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DTC-59ESJにDDS4を使って死んだ話

 新しい年が始まりました。自分の好きなこと,楽しいと思えることを持っていることはとても幸せな事だと,つくづく感じた昨年でしたが,いずれ私が死んだときに,この大量のがらくたを,どうやって処分してもらおうかと,そんな不安も同時に感じて,ふと気分が沈むことも増えました。

 事故や病気で突然死んでしまう場合は,準備もなにもあったものじゃないでしょうからあきらめもつきますが,これからどんどん歳を取り,体もいうことを聞かなくなる中で,10kgも20kgもあるような大きな機材は使うも捨てるも大仕事です。

 いやね,ちょっと前まではお金と場所と技術力がある人間は,古い物品の保存に努めるのが社会的使命だとか,そういうことをいっちょ前に考えたりしたんです。それは,美術品がそうであるように,今やマンガやプラモデルといった,大量生産品であっても同様だと思うのです。

 とりわけ,昔のゲームを楽しむことが,それらを動かすハードウェアが貴重なものになることで難しくなっていく現状は深刻で,一昔前は粗大ゴミで出された古いパソコンやゲーム機が,一部のマニアによって維持されていることは,とてもよいことだと思っていたのです。

 戦後の機材をコレクションするには,動くように維持する必要があるわけで,そこには当然修理などの技術が求められます。だから,ただただ好きというだけではどうにもならなくて,お金と場所と技術が揃っていないと手が出せないのです。

 おそらく美術品も大昔はそうだったのだと思いますが,技術はお金で買うことが当たり前になっているわけで,このあたりさすがに歴史と伝統を感じます。ゲーム機や古いパソコンも,最近は専門のお店が出来てきていますので,どうもお金で技術を買うことの出来る時代が,ようやく訪れたということでしょうか。

 これら古い機材については,私は今持っている物を出来るだけ使える状態に維持することが,持っている者の責務となかば考えている節があります。たいしてお金もかからず,場所も塞がず,私のような人間には好都合なのですが,頑張っても新しい物が増える,新しい事が出来るわけではないので,最終的に手に入るのは「現状維持」にすぎず,ここが耐えられない人もいるんじゃないでしょうか。

 閑話休題。

 さる1月2日と3日には,NHK-FMで昨年秋に行われたTokyoJazz2015のダイジェストを放送していました。毎年年始にやっている放送だそうですが,私は今年から聴く事にしていました。

 というのも,いつもの生放送では,翌日に行われるライブが放送されず,ここ数年私が聞きたい人達がさっぱり放送されなくなってしまい,寂しい思いをしていたからです。特に1月3日の放送は,まさに夢のような人達が登場するものでした。

 両日とも朝11時から夕方4時45分までの放送で,この間ニュースも中止という徹底っぷり。これを途中で分断して録音するなど愚の骨頂です。

 しかし,私のDR-100mk2は2GBの制限があり,3時間ほどでファイルが分割してしまいます。これはつまらないです。そこで,320kbpsのMP3で録音することにしました。MP3ですから,音質の劣化は避けられません。320kbpsですからそんなに劣化はないのですが,精神衛生上しっくりこないのも事実です。

 番組として丸ごと録音したいという欲求と,リニアPCMで残すという欲求を同時に満たすにはどうすればいいか・・・

 放送まであと1時間というところで考えついたのは,DATで録音するという作戦でした。

 いやいや,DATは通常2時間,長時間でも3時間が限度で,これ以上だとLPモードをないはずだ,3時間だったら2GB以内なのでDATなんか意味がない,とちょっと詳しい人なら思うでしょう。

 しかし,禁じ手があるのです。それはDDS4のテープを使うというものです。

 よく知られているように,民生用オーディオ機器として登場したDATは,その価格と性能から,コンピュータのストレージのバックアップとして使われていました。これがDDSです。

 オーディオ機器としてのDATが今ひとつ市民権を得ないまま収束していく一方で,バックアップ機器としてのDDSは,ハードディスクの大容量化に対抗していく形で,次々にバージョンアップを重ねて,最終形態はテープ幅を倍にして,形まで変わってしまうという大変化ぶりです。もはやそれはDDSではないんじゃないのか・・・

 DDS1は民生用DATとテープもメカも共通です。ゆえに最大2GBが記録出来ます。今や2GBのSDカードなんか,二束三文ですよね。

 DDS2はテープを薄くし記録方式を変えて4GBに,DDS3はテープの長さは変えずに記録方式で12GBまで容量を増やしました。DDS4ではさらにテープを薄くして150mもあの小さなカセットに押し込んで20GBまで対応しました。

 このあと,DDS5と言われていた規格がDAT72と呼ばれるようになって36GBになりました。圧縮すると倍の72GBまで記録出来ますが,それでもSDカード以下というのが泣かせます。

 この後,テープを薄くして長さを稼ぐのは限界と感じたのか,テープ幅を倍にするという暴挙に出てDAT160とDAT320となりました。DAT320では圧縮時に320GBまで記録出来るようになりましたが,秋葉原で2TBのHDDが8000円くらいで買えることを考えると,もうその役割は終わったと言えて,すでにDDSの開発は行われてとのことです。

