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PE-101Aと6V6シングルアンプ

  • 2008/10/07 12:36
  • カテゴリー:make:

 先日押し入れから6V6シングルアンプを引っ張り出して,PE-101Aに繋いで音を出してみてがっかりしたことを書きましたが,このままあきらめてしまうのもつまらないので,少し手を考えてみました。

 まず,このアンプの出力は約3.5W。効率90dBのPE-101Aとの組み合わせでは,小さい部屋ならまずまずの出力です。ただし,線の細さが面白くない,低音を下支えする安定感がないことが問題です。

 帰還量は現在約16dBと結構かけていますが,ダンピングファクタは約4.9と,なんとか合格点です。しかしやっぱりもう少し欲しいところでしょう。ちなみに初段管の6SL7については,歪みの小さくなる動作条件で動かしていることがはっきりしたので,ここは問題ないとして先に進めます。

 それで,前回も書きましたが3極管接続を行い,帰還量を減らすという作戦を実際にやってみたくなりました。出力が大幅に減るので心配ですが,まあやるだけやってみましょう。

 配線を変更する前に,ACケーブルをプラグ式に改良します。以前はシャシーが込み入った関係で直出しだったのですが,取り回しが面倒なのでメガネプラグにしました。

 これが終わってから,3極管接続への改造です。スクリーングリッドをプレートにくっつけるだけの話ですから,とても簡単なはずです。発振止めの100Ωをシリーズに入れることもあるようですが,私の場合は面倒な出入れません。出力も小さいので大丈夫でしょう。

 しかし,スクリーングリッドに電源を供給する回路が浮いてしまうわけですから,負荷が軽くなって電圧が上がります。そうするとコンデンサの耐圧を越えてしまうかも知れず,もしそうなるとコンデンサを外すなどの対応が必要です。

 幸い,350Vの耐圧に対し,300V程度で収まってくれたので,対策は必要なし。予定通りスクリーングリッドをプレートに接続します。

 プレート電圧を測定すると300V程度です。ん?確か6V6のスクリーングリッドの耐圧は285Vではなかったっけ?定格オーバーになってしまうとまずいです。調べてみると,6V6は後期には耐圧が315Vに引き上げられていることと,3極管接続ではプレートと同じ電圧でもよい(そうでないと3極管接続のプレート電圧がスクリーングリッドの耐圧に制限されただでさえ小さい出力がますます小さくなる)とされる説があるらしく,今回はとりあえずよしとしましょう。

 改造が終わり,各部の電圧を測定してスピーカを繋いでみます。音を出してみるとあきらかにこれまでとは異なる音です。

 低音のポンポンいう感じがなくなり,音圧は乏しいながらも頑張って下支えをしているような音です。ボーカルの角が取れた音は以前にも増してふくよかになり,聞き疲れしません。

 これはいい。3極管接続というのは思った以上によいです。

 ここで終わっても良かったのですが,帰還量の調整と測定をしないとダメだろうと,ささっと測定を始めてみました。

 まず最大出力は,目視による正弦波のクリップが始まるのが1kHzで0.98W。1.5Wくらいは取れるかなと思っていたので,予想以上に低いです。これで足りるかどうか少々心配です。

 ダンピングファクタは500Hz,8Ω負荷で約6.2。あれ,5極管接続とあんまり変わりません。

 ではゲインを見てみると,約5.9dBです。これもあまり変わりません。では,帰還量はいくつなんだと測定すると,これが8.93dBと小さくなっています。

 なんだか,なんの調整もしないで,ちょうど私が狙っていた点に落ち着いてくれていました。5極管接続では大きかったゲインを大量の負帰還で小さくしたものが,3極管接続では最終的なゲインはほぼ同じで,帰還量が減っている,ということは裸のゲインも小さかったということになります。

 Ep-Ip曲線を見てみれば,5極管接続と3極管接続で(同じ負荷なら)ゲインに差が出ることは当たり前なわけで,つくづく5極管(今気が付きましたが6V6はビーム4極管ですね)というのは感度も効率も高い,優秀な真空管だったんだなと実感しました。

 周波数特性はあまり関係ないと思いつつ,0.73W出力時で-3dBになった周波数は,下が9.8Hz,上が98.5kHzと全然問題なし。ただし20Hz以下の歪みの大きさは目を覆うばかりです。完全にトランスの性能が出てますね。

 高域が結構伸びているので,トランスを含むオーバーオールでの負帰還をかけた今回の回路では,発振するかも知れません。1uFのコンデンサを出力に繋いで1kHzの矩形波を入れてみましたが,元々きちんと位相補償を行ってあるので,今回もわずかにリンギングが出たくらいで済みました。これなら問題なしです。

