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さようならニノミヤありがとうニノミヤ

  • 2007/05/18 14:47
  • カテゴリー:make:

 こないだの連休に帰省した折,日本橋のニノミヤで買い物をした話を先日書いたところだったのですが,そのニノミヤが事業廃止を決めたようです。

 唯一残る店舗である旧本店の「ホビックス」は5月16日にすでに営業を終了,地下一階の「パーツランド」も6月10日に営業終了の予定だそうです。

 「ホビックス」についてはすでに中古家電とホビー関連の販売会社に売却されており,処分セールなどは行わない方針だそうですが,「パーツランド」については処分セールを行うという事ですので,どこにも売却はされずに完全に廃業となるようです。

 本店の最上階にあったパーツ売り場がなくって久しく,パーツがあの場所に戻ってきて75年の歴史に幕を下ろすというのも,なんとなく帰巣本能っぽい感じがして,しんみりとしてしまいます。

 調べてみると,ニノミヤって老舗もいいところなんですね。1932年に電子パーツの卸売りとして創業(1945年に創業という話もあります),戦後の1947年には法人として改組し,高度経済成長期に家電販売で成長を続け,1987年に株式会社ニノミヤに商号を改めます。

 創業の地である日本橋と近畿を中心とした郊外に店舗を展開し,ピーク時の2001年には約964億円の売り上げをあげて,関西系の家電量販店では第3位の規模を誇っていました。そういえば私の実家の近くにもお店があって,1983年ごろには無線機もパソコンもたくさん列んでいました。もっと昔にはパーツも売っていたそうです。

 しかし,ビックカメラやヨドバシカメラ,ヤマダ電機など関東系の量販店の相次ぐ関西進出に加え,家電,PC販売の冷え込みとバブル期の過剰投資から急速に業績が悪化し,2003年頃には4割近くも売り上げを落として大ピンチに陥っていたそうです。

 そこで2003年に資本提携を含む支援先を探していましたが失敗,金融機関への弁済も滞るようになりました。2004年にはメーンバンクも貸出債権を外資系サービサーに譲渡するに至り,支援を打ち切られてしまいました。

 最終的に債権を手にしたモルガン信託銀行は2005年1月に会社更生法を申請し,日本橋を除く全店舗の閉鎖と同業者への譲渡を行いました。

 アメリカの投資ファンドローンスターがスポンサーとなり,日本橋でのみ4店舗を新装開店させるのですが,素人目に見てもかき入れ時にもお客はまばらで,雰囲気から真面目に復活を考えているようには見えませんでした。

 昨年にはえびす店も閉店して家電販売から完全撤退,ホビーの専門店「ホビックス」とパーツ販売の「パーツランド」だけ旧日本橋本店に集約され,大幅に規模を縮小して営業していましたが,昨日「このまま続けても負債が増えるだけ」と,営業の終了をホームページに掲載しました。

 ニノミヤといえばいろいろ書くべき事がある会社で,郊外に多数のお店を出店するというビジネスモデルで急成長した先駆けであったし,ソフトウェア販売の重要性に着目してソフト専門店を,ホビーとおもちゃに注目してホビー専門店をいち早く立ち上げるなど,実は業界のパイオニアでもありました。

 同社の顔として長年CMキャラクターを務めた林家小染さんの突然の事故死もありました。

 個人的にニノミヤは,近所のニノミヤと日本橋のニノミヤで違った印象がありました。

 近所のニノミヤは,日本橋が遠く憧れの地であった子供の頃に,その日本橋の空気を田舎に運んでくれる貴重な基地でした。前述の通り,田舎の商店街の外れにある小さなお店にも,PC-6001やPC-8001,X1やFM-7にMSXといったパソコンが所狭しと並べられ,ソフトや周辺機器の品揃えも随一でした。アマチュア無線機も列んでいて,同じお店が冷蔵庫や洗濯機を売っているとは思えないほど,ラジオ少年最終世代であった私には,夢の空間だったのです。

