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YX-361TRをさらに調整

  • 2018/10/31 12:19
  • カテゴリー:make:

 先日,YX-361TRの誤差が大きく,メータの調整用の半固定抵抗の調整と,分圧器の調整を行う半固定抵抗を追加して精度を追い込んだ話を書きました。

 これで一応,電流計とDC2.5V,DC10Vの精度は満足なものになったのですが,CX-270Nは分圧器の調整までいちいちやっていないのに,すべてのレンジで高い精度を維持しています。

 何十年もの間世界中でコピーされ続けたテスタなのに,分圧器を調整で追い込んで出荷なんて話はさすがにないと思いますし,なにか秘密があるんじゃないかと,私は疑問を感じたのです。

 調べてみると,通常見られるメータに直列に入っている半固定だけではなく,メータに並列にも半固定抵抗が入っていることがわかったのでした。

 どちらもYX-361TRにはない半固定です。

 とりあえず真似ることから始めるというのが私の考え方です。メータに直列の半固定はすでに入っているので,メータに並列に入っている抵抗をどうするか考えることにしました。

 メータと直列に入っている半固定の2つに対して並列に31kΩが入っているのですが,機能的にはこれに近いですから,これを半固定にしてみます。

 もともと31kΩの固定抵抗なのですが,これを33kΩの固定と10kΩの半固定の組み合わせにします。33kΩの固定抵抗は明らかに大きいのですが,切り貼りした結果こうなったので,仕方がありません。

 まず最初に,最小レンジである100mVレンジにします。100mVの電圧を加えて,フルスケールになるように,メータに直列に入った半固定を調整します。うまく調整が出来なかったので,固定抵抗を750Ωから820Ωに増やしました。

 ここから電流を見ていきます。2.5V,25mA,250mAの各レンジで電流を見るのですが,今回は問題なく指示が揃ってくれました。

 次に電圧です。0.5Vをかけてフルスケールになるよう,並列に入った半固定抵抗を調整します。終わったら2.5V,10V,50Vと各レンジを見ていきます。

 最小レンジで精度が出ていれば,後のレンジは分圧器の比率で精度が決まるので,そんなに悪くはないはずです。

 ここでもう一度電流を確認します。ずれていればまた調整です。

 こうして何度か追い込んで行くと,電流はすべてのレンジで,電圧は50uAから50Vまで,精度の高い数字が手に入るようになりました。

 また,入力抵抗も調べておきたくて,DC電圧レンジの抵抗値を測定してみました。ちゃんと20kΩ/Vになっており,これは一安心です。

 これでよし。アナログテスタの便利さと精度の高さを再発見しました。確かにデジタルテスタは安いし便利だし素早く値が読めるので楽ちんですが,考えてみればどれもそれほど大きな問題ではありません。私はもうアナログテスタに軸足を移そうかと考えているくらいです。

 とはいえ,デジタルテスタには,入力インピーダンスが1MΩ以上でレンジによって大きく変動しないという大きなメリットがあります。これはアナログテスタでは入力にFETの差動増幅を持つ電子テスタと呼ばれるものに該当し,普通のアナログテスタでは厳密には代替できません。

 こんなふうに,デジタルテスタや電子テスタにはメリットが当然あるわけですが,では通常のアナログテスタにはメリットがないのかといえばそういう事ではなく,被測定対象から駆動用の電力をほんのちょっとお裾分けしてもらって動くという,大きなメリットがあります。

 ほんのちょっともらうから,入力抵抗が20kΩ/V(10Vレンジでは200kΩ)と低い値になります。問題なのは,こういうことが起きていることを頭に入れて測定をする,言い換えると相手によって正確度が変わってくることを先に心得ておく必要があるということですが,言ってしまえばただそれだけです。

 デジタルテスタが主流になるかならないかという頃には,アナログとデジタルのメリットとデメリットの比較に始まる初心者向きのセレクションガイドが散見されたもので,残念な事に,こうした入力抵抗に関する記述があまり見られなかったことを覚えています。

 数字が出るか出ないか,割合をビジュアルで把握出来るか出来ないか,といった目立つ違いばかりが協調されるから,デジタルテスタなのにバーグラフとか,そういうおかしな非実用品が生まれてしまうのだと思います。

 自分の使い方を満足するものであれば,好みのものを好きに使えばいいと,私などは思っています。

 

CX-270Nに導通チェッカーのLEDを搭載

  • 2018/10/30 14:37
  • カテゴリー:make:

 先日のアナログテスタ祭りで,カスタムのCX-270Nがなかなかよいと言う話を書きました。

 その後,もう少し調べてみると,面白い事がわかりました。

 カスタムは測定器のメーカーではありますが,ここがこのテスターを作っているわけではありません。ならどこが作っているのか,という話になるのですが,答えは台湾のDER EEです。