 ということで,測定を始めるまではすごく面倒だったのですが,終わってみると特に定数の検討をすることもなく,さっと終わりました。こうして簡単でもいいから様子を見ておくと,安心です。

 そして組み立てを終えて,リスニングに使ってみましょう。聞き疲れをしないこと,ふくよかな中域にとても自然な感じがすること,小さな音でも全然平気で,何かしながら聴くのにぴったりという印象は相変わらず,いやむしろ強まったといえるでしょうか。遊びに来ていた友人も「これはBGMに最適」と同じような感想だったので,あながちウソでもないでしょう。

 それにしても1Wでも立派なものですね。真空管アンプは元々パワーが小さくても実用になると言われているのですが,それも今回実感しました。3極管接続ですからソフトディストーションであることも理由でしょう。BGMとして使うこと,元々ニアフィールドで使うこと,を考えると,出力を下げても音質を確保するという今回の目論見は正解だったと思います。

F-757を調整してみる

  • 2008/07/11 15:58
  • カテゴリー:make:

 最近,日曜日の午後など,特に聴きたい音楽があるわけでもないようなときは,FMラジオを聞くことがあったりします。

 エアチェックに耐えないような番組ばかりと旧来のファンは(私も含め)FMから遠ざかる一方ではありますが,少し考え方を変えてみるとその面白さに気が付きます。

 FM放送は,その特徴から高音質,ステレオ放送がウリでしたから,エアチェックを前提とした音楽放送を中心として親しまれてきたわけですが,FM放送の特徴は別に高音質というだけではありません。

 1つは混信がない。同じ周波数なら強い電波が勝ち,弱い電波は消されます。ということは,地域に密着した小さいサービスエリアを前提とする,地域放送局が成立するわけです。

 1つには電波の状況による,音量の変化が少ない。AMラジオとFMラジオを車の中で聞き比べれば分かりますが,AMラジオは走っていると音量の変化がけっこうあります。一方のFMラジオは,きちんと音がきこえていれば音量があまり変わりません。声を聞くときなどこれは結構重要で,カーラジオにFMというのは実に相性がよいのです。ということは,車の中で聞いていて楽しい番組が揃うことになります。

 高音質以外にも,FM変調をかけることで得られるメリットはあり,やはりFMは存在意義があるなあと,そんな風に思います。

 それで,以前は高音質一辺倒だった放送局側の考えも,こうした状況から個性が出てくるようになります。地域FMなどはその最たる例でしょうし,NHK-FMが比較的トラディショナルな方針であるのに対し,他の民放大手は娯楽性を高めています。

 それが技術的に,あるいは音質的にも大きな差となっており,NHK-FMの音質の高さはマニアの間では知らない人はいない程です。対してJ-WAVEなどは音質を積極的にいじって,車の中などで聞きやすくする先駆者でした。

 私のFMの受信環境は,ラジオなどという簡便なものがないおかしな状態ゆえ,F-757というパイオニア製の比較的高級なチューナーがメインです。F-757はAMステレオが受信できない以外はほとんど後継機F-777と同じで,F-777が中古市場でも大人気であることに私は結構気をよくしています。

 当時展示品かなにかを2,3万円で購入したことしか覚えていませんが,それまで使っていたアナログチューナーに比べて,受信性能も音質も安定性も格段に向上したことが印象に残っています。

 ところが,NHK-FMだけやたらと歪むのです。他は全然大丈夫なんですが,時報やピアノ,サ行の音が濁ります。これはとても辛いです。

 私の地域はいわゆる強電界地区ですので,大げさなアンテナを上げなくても十分とされているのですが,私は横着をして部屋に引き込まれているTVのアンテナから分配をして,FMチューナーに入れています。レベルは主要局すべてでS5,NHK-FMも例外ではありません。

 例えば,TOKYO-FMやJ-WAVEも同じように歪むなら,電波に問題があるという気がしたのですが,問題はNHK-FMだけです。それまで絶対の信頼を置いていたF-757に,ちょっと疑念が沸いてきました。

 いろいろ調べて見ると,やはりチューナーは経年変化に弱いらしいです。高級機ほど調整箇所も多く,20年も経てばまず再調整をしないと性能は出ないとのこと。

 しかし,調整をお願いするにはサービスセンターに持ち込む必要がありますし,F-757を購入してからすでに16年,断られてもおかしくない状況です。今後も維持していこうと思うなら,自分で調整くらい出来た方がいいです。