 中学生になった頃から日本橋にはよく行くようになったのですが,近所の店の数倍の規模のニノミヤがいっぱい点在する日本橋のパワーに圧倒された記憶がありますし,その専門性と規模からますます近所のニノミヤに好印象を持った覚えがあります。

 ニノミヤはさすがに電子パーツで始まった店だけあって,当時は本店と北側に位置するエレホビー,そしてパーツだけを扱う専門店であったパーツ店の3つがパーツの販売を行っていました。

 パーツ店は1フロアの小さいお店で,私は一度行ったきりでなくなってしまいましたが,本店とエレホビーのパーツフロアはずっと営業を続けていました。本店のレジのお姉さんがとても綺麗だったことは以前書いたとおりで,その人が小さな部品を価格表など見ずにすごい速度でレジをうっているのを見て,大変に憧れたものです。

 始めて本店のパーツ売り場に足を踏み入れたときの感動は忘れません。地元のスーパーよりも広いフロアのすべてが電子パーツで埋め尽くされ,右を向いても左を向いてもキラキラと輝く宝物が所狭しと並べられています。種類ごとに列んだ棚がフロアの端まで整然と続き,初歩のラジオでしか見たことがなかったパーツが手に取れる所にあることに,日本橋のパワーを見せつけられました。

 夏休みには優待販売のチラシが届き,パーツや模型,測定器や無線機などが特価で販売されたりして,まるで近所のスーパーの食料品のチラシのような勢いで,滅多に安売りされない品々が並んでいることに,子供だった私はワクワクしていたものでした。

 そういえば,日替り限定販売で,デジタルテスターが980円で出ると知って,弟と日曜日の朝に本店に列んだりしました。結局私は惨敗,弟は自分の目の前で最後の1つを買われたという屈辱的な結果になり,10円だったカッターナイフをそれぞれ買って,すごすごと帰ったことがありましたね。いい思い出です。

 そのうち本店のパーツ売り場はエレホビーに集約されてしまったのですが,同業のジョーシンが1番館でのみ行っていたパーツ販売を取りやめるに至って,ニノミヤも時間の問題と思われていたのですが,一向にやめる気配もなく続いていました。

 というのも,実はニノミヤのパーツ売り場は各店舗に属しておらず,本社の法人営業の部門に属していたからです。

 在阪の電機メーカーなど,大手を長年にわたって顧客として持っていたパーツの法人営業は非常に安定した事業であって,現在に至るまでずっと黒字だったそうなのですが,これをもしやめてしまうと50年以上にわたる顧客に対する信用の問題もあったりして,やめるという事はなかったようです。

 確かに,ケースやスイッチなど半導体以外の部品において,シリコンハウス共立とニノミヤでは取り扱いメーカーに格段の差がありました。ニノミヤの方が有名メーカーのものを多数持っていましたから,やはり大きな会社は違うんだなあと思ったものです。

 今でこそシリコンハウス共立は規模も大きく,品揃えも豊富になっていますが,20年ほど前は実質1フロアで,限られた物しかありませんでしたから,ニノミヤと共立の2つでようやくすべての部品が揃ったものです。だから,ニノミヤは私にとっても欠かせないお店でした。

 それに,半導体から抵抗からコンデンサからケースやスイッチまで,すべてのものが一箇所で揃うというお店は秋葉原でも珍しく,ニノミヤは便利で貴重なお店だったのです。

 どんなに大きくなっても創業の地である日本橋で創業の業種である電子パーツ販売を続け,それが子供にも優しい良心的なものであったことは賞賛されるべきことで,特に知識が必要な代替品を中心に探すことになるシリコンハウス共立とは違って,雑誌に出ているそのものの部品が(高価でも)手に入ることは,初心者にはとてもありがたいものであったはずです。。

 今年が2007年ですから,創業から75年。最後まで電子パーツの販売を続けたことはえらいなあと思います。

 日本橋から思い入れの深いお店がまた1つ姿を消しました。風前の灯火で,こうなることは既に想像していたことなのですが,実際になくなってみるととても寂しく,1つの時代の終わりを強く感じます。