 この会社,なかなかいい測定器を作るメーカーで,我々アマチュアによく知られているのは,LCRメーターDE-5000でしょうか。あまりに安価で,しかも高性能,どうも大手メーカーにOEMで出ているらしく,私も便利に使っています。

 CX-270Nは,もともとこの会社のDE-360TRNというものらしく,CX-270Nを分解すると,その基板にこの型名が書かれていました。

 そしてこの型名,なんとなく見覚えがあるような・・・

 そう,良くある話なのですが,この型名から察するに,サンワのYX-360TRのコピー品です。とはいえデッドコピーというわけではなく,機能やレンジ,そしてそれらの基本回路は流用されていても,その後の追加機能や基板のパターンなどはオリジナルです。

 まあ,世界中でコピーされ,多くのエンジニアの手元にあったということを考えると,私がこのテスターの設計者だったら,うれしいような悲しいような,複雑な気持ちだったかなあと思います。

 この話,CX-270Nの精度が良好で,その秘密を探ろうと分解を始めたことがきっかけだったのですが,この途中でオリジナルの型名がわかり,そこから似たような機種の回路図も見つかって,という流れでした。

 ただ,肝心の調整の仕組みについては,どうも釈然としません。

 メーターに直列に入る調整用の半固定は入っていたのですが,もう1つメーターに並列に半固定抵抗が入っていたりするのです。

 しかも,この抵抗の位置がまた不思議で,回路図ではこの31kΩはメーターと直列の調整用の抵抗の2つに対して並列に入っているのですが,基板を何度追いかけても,前述のようにメーターだけに対して並列に入っているのです。ですから,31kΩをそのまま半固定にしてあるわけではないのです。

 こうなっている回路図を結局見つけることが出来ず,途方に暮れてしまいました。

 実際にCX-270Nの精度は良好ですので,問題にしなくてもいいかなと思います。

 次に,ちょっとした改造です。

 XY-361TRにあってCX-270にないのもの1つに,導通チェック用LEDがあります。これ,案外便利だという事と,メーターの隅に光り物ということで,結構格好がいいんです。

 回路はとても簡単で,x1Ωレンジの接点から,510Ωを介してLEDを繋ぐだけです。厳密には150mA流れるレンジにおいてLEDに流れる約6mAが増加することになるのですが,150mAに対して6mAですから,まあ目を瞑っているということなのでしょう。

 バラックで動作テストをしてうまく動く事を確認出来たので,取り付け改造です。メーカーの右上にLEDを取り付ける穴が開いていますので,目盛板にも穴をあけてLEDを表に出します。接着剤で軽く固定して,配線です。

 これでうまくいきました。動作もバッチリです。

 これでCX-270Nに導通チェッカがつきました。安いテスタはこうして改造して使う楽しみもあっていいものです。

 

アナログテスタの常用機としてCX-270Nを購入

 先日,サンワのアナログテスタ「YX-361TR」を買いましたが,2%以上の誤差があまりに目に付き,力業で調整を試みたという話を書きました。

 結果,私が使いたい範囲において満足な精度を達成したわけですが,そうなってくると妙な愛着と5000円近い価格もあって,常用して使い潰すのがもったいなくなってきます。

 「フルークは神棚に,現場はサンワのPM3」と言った人もいるそうで,まさに言い得て妙です。

 そんなわけで,アナログテスタが使い道によっては大変便利で有用であるとわかったこともあり,もう1つ,安くて使い潰せる実用機を買いたいと思いました。精度の追い込みはすでに出来る事がわかっているので,どんなテスタが来ても,基本部分がしっかり作られていさえすればあとはどうにでもなります。

 そこで早速調べてみたところ,カスタムのCX-270Nというモデルがよさそうです。実用的な機能とレンジ,そしてしっかりとした基本性能で,価格は3000円程度ととてもリーズナブルです。

 とはいえ安いには理由もあって,保証期間が1年間と短いこと,落下の衝撃に対する保証がないこと(これはYX-361TRにもありません),設置角度の規定がないこと,温度や湿度などに対する規定がないこと,校正のトレーサビリティが不可能で公式なドキュメントには測定値を記載できないという問題があるわけですが,個人の趣味でそこまで求めることはなく,年に数回精度の確認をやって安心出来ればそれでよいです。まして,国産かどうかということには,こだわりません。

 まあ,このあたりが神棚か現場かの違いの本質なのでしょう。

 基本性能は,DCが20kΩ/V,ACが9kΩ/Vで,DC電圧のレンジが0.1-0.5-2.5-10,50,250,1000V,DC電流も50uA-2.5-25-250mAとなっていて,YX-361TRと同じで使いやすいです。