 で,もともとDATと同じ先祖を持つDDSです。もし150mもの長いテープがDATで使えたら,ウハウハものです。そう,120分のDATは60mですから,120mのDDS2でも4時間,150mのDDS4なら実に5時間も連続録音できるのですよ。

 昨今,ICレコーダーでも4GBまで1ファイルで録音できる物が出てきたので,そうなると全然うれしくないのですが,私のDR-100mk2は2GBまでです。5時間も録音できたら,それはもう録音した物を1度聞くだけでも大仕事です。

 ただし,そうは問屋が卸しません。DDS4はDATが死んでから生まれたものですから,DATでの使用など全く考慮されていません。動かないだけならまだしも,レコーダを壊してしまうかもしれません。

 民生品とはいえ,日本がバブルに沸いた時期に開発されたDATは,メカ精度も要求が高く,高度な専用LSIがバンバン投入された複雑な電気回路に,信号処理やメカ制御,果てはサーボにソフトが応用された,まさにメカと電気とソフトの三つどもえの機器です。

 DATの前後の機材では,すでに3つの技術が高次元で融合している必要がないものに変わって来ていて,カセットテープレコーダーがソフトを必要とせず,ICレコーダーがメカ的な要素を全く持たないことは,この端的な例でしょう。

 というわけで,個人的には「よくもまあこんなややこしいものを製品化した物だ」と呆れてしまうくらい,複雑なシステムであるDATにとても愛着があったりするわけですが,出てくる音はCDそのものなわけで,音質は現代にも通用するものがあります。実用品として使えるのだが,前世紀的なバランスでなんとか動いているというのが,DATだと言えます。

 このDATにですよ,DDS4をかけようというのですから,もはや無茶苦茶です。実際DDS4に関する資料を読むと,テープの厚みはDATに比べて半分以下,材質もポリエステルからPETになっているとのことです。このため,極薄のテープを安全に扱うためにメカ精度をさらに追い込み,その結果DDS1との互換性を失ってしまったとありました。

 一方,DDS4のテープで5時間,LPモードで10時間の録音を楽しんでいる人もいるようで,私も興味本位で数年前にDDS4のテープを1本買っておいたのでした。

 あいにく180分のテープは手元になく,120分のテープでは録音時間が短いということで,DDS4にチャレンジです。

 テープを先日修理したばかりのDTC-59ESJにセット,録音を開始します。別に問題なく録音が進んでいる様子で,私はあまり心配せずに,子供の昼寝に付き合っていました。

 3時間後,様子を見に行くと,問題なく録音は続いています。すごい。

 放送が終わったところで一度テープを止めますが,最後まで録音しきった方がいいだろうとおかしな事を考えて,ここからさらに録音を再開します。

 そろそろテープが終端になった頃だろうと,おやつを食べた後に見に行くと,テープが止まっています。よしよし,これでばっちり・・・

 ・・・あー,テープが出てこない!

 そうです。テープが巻き込まれてしまい,取り出せません。放送が終わった段階では問題なかったのですが,そこで巻き戻すなり取り出すなりしておけばよかったと後悔してももう遅い。

 とにかくテープを出そうとしますが,全く出てきません。無理をすると壊してしまうので,家族に非常事態を宣言し,自室に籠もることにしました。

 ラックから引っ張り出し,先日閉めたばかりの上蓋を取り外してみます。見事にテープが絡まっています。実は巻取側の摩擦が増えて,止まりがちになっていたのを見ていたのですが,どうにかなるだろうと放置したのがまずかったようで,巻き取られなかったテープがそのままドラムに巻き付いたようなのです。

 恐ろしいことに,ドラムのロータとステータの隙間にグルグルと何度も巻き付いています。ドラムが死んだことも覚悟しながら,慎重にゆっくりほどいていきます。

 ようやくほどけました。恐る恐る他のテープをかけてみます。大丈夫,ちゃんと音が出ます。ドラムは壊れていないようです。(もっともヘッドは死んでいるかも知れません。DATは2つあるヘッドのうち,1つが壊れてしまっても,とりあえず音は出ますから。)

 くしゃくしゃになった部分は最後の方なので,カセットを分解してそこから最後まで捨てることにし,切った部分を供給側リールに挟み込みます。元のように組み立てれば完成,といいたいところですが,ここで鈍くさいことに,バネがぱちんと跳ねてしまい,部品がばらばらと外れてしまいました。

 ピンセットで組み直して,一応完成ということになったのですが,これを再生するとどうもテープがガイドの縁に乗り上げて,折れてしまったり裏返ったりします。そして最後にはテープを切られてしまいました。

 むー。テープはあきらめるとしても,このリニアPCMで録音されたFourplayだけはなんとかサルベージしたいものです。

 しかし,なんどやってもテープがまともに走りません。

 万策尽きて,この日の当番である晩飯を作りにキッチンに向かいます。さっさと食事を済ませて,子供を風呂に入れるまでの10分で,再度カセットの分解にチャレンジです。

 よくよく見てみると,ライナーが裏返しになっているような感じです。これが原因かもなあと,裏返して組み手立て直すと,今度はまともに走ります。

 もちろん,とても危なっかしく,特にキャプスタンの手前にある巻取側のガイドなど,かなり強いテンションで引っ張られているのがわかりますし,やっぱり時々テープが折れてしまうことがあります。