 これで日本橋でもシリコンハウス共立とデジット,そしてマルツ電波の3店舗に電子パーツ店が集約されることとなりました。

 連休に,本当は共立で買う予定だったポケットベンダー(小型のアルミ板折り曲げ器です)を立ち寄ったニノミヤのパーツランドのポスターで見かけ,店員さんに問い合わせて買ったのが最後の買い物となりました。

 この時もらったロゴ入りの買い物袋を,なにか胸騒ぎがしたので捨てずに残してあったのですが,偶然とはいえお別れになってしまうことに,やはり悲しい思いがあります。

 私が一番楽しかった時代を共に過ごしたニノミヤに,お礼を言いたいです。ありがとうございました&ご苦労様でした。

日本橋を歩く

  • 2007/05/10 17:25
  • カテゴリー:make:

 そういえば,先日の連休に実家に戻る途中,例によって大阪・日本橋に寄り道してきました。携帯電話の買い換えはこの時に行ったものです。

 今回はAVRマイコンを買おうと思っていたので,シリコンハウス共立には行かないといけないと思っていたわけですが,その前にデジットにいかないわけにいかんなと考え,先に立ち寄ることにしました。

 デジットといえば日本橋でもよく知られたジャンク屋さんですが,シリコンハウス共立と同じ会社ですので,正規品も結構きちんと揃っています。

 そして何を隠そう,私が高校生の時にアルバイトしたお店でもあります。この時お世話になった店長さんには,いろんなことを教えていただきました。今でも彼の教えは,私の規範となっています。

 まあそれはそれとして,久々のデジットです。お目当ては激安の期限切れの糸ハンダ。15年ほど前まではいつでも売っていたのですが,さすがにもうないかも知れません。当時の物は日本ゲンマのもので,Sn60%・0.8mmのもので決して高級品とは言えませんが,価格の安さから湯水のごとく使える気楽さを味わって以来,これを使ってきました。

 ところが2リール目がそろそろなくなりかけてきたので,これに変わる激安ハンダを探しに来たというわけです。確かに期限切れはよくないのですが,個人で1kgもハンダを買えば,どうせ期限内に使い切ることなどできませんし。

 てなわけでデジットを探すと,まだありました。当時の物と全く同じものです。1kgで1000円。持って帰るのが苦痛なくらいの安さです。レジでは外側のフラックスがかなり飛んでしまっているので,外側は捨てて少し内側から使って下さいとのアドバイスをもらいました。さすがデジットの店員。私がいた頃の伝統は守られておりますね。そんな後輩達を私は目を細めて見ておりました。

 ついでにAVRマイコンATmega8515も買いました。カメラの修理に使いたかったOSコンも揃っていたのでここで購入。耐圧400Vのフィルムコンデンサ5本で200円にもついつい手が出てしまいます。

 さらに2SK30Aがランクごとに引き出しに入っていたのでこれも全ランクを2個ずつ購入。それとLCDのキャラクタディスプレイモジュールが350円。資料付きだというので2つ買って来ました。

 これでシリコンハウス共立に行く用事が済んでしまいました。シリコンハウスに行く時間をもう少しデジットで過ごすことにします。

 その後,気になっていたスーパービデオにいくことにしました。昔は恵美須町駅のすぐそばにあったのですが,いつの間にか移転していました。

 昔からなにやら怪しいお店で,それでもいつも数人のお客さんがいたりして,日本橋ではよく知られたお店だったのですが,そういえばお店の前の路地に売られていた払い下げのレーザーカラオケとか,いつの間にやら見なって久しいです。

 新しい店舗は,阪神高速側に歩いて,ディスクプラザの角を曲がったところです。

 看板も上がっているのですぐに分かったのですが,入ってみてがっかりしました。もうほとんどお店の体裁を保てていません。

 なにが売り物で何が売り物でないかがわからず,価格も出ていません。ほとんどの商品がホコリにまみれ,手に取るのも憚られるほど汚いです。昔のスーパービデオはこんなではなかったんだけどなあ・・・