 特に電圧の最小レンジと電流の最小レンジが共通になっているあたり,メータそのものの感度が50uAであることを示しています。これもYX-361TRと同一です。

 その上,YX-361TRでは別売りオプションが必要なhFEの測定が最初から可能になっているので,実用性は高いと思います。

 とはいえ,LEDによる導通チェッカも,バッテリチェッカーも持っていないですし,なによりセンターメータ機能がありません。まあ,個人的にこれらの機能はほとんど使わないし,アナログテスタに期待するものでもないので,全然構いません。

 ということで,基本機能がしっかりした安価なCX-270Nに狙いを定めてみると,この商品は家電関係のパーツのメーカーにOEMで供給され,家電のルートでも手に入ることがわかりました。

 計測器のルートでは値引きは少ないし,お店も限られてしまうのですが,家電やホームセンターならいくらでもありますし,安いです。

 案の定,ヨドバシで2750円にポイント10%と,実質2500円以下という価格で買うことが出来ました。YX-361TRの半額です。

 届いたら早速確認です。ブリスターパックを開けると,想像以上に綺麗な筐体と,ゆったりとした動きのメータにワクワクします。ロータリースイッチの感触も素晴らしいです。

 詳しい説明は見当たらなかったのですが,直接見てみたところ,どうもトートバンド式のようです。このあたりもYX-361TRと同じです。

 ただ,そこはやはり値段の問題もあり,全体的に作りは雑です。筐体も厚ぼったい感じがしますし,汚れのような焦げのような成型不良もあります。ヒューズや電池を交換するときには必ず回すことになる背面のネジは太いタッピングビスで,何度か開け閉めするだけでなめてしまいそうな感じです。

 メーターも動きは良いのですが,どうも見にくいです。ミラーはあるのですが曇っていて針の反射が見えないので,その効果がほとんどわかりません。スケールの印刷もなぜか見にくく,こういう所はさすがにYX-361TRは良く出来ています。(余談ですが横河の2051は精度と言い読みやすさと言い,本当に素晴らしいです)

 背面にはスタンドもありますが,アナログのテスターは水平で使わないと指示が狂いますから,実は使ってはいけません。その意味では無用の長物といえるのですが,こういうところのこだわりのなさが,また残念な気分になります。

 こういう細かいところで価格や長く売られているかという差が出るのかも知れません。

 で,測定器の命である精度を見ていきます。

 電圧と電流を前回同様,基準電圧発生器,HP34401A,横河2051などで確認していきますが,電圧も電流も,なんとほとんどズレていません。十分許せるレベルです。最初にきちんとゼロ点調整をしてやれば,ほぼ値が正確に出ます。

 例えば,CX-270Nで10Vになるよう電源を調整してやると,この時34401Aは10.02Vになっています。私の読み取り誤差まで含めて,0.2%の誤差です。どうです,なかなか優秀でしょう。

 電流もCX-270と2051で200mAになるように電子負荷を調整して(そう,CX-270Nと2051の指示はほぼ一致しているのです)やると,この時34401Aは198.6mAです。これで0.7%ですが,250mAフルスケールの電流計としては,十分過ぎる精度でしょう。(JIS1級で1%ですからね)

 これならなにも調整することなく,実戦投入できます。ちょっと拍子抜けです。

 半額なのに,最初からこの精度です。YX-361TRは仕様の範囲内とはいえ,一目盛り分の誤差があったわけですから,なにより精度が重要な測定器において,これはちょっと残念な事だといわざるをえません。

 やれ国産だの,やれ老舗だの,やれ専門メーカーだのと言いますが,結局精度で半額のテスターに負けてしまうサンワに対して,私はがっかりしましたし,それまで私が持っていたサンワの良いイメージが崩れてしまったことも,もう隠しようがありません。

 もし,この精度が2%ズレたYX-361TRを,中学生が奮発して買ったものだとしましょう。彼はもうこの1台で,やっぱりアナログテスタはだめだなと,そう思ってしまうんじゃないでしょうか。

 アナログテスタの良さをもっとも知らしめないといけないサンワが,その評判を落としてしまうようなことをするとは,確かに使用の範囲内ですから問題はないとしても,やっぱり残念でなりません。

 

アナログテスタの新品を買って調整をする

 秋です。電子工作の秋,測定器の秋です。

 そんなわけで,アナログテスタを買いました。サンワのYX-361TRです。

 小学校の6年生の時に買った1000円ほどのテスタはもちろんアナログだったわけですが,中学2年の時にもう少しまともなものが欲しいと,奮発して買ったのがサンワのBX-85TRでした。

 このテスタは当時としては高価な部類に入るものでしたが,友人が持っていた割引クーポンがこの機種限定で,他に選択肢がなかったこともあり,他者も含めた機種の比較検討は全く行っていませんでした。