 調整そのものは難しくありません。むしろ楽だと思いますが,基準信号発生器と呼ばれる高価な測定器がなければ,全く手出しが出来ないのです。

 ともあれ,F-757のサービスマニュアルを探してみます。海外のマニアはなんでもかんでも自分でやる熱い人が多く,そのせいか海外サイトにはサービスマニュアルがよく出回っています。サービスマニュアルも著作物ですので限りなく黒に近いグレーなのですが・・・

 サービスマニュアルによる調整手順は予想通り簡単で,測定器さえあれば出来そうな感じです。

 さて,問題は基準信号発生器です。買うと言っても新品は数十万円,それで出来ることはFMラジオの調整だけ。いやー,これはさすがに買えないです。中古は数万円くらいで出てきますが,今欲しいといってすぐに見つかる訳ではありませんし,それに数万円で出来ることが相変わらずFMラジオの調整だけです。却下でしょう。

 ま,悩む前にふたを開けてみましょう。

 でかい1枚ものの片面基板が顔を出します。安いベークライトの基板です。ここにびっしりと部品がついています。調整可能なコイル,トリマコンデンサ,可変抵抗もおびただしい数になっていて,これすべてを調整するともう大変なことになると想像がつきます。これだから高周波はいやなんです。

 とりあえず,放送波でどうにかなるところまで調べてみます。まずStep1,フロントエンドのバリキャップ電圧の確認です。サービスマニュアルは海外仕様なのでこの通りの電圧にはなりませんが,PLL-ICとして同じソニーのCX7925を使っている他のチューナーを調べて,これに近い電圧になってるかどうかをみます。

 するとやはり結構ずれています。高い周波数側をあわせると低い周波数側があわなくなるので困ったものですが,そもそも国内向けの仕様が見つかりませんから仕方がありません。一応ここでは,90MHzの時に21.5Vになるようにしておきました。

 次にトラッキングです。76MHzと90MHzの2つの放送波をつかまえて,TP10の大きさが最大になるよう,交互に調整をします。しかし,そう都合良く76MHzと90MHzで放送をやってくれているわけはありません。76.1MHzと86MHzの2つを見つけ,これで調整を行います。結構ずれている感じです。

 次は中央付近の周波数を受信し,IF段の調整です。ちょうどNHK-FMの先代が83.1MHzなので,これを使います。TP10を見ながら,最大になるようにIFトランスを調整します。

 次は検波出力の調整。同じく83MHzを受信し,TP4とTP5の間の電圧がゼロになるよう,トランスのコアを抜き差しします。これも割合簡単です。

 さあ,次のステップで私の手は止まりました。モノラル時の歪率調整です。83MHzを受信し,音声出力端子の歪率が最小になるようにするのですが,歪率計がありません。低歪率な正弦波発振器もなければ,低歪率なFM送信機も基準信号発生器もありません。まさか1kHzの正弦波を流し続けてくれるような,そんな永久放送事故な放送局があるはずもなし。

 ただ,NHK-FMの歪みっぽさがこの段階で消えてくれればうれしいなあと,調整箇所であるトランスのコアをグリグリ回していたら,ペキッと嫌な音がしてコアがかけてしまいました・・・うわぁぁぁぁあ

 ・・・このSTEPは飛ばしましょう。サブバランス調整というのやります。これは簡単で,83MHzを受信してTP3が最小になるようにすればよいらしいです。楽勝。

 次はMPXのVCOです。TP7が38kHzになるように調整ですが,ここはPLLがロックすればよいので,多少いい加減でもどうにかなるでしょう。

 次はパイロットキャンセルの調整。ステレオ放送を受信し,漏れてくるパイロット信号19kHzが最小になるようにしますが,ステレオ放送で無音を出し続けてくれるような永久放送事故な放送局があるはずなし。次。

 えと,ステレオ時の歪率調整・・・出来ません。次。

 えとえと,ステレオ時のチャンネルセパレーション調整・・・1kHzの正弦波を方チャネルだけ流し続けてくれるような,しかも時々左右を入れ替えてくれるような,そんな怪奇現象のような放送局があるはずもなし。次。

 次は・・・ありません。

 ということで,肝心な調整が出来ずに終わってしまいました。コアもかけてしまいましたし,いろいろいじりましたから,このままほっとくわけにもいかないでしょう。どうにかせねば。

 足りないものは,歪率計,低歪率な正弦波,そしていろいろな設定が可能なFM送信機です。

 実は歪率計と正弦波発振器は,最近PCを利用して実現するフリーソフトが存在し,お金のない自作派は随分救われています。私も救われたかったのですが,Windowsの動いているマシンで一番高速なのは1.3GHzのCeleron。しかもGPU非搭載です。あまりに非力で使い物になりませんでした。

 しかし,ふと手元を見ると,そこには2.5GHzCore2Duo,GeForce8600搭載のMacBookProが!