 そういいつつ,私はスーパービデオで買い物をしたことはほとんどありません。ほとんどいうか全然ないかも知れません。

 確かに真空管のデッドストックなども元箱入りで在庫がありましたが,肝心の価格が全く不明で,聞く気も起きないような雰囲気だったので,そのまま出てきました。DENONの放送局用のターンテーブルやU-maticのビデオ,オープンリールのテープデッキなど,見ているだけでもニヤニヤしてしまうようなものは,なにもありませんでした。

 デジットで気をよくした私は,スーパービデオの凋落ぶりに肩を落とし,日本橋を後にしたのでした。

 連休中(とはいえ平日でしたが)ということもあって,これまでに比べて人も多く,にぎわっていたように思います。ただ,家電販売店,とりわけジョーシンが寂しく,今一番苦しいのはここではないかと思ったくらいです。

 ニノミヤは1店舗だけになってしまいましたが,昔から電子パーツ売り場だけはいつも同じ人数のお客さんがいる安定した商売で,それ以外の模型やおもちゃのフロアは閑散としていました。(余談ですが20年ほど前のニノミヤムセン本店の一番上のフロアにあったパーツフロアではとても綺麗なおねいさんがレジをにこにこしながらたたいておられました)

 あと,アナログレコードの中古屋さんが強烈でしたね。ビル1つが全部中古CD/LPという店で,特に2フロアが全部LP。探していた物は見つからず,結局手ぶらで帰ることになってしまいました。中古というのは利益率が高い商売ですが,それも売れてなんぼです。在庫があればあるほど体力が必要な商売なので,かなり心配になってしまいました。売れ残るととことん売れないのが中古です。

 秋葉原と違い,メイドさんの格好をした人がビラを配ることもなく,その代わり海賊版DVDを売る人がいたりと,地域差が出つつある両電気街ですが,やっぱり私は日本橋の方がいいなあと思いました。

 つくづく思うのですが,秋葉原はどうもお買い得感が薄い。確かに欲しい物は必ず手に入りますが,価格は高めですし,それにわざわざ高級品しか置いていなかったりしますので,気が付くと部品ばかりで何万円も使っていたりします。

 日本橋は,高級品はそれ程ないのですが,価格は安めですし,工夫して使いこなすと面白いものがたくさんあります。それに実は電子部品店が結構きちんと揃っているので,結局手に入らないということはほとんどないはずです。

 実のところ,関東にきて10年以上が経ちますが,ここに暮らして良かったなと思うことは,ほとんどなかったりします。こういう人間こそ,大阪にいるべきなんだろうなと考えたりするのですが,運命とは皮肉なもんです。

300Bシングルをまた改造

  • 2007/05/01 03:08
  • カテゴリー:make:

 300Bシングルですが,負帰還をかけて決着させた時に,無帰還の音にも随分未練があったのです。

 無帰還で楽しめるアンプは,基本的に真空管アンプ,それも特性の良い直熱形の三極管にほぼ限られてしまいます。だから,せっかく300Bという銘玉でアンプを作ったからには,無帰還でも楽しめないともったいないと思ったわけです。

 幸い,スピーカをCM1にしたことで,無帰還でも結構ならしきれるのではないかという期待もあり(余談ですが4312Mはやっぱり低インピーダンスの半導体アンプで協力にドライブすることが最低条件だったようで,MOS-FETのアンプで低域を持ち上げてならしてやると,なんとなく手がかりがつかめたような感じです。まだまですが・・・),無帰還にも切り替えられるようなスイッチをつけようと考えていました。

 せっかくですから,現在の約3dBに加え,6dBくらいかけられるようにもしておきましょう。そんな風に考えて,以前にスイッチは買ってあったのですが,こないだの土曜日に少し時間が出来て,ようやく改造に取りかかりました。