 しかし,このモデル,この個体は大当たりで,機能も精度も使い勝手の良さも,見た目も格好良く,しかも堅牢で壊れることがないと,いいことずくめでした。初期の私の電子工作を支えた,まさにマザーツールです。

 この後,デジタルテスタに移行して,BX-85TRの出番は減っていくのですが,デジタルテスタを何度も買い直したことに比べて,アナログテスタを買い直すことはありませんでした。そう,今に至っても,アナログテスタはBX-85TRしか持っていません。

 しかし,国内の計測器の需要が落ちているところに,安価な中国製のテスタが大量に入ってきましたし,そもそもアナログテスタが絶滅寸前な現状では,いつアナログテスタの新品が買えなくなってもおかしくありません。

 BX-85TRも先日,針の戻り悪く,何度か揺すって復活したこともありますし,旧安全規格品ゆえに今のテスタリードとは互換性がないですし,壊れてしまったらもうおしまいだと不安に思っていました。そう,アナログテスタはメーターがすべてで,これが壊れたらもうおしまいなのです。

 そこで,いつか新品のアナログテスタを買っておこうと,数年前から思っていたのです。

 そして,ふとしたことから,アナログテスタを買うことを思い出したのです。

 心のゆとりがあったその日,早速サンワのページに飛んで,機種選定です。

 BX-85TRに近いテスタとして,SH-88TRとYX-361TRの2つを選びました。どちらも仕様はほぼ同じで,なんでどっちも残っているのだろうと思うほどなのですが,きっとなにかが違うのだろうと目を皿のようにして比較を続けます。

 名称から,BX-85TRに近いのはきっとSH-88TRなんだろうと思った(BX-85TRからロジックアナライザを省いたモデルにSH-83TRというのがあったのですが,おそらくこの後継でしょう)のですが,YX-361TRの方がフルスケールがわかりやすく(YX-361TRは5の倍数ですが,SH-88TRやBX-85TRは3の倍数だったりします),こちらの方が好印象です。

 そして決定的な違いを見つけます。SH-88TRがピボット式なのに対し,YX-361TRはトートバンド式なのです。

メーターの構造による分類なのであまり意識することはないのですが,指針を幅の狭い金属の帯で吊り下げ,ねじれの反発力で針を戻すトートバンド式に対し,ピボット式は指針の回転部を尖った針で支え,ヒゲゼンマイで戻る力を得るという,まるで機械式時計のような仕組みです。

 不詳わたくし,アナログメータにこうした違いがあることを知りませんでした。いえ,正確には知っていましたが,どっちも同じようなものだと思っていて,この違いを意識することはなかったというべきでしょうか。

 しかし,少し調べてみると,この違いは案外大きいようです。とはいえ,どちらが有利なのか,どちらが高級なのかという話はなかなか出てこず,どちらの構造にも精度が出易いだの高級品だのと,同じ事が書かれていたりします。

 ただ,ピボット式が構造的に衝撃に弱いことは事実でしょうし,トートバンド式が利用する金属のねじれによる力はねじれ角度によって変わってくるものなので,動き始めとフルスケール付近では針の反応速度に違いが出ると思います。

 また,トートバンド式は,厳密にはリニアなスケールにならないはずで,一長一短がありながらも,ことテスタに関して言えば,ピボット式の方が有利なんじゃないかと思います。

 BX-85TRはどうもピボット式のようです。ならば,今回はぜひトートバンド式を買ってみましょう。

 ということで,YX-361TRを買うことに決めました。お値段は専用のケースと一緒で,約6100円のポイント10%です。

 取り寄せだったのでしばらく待っている間,この機種がどんなものかを調べてみました。するとなんとまあ,YX-360TRというマイナーチェンジ前のモデルが出たのが1970年代の中頃,さらにこのベースとなった360-YTRまで遡れば1960年代の後半にまで行き着くという,大変息の長いモデルだとわかりました。

 アナログテスタの完成形とまでいう人がいるくらい,50年近く変わっていないということも驚異的なのですが,1986年頃の雑誌の広告を見ていても,YXで始まる製品は見当たらないのです。1990年頃になるとAXで始まる製品が出てくるのですが,もしかするとYX-361TRは一時中断か,あるいは海外だけに出荷されていたのかも知れません。

 このあたりは要研究ですね。

 YX-361TRについてはもう1つ面白い話があり,中国製の違法コピー品がたくさん出回っていたということです。SUNWAというパチモノブランドに書き換えたもの,GBW-361と違う名称を与えられたもの,名称までコピーしたものなど様々なんだそうですが,作りは雑で,中身もひどいものだったとの話です。