 実はBootCampを試してみようとWindowsXPを入れてあったりしたので,これを使って歪率計と正弦波発振器を用意しましょう。正弦波発振器は出力をSPDIFにするとアナログ回路での歪みを無視できます。

 ただ歪率計(スペアナ)だけはそういうわけにもいかんので,ローランドのUA25を使ってUSBから入力します。

 試して見ると,これはすごい。スペアナなんて,サンプリング点を65536にしても18fpsで表示できています。32768にすればほぼリアルタイムですよ。すごい。ノイズフロアも-100dB以下と,実用上十分。オーディオに限って言えば,もう測定器級だといってもいいんじゃないでしょうか。

 問題はFM送信機,いわゆる基準信号発生器です。これは本当にどうにもなりません。

 まてよ,FMトランスミッタを使えないか・・・最近のワンチップFMトランスミッタは高性能化が進み,音質もかなり良くなっていると評判です。

 幸い,会社にSiliconLab社製の高性能な評価ボードがあったので,ちょっと借りてきました。これはUSBで様々な設定が可能で,周波数,送出レベル,デビエーション,入力のミュートやパイロット信号の有無など,およそ測定に必要なことはPCの画面上で切り替えることが出来ます。

 このボードの実測値を見てみると,明らかにチューナーの性能に負けています。しかし歪率は0.3%をちょっと上回る程度ですし,チャンネルセパレーションも40dBくらいです。これを基準に調整してもこの性能を上回れないのですが,でもこのボードで最善を尽くせば,実力はもっと上に来ている可能性もあります。

 ないよりまし,これでやってみましょう。ありがたいことに,このボードの音声入力はSPDIFが許されています。

 接続を済ませ,各種ソフトを入れて,早速試してみますと,予想以上の好印象です。調整箇所を動かせば,それに従ってすすーっとスペアナが変化します。正弦波そのものの歪みも小さく,案外いいところに調整が出来そうです。

 最終的に歪率は測定限界に近い0.3%まで追い込みました。このチューナーのスペックもこの程度ですから,ベストといってよいでしょう。また19kHzのパイロット信号の抑圧などはわかりやすく,目視でもノイズに埋もれる位のレベルに追い込めます。

 チャンネルセパレーションもしっかり調整。ただ,やっぱり結構漏れるみたいですね。送信側の問題かも知れないのでなんとも言えません。

 調整のための環境さえあれば,作業そのものはとても簡単。やはり調整前がベストになっていたわけではなく,若干のズレがありましたから,経年変化だけは避けられないようです。

 早速試聴です。はっきりいって,よくわかりません。もともと高音質を指向したソースも少なく,NHK-FMは相変わらず歪みだらけですので,よく分かりません。よく分からないのですが,気が付いたのが低音がしっかり出てることでしょうか。

 iPodを送信機に繋いで音を出してみましたが,アンテナを直結しているせいもあり,iPodを直接聞いているのとなにも変わりません。少なくともこの段階で,Hi-Fiオーディオ機器としてのFMチューナーであることに,私は自信を持ちました。

 となると,NHK-FMの強烈な歪みの原因ですね。どうもこれは,マルチパス障害のようなのです。

 なぜ民放ででないのか分かりませんが,テレビのVHFアンテナは,FM放送の帯域では指向性がちょうど180度反転します。直接波ではなく,むしろ積極的に反射波をつかまえているような状態なので,受信レベルが良くてもマルチパスが起きまくっているのは確かです。

 歪みになるか,ジュルジュルという音になるかは,直接波と反射波の到達時間差によるものがあり,また送信周波数にも関係がありますので,そう考えるとNHK-FMでだけ歪みが出るというのは納得出来ます。

 試しに,アンテナ端子と金属製のラックをくっつけてみると,歪みがなくなりました。やはりマルチパスですね・・・

 下手に素人がいい加減な機器で調整を行わずともよかったのかも知れません。ベストではなくても,十分な性能を持っていることは確かだったわけですし。

 問題の解決には,さらにFMアンテナを調達しないといけないことになりました。以前はマルチパスなど出なかったので,T型のフィーダーアンテナはすでに捨ててしまいましたし,賃貸ですから屋根上に7エレのFMアンテナなど上げるわけにはいきません。(そういえば実家では最初にあげた3エレ八木が台風に飛ばされ,5エレにしました・・・)