 改造そのものはとても簡単で,気楽に取りかかったのですが,いざ切り替えてみるとびーーーとやばい発振音が300Bからします。これはかなり強烈に発振しているようなのですが,正帰還になっているわけもなく,あわてて電源をきって確認をしてみました。すると,左側に右の,右側に左の帰還がかかっていて,それで見事に発振してしまっていたのです。いやいや,油断したらだめですね。

 配線を修正して,測定をします。今回は歪率まで計ると面倒臭いので,周波数特性とダンピングファクタだけ確認します。その代わり,ちゃんと左右を測定してその差をみてみます。

 以下,測定は4Ω,1Wです。

           L-ch           R-ch    
無帰還( 0dB) 16.8?18.8kHz:DF=2.30 16.0?19.2kHz:DF=2.22 
帰還小(2.7dB) 12.1?26.0kHz:DF=2.94 12.0?26.6kHz:DF=3.57 
帰還大(5.1dB) 10.0?33.8kHz:DF=5.13 10.1?33.6kHz:DF=5.00

 まず周波数特性ですが,無帰還ではちょっと左右に差がありますが,帰還をかけるに従ってその差が縮まります。無帰還では91Bタイプの個性がそのままでてますね。

 DFは4Ωという負荷の重さのせいもあってか,あまり良い数字とは言えません。それに左右の差が大きく,これは測定誤差も無視できないほど影響しているといえると思います。なにせ0.1Vの読み取り差で0.6くらいの差になってしまいますから。ON-OFF法による測定の問題点でしょうね。

 負帰還大とはいえ,たかだか5.1dBです。それでも随分特性は良くなるもので,周波数特性は十分でしょうし,DFも5を超えていますのでこれも実用範囲でしょう。

 早速音を出してみます。

 まず帰還小から。これはヒアリングで決めた前回までの特性そのままですので,これを基準に考えてみます。無帰還にすると,中域のエネルギーが増し,太くなります。特にボーカルは目の前に現れるかのようなリアリティが出てきますが,その代わり奥行き感がなくなり,解像度も下がります。音にざらつきが出てくるので,繊細さも失われてしまいます。ただ,私個人はこれはお気に入りです。

 帰還量を増やしてみますと,これが全く逆になります。全帯域のエネルギーが均一化し,細くなります。ボーカルは少々奥に引っ込み,周りの楽器に埋もれるような感覚があります。音が消えていく状態が分かるようになり,解像度が上がっているのがわかります。非常に繊細な音がするのですが,ソリッドな印象も同時に受けます。個人的には,ちょっとつまらないですね。

 てなわけで,結局帰還量小で使うことにしました。適度に太さを保ち,適度に特性も改善する,特にダンピングファクタの改善が好都合で,さすがに2.3程度では,低音が若干ポンポンいいます。CM1はそれほどアンプを選ばないと言われますが,小型スピーカですので,やはりダンピングファクタは大きい方がいいはずです。

 積極的な使い分けをするために用意したスイッチではないのですが,演奏している音をすべて聴きたい場合は帰還量を増やし,ボーカルの質感に身を委ねたいときには無帰還にするという使い方も面白いかも知れません。

 これで本当に最後。もう300Bのアンプはいじりません。
 

Make:02に本気を感じた

  • 2007/03/22 15:38
  • カテゴリー:make:

 昨年秋にオライリーから出た「Make:日本語版」の第一号は,多くの書店で平積み&店頭POPとかなり気合いの入ったものでしたが,内容がかなりアレゲだったこともあり,さっぱり売れなかったようです。

 オライリーといえば,印象的な銅版画の表紙に飾られた硬派な書籍にお世話になった人も多いでしょう。それに社長のティム・オライリーは「WEB2.0」という胡散臭い言葉を生み出した人でもあるし,私のような人間にとって,オライリーというブランドには大きな信用があるのです。