 とはいえ価格は正規品の半額程度で,ある時期秋月でも売られていたというのですから,笑えません。(秋月のパチモノは,ある時から店頭から消えて,八潮店の店頭でひっそりとジャンク扱いで放出されたと聞いています)

 これも手頃で実用的な人気機種だったことの証でしょう。

 というわけで,届いたYX-361TRは,私が期待した1980年代のかっちりとした日本製テスターのそれではなく,今どきの頑張って作ってます的な,ちょっとやれた感じのアナログテスタでした。

 BX-85TRと比べると,それはもう全然感触が違います。30年前に6500円だったBX-85TRと,現在5000円ほどで買えるYX-361TRとを比べるのも無理がありますが,それだけBX-85TRが良く出来ていたということだと思います。

 まあ,計測器ですから,精度が命です。さっそく調べてみます。

 うちにある基準電圧発生器で,10Vを出して測定です。

 ・・・9.8Vしか振れません。

 うーん,一目盛り少ないというのはさずがにアウトだろうと思って計算して見ると,10Vに対して-0.2Vですから,-2%の誤差です。YX-361TRの仕様では±2.5なので,なんとこれはOKなんです。

 いやいや,これだと結果が変わってくるだろうと,あわてて確認を進めます。

 基準電圧発生器の問題かもと,HP34401Aでも測定をしますが,やはり10Vです。BX-85TRで調べるとぴったり10V。さすがです。

 YX-361TRで10Vになるよう電源を繋ぎ,この時のHP34401の表示を見てみると,10.22Vと出ています。およそ2.2%のズレですから,仕様にはギリギリ入っています。

 他のレンジでも調べてみると,やっぱり一目盛り分くらい少なめに出ます。

 これ,確かに仕様に入っているとはいえ,実用に適さないレベルの差です。温度や経年変化まで考えると,私の基準ではNGです。

 困りました。

 なら,自分でなんとかしてみましょう。幸い,アナログテスタには十分過ぎる基準電圧発生器もありますし,高精度な電圧計も揃っています。

 しかし,アナログテスタの校正や調整は,もはやメータの性能に依存してしまうわけで,基本的にはAS ISで使うものですから,本当に出来るのかちょっと不安があります。

 まずは回路図の入手します。回路は非常にスタンダードなもので,50uAのメーターに分圧器と分流器を切り替えて使うものです。私のYX-361TRはチップ部品が多用された今どきもモデルではありますが,その定数もほとんど変わっていません。

 いろいろ試行錯誤をしたのですが,こんな感じで調整を済ませました。

(1)まずメータ感度を調整。910ΩのR1を,750Ωの金皮と100Ωの多回転VRと直列にしたものに交換し,0.25Aレンジで250mAを流し,VRを調整してフルスケールにする。どうも分流器が発熱することで,しばらくすると値がずれるようで,30分ほど放置するのがコツ。

(2)25mA,2.5mAレンジでも確認をするが,分流器の相対比は揃っているようなので,ほとんどに狂わないはず。ちなみに基準となる電流計はHP34401Aと横河の2051,そしてBX-85TRの3つだが,3つともぴったりと値が一致するので実に気分がいい。

(3)次に直流電圧計の確認。よく使う2.5Vと10Vレンジで確かめる。やはり少しズレているので,まず2.5Vレンジの分圧器から調整する。40kΩのR5を33kΩの金皮と10kΩの多回転VRに置き換えて調整。

(4)次に10Vを確かめるが,やはりズレがある。そこで150kΩのR6を,130kΩと15kΩの金皮,10kΩの多回転VRの組み合わせに置き換えて調整。

(5)あとは50V,250V,1000Vでも確認をするが,これ以下の倍率器が揃ってきたこともあり,大きなズレは見られないので,このままOKとする。

(6)抵抗レンジも確認。これはズレがほとんどない。

(7)交流電圧計の確認は,そもそもあまり使わないこともあり,AC100Vでさっと確かめるだけ。問題なし。

(8)そうそう,センターメータも確認しておく。これもばっちり。


 ということで,直流電流計と2.5V,10Vの直流電圧計の調整が出来ました。

 アナログ電流計というのは今どきなかなか貴重なもので,例えば充電や放電の電流をモニタするのに,駆動のための電池がいらないというメリットがあるのに,数は少ないんですよ。

 それに,電流計は安全規格の関係もあり,小型のテスターには搭載出来ないという事情もあって,電流計だけ搭載していないテスターが多いのです。

 電圧計も,やはり駆動用の電池が必要ないというメリットは大きくて,長時間のモニターにはぴったりなのです。

 それに,今回つくづく思ったのは,電圧の測定にはデジタルの方が便利でも,決まった電圧に調整を行う場合は,アナログのメータの方がずっと楽だという事でした。

 ただのノスタルジーということではなく,それぞれの利点を活かして使いこなすことも,とても楽しいものです。現行機種の精度が今ひとつな事には確かにがっかりさせられましたが,他のテスタとほぼ精度を揃える事ができたので,積極的に使っていこうと思います。

