その高圧発生回路への供給電圧の生成は,手持ちの関係でトレックスのXC9119Dを使いました。OLEDや白色LEDの駆動用に作られた昇圧コンバータICですが,効率も高く,小さく,また使いやすいよいICだと思います。入手がもっと簡単ならいう事ないのですが・・・

 これを使って作ったのは,3Vから7Vに昇圧する回路です。実際には6.8V位に調整をしました。これを高圧発生回路に入れると同時に,LDOで5Vに落とし,AVRに供給します。LDOはこれまた手持ちの関係で,NJM2387Aを使いました。1.5Aクラスの大型LDOですので明らかにオーバースペック,しかもバイポーラですのでIC自身の消費電力が結構あるため,今回のような用途には向いていませんが,CMOSの小型LDOの手持ちがなく,やむを得ません。

 昇圧回路への入力は,3.0Vで27mA,4.5Vで18mAです。81mWですね。1600mA位のNiHM電池だと45時間ほど使える計算でしょうか。昇圧回路の出力は6.8Vで10.2mAです。約70mWですので,その効率は約86.5%程度。なにも考えずに組み立てただけでこれだけの効率ですから,XC9119Dは優秀です。

 次にクロックです。内蔵RC発振では温度や電圧への依存が大きいので,水晶発振子を使いたいところです。しかし手持ちで小型の水晶発振子がないので,セラミック振動子で代用します。精度は水晶よりもずっと落ちますが,RC発振よりは断然有利ですので,これでいきましょう。

 AVRの場合,クロックソースの切り替えはプログラムで行うのではなく,デバイスのヒューズビットをライタで直接書き込みます。ソースを修正しビルドと書き込みをやり直す必要がないので楽なように思いますが,周波数の変更を伴うとどうせソースも変更が必要ですし,ヒューズビットの設定は忘れやすいので,私は非常に面倒だと思います。


(6)組み上げてみて

 手持ちのプラケースにさっと組み込みました。消費電流を測定中に過電流でXC9119Dを1つ燃やしてしまいましたし,テスターのヒューズも飛ばしてしまいました。鈍くさいことこの上なしです。

 そうそう,電流の測定ですが,手軽で使いやすい秋月のP-10というテスタでは,正確な測定が出来ず困りました。テスタの内部抵抗が結構大きくて,随分電圧が落ちるようなのです。その分を稼ごうと電源器を調整する途中でミスがあって,XC9119を燃やしたのです。

 これを,STA55で測定すると,電圧降下もほとんどなく,良い値が測定出来るようになりました。

 さて,動作試験です。まず平常時のカウント数,いわゆるバックグラウンドが2から3CPM程度であることを確認しますが,これは問題なしです。

 次になにか放射線源を使って,そのカウント数が「それらしい」ものになっているかをみます。以前も書いたように,私の手元には「放射能レンズ」がありますので,これを近づけます。いやー,やってみたかったんですよね。

 写真にあるように,164CPMという表示です。SuperTakumar50mm/F1.4の場合,D3372で大体200CPMくらいということですので,まあこのくらいで妥当でしょう。1分経過すると,大体この値で落ち着きます。1秒間に2.5回ほどのカウントになりますので,ブザーとLEDが結構うるさく,びびります。(嫁さんの目がすごい怒ってました)

 ただし,左上にあるガイガーミューラー管とレンズとの距離にカウント数が大きく左右されます。もっと近い距離に置けば250から300CPMくらいでが出てきますし,もう10mmもはなすと,数分の一まで値が下がります。15cmも離してしまえば,もう全然カウントしません。

 164CPMというのは,D3372の場合13.8uSv/hという高い線量に相当するようです。内部被曝すると洒落にならないのですが,15cmも離れればほとんど影響がないからこそ,こんな民生品に多用されたのだと思います。(とはいえ今なら絶対に世に出せないでしょうね)

 ここまでで,とりあえず放射線を検出できる事がわかりました。uSv/hへの換算は全然あてにならないのですが,そもそもガイガーミューラー管は放射線の検出器と考えた方が無難で,普段から1分あたりのカウント数をおおよそ覚えておき,それに対して多いか少ないかで危険度を見る指標とすべきでしょう。