 しかし,危なげな様子でもテープが走っている間は,ノイズもなく綺麗に音が出ています。サーボとエラー訂正,どんだけ強力やねん,すごいなあ。

 翌日,嫁さんに懇願し,2時間自由時間をもらいました。そして約1時間のFourplayのステージをDR-100mk2に取り込みます。だいたい失敗するものだから,半分あきらめながら録音をしますが,全く問題なし。綺麗に録音が出来ました。

 この調子でもう1時間,他のアーティストのステージも録音に成功したところで時間切れ。もうこのテープは捨てることにしましょう。

 思いの外うまくいったのですが,ここでまた余計な事をしてしまいました。巻戻しです。もう捨てるんですから巻き戻す必要はないのですが,こういうところで生真面目な私は,躊躇なく巻き戻しました。

 しかし,途中で止まります。テープも出てこなくなりました。またトラブル発生です。

 今度は,どうもローディング機構が動かなくなっているようで,テープが出てこなくなっているようです。

 ああ,メカデッキを分解しないといけなくなりました・・・テープパスが狂ってしまい,調整すると泥沼に・・・という最悪の展開が目に浮かびますが,このまま放置は出来ません。

 それに,調整の不安など,修理が出来ればの話です。この時期のソニーのDATのメカはプラスチックが多用されていて,割れてしまうともう修理不可能です。

 メカデッキを外し,分解を始めます。焦る気持ちを抑えて,ゆっくりと分解していきます。すると,ローディングポストを動かすギアが外れています。さらに見てみると,このギアを固定するプラスチック製のワッシャーのような部品が外れており,筐体の底の方に転がっておりました。

 これが割れてしまうのも,このメカの持病のようなものらしく,同じような症例がgoogleで調べるとたくさん出てきます。

 代わりの部品もありませんし,どうにかするしかありません。

 そこで試行錯誤をしたのですが,結局落ち着いた方法は,0.3mmのプラ板に1.5mmの穴を開けた5mm角くらいの板を作り,これでギアが外れないようにするというものです。1.5mmの穴だとちょっと窮屈なくらいで,押し込めば入る感じです。

 これを2枚重ねて,最後に接着剤で固定です。

 接着剤はいまいち効果がないようですが,なんとか大丈夫そうです。我ながら,なんとかやってしまうものだなと感心します。

 寝たら死ぬという格言を胸に,夜中の1時まで頑張ってメカデッキを組み立て,本体に仮組みすると,ちゃんと動作するようになりました。清掃と注油,コンデンサの交換もしておいたので,スムーズに動きます。

 と,ここまでで力尽きて布団に直行。新年早々なにをやってるんだかと呆れながらも,目処が立ったことで安堵して,眠りにつきました。

 長くなったので,続きは後日。

DR-100mk2のライン入出力レベルについて

 前回,DR-100mk2のレベルダイヤグラムのことを書きましたが,実際に信号を入れて挙動を確かめたところ,間違っていましたので訂正を兼ねて,再度まとめてみようと思います。

 まず,最初に言い訳ですが,前回のレベルダイヤグラムは誰かが勝手に作ったものというのではなく,某所から手に入れたDR-100のサービスマニュアルに記載されていたものです。

 DR-100とDR-100mk2は入力系統に仕様の変更がありますかr,同じという前提で話をするのはまずいのですが,今回の話は録音と再生という基本機能そのものであることから,仕様の変更はないものと考えています。

 だから,DR-100のレベルダイヤグラムをDR-100mk2でも同じだと思っていたのですが,結論は誤りでした。DR-100とDR-100mk2とは同じ仕様で,サービスマニュアルが間違っているのか,DR-100とDR-100mk2が異なる仕様になっているのかは,DR-100を持っていないのでわかりませんが,とにかくレベルダイヤグラムは適用できないというのが答えです。

 なら,正しくはどうなのよ,ということになるのですが,残念ながらメーカーが出所となるレベルダイヤグラムは手に入りませんでした。ただ,DR-100mk2で追加されたXLRでのライン入力に関してはキーフィーチャーだったようで,レベルダイヤグラムがカタログに記載されていました。

 よって,この数字をアンバランスのライン入力(LINE2)にあわせて,実機の動きと矛盾しないように書き換えるというのが,今回の話になります。


(1)ライン入力の仕様について

 DR-100mk2のライン入力は,前述のようにバランス入力とアンバランス入力の2系統があります。前者であるLINE1入力はプロスペックを満たすために,基準レベル+4dBu,最大レベル+24dBuとなっています。ヘッドマージンは20dBです。

 もう1つのLINE2入力は民生機器への接続用で,基準レベル-10dBV,最大レベル+6dBVです。ヘッドマージンは16dBとなっています。1dBVは1.0Vrmsですので,-10dBVは0.3Vrms,+6dBVは2.0Vrmsです。


(2)ライン出力の仕様について

 DR-100とDR-100mk2はライン出力を独立した端子で持っており,仕様は両機で共通です。民生機器接続用のアンバランスで,基準レベル-10dBV,最大レベルが+6dBVです。