 それともう1つ,BX-85TRの精度のよさです。購入からすでに30年以上の時間が経過し,大切に扱ってきたとはいえ中学生の荒っぽさに耐えて,ここまで生き残った測定器とは思えないほど,ぴったりの精度を誇っていました。

 手に入れた当時もそうですし,その後しばらくの間は,BX-85TRの値を信じるしかなかったわけで,疑うことも知らずその値を信じたこのテスタが,信じるに足る値をずっと出してくれていたことを今知るに至り,私はいいものを手に入れて使う事が出来たことを,本当に良かったなと思いました。

 そういえば,初めて買ったデジタルテスタのRD-500との測定値のズレもほとんどなかったんですよね。だから測定器ごとに値がズレるなんて気持ちの悪いことが,それを自力で解決出来なかった当時に起こらなかったことを,運が良かったと思います。

 思い起こせば,当然値が一致すると思っていた私に,そうではない現実を突きつけたのは,秋月でMETEXの高級テスタを買って,その値がズレていたときだったと思います。以後,私は精度についてどこで折り合いを付けるか,考え続けることになるのです。

 

Raspberry Piでサーバーをたてる

 OSを最新にしてから,ローカル内DNSとして使っていたdnsmasqが動かなくなってしまった,私のTS-231Pは,それ以降なにかと調子が悪く,知らぬ間にCPU負荷が100%になっていたり,スワップが大きくなりすぎて警告が出たり,ウイルススキャンの定義ファイルを更新できなかったりと,どうもすっきりしません。

 思えば,dnsmasqもopkgから入れて見たり,たはまたQPKGを見つけて入れて見たりと,よく分かってもいないのにいろいろ試してみては失敗するものだから,気が付いたら調子が悪くなっていて,すでになにがきっかけだったかわからないということが起こっています。

 見た目に問題なく動いているNASも,よく見てみると問題が出ていたりするので,なにかをきっかけにして初期化をしないといけないかも知れません。

 とにかく,このままdnsmasqをNASに任せてようと頑張ることは傷口を広げてしまう恐れが大きいので,もうこの作戦はやめにして,別の方法を考える事にします。

 そして私は閃きました。

 そうだ,ラズパイだ!

 電子工作のひとも,makerな人も,Linuxが大好きな人も,35ドルで買えるフルスペックのLinuxが走る,この名刺サイズのシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」に夢中です。

 2012年に登場した初代からすでに6年が経過し,イギリス生まれのこのシステムもすっかり定着した感があります。Arduinoのようなアングラ感もなく,大手メーカーも巻き込んで,知ってる人は知ってるというレベルから,技術者なら普通に知っているべきものへ変わって来たなあと感じます。

 とはいえ,レジスタを叩いてLEDをチカチカさせるのが好きなハード屋さんにとって,linuxというOSの壁は厚く,いくらGPIOがヘッダピンで出ていても,直接触っている感覚が薄くなってしまうんじゃないかと思います。

 そんなわけで,電子工作やIoTという側面から,私はRaspberry Piを触ることはないだろうなと思い続けていたのですが,家庭内のサーバーとして利用するという切り口に気付くと,猛烈に身近な存在になってくるから不思議なものです。

 で,Raspberry Piを同じような用途で使っている人を調べてみると,どうもたくさんいらっしゃるようです。そりゃまあ,1GHzを越えるマルチコアCPUにLANと16GBのストレージを内蔵したコンピュータがちゃんとしたLinuxを走らせているんですから,大抵のことは出来てしまうでしょう。

 しかも安い。しかも低消費電力。しかも小さい。

 これこそ,最良の解決策です。

 こういうきっかけを待っていた感もあるのですが,購入を前提に早速調べてみると,どうも最新のRaspberry Pi 3+はまだちょっと高く,こなれているのはRaspberry Pi 3です。これなら4000円ほどで買えます。

 初代や2はもっと安いかと思ったのですがむしろ高いくらいで,そういうことならRaspberry Pi 3 Model Bをとりあえず買っておきましょう。

 届くまでの間にセットアップの方針と作業の準備を行っておきます。

 まず,本体にディスプレイやキーボードを直接繋ぐことはせず,リモートで運用します。いわゆるPCとして使うわけではないので,GUIもいりませんし,オフィススイートもいりません。

 ネットワークは有線のLANを基本とし,WiFiもBluetoothも使いません。

 動かすサービスはDNSサーバーであるUnboundとNTPくらいのもので,後は必要に応じて考える事にします。

 ということで,OSはRaspbianで,Stretchという最新版のLiteを選びます。これならストレージのmicroSDは8GBでも十分過ぎるくらいで,手持ちの余剰品を有効活用出来ます。早速ダウンロードしておきます。