 測定値の絶対的な値は,校正も行っていませんし,GM管の特性や放射線源にもよりますし,きちんとした線量計でも測定方法によって値が大きく異なるものなので,参考にさえならないと思います。

 ただし,普段より大きいか小さいか,そのくらいの情報でも,あるのとないのとでは大きな違いです。今から洗濯物を干そう,布団は大丈夫か,外に出ても良いかどうか,これをその場でさっと確かめることが出来るのは心強いです。なにか事故が起こっても,それがニュースで我々に届くには,数時間はかかるものです。

 そもそもガイガーカウンターというのは,ガイガーミューラー管の機能がそのまま使われているもので,これがなくては話になりません。それゆえ,回路の工夫で性能を高めることも出来ませんし,代用品もありません。

 それほど複雑な構造のデバイスではないですし,できる事なら数百円で簡単に手に入るようになって欲しいと思うのですが,冷戦終了後の需要の減少は想像に易く,それが平和利用の花形だった原子力発電の危機的状況から再び注目されるようになるとは,なんともやりきれません。


 さてさて,そんな大した製作ではなかったのですが,久々のAVRということもあって,いい頭の体操になりました。AVRも面白かったのですが,近頃は昇圧回路があっさりできてしまうので,スマートにまとまって,ホントに良い時代になりました。

汎用ヘッドフォンリモコンケーブルiPodShuffle用

  • 2011/06/06 12:15
  • カテゴリー:make:

 少し前の話になりますが,5月の連休の最終日のこと,嫁さんに,まるでジャイアンがするかのように召し上げられたiPodTouchの,その後継となる音楽プレイヤー確保に私は頭を痛めていました。

 普通ならここで家に戻ってどら焼きを食べているロボットに泣きつけば解決する(新たな問題のスタートとも言える)わけですが,一介のサラリーマンにそんな舞台が用意されているはずもありません。

 IDEOSは電池の消耗が激しく論外,初代のiPod nanoはどっかにいってしまいました(余談ですがこの機種は電池の問題でリコールがかかっています。どこかで破裂しているのだとしたら恐ろしい話です)。

 残るはiPod shuffleです。一世代前のモデルがあるのですが,現行のものと違って,これはリモコンで操作しないと動きません。しかしヘッドフォンとリモコンが一体化しているので,自分のお好みのヘッドフォンを使う事が出来ないのです。

 一時は付属のヘッドフォンで我慢しようかと思いましたが,やっぱりどうにも耐えられずに,せっかく買ったiPod shuffleを使う事そのものがなくなったのでした。

 対策は簡単な話で,付属のヘッドフォンをちょん切ってここに3.5mmのステレオプラグを取り付けるだけですが,邪魔にならず,綺麗に仕上げるにはなかなか難しいものがあります。

 アキバで部品を買ってきてもいいのですが,自分でハンダ付けを行うようなステレオプラグは結構大きくて,しかも重いために取り回しが面倒です。

 なにかないかなと,ジャンクが入ったトレイを漁ってみました。

 見つけたのは,3.5mmのプラグを携帯電話の平型コネクタに変換するコネクタです。一応ソニー製ですね。

 これ,少し古い携帯電話にはよく使われたものです。携帯電話の薄型化に対応すべく,FOMAになってからは多用されたように記憶しています。

 ですが最近は充電も通信も出来るコネクタに統合される形で廃止されつつあり,今私が使っている携帯電話では使えません。

 もともと,アドエス用に購入したものなのですが,WILLCOM解約に伴いアドエスが永遠の眠りに就いたことで,全く出番がありませんでした。

 再利用するのが正しい道だと判断した私は,早速殻割りを行い,改造をしました。もともと軽く作られているものなので,取り回しも楽なことでしょう。

ファイル 479-1.jpg

 隙間には黒い色のホットボンドを充填し,盛り上がったところを柔らかいうちに,凹凸のあるコート紙(「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」という本のカバーですw)でぎゅっと押さえつけて,シボを出します。

 まあそこは素人の工作ですので綺麗ではありませんが,見せるもんではありませんので,このくらいでいいことにします。

 早速試してみましたが,当たり前の事ですけども,ちゃんと音が出ます。Bluetoothのヘッドセット並みに小さいiPod shuffleを主力機に出来るというのはちょっとうれしいものがあります。