 そのオライリーも最近ちょっと方向性が変わってきていて,実用一点張りの役に立つ書籍だけだったものが,数年前から何の役にも立たない本もチラチラと出てくるようになりました。

 本国では別に珍しい傾向でもなんでもないんでしょうが,その最たる例がMake:という雑誌です。

 アメリカのホビーストには,日本人にはないマニアっぷりが炸裂していて,よくもまあそんなことをするものだと思うようなことを涼しい顔でやっていたりしますが,それを取り上げて紹介するのがMake:という雑誌です。

 ニュートンのような単なる科学雑誌でもなく,またラジオライフのようなマニア限定の雑誌でもなく,強いて言えばホビーストが互いの安否を気遣う雑誌という感じでしょうか。とにかく,こういう雑誌は日本にはないと思います。

 それが日本語版として出るというので,私は期待をしていたわけです。しかし昨年秋の第一号は,ちょっと内容が薄かったことと,本当に役に立たない記事ばかりで,知的好奇心を満足させるようなクオリティではなかったことがとても残念でした。

 案の定,大量の在庫がしばらくすると綺麗に返品され,まるでそんな本はなかったという黒歴史っぽい扱いを受けるようになっていました。

 第二号が昨年末に出るというアナウンスもふいにされ,Make:はもう永遠に日本では出ないのだと思っていたのですが,突如3月末に出るという情報が!

 マイナーな商品を買い支えることに心地よさを感じる私としては,もう買うしかないでしょうね。内容は正直,前回同様外しまくりであることはもう覚悟の上です。

 第一号を大量に返品した職場近くの大きな本屋さんは,2店とも入荷していませんでした。当然でしょう。仕方がないので家の近所の大きな本屋に出かけると,4冊ほど残っていました。

 期待しないで読んでいると,「こ,これは!」というまるで美味しんぼのような台詞が頭の中を錯綜します。

 そうなのです。かなりよい内容なのです。

(1)内容がかなり濃くなった

 ニュースやら製作記事やらインタビューやら,実は第一号から結構いろいろ書かれていたのですが,その内容はどれも「ふーん」で終わるようなものばかりでした。第二号ではセグウェイの発明者へのインタビュー,直径30cmのサイクロトロンを自作した人の話など,なかなかキャッチーなものが列んでいます。


(2)試してみるかと思う記事が増えた

 第一号では凧にカメラを付けて空撮とか,ビデオデッキを改造した猫の自動えさやり装置など,どうでもいい製作記事ばかりでしたが,第二号はジャム瓶で作るパルスジェットエンジン,空き缶で作るスターリングエンジン,廃物利用で瞬間撮影用のフラッシュを作るなど,自由研究として取り組んでも面白そうな製作記事が増えました。気合い入ってます。


(3)脳に染み入る知識

 第一号では常温核融合など,どっちかというと「とんでも科学」っぽいネタが出ていて,胡散臭さが漂っていたのですが,今回のネタは冷凍による仮死状態に関しての話です。一瞬「とんでも科学」っぽいところを見せながら,実はすでに実用化されて我々の生活にも組み込まれている事実や,最新の成果による可能性を堅苦しくならないように論じており,読み応えがあります。


(4)印象的なコラム

 グリニッジ天文台の博物館は撮影禁止になっているそうですが,その理由が釈然としない,というコラムが出ています。ミケランジェロのダビデ像を,スタンフォード大学が精密に三次元スキャンする研究で,そのデータを他に出さないという契約を必要としたことについても異論を述べており,すぐに著作権が版権が,という世知辛い世の中に対し,痛烈な批判を行っています。海外の知識人が述べるこうしたオピニオンを読むことが出来る機会というのも,なかなか貴重ではないでしょうか。そして,なぜこのコラムを選んだのか,そこにMake:日本語版の意図を読み取ることが出来そうです。