 そんなこんなので,Raspberry Pi 3 model Bも手元に届き,作業スタートです。


(1)microSDの準備

 ストレージのmicroSDにOSを書き込み,起動できるようにするのがまず最初にやるべきことです。なにせ初めての事ですし,なにかと失敗しやすい作業でもありますので,ここは確実な専用ツールを使います。

 Etcherというのがそれで,Mac版をダウンロードして使いました。これはzipになっているOSのイメージを解凍せずにそのまま突っ込み,展開先のmicroSDを指定してやればあとは勝手に作業が進むという優れものです。

 使ったイメージは2018-06-27-raspbian-stretch-lite.zipです。

 正常に書き込んだら,デフォルトでは閉じているsshを有効にするため,ファイル名をsshとした0バイトのファイルを作成し,/bootに投げ込んでおきます。

 こうして出来たmicroSDを,LANですでに繋いであるRaspberry Piに突っ込み,2.4AのACアダプタに繋いで起動します。


(2)sshでログイン

 Raspberry Piは初期状態ではDHCPでIPアドレスを取得するので,sshでログインするにはどのIPアドレスが割り当てられたかを調べないといけません。

 Macだと「raspberrypi.local」でIPアドレスを自動的に見つけてくれるのですが,手動で調べるのも1つの方法です。

 私の場合,IPアドレスを調べてsshでログインを試みたのですが,connection resetと出てしまい拒否されてしまいます。

 googleで調べると。どうもopensshの問題らしく,Raspberry Piのsshのファイルを消してコンフィギュレーションをやれば解決するらしいのですが,そもそもLCDもキーボードも繋がっていない環境なのですから,sshで繋がるまでなにも出来ません。

 早くもここで白旗を揚げそうになったわけですが,よく考えるとLCDもキーボードも繋げてしまえばいいだけの話で,こうしてローカルでログインして作業をすればよいのです。

 長めのHDMIケーブルでLCDをつなぎ,余っていたUSBキーボードを差し込んで起動すると,ちゃんとLCDに起動画面が出てきます。当たり前ですがちょっと感激です。

 起動していることまではわかったので,piでログイン。そして

sudo rm /etc/ssh/ssh_host_*
sudo dpkg-reconfigure openssh-server

 と入力します。これでsshでリモートログイン出来るようになりました。


(2)初期設定

 なにはともあれ,パッケージの更新です。

sudo apt-get update
sudo apt-get upgrade -y

 小一時間ほどかかりました。待ってるだけの時間ですので,もったいないです。

 これも無事に終了し,再起動。

 続けて設定の変更です。タイムゾーン,ロケール,ホストネームを設定します。

sudo raspi-config nonint do_change_timezone Asia/Tokyo
sudo raspi-config nonint do_change_locale en_US.UTF-8
sudo raspi-config nonint do_hostname hogehoge

 ロケールは日本語を指定したのですが,全角文字がなんだか鬱陶しくなり,USにしました。ちなみにデフォルトはGBです。


(3)NTP

 サーバーですので,正確な時刻は必須。従ってNTPは入れないといけません。

sudo apt-get install ntp
sudo vi /etc/ntp.conf

 そして,NTPサーバーにおなじみのnictを設定します。

"server 0-3.debian.pool.ntp.org iburst"をコメントアウトし,"pool ntp.nict.jp iburst"を追記するだけです。

sudo service ntp restart

そして,

ntpq -p

 として,ここに*nictが出ていればOKです。


(4)固定IP

 DNSサーバーとして使うのですから,IPは固定でないと話になりません。

sudo vi /etc/dhcpcd.conf

 以下のように修正します。

interface eth0
static ip_address=192.168.1.xxx/24
static routers=192.168.1.x
static domain_name_servers=8.8.8.8

sudo reboot

 固定IPで再ログインして,ifconfigで確認します。次。


(5)ユーザーの管理

 piというユーザー名を使い続けるのは嫌なので,このあたりを片付けます。

 方向はpiを別のユーザー名にすることです。そのためには,一度暫定ユーザーを作り,ここで作業をして最後に削除です。

(5-1)暫定ユーザーの作成
sudo useradd -m -G sudo -s /bin/bash tmpuser
sudo passwd tmpuser
sudo reboot

(5-2)暫定ユーザーでログインしpiユーザーを変更
ssh tmpuser@192.168.1.xxx

sudo rm /etc/sudoers.d/010_pi-nopasswd
sudo usermod -l hoge pi
sudo usermod -d /home/hoge -m hoge
sudo groupmod -n hoge pi
sudo passwd hoge
history -c
sudo reboot