 しかし惜しいなあと思うのは,この大きさでディスプレイが欲しいということです。有機ELの8文字1行表示で構いませんから,せめて曲名とプレイリストの選択が楽に出来るといいなあと思います。VoiceOverを絶賛したことが記憶に甦りますが,これは聞きっぱなしの時に威力を発揮するもので,やっぱ万能ではないなあと思う訳です。

100円ショップのイヤホンが,電子ブロックのイヤホンとして使えるのか

  • 2011/01/31 15:33
  • カテゴリー:make:

 先日,ある方からメールを頂戴しました。

 お子さんのクリスマスプレゼントに電子ブロックをプレゼントしたが,クリスタルイヤホンをなくしてしまった。いろいろな実験で使うだけに困っているが,代わりに使えるものはないかと思案されているそうです。

 100円ショップなどでイヤホンが売られていますが,電子ブロックに繋がるよう,配線の端っこをうまく加工すれば使えるものですか?という質問を頂いたわけですが,自己解決されたということで,お返事を躊躇していました。

 ただ,どうして使えないのか,どうすれば使えるのかと言うお話はなかなか興味深く,イヤホンをなくしたことをきっかけに,そのお子さんが「知る」きっかけになれば,大変良いのではないかと思って,ここに書こうと考えた次第です。

 結論からいうと,100円ショップで売られているイヤホンは,電子ブロックでは使えません。

 まず最初に,イヤホンの種類について整理します。

 イヤホンには,大きく分けて,磁力を使ったものと,圧電効果を使ったものがあります。

 磁力を使ったものは,マグネチックイヤホンや,ダイナミックイヤホンと呼ばれるものが属します。ウォークマンやiPodなどで使われるのがダイナミック型,ラジオのイヤホンとして売られているものは,マグネチック型が主流です。

 ダイナミック型は,電磁石に薄いフィルムを貼り付けておき,コイルの内側には永久磁石を置いておきます。

 コイルに音声振動が流れて電磁石になると,そこから出る磁力と永久磁石の磁力とが引かれたり反発したりして,コイルが動きます。これがフィルムを振動させて,音にします。スピーカと同じ仕組みです。

 マグネチック型はダイナミック型とは似て非なるもので,コイルの内側に磁石を置くところまで同じです。

 そして,その磁石の近くに鉄の薄い板を置いておきます。磁石からの磁力が鉄板を引っ張っている状態が続くのですが,この状態でコイルに音声信号が流れると,コイルの磁力と磁石の磁力があわさって,鉄板を引きつける力に変化が生まれます。

 この結果,鉄板が振動し,音が発生します。

 この2つは,原理は異なるものの,コイルに電流を流すことから,電圧と電流が必要です。電圧と電流の積は電力ですので,このイヤホンを動かすには,電力が必要になるということになります。

 その代わり,音が大きく,音質も良いものが得られ,小さく作ることも可能です。だから現在主流になっているのですね。

 さて,圧電効果を使ったものについては,クリスタルイヤホンが該当しますが,現在は作られていないはずで,セラミックイヤホンがこれに代わっています。

 クリスタルイヤホンというのはその名の通り,結晶を使ったイヤホンです。有名なものはロッシェル塩の結晶を使ったもので,出力が大きく音質もよいのですが,湿気を嫌い,吸湿すると性能が落ちるため,現在は使われていません。

 そこで現在は,同じような性質を持つセラミックを使っています。これがセラミックイヤホンで,クリスタルイヤホンに比べて音も小さく,音質もあまり良くないのですが,同じようなものとして扱って構いません。

 ある種の物質には,電圧を加えると変形し,また変形させると電圧を発生させる性質を持つものがあります。この性質を圧電効果といいます。

 圧電効果を示す物質にはいろいろありますが,特に強力なものはロッシェル塩の結晶や,チタン酸バリウム,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)といったセラミックがあります。

 これらは高い誘電率を持つ不導体であり,電流は流れません。つまり変形はあくまで電圧がかかることで起きる現象です。(詳しい理由は難しいので割愛します)

 これらにフィルムを取り付け,音声信号を加えると,その信号に応じて結晶が変形します。この変形がフィルムを振動させて,音が発生します。

 先程書いたように,圧電効果は結晶を変形させると電圧が発生するので,セラミックイヤホンにむかってしゃべると,音に応じた電圧が発生します。つまりマイクロフォンになるのです。