 てなわけで,第二号はかなり手間をかけて丁寧に作られた感じがあります。

 そもそも人間は知らないことに接し,それを理解したときに充足感を得るものです。第一号のMakeにそれはほとんどなかったわけですが,第二号は逆にそういう記事ばかり。しかもかなりのボリュームです。

 噂によると,店頭売りはぼちぼちでも,amazonなどでは大変によく売れているんだそうです。この調子なら第三号もほぼ確定という話もあります。

 日本語版独自の記事がないことを1つの問題点として捉えて第二号を出しているようですが,独自の記事があるかないかではなく,それが知的好奇心を満たすものかどうか,同時にあまりに尖りすぎて怪しいものになってはいないか,というごく当たり前の観点で記事を選べば済むだけの話のように思います。

 感心したのは,本国の記事を抜粋し,まとめただけではなく,きちんと日本のスタッフが追試を行い,動作することを確認してあるのだそうです。この作業に時間がかかってしまったことを,発売が何ヶ月も遅れた理由にしています。

 根拠がはっきりしない記事を見ることに対する不安感というのは,読者は敏感に察知するもので,今回の確かな手応えはこうした丁寧な作りから得られるものではないかと思います。どんなものでも手を抜いたら,その分のペナルティはあるものです。

 次はうまくいくと7月頃だそうです。年4回を目標にするそうですが,同じような方向と思われたCQ出版の「エレキジャック」があまりにひどい出来だったこともあり,Make:日本語版はうまく続いてくれるのではないかと思います。

 この調子で頑張れ。

300Bシングルに負帰還をかけて決着

  • 2007/03/21 18:03
  • カテゴリー:make:

 300Bシングルのパワーアンプですが,いろいろ考えた結果,やはり浅い負帰還をかけることにしました。

(1)出力トランスの一次側の配線を変更
 今回のアンプは,出力トランスの一次側を3.5kΩで設計してあります。300Bのシングルとしては,最近は5kΩあたりで使うのが流行しているのだそうですが,私はあえて低めの負荷で使うことにしていました。

 ただ,RW-20というトランスは,二次側が6Ωしかありません。8Ωのスピーカなら一次側のインピーダンスも高い方に向かうだけですから,それほど問題にならないでしょう。

 ところが,うっかりしていたのですが,私の使っているスピーカは4Ω。6Ωだったとばかり思っていたのですが違ってました。4Ωを6Ωの端子につないで使うと,一次側は2.7kΩとかなり低めになってしまいます。

 これはさすがに問題だろうと,一次側を5kΩにつなぎ変えました。これで4Ωのスピーカをつなぐと3.3kΩと,まあ許せる範囲でしょう。

 ここで4Ωのダミーロードをつないで高域の周波数特性とダンピングファクタを測定してみると,1Wの時に高域は20kHz弱で-3dB,ダンピングファクタは2.2となりました。4Ωという負荷はやはり重いんでしょうね。

 しかしこれが私のもっているスピーカでの実態でもあるわけですから,ほっとくわけにもいきません。低域がポンポンいうことと,狭帯域な感じがあったのは,このあたりの数字でもはっきりします。


(2)負帰還をかける

 そこで,浅めに負帰還をかける決意をしました。

 負帰還をかけるといっても局部帰還をかける方法もあれば,全体でかける方法もあるわけですが,今回は簡単で私自身も経験がある,出力トランスの二次側から初段のカソードに負帰還をかける方法を使うことにしました。,

 ここから恥ずかしい話をしますが,初段のカソードに抵抗を介して帰還をさせてやっても,全然出力の大きさが変化しません。無理矢理小さくなるような低い抵抗をつないでやると,波形が目で見て分かるくらいひずみます。

 どうしてかなあとしばらく悩んで,いろいろ調べてみたのですが,ここにカソードバイパスコンデンサが入っていることに気がつきました。

 考えてみると,カソードに帰還させるケースでは,バイパスコンデンサがないか,あってもグランドとの間に低い抵抗が挟まっているべきです。

 バイパスコンデンサによって交流的にはGNDに落ちている箇所に,出力を戻しているんですから,そりゃおかしいですわね。初段のバイアスがかわって,それでひずんでしまっていたわけです。