(5-3)暫定ユーザーの削除
ssh hoge@192.168.1.xxx

sudo userdel -r tmpuser

 よし,ここまででようやく初期設定がおわった。


(6)Unboundのインストールと設定

 DNSサーバーには,これまで使っていたdnsmasqを使うつもりでいたのですが,軽く低機能なdnsmasqは今回の用途にぴったりとは思いつつも,最近例をよく見るようになったUnboundを使って見る事にしました。

sudo apt-get install unbound

 これでインストールまで完了です。簡単です。続けて設定です。

sudo vi /etc/unbound/unbound.conf.d/unbound.conf

 おそらくこんなファイルは存在しないと思うので,新規と出てくると思いますが,びびらずに続けます。

 Unboundは,/etc/unbound/unbound.conf.d/にある.confをすべて設定ファイルと見なすので,設定を複数に分けてもいいし,1つにまとめても構いません。

 私の場合,大した記述ではないので,1つにまとめました。

server:

use-syslog: no
log-queries: no

directory: "/etc/unbound"

interface: 0.0.0.0

access-control: 127.0.0.1/32 allow
access-control: 192.168.0.0/16 allow

hide-version: yes
hide-identity: yes

local-data: "gshoes.myqnapcloud.com. IN A 192.168.1.xxx"
local-data-ptr: "192.168.1.xxx gshoes.myqnapcloud.com."

 たったこれだけです。

 本当はもっといろいろ設定しないとまずいのですが,面倒なのでログさえもとりません。

 しかもデフォルトでは,ここで解決しなかった場合,上位のDNSサーバーに合わせることになっているので,わざわざ設定ファイルに記述しないという手抜きっぷりです。

sudo /etc/init.d/unbound restart

 これでUnbopundを再起動します。

 他のマシンのDNSをRaspberry PiのIPアドレスにしてから,nslookupで期待したIPアドレスがかえってくるか,試してみましょう。

----

 とまあ,やったことはこれだけです。

 とても簡単ですし,待ち時間を除けば30分もあれば終わってしまうでしょう。わずか4000円の費用と,これだけの設定で,ローカル内DNSが立ち上がってしまうんですから,すごいものです。

 とはいえ,書けば簡単に見えますが,実は結構苦しんでいました。

失敗1:ファームウェアのアップデート

 初期設定の途中で,ファームウェアのアップエーとを試みました。

sudo rpi-update

 しかし,tarがread onlyだとかなんだとか言い出して,正常に終了しませんでした。

 その後起動もしなくなり,これまでの設定作業をすべて捨てて,最初からやり直す羽目になりました。ううう。

 1回目のやり直しでは起動メッセージにfailと出るようになってしまい,気持ち悪いのでもう一度最初からやり直します。

 今度はすべて問題なく,ようやく設定作業に進むことができました。

 後で調べてみると,公式にはファームウェアの更新はお奨めしないと書かれているらしく,実際トラブル出した人の苦しみの声がネットに上がっています。


失敗2:Unboundの設定ミス

 すんなりインストールまでは出来たUnboundですが,設定を書き換えて再起動しても,IPアドレスを解決してくれません。問い合わせに対してタイムアウトさせているので,DNSサーバーとして動いていないようです。

 こういう場合はおおむね設定ファイルの書き間違いなのですが,案の定ローカルIPアドレスを書き間違えていたり,最後にピリオドを打ち忘れていたり,スペースが抜けていたりと散々でした。

 これらを修正してやると,ウソのように動き出しました。コンピュータというのは本当に正直です。


 こんな感じで,あれほど苦しんだNASでのローカル内DNSサーバーですが,NASを触ることなくさっさと解決することが出来ました。

 一応基幹系のハードウェアで24時間の運用ですから,ケースくらいは入れておかねばなりません。ヒートシンクはTO-220用の小さいものを専用の接着剤で貼り付けておきましたが,これを含めて後日届くケースに入れ込んで,明日には正常運用に入りたいところです。

 最近は,子供の科学にも「じぶんパソコン」としてRaspberry Piが取り上げられています。確かに,これだけ充実していれば,パソコンとしても十分使えると思います。子供にとっては,やっぱり自分のパソコンを持つことは,まだまだ憧れなんでしょうね。

 35ドルでこの機能と使い勝手ですから,安さの源泉は信頼性だと言えるかも知れません。事実24時間駆動の用途には苦しいという意見もありますし,面白そうだけど今ひとつ信用出来ないというのが,一般的な評価でしょう

 しかし,裸の基板に電源を入れるという儀式ですっかり心もハードウェアのエンジニアになっているのに,いざ触るとLinuxというこのギャップは面白く,サーバーではなく,PCとしてもう1つ買って遊んで見るのもいいかなあと思い始めています。

 

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