 ということで,まずはフィーダーアンテナを買ってきましょう。数百円で買えるはずです。昔はスーパーにも売ってたくらいだったのですが,最近はとんと見かけなくなりました。まだ売ってるのかと心配になって調べると,大手量販店にはありそうです。会社に帰りにでも買って来ることにします。

6V6シングルを改造

  • 2008/05/28 12:12
  • カテゴリー:make:

 2000年に作った6V6GTのシングルアンプを改造しました。

 改造と言っても性能の向上はなにもありません。このアンプは自分でゼロから設計したものだったのですが,案外性能が平凡で,特にこのアンプでないといけないような音でもないことから,ほとんど使っていません。

 自分で設計をしたということもそうですが,旧タンゴが廃業した時の,最後の生産分として入荷したU-608というトランスを手に入れたことがきっかけでした。5Wくらいのシングルアンプを作るのに,どんな真空管を選べば良いかを考えたのですが,どうせメインのシステムにはならないだろうし,ヘッドフォンジャックも付けておきたいということで,あまり欲張らないようにしたのです。

 U-608はUL接続用のタップが出ていませんので,五極管を使う場合でも素直に五極管接続をするか,あるいは三極管接続をする,もしくは最初から三極管を使うしか選択肢がありません。

 三極管はすでに5998のプッシュプルがありますし,ここで2A3みたいな本格的なアンプはドライブも大変なのでちょっとしんどい。かといって6BQ5や6BM8みたいなタマでは,最後のタンゴトランスがもったいないので,悩んだ末6V6にしたのです。

 スクリーングリッドへの電圧供給はなにかと面倒ですし,出来ればUL接続したかったのですが,仕方がないので設計課題の1つとして,真面目に五極管接続をすることにしました。

 電源トランスはいつもお金がかかるものなのですが,新規の投資をしたくないという気分もあって,手持ちにあったST-220の中古品を使うことにしたのです。ところがこのST-220というトランスB電源を220mAも確保されていて,6BQ5や6V6のプッシュプルに対応できるちょっと大きめのトランスです。今回の6V6シングルでは100mAもあれば足りると思っていたのですが,まあいいかと使うことにします。

 ところが,電流が少ないのでやはり電圧が高めに出てしまうことと,サイズが大きく重たいことで,小型のシャシーではたわみが大きく,また配置にも無理があることなど,かなり不自然な状態で使っていたのです。

 ま,それはそれでなんとかあわせ込んで,4.5W+4.5Wの出力のシングルアンプが完成したわけですが,すでにあれから8年。

 昨今の原材料高騰からトランスの値段もうなぎ登りです。1.5倍から2倍になったトランスもざらです。いわば贅沢品ですし,食料品と違って1回買うと数年は買いませんから別にいいのですが,それでも出来るだけ「鉄の塊」には投資をしたくないものです。

 そこへノグチトランスというトランスの専門店が値上げの予定を発表しました。ST-220などというオーバースペックのトランスから,適当なサイズのトランスへ交換しないといけないなと思って矢先の話で,以前なら5000円を切っていたPMC-100Mという手頃なトランスも,今や6000円近い値段になっています。

 これ以上値上がりすると,価格的に交換する意味もないですから,こういうのはさっさと注文するのがよいです。

 出てきたST-220で,ちょっと出力の大きめのプッシュプルアンプを作ることが出来ない物かと考えたのですが,220mAという電流も,280Vという電圧もちょっと小さくてダメそうです。(この段階で電圧に思い違いをしていて,40Wクラスのプッシュプル用出力トランスを2つ注文済みであったことは内緒です。)

 そこで考えたのは,ST-220を5998プッシュプルに転用,5998プッシュプルについていたPMC-283Mを,新しいプッシュプルアンプに使ってはどうか,ということです。

 PMC-283Mは320Vで280mAですから,6CA7でプッシュプルを組むと30Wくらいはいけそうです。しかも120V巻線も出ているので,固定バイアス用の負電圧も作ることが出来ます。(ST-220にはありません)

 このトランスも10年前は1万円くらいだったのですが,今は結構高いですねえ。

 しかし,問題は5998プッシュプルにST-220が使えるのかどうかです。

 固定バイアスではありませんし,電圧も280Vあれば十分なのですが,電流が220mAは実は少ないのです。5998Aのアイドル電流が1ユニットあたり60mA,これが4つ分ですでに240mAですから,軽くオーバーです。