 そこで,カソード抵抗1kΩと直列に82Ωをいれて,バイパスコンデンサは1kΩと並列に,帰還は82Ωと1kΩの接続点に入れてやると,きちんと出力が下がり,高域の周波数特性も伸びます。やれやれ。

 続けて帰還量の検討です。無帰還時の中域の自然さが300Bの味だとすれば,それを薄める方向になる帰還は,出来るだけ浅めにしたいところではあります。

 ヒアリングの結果,帰還抵抗を2.2kΩとしました。この時の帰還量は2.86dB。3dBまでにしておこうと思っていましたので,ちょうどいいところでしょう。

 周波数特性は4Ω,1W時で12.3Hz?27kHz(-3dB)と目標の値を超えてくれました。ダンピングファクタはON/OFF法,1W,1kHzで3.6。これもまずまずの数値です。オーバーオールのゲインは18.6dBとなりました。

 負帰還をかけたときには気をつけないといけない容量性負荷に対する耐性は,1uFまでつないでみましたが,全く大丈夫でした。元々の帯域が狭いせいで,発振する気配も見えません。

 負帰還をかけたことでハムもぐっと下がりました。音を聞いてみると,低音のポンポンいう感じは消えて,しっかりどーんと出てくるようになりました。高音もハイハットやシンバルが出てくるようになり,従来の帯域の狭さはかなり感じられなくなっています。

 しかし,中域のしなやかさは薄まったように思います。こういうのは気のせいであることがほとんどなのですが,そこらへんの普通のアンプに一歩近づいたという印象はぬぐえません。

 無帰還時の素直さと部品の個性は,負帰還によって確実に薄まります。その代わりに特性の改善という大きなメリットがあるわけで,どのくらいの塩梅にするかがとても大事になるわけですが,悪く言えばどっちつかず,よく言えば最低限の負帰還で両立をねらったという感じにまとまったと思います。

 さて,ひずみ率を計ってみます。あまりあてにならないのですが,前回と同じ測定方法を使ってみます。

ファイル 114-1.jpg

 いやー,信じていいんでしょうかね,この結果。まったくでたらめっぽいのですが,一応測定した結果ですから,参考程度に見ておくことにします。

 1Wの出力時で,1kHzが0.37%,10kHzで1.55%,100Hzでは0.51%と,前回の測定と比べてほんの少しだけ良くなっています。このくらいの帰還量ではこの程度の改善だろうという予測にそうもので,まあこんなものでしょう。

 ちなみに3%になる出力は9Wとなり,前回よりも少しだけよい数値になっています。


 しかし,今回はいろいろ学びました。

 まず,アンプとスピーカのマッチング。その結果大きく変わる音質。さらにジャンルによって許せる音質と許せない音質があること。

 私が好んで聞いているトリオくらいのジャスは,音量の変化も小さく,楽器も少ないため,広帯域であることより素直な特性である事の方が聴きやすいのです。

 しかし,これでロックなどを聴くと,全然元気がなくつまらない。アンプとして機能していないようにも感じられます。

 クラシックなども同様で,スケール感が出てこないとさっぱりだめです。

 私はジャズばかり聴いていましたから,無帰還でもよいと思っていたのでしょう。たまたまロックを聴いて,何かおかしいと気がつくまでは,随分と気に入っていましたから,人間というのは面白いものです。

 ジャンルによってアンプを変えるという意見に懐疑的だった私も,なんとなく意味が理解できたように思います。

 同時に,ジャズはお金のかからない音楽だということ。ロックはもっとかからないですね。でもクラシックは底なしだと思いました。恐ろしいことです。

 ということで,2ヶ月近い時間かけて300Bアンプを改修してきましたが,これで本当に一段落です。配線ミスも見つけましたし,音質のチューニングも行いました。これでしばらく使って,また問題点を見つけたら考えることにしましょう。

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