 先程書いたように,結晶そのものは不導体ですので,電流は流れません。電力が電圧と電流の積なら,セラミックイヤホンは,ほどんど電力を消費しないことになります。

 ただ,圧電効果の高いセラミックは誘電率が高く,容量の大きなコンデンサになる傾向があります。コンデンサは電気をためる性質があるので,音声信号として電圧が加われば,コンデンサを充電するのにいくらかの電流は流れます。しかしたまっているだけで消費されるのではありませんから,消費電力はほとんどゼロといってよいのです。

 こうして,非常に小さい電力しか消費しない発音体という利点を生かし,例えば腕時計のアラームに使われる圧電ブザーや,電源を持たないゲルマラジオに不可欠なイヤホンとして,使われています。

 しかし,物質の変形を利用する以上,大きな変形を作る事は難しいですから,大音量を作る事も,広い周波数を再生する高音質な音を出すことも苦手です。また,大きな音を出すためには高い電圧をかけねばならず,これが欠点といえるでしょう。

 さて,電子ブロックです。

 電子ブロックは,基本的な電子回路の実験が出来るものですが,ダイナミック型やマグネチック型といった,電力を必要とするイヤホンが駆動出来るような増幅回路を構成するだけの部品が用意されていません。

 そもそも,そうした複雑な増幅器を組み立てるのは,電子ブロックの主旨から外れます。電子ブロックは,簡単な電子回路を実際に組み立てて,その動作を原理を学ぶためのものです。

 電子ブロックに用意されている小信号用トランジスタが1つ2つで可能な増幅回路は,せいぜい電圧増幅回路です。電流を供給する回路を作るのは難しく,自ずとイヤホンは電圧だけで駆動できるもの,つまりセラミックイヤホンを使う事になります。

 また,前述の通りセラミックイヤホンは,セラミックマイクにもなります。カラオケのマイクや携帯電話のマイクに使われるエレクトレットコンデンサマイクや,ダイナミック型のマイクと違い,出力電圧が大きく,マイク用に特別なアンプもひつようなく,電子ブロックの実験にはもってこいです。

 こうしたことから,電子ブロックにはセラミックイヤホンが使われています。

 それでは,100円ショップなどで手軽に入手できるダイナミック型やマグネチック型のイヤホンを,電子ブロックでならすにはどうすればよいでしょうか。

 先程書いたように,電子ブロックの部品では電力増幅器を作る事は出来ません。だから素直に考えると「方法はない」が正解です。

 しかし,実は電子ブロックには,電力増幅器がこっそり用意されているのです。

 本体の右上にスピーカがついていますが,これはICアンプと呼ばれるモジュールです。このスピーカはダイナミック型ですので,電力増幅器がなければ駆動できません。

 当然,電子ブロックの部品ではとても駆動できるものではないので,このユニットの中に,LM386という定番のパワーアンプICを使った電力増幅器を内蔵し,音声信号を入れればスピーカから音が出るようにしてあります。

 この,スピーカの代わりにダイナミック型やマグネチック型のイヤホンを接続すれば,十分駆動することができます。そのためには分解が必要になりますし,復刻版の場合はオリジナルと違ってICアンプの部分だけ本体から外れるようにはなっていませんので,こんな実験を行ったら,まず間違いなく壊してしまうでしょう。

 というわけで,ちょっと詳しくセラミックイヤホンの話を書いてみました。

 ほとんど目にすることはなくなったとはいえ,このイヤホンの代わりになるものは存在しません。今でもゲルマラジオを作るにはこれが不可欠です。もっとも,ゲルマラジオが実用品であるわけではなく,我々に身近なイヤホンでないことは間違いないでしょう。

 ですが,こういう種類のイヤホンが世の中にはあって,電気をほとんど消費しないのだという事を知っておくと,知識の幅は広がることと思います。

 貴重なセラミックイヤホンですので,安易に分解してみろとは言いませんが,もし分解すると機械的に動く部分はほとんどなく,コイルも磁石も見当たりません。これで本当に音が出るのかと不思議な気分になることと思います。もし機会があったら,見てみて下さい。

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