 まあ,少々多めに電流を取っても電圧が下がるくらいでたぶん使えると思うのですが,長時間の使用は難しいでしょうね。

 しかし,ST-220を使わないともったいないですから,やっぱりこの作戦でいきましょう。

 こう決めて,6V6シングルの改造を始めます。トランスの配線を外し,シャシーからST-220を取り外します。ここにPMC-100Mを取り付けますが,幸いなことにちょっとヤスリで削るだけで固定穴を作ることが出来ました。しっかり固定できます。

 しかし,合計100mAのトランスというのは,小さくてかわいらしいものです。

 配線を終えて,各部の電圧を測定すると,当たり前ですが改造前と全く同じです。これなら間違いないだろうとさくっと音出しをします。

 ハムも全然なく,ノイズもほとんど聞こえません。まずは成功でしょう。

 しかし,音を出すと,スケール感がないのです。広がりもなく,随分と頭打ち感がします。ジャズは言うまでもなく,クラシックはもう苦痛というくらいの狭さです。

 効率のいい大きなスピーカならもっと鳴るんでしょうが,やはりドライブ能力が特に必要と言われるCM1では,全然だめですね。いやー,がっかりです。

 試しに5998プッシュプルに切り替えると,広がりはそこそこ,低音もしっかり出てきますが,高音に伸びがありません。やっぱ頭打ち感があります。クラシックで顕著ですね。

 それならばとうちの常用機である300Bシングルを投入,自然な伸びはあるのですが,低音のモコモコとした分離の悪さ,スケール感のなさからくる広がりのなさに「こんなに悪かったかうちのアンプは?」と思うほどでした。パワー不足です。

 最後の手として,MOS-FETの40Wアンプです。これはあまりにソリッドな音でつまらないのですが,どうしてどうして,クラシックを鳴らしてみると一番ましなのです。友人も「これでやっと普通になった」といってましたし,確かにすべての音が等しいバランスで鳴っています。

 やっぱクラシックのようなスケール感重視の音楽は,パワーが必要なんだなあと思ったことと,変に特性に偏りのある「個性の強いアンプ」ではなく,ストレートでソリッドなアンプこそクラシックには適しているのではないかと,そんな風に思った次第です。

 楽器の数が少なく,ボーカルやピアノなどの柔らかい音が主役なら,負帰還の少なめのシングルアンプは,本当にいい音を出すと思います。

 一方で,6CA7やKT88,6L6GCなどの銘球を使った大出力プッシュプルアンプも,音楽のジャンルに関わらず昔から高い評価を得ています。五極管でアンプを作るくらいなら半導体でいいじゃないかと思っている私ですが,UL接続という絶妙な負帰還システムは半導体では実現できず,ここに試してみる価値があるのではないかと思います。

 

バックアップメモリの電池交換

  • 2008/05/26 14:54
  • カテゴリー:make:

 5月の連休には実家に戻っていたのですが,1つ気になっていたことを片付けてきました。古いシンセサイザー達の電池交換です。

 今時のシンセサイザーはフラッシュメモリがあるので電池交換など不必要ななのでしょうが,80年代のシンセサイザーのユーザーメモリはSRAMで,唯一長期間のバックアップが可能な書き換え可能なメモリだったのです。

 バックアップ用の電池はおおむねコイン型のリチウム電池で,大体5年程度持つと言われています。今となっては使うこともないシンセサイザーではありますが,それでも当時のデータが永遠に失われるのは忍びなく,わずか数百円の投資と少しの手間で救えるなら,やっぱりなんとかしたいといいうのが,これ人情というものです。

 実家にあったのはローランドのD-20。これは私が10代の頃に使い込んだ1台です。ゴミ同然ですが,やっぱ捨てられないものです。

 使われている電池はCR2032で,メイン基板の電池ホルダーに取り付けられています。通電しながら電池交換をするのがミソで,これを忘れるとメモリがふっとびます。

 幸いにして私のD-20が,遙か昔の記憶を失ってはいませんでした。

 作業時間はわずか10分ほど。ここから先また5年,こいつは長い眠りにつくのです。

 ついでに,JX-8Pも見ておきましょう。中古で買ったJX-8Pは確か私が改造し,RAMカートリッジと同等な機能を内蔵させた時に,バッテリバックアップの電池も高性能な物に変えた記憶があります。

 電源を入れてみると・・・カートリッジを認識しません。その上,ユーザーデータをすっかり忘れています。うーん,かわいそうなことをしました。

 中をあけてみますと・・・あれ,元に戻してある。

 ・・・思い出しました。JX-8Pはいかにも80年代的なアナログシンセですが,これを初めてステージに持ち出す際,信頼性を高めようとして,改造箇所を全部元に戻したのでした。電池もCR2032になってます。