(3)コーデックの入出力レベル

 コーデック(ADコンバータとDAコンバータ)の入出力レベルについては,フルスケールを0dBとおいて,dBFSで表記します。

 カタログに記載されたDR-100mk2のレベルダイヤグラムによると,ライン出力のレベルは,0dBFSで+4dBVです。従って,基準レベルである-10dBVでは-16dBFSです。これはカタログのレベルダイヤグラムに書いてあるとおりですし,実機での計測でも同じ結果が得られました。

 また,同じレベルダイヤグラムに記載があるLINE1の入力レベルを見ていくと,基準入力レベルである+4dBuが-20dBFS,最大入力レベルである+24dBuが0dBFSと書かれています。


(4)レベルメーターについて

 DR-100およびDR-100mk2のレベルメーターには数字が入っていませんが,逆三角形の印がついているところが-16dBであり,ここを下回らないように入力レベルを調整せよと取説に記載があることから,この印がコーデックの-16dBFSであると考える事ができます。


(5)アッテネータについて

 アッテネータといっていいか分かりませんが,入力レベルの調整用のボリュームは,最大で-31dBの減衰を行う事が可能となっています。サービスマニュアル記載のDR-100のレベルダイヤグラムでは-31dBから0dBとありますが,DR-100mkのカタログ記載のレベルダイヤグラムでは,-15.5dBから+15.5dBまでと記載があります。

 この場合,0dBはボリュームの真ん中になると考えていいと思いますが,減衰量と回転角がリニアであるとはどこにも書かれていませんので,違うかも知れません。

 減衰しか出来ないボリュームで+15.5dBというのはおかしいので,前段に15.5dB以上のゲインを持つアンプがあるのが前提ということになります。

 果たして実機がそうなっているかどうかを確かめてみると,ツマミが10(最大)で-10dBVを入れると,レベルメーターはちょうど0dBを示しました。

 また,ツマミを0(最小)にして,+6dBVを入れると-25dBを示しました。まあ難しい事は考えずに,普通に-31dBから0dBの減衰という理解が,一番しっくりくると思います。


(5)LINE2入力の仕様を推測する

 と,ここまで書き連ねてきた事実と考察から,問題のLINE2入力の仕様を推測します。

 まず,LINE1の基準入力レベルが,ヘッドマージンを割り引いたレベルとなっていますので,これをLINE2に当てはめてみると,基準レベルである-10dBVは-16dBFSとなります。

 そして,それぞれの数字にヘッドマージンの16dBを加えてみると,入力レベルが+6dBVで0dBFSとなります。ということは,DR-100mk2のLINE2入力の電圧とレベルメーターとの関係は,0.3Vrmsで-16dB,2.0Vrmsで0dBということになるわけです。


(6)短くまとめると

 入力→ 0.3Vrms = -10dBV = -16dBFS = -10dBV = 0.3Vrms 出力→
 入力→ 2.0Vrms = +6dBV = DdBFS = +6dBV = 2.0Vrms 出力→


(7)それで?

 なにを当たり前の事をごちゃごちゃ書いているのかと,大多数の方は思ってらっしゃることでしょう。結論はとても簡単で,例えば基準レベルが-16dBFSだと知っていれば,こんな考察など必要なく取説を読むだけでこのくらいの情報は得られます。

 私は民生品のオーディオ機器しか扱ってこなかったので,レベルダイヤグラムなどあまり意識してきませんでしたし,レベルを合わせるなどと言う注意もしてきませんでした。

 胸を張って言えるようなこととは違うのですが,これですっきりしたのは,録音時には-16dBから0dBの間で,メーターがウロウロするようにすればよいという取説の記述の根拠です。

 確かに,仮にDolby-Cで20dB改善されたカセットでも,ダイナミックレンジは70dBほどですから,最大レベルを仮に-16dBとしても,ダイナミックレンジは理論上80dB確保出来ることになるので,十分カバー出来ると考える事ができます。

 まあ,小さいレベルの時には,量子化雑音が占める割合が大きくなってしまうので,やっぱりレベルはギリギリを狙っていくのがいいと思いますが,ピークレベルメーターですべてのオーバーを拾えているという保証もないですから,取説に従っていこうと思います。

 だけど,ヘッドマージンとして用意された16dBってのが,デジタル録音では一番おいしいところだったりするんですよね。ここを使わず,いざというときのために撮っておくというくらいの意味で残しておくのは,旧世代の私としては,ちょっと悔しい気もします。

 そうそう,もう1つ実験したことがあります。

 入力レベルを調整するつまみですが,DR-100mk2は2重になっていて,左右独立でレベル調整が出来るようになっています。

 ですが,少なくとも私のモデルでは,内側と外側のツマミの数字が回しきったところで揃いません。0にしても10にしても,ちょっとずれるんです。

 このズレが,実際の音量の差になっているなら問題ですが,単にツマミのガタで怒っているなら,無視しても良いでしょう。

 そこで,ツマミをまず両方とも10に回しきって揃えた後に,外側のツマミを回して両方とも0にします。ここで左右の音量を測定し,そこからさらに内側だけさらに回します。

 これを,0で揃えて10まで回しきった後にも同様に行います。そしてレベルが変われば問題,変わらなければ問題なし,と判断します。

 
 結果ですが,ツマミのガタでした。どちらのケースでも,さらに回したところで値は変わりません。

 案外,このボリュームはよいものを使っているような感じで,ボリュームそのものにガタはないですし,左右の変化のずれも少ないようです。

 昨日思い出したのですが,昔使っていたA-450という古いカセットデッキは,どうもアジマスが狂っていたのと,ディスクリートで構成されたDolby回路の調整がずれており,左右の音量差が出ているテープが多く,しかも周波数と絵ベルで定位が変わってくるという非常に面倒なものになっています。

 周波数や音量で定位が変わることはもう仕方がないとして,明らかにずれているものは左右独立のボリュームの利点を生かして,左右の音量バランスが同じになるように調整をすることが出来ました。

 こうして録音した音楽を,録音後に再生してみると,回転部分などどこにもないのにちょっとした感激があるから,録音という作業は楽しくてやめられません。

 ただ,楽しいのは結構なのですが,安いテープで30年を経過したようなものは経年変化で高域の減衰が目立って来ているものがありますし,そうでないものも転写がおきていたり,磁性体が剥がれてしまうという劣化も出てきています。

 このため,左chだけ音がこもってしまうのが10秒だけ続くいったような,それまでの作業をパーにしてしまうような事故もおきやすくなっています。

 20年以上経過し,ひどいものは30年にもなるようなテープが,今でも再生出来ることがそもそも大したものなのかも知れませんが,ここはさすがに音が出なくなるデジタルと違い,ダメになってもダメなりに音が出るアナログは,頼もしいなあと思います。

 何度か録音をやってみて,大体作業の流れや注意点も見えてきました。あとは単純作業の繰り返しになりますが,なにせカセットもDATも数があるので,短期的に時間を作って処理しても追いつきません。死ぬまでにコツコツをやっていくという長期的な覚悟で,取り組んでいく必要があると思っています。

 とはいえ,ちょっと無視できないなと思っているのが,当時の機材の問題(調整不良)による高域が異常に出ているテープと,経年変化や劣化による高域が落ちてしまっているテープです。

 一度デジタルで取り込んだ後に,ソフトで補正をかけようかと思ったのですが,時間もかかるし,アナログの段階で補正が出来る方がいいと考えて,グラフィックイコライザを買うことにしました。

 オーディオ用途のものはもう絶滅しているんですが,業務用にはたくさんの品種があります。随分安くなっていることに気が付いたのですが,今回は価格破壊者として知られる,ベリンガーのものを手配しました。

 積極的に音をいじることを良しとしなかった私は,グラフィックイコライザーを使いこなせる自信がありません。試行錯誤でいじっても,結局うまくいかなかった経験もあるので,15バンドで左右独立という自由度の高い機器を目の前にして,果たしてきちんと目的を果たせるのかどうか・・・

DR-100mk2で録音

 DR-100mk2を使って,DATの録音を少しだけやってみましたが,なかなか大変です。

 まず,面食らったのは,デジタル入力なのにPEAKインジケータが点灯し,あげく「OVER」とレベルメーターに表示されてしまったことです。

 本来,デジタル入力ですから0dBFS以上の入力は入ってくるはずがありません,なのにOVERとはどういうことか?

 理由はともかく,本当に私のDATから0dBFS以上と認識される信号が出ているなら問題です。そこで,XD-S260からDTC-59ESJに入れ,ここからDR-100mk2に入れて見ました。

 すると,DR-100mk2ではOVERとなる信号でも,DTC-59ESJでは0dBとなり,オーバーにはなりません。断定するのは難しいですが,デジタルの信号ですので,フルスケールは0dBであり,これ以上を表現する事が出来ない以上,信号そのものがレベルオーバーになっている可能性は,ないと考えていいでしょう。

 残る可能性は2つ,DR-100mk2がデジタル入力の信号を増幅してしている,もう1つはレベルメーターの表示が実際よりもずれている(というよりより慎重な方向に修正されている)というこことです。

 前者の可能性ですが,私は当初低いと考えていました。意味もないし,わざわざDSPで処理するようなことでもないと思っていたからで,そんなものは世の中にほとんどないと思っていたのです。

 ところが,MD全盛の時代に,デジタル入力でもレベル調整をしたいというニーズが多くあり,中級機種から上のモデルではレベル調整が可能なものがいくつもあったようなのです。確かに,デジタル入力時にレベル調整をしないというのは,その信号が既に適切なレベルに調整されていることが前提であり,もしもそうでないソースがあったら,調整したいと思うのは普通の欲求でしょう。

 なんに使うのかと思ったのですが,例えばアナログ録音されたMDをデジタルでコピーするとか,テレビや衛星ラジオなど,あまりレベルを厳密に管理していないと当時言われていたソースを録音するなら,使い道はあるかも知れません。

 でも,私に言わせてみれば,デジタルでレベル調整をすることで音質劣化のデメリットが普通に発生するわけですから,一度アナログに戻してアナログでレベル調整をしてやればいいんじゃないのかと,思うのです。

 話を戻しますが,こうした過去の機器にあったデジタル入力時のレベル調整ですが,レベルが固定という事はなく,可変になっています。目的から考えると当たり前の話ですが,DR-100mk2には調整がありませんので,レベル調整は行われていないのではないかと,そんな風に思っています。

 もう1つの可能性である,レベルメーターのズレですが,私はこの可能性が大きいと思っています。この手のレコーダーというのは,どうもレベルオーバーによる音質の劣化がなにより嫌われるようで,あまり上限ギリギリを狙ってレベル設定を行うことはしないようです。ま,そりゃそうですね,マイクで録音することを主眼においたハンディレコーダーですから,どんな大きさの音が来るか分かりません。

 さらに,歪ませるよりはノイズに埋もれさせた方がましだ,という考え方が浸透してきたようで,これを根拠にレベルを小さめにして録音し,あまり上限ギリギリを狙わないようになってきているみたいです。

 機器の性能向上もあり,ノイズフロアが下がってきているのがその背景にあるようです。特に24bitの録音が可能な機器な場合,マイクやプリアンプのダイナミックレンジから考えると,上限ギリギリを狙わなくても,十分なダイナミックレンジが取れるのですから,無理をすることはありません。

 そんなわけで,レベルメーターがより安全な方向にずれているんじゃないかと思うのです。機会があったら確かめてみようと思います。ここで例えば,2Vrmsの1kHzを入力して,0dBFSを越えてしまったら私の考察が正しかったことになりますし,0dBFSぴったりになれば,やっぱり信号のレベルそのものが変わってしまっていたことになりますね。

 ここで,自分自身のために,レベルについてまとめておきます。

 DR-100のレベルダイヤグラムを見ると,ライン2入力(3.5mmのジャックy)の標準入力が-10dBVで,これがレベルメーターの-16dB(-16dBFS)に相当します。最大入力の+6dBVでレベルメーターの0dBとなり,これがADコンバータ(CODEC)のフルスケール,つまり0dBFSになるようになっています。ヘッドルームは16dBとなりますね。

 入力のボリュームの可変範囲は31dBとなっていますが,基準入力である-10dBVが
-16dBFSであることから考えると,入力ボリュームを0に絞った場合には-41dBVとなり,これが-47dBFSになるというわけです。

 0dBVが1Vですので,-10dBVは0.33V,+6dBは2Vと言うことになりますので,まあ普通のラインレベルを受ける端子としては,ギリギリの線です。

 これはDR-100での資料を基にしていますが,DR-100mk2でもこれは同じでしょう。

 それで,DR-100にはない,XLR入力のライン1になると,基準レベルが+4dBu,最大入力レベルが+24dBuと書かれています。カタログにレベルダイヤグラムが出ていましたので,同じように考えてみましょう。

 レベルダイヤグラムによると,基準レベル+4dBuが-20dBFSとなっています。ヘッドルームは20dBで,最大入力は+24dBuです。これはライン2入力とは全然違っています。

 なお,このレベルダイヤグラムには出力も書かれているのですが,+24dBu = 0dBFS = +6dBVです。出力の+6dBVはライン1でもライン2でも同じ仕様です。

 で,ライン1での基準レベルは20dB下がったところですので,+4dBu = -20dBFS = -14dBVです。(ちなみにライン2では-10dBV = -16dBFS = -10dBV)

 +4dBuは1.23V,+24dBuは12.3Vです。このあたり,さすがプロ仕様です。

 取説では,レベルメーターが-16dBを中心に行き来するようにし,かつPEAKインジケータが点灯しない範囲で入力レベルを設定しろ,とあります。なるほど,レベルダイヤグラムをきちんと読んでみると,この説明にも納得がいきますね。


 さて,他にも,AUTOREC機能は,レベル設定の下限が-48dBなので,頭切れも尻切れが簡単に発生してしまいますし,PRERECはAUTORECとは別の設定項目なので,手動でも2秒前から録音されてしまうとか,尻切れを防ぐRELAYの設定も5秒まで設定出来るとはいえ,設定単位が1秒でとても大雑把であるとか,あれこれと面倒なところもあります。

 最初は,AUTORECで楽をしようと思っていましたが,結局使い物にならない事がわかってしまい,すべて手動に切り替えました。それでも,ファイルを分けるTRK INCで僅かながら頭切れが起こっているようなので,心持ち前でボタンを押すように,心がけています。

 そうして苦労して録音を進めていても,DATの調子がどうも悪くて,途中でCAUTIONを出して止まってしまい,またやり直しです。

 こんなことをやっていたら,いつ手持ちのDATがファイル化出来るか,見当も付きません。そうこうしているうちにデッキも動かなくなり,テープは劣化して,再生不可能になります。さすがの私も,ちょっと焦ってきたというのが,本音です。

 

DATとその他の機器をメンテ

 25年も30年も経過すると,部品の寿命を迎えているような機器も多くあり,特に寿命が短く確実に来る電解コンデンサの機能低下が,機器全体の性能を落としてしまうことが目立って来ます。

 またこの電解コンデンサが,電源回路に使われたり,音が直接通る海路に使われたりすることが多い部品だったりするのでたちが悪いです。

 先日からオーディオ機器のオーバーホールをコツコツと行っていますが,作業としては電解コンデンサの交換が主で,とりあえずちゃんと動いて実用レベルになってくれれば,それ以上のことはしないというのが方針です。

 幸いなことに,私の機器はメカの劣化が少なく,ほとんど手を入れることなくちゃんと動いてくれています。

 昨日,ようやく計画していた作業がすべて終わったので,簡単にまとめておくことにします。

・GX-Z9100EV

 先日詳細を書きました。電解コンデンサを交換(基本的にはすべてを交換)し,テープガイドのグリス固着を防ぐ為に柔らかいオイルを数滴注油,モード切替カムの位置調整を行って,一度完成させました。

 このメンテの際に,コネクタへのケーブル差し込みのミスで,テープセレクターが正しく動作しないという問題が出たことと,電源のショートのせいでヒューズ抵抗を焼いてしまったことも,これまでにかきました。ヒューズ抵抗は2Aのヒューズに交換して修理完了としました。

 ところが昨日,プレイボタンを押したところ,ヘッドがなかなか上がらずに,音が出始めるまでに随分待たさせるようになっていました。使っているうちに音が出るまでの時間は短くなっていきますが,それでもモーターが唸るような異音がして,ヘッドがなかなか上がらないことには変わりがないので,もう一度分解することにしました。

 異音の原因はモード切替のモーターからです。ヘッドを上げて押しつけているのはこのモーターですから,こいつから異音がするというのはちょっと問題です。さらによく見ると,モーターにかかっているゴムベルトがスリップしているような感じです。

 ゴムベルトの交換を予防的にしなかったのは,メカを降ろして分解しないと,交換出来ないと思ったからです。予防の効果は認めるとしても,そのことでメカを分解し,万が一テープパスが狂ってしまうような話だと,もう最悪です。

 しかし,ゴムベルトがスリップしている以上,交換せざるを得ません。こういう場合,私はバンコードを使って,メカを分解せずにベルトを交換するようにしますが,バンコードを溶着する作業空間がないことと,手元にちょうどいいくらいのサイズにバンコードで作ったベルトがあり,もったいないのでこれを利用することにしました。

 じーっとメカを眺めていると,モード切替のモーターは3本のビスで外せそうです。この時カムを駆動するギアも一緒に外れそうなので,輪になったベルトを簡単に交換出来るようです。

 果たして,ビスを外すと,うまい具合にモーターとギアがまとめて外れました。ちょっときつかったのですが,手持ちのベルトをプーリーに引っかけ,元に戻します。

 動かしてみると,ばっちり治りました。しかも,電源投入時やカセットを入れた時に必ず発生していた「カタカタカタ」という音もなくなりました。

 この音ですが,どうやらモード切替カムが,ベルトの緩みからバックラッシュをしていて,規定の位置にピタッと止まらず,行きすぎては戻し,戻しすぎては進めを繰り返していたようです。ベルトのスリップがなくなったことで,ピタッと位置が出るように制御出来て,カタカタ音も出なくなったようです。

 実に気持ちがいいですね。購入時の小気味良い動作が甦りました。こうなると,フライホイールにかかるベルトの劣化も心配ですが,これはまだしっかり引っかかっているような感じですので,もう少し様子を見ましょう。


・XD-S260

 私が初めて手に入れたDATです。これが私のエアチェック環境を激変させ,高音質で,かつ確実な録音でライブラリを増やすのに,負担を大きく軽減してくれました。

 ミニミニコンポサイズの260mmで,安く小さい割には信頼性も高く,音も悪くなかったので,とにかくよく使いました。

 何だかんだで録音済みのDATがたくさんありますから,これをファイルベースで管理するのに,きちんと再生出来るDATのデッキが必須という判断から,オーバーホールを行うことにしたものです。

 まず,トレイが出てきません。これは前例があり,10年ほど前にトレイを動かすモーターのゴムベルトが伸びきっていることが分かっているのでバンコードで交換用ベルトを作り,交換です。前回は輪になったベルトを使ったのでメカを分解しましたが,今回はバンコードですので,ベルトを通してから溶着して輪にします。こうするとメカをばらさなくてもいいんですね。

 さて,これでDATがローディングされるところまでは,動きました。しかし,どうも不安定です。テープが走ったり走らなかったり,クリーニングテープを引きちぎったり。

 テープガイドに注油を行い,スムーズに動くようにすると,ぎこちない動きがだいぶよくなりました。それでも安定して動作しません。

 テープローディング用にモーターのベルトが滑っている可能性もあると思ったのですが,径の小さなベルトなので手持ちがなく,バンコードで作るのも難しく,結構元のベルトが一番良い結果が得られました。

 あれこれ分解していると,全然動かなくなったり,テープをロードしなくなったりして慌てましたが,最終的にはなんとか再生が出来るようになってきました。

 ただ,頭出しを行うと確実に「CAUTION」と出てしまいます。

 これは,ブレーキが壊れているのが原因でした。頭出しで高速回転するリールが,再生に切り替わったときに止まらず,テープがたるんでしまうわけですが,そのせいでリールが回ることなく再生されている状態をエラーと認識しているのだと思います。

 見てみると,ブレーキのゴムが溶けてドロドロになっています。部品を取り出し,ゴムをアルコールで拭いますが,代わりのゴムなどありません。内径が2mm,外径が3.5mmくらいのチューブを輪切りにするとちょうどいいのですが・・・

 周りを探してみると,VVFケーブルの被覆がサイズとしてはぴったりです。ゴムではないですが,ブレーキの代わりくらいにはなるでしょう。これに交換します。

 組み立てると,なんとかブレーキがかかって,CAUITONも出なくなりました。

 しかし,途中で再生が止まることもチラホラ。なんでかなあと思っていると,キャプスタンがグラグラです。これはわざと緩く固定してあるのかと思ったのですが,キャプスタンモーターを固定する3本のビスのうち,2本だけが緩んでいたことを考えると,どうも動いてはいけないもののようです。

 とりあえず3本のビスをきちんと締めておきました。

 再生中に止まることはなくなりましたが,ドロップアウトで盛大にノイズが発生とか,今ひとつな感じです。デッキが悪いのか,テープが悪いのか,はたまた録音機と再生機が違う場合に怒るオフトラックなのか,そこがよくわかりませんが,このデッキで録音したテープは問題なく再生出来ているようなので,これで完了とします。

 あとは電解コンデンサの交換です。ADにはクリスタルセミコンダクタの,DAにはフィリップスのものをつかっていて,それなりに音が良いと言われているものなのですが,アナログ回路はそんなにお金のかかった感じはしません。

 気になったので,M5218はOPA2134に交換しておきます。良くなることはあっても,悪くなることはないでしょう。

 電源を含め,すべての電界コンデンサを交換します。電源回路の電解コンデンサは少し容量が大きいものに交換し,信号系のものも手持ちの関係で大きなものにしておきました。まあ大丈夫でしょう。

 完成しましたが,今のところ問題なしです。音質云々ですが,冷静に考えるとデジタルアウトから取り出しますので,アナログ回路に奢った新しい電解コンデンサは,あまり役には立たないのかも知れません。


・DTC-59ESJ

 いろいろ悪評の多い,ソニーのDATです。悪評が多いと書きましたが,では他の機種が出てくるか,他の評判のいい機種があるかといえばそういうものでもないので,なんだかんだで一番ポピュラーなDATデッキということになるでしょう。

 幸いなことに,私のDTC-59ESJはメカに問題はなく,持病とされるヘッドクリーナの取り外しと,RFアンプのコンデンサの交換だけやれば,とりあえず問題なく動く状態でした。

 ヘッドクリーナはもうボロボロで,確かにこれで動かしてしまえばヘッドにゴミをくっつけることになるなあと震え上がりましたが,電源を入れる前に取り外して終了。

 RFアンプのコンデンサですが,当時は超小型の電解コンデンサが手に入らず,面実装品の小型のものとして,5Vの電源ラインに6.3V耐圧のものを使っています。こうしたマージンのなさと,無理に小型化したコンデンサであること,そして面実装品であったことなどが重なって,液漏れが多発したんだと思います。

 無理にリードの電解コンデンサに交換している人も多いようですが,それだとシールドケースも閉まりにくいですし,かといって同じ電解コンデンサにするのも怖いので,面実装のタンタルコンデンサにします。

 タンタルコンデンサは,故障モードがショートですので,壊れたら重大事故になります。そこで壊れにくいように,十分なマージンを持って使うのが定説なのですが,5Vなら最低その3倍である15V耐圧のものを選ぶべきです。

 手持ちのタンタルコンデンサをみると,22uFは16Vと20Vのものがあります。どちらも同じ大きさなので20Vを選びますが,ちょっと長さが大きくて,うまくハンダ付けが出来ません。

 それでもなんとか取り付けましたが,どうもどっかでショートしたらしく,再生しても音が出ません。やりなおしです。

 もう一度手持ちを探すと,長さの短い小型のものが,10Vならある事がわかりました。不安ですが,2倍のレーティングにかける事にし,コンデンサに交換です。

 結果は,今のところは問題なし。仮に音が全く出なくなったら,コンデンサの破損だと思って,その時手に入るもっと良い部品に交換することにしましょう。

 先に基板の電解コンデンサの大半を交換します。手持ちの関係もあり,電源の平滑コンデンサである5600uFと6800uFは交換出来ませんでしたが,あとのものはすべて交換しました。

 これで組み立てて音を出しますが,最低限必要はところに注油をして,スムーズに動くようにしました。音も出ています。

 ところが,ヘッドフォンが常に最大音量なんですね。レベルツマミを回しても音が小さくなりません。調べてみると,このレベルツマミのボリュームが壊れていて,無限大になっているようです。代わりのボリュームを探しましたが,20kΩという抵抗値,シャフトの長さと形状でぴったり合うものがなく,仕方がないのでボリュームを分解して修理しました。

 この結果レベルが調整出来るようになりました。同時に,ヘッドフォンアンプとして搭載されていたM5218も,OPA2134に交換しておきます。NE5532やLF412は,このデッキの音質を決めている重要なOP-AMPなので,このままにします。LF412なんて,渋いですねえ。

 次に思いついた改造が,DATのメカを照らす照明を明るくすることと,SBMのLEDを交換することです。

 当時はアンバーのLEDしか照明に使えるものがなかったので,色も悪く,また暗いものを使ったのでしょうが,今は非常に明るいLEDが手に入ります。こういうオーディオ機器は,電球色がいい雰囲気を作りますので,ここは電球色のLEDに交換します。

 結果,とても明るく