 近所のスーパーにまた買いに走り,CR2032を交換しましたが,記憶が失われてしまったJX-8Pは,私がエディットした音を出してくれることは,ありませんでした。

 妙な虚脱感が私を襲い,私はそのまま電源を落とし,ケースにJX-8Pを戻し,そのまま部屋を後にしました。新しい記憶を与えられることは,結局ありませんでした。

PC-1246メモリ拡張大作戦

  • 2008/02/01 01:02
  • カテゴリー:make:

ファイル 173-1.jpg

 機械語が使えない,グラフィックも使えない,実は4bitCPU,見るからに安っぽい,ってな理由でポケコンマニアからも見放されているPC-1246。私もPC-1245を中学生の時に手に入れて以来,PC-1246は邪道も邪道と,そんな風に思いこんでいました。

 とはいえ,大きさはPC-1245やPC-1251などと同じで小さく,実はBASICの処理速度はPC-1200シリーズ最速ときて,実用レベルとしてはなかなか高いポテンシャルを誇っているのもまた事実。この後のモデルPC-1248がシートキーになるなど,さらにコストダウンが進んで使い勝手さえも犠牲にされてしまったことを考えると,結構気になる存在ではありました。

 登場からすでに20年以上の時間が経過した今,結構な人気機種になっているような感じもあり,オークションではそこそこの値段がつくようになっています。

 私も,当時のOh!MZの新製品紹介のページで見たPC-1246が忘れられず,とうとう手に入れてしまいました。決して安いという値段ではなかったのですが,程度もよく,説明書も綺麗な状態でしたので,よかったと思います。

 分解掃除をしてから実際に使ってみると,なかなかBASICのサクサク感が素晴らしく,これはいける,という感触をつかんだのですが,PC-1245がリファレンスの私としては,許せない問題が2つ。

 1つはBEEPが出ないこと。BEEPだけではなく,カセットからの音が聞こえないのはちょっとどうかなと思います。

 もう1つはあまりにメモリが小さいこと。PC-1245は2.2kByteですが,PC-1246は2kByte。1割も小さいというのはかなりです。実際フリーエリアを調べると,PC-1245は1486バイトなのに,PC-1246は1278バイトです。

 それに,私のPC-1245は10.2kByteにメモリを増設していたので,窮屈感はさらに高まります。BEEPよりも許せないです。

 ところが,PC-1247というPC-1246の上位機種では,この2つは解決しています。BEEPは鳴りますし,メモリは4kByteとなんとか実用レベルです。

 悔しいので,PC-1246をなんとか改造出来ないものかと,検討を始めました。

(1)BEEP

 BEEPについてはすでに知られているように,部品の追加で比較的簡単に利用可能になります。トランジスタと抵抗3本を追加するのですが,それ用のパターンは用意されているので,部品さえ手に入れば特に難しいことはありません。

 BEEP命令は削除されていないので,PC-1246でもBEEP1と打ち込めばピーッと音が出るはずです。

 ジャンク箱をあさっていたら,ちゃんと部品が揃いました。試してみるとちゃんと鳴ります。これは解決。

(2)メモリの増設

 これはなかなか大変でした。

 そもそもそういうことが出来るのかどうかから考えないといけません。実際,PC-1401はPC-1402というメモリ増設モデルがあるにもかかわらず,CPU内蔵のROMのバージョン違いによって1402と同じように増やしたメモリを認識できません。

 PC-1246は6116が1つ使われていますし,PC-1247は4kByteですので,理屈通りに考えれば6116をもう1つ取り付ければ増設は出来そうです。その場合,2つ目の6116のCEをどうやって探り当てるかが鍵になります。

 回路図があれば一発ですが,私は見つけることが出来ませんでした。やはり不人気機種の情報は少ないですね。それに改造ネタも,海外を含めほとんど見あたりません。

 そんな中で,PC-1247の基板の写真をドイツのサイトで見つけました。なるほど,6116が2つくっついています。アドレス線を1本増やしてメモリを増やすのではなく,CEを別に用意して増やしているということがはっきりしました。

 もう1つ重大な情報として,CPUがPC-1246と同一の「SC61720D03」であることもわかりました。これがPC-1248などになると,後ろの「D03」が変わることで,内蔵のROMの内容が違っているとわかります。そうすると,CPUのピンアサインが変わり(シャープのポケコン用のCPUはそういうものです),増設出来るかどうかわからなくなってしまいます。

 PC-1247とPC-1246は同一のCPUであるとわかれば,これはもう,もう1つ6116を増設できると考えて間違いなさそうです。問題はCEをどうやって見つけるのか,です。

 まず,CE端子ですから,普段はHighでないといけません。また,不用意にLowになったりするものでもないので,そのあたりから調べます。

 オシロスコープで調べていくと,これか,と思う端子がいくつか見つかります。しかし,それらは元々の6116につながっていたり,カセットI/Fにつながったりと,明らかに違うとわかります。

 1つだけ,どこにもつながらず,ずっとHighを出している端子がありました。しかし,リセットをかけても動きませんので,メモリを認識する動作をしていないということから,違ってる可能性も高いと思われました。

 その端子は,CPUの5番ピン。QFPのピン番は,左下のマーキングを1番とし,反時計回りに2,3,4...と数えていきます。

 とりあえずえいや,で試してみます。6116を元々ついていた上にもう1つ重ねてハンダ付けします。いわゆるカメカメですね。

 そして上にのせた6116のCEを,CPUの5番ピンにつなぎます。電源をつなぎ,スイッチをいれ,リセットをかけてから「NEW0」と打ち込みます。これが重要。

 お,見事に3326と表示されます。やりました,見事に4kByteのメモリを認識しています。

 RAMの厚みが増した分,内部フレームに穴をあけて,組み立てられるようにしておきます。

 これで,私のPC-1246はPC-1247相当品となりました。

 当時はこういう改造も行われたのではないかと思うのですが,中途半端な機種だし,時期的にも過去のネタになっているせいで,ネットではひっかからないんですね。

 この検討の過程で,いろいろ面白いことがわかりました。

 まず,4kByte以上の増設の可能性ですが,これは残念ながら無理そうです。というのは,アドレスバスがA10までしか出ていないようなのです。6264を使うにはもう2本アドレス線が必要ですが,このCPUの全ピンを調べてみても,結局アドレスが吐き出されているような線はA0からA10までの11本しかありませんでした。

 次,クロック。PC-1245は512kHzという低速っぷりですが,PC-1246は1MHzにパワーアップしています。CPUが全然違うので単純比較は無理ですが,クロックは高速な方がいいにきまってます。

 しかし,クロックは高速になると電池を食うのが世の常。そこでPC-1246では巧みに消費電力を低減させています。電源をいれてある状態で,なんの処理も行っていないときは,この1MHzのクロックは止まっています。代わりに36KHzくらいの低速クロックがCR発振で常時動いています。

 この低速クロックはLCDの表示を行う為のクロックと,同時にキーの入力などの割り込みを取り込むためのクロックになっています。キーが押されると割り込みが入り,直ちに1MHzのメインクロックが起動,処理を行ってからすぐにクロックは停止状態になります。

 こうして,普段は電池を食わないようにしておき,処理が必要になったら全力でぱぱーっと処理を終えて,すぐに休みに入る。そしてトータルの電力消費を押さえる。この考え方は,今でこそ常識ですが,1984年の段階できちんと実装されているとは少々驚きでした。

 あと,RAMは8bitアクセスです。CPUは4bitなので,つまりこのRAMは完全にデータエリアとして使われていると想像できます。下手をすると,I/Oとして接続されているのではないでしょうか。

 内蔵の18kByte程のROMにBASICインタプリタを含むファームウェアを全部収めておき,実行形式のバイナリはここ以外には配置できない構造になっているとすれば,PC-1246が機械語を封印された事実は説明がつきます。つまりユーザーに開放されているメモリは,BASICの中間コードを記憶するだけのデータメモリに過ぎないということです。

 てことは,LCDに表示を出すためのVRAMも,このRAMにはマッピングされているはずがありません。PC-1245が直接データをVRAMにPOKEする方法でビットマップのグラフィクスを可能にしていたのに対し,PC-1246ではその方法が全く使えないことも,これで説明がつきます。

 しかし,悪いことばかりではありません。結局RAMはデータをためるI/Oデバイスの1つという位置づけですので,プログラムカウンタの大きさによるアドレッシングの制約はありませんから,64kByteの壁もなくメモリマップも自由自在です。だから,このCPUを使ったポケコンの中には,フラッシュメモリを扱えたり,100kByteを超えるようなRAMモジュールが利用できる機種もあるのです。まあある意味で,この点がすでに「ポケットに入るパソコン」という感覚を薄めているように感じますね。

 そんなわけで,この情報で,未だ現役のPC-1246がパワーアップされればいいなあと思います。

 私はバリバリ使うことにしましょう。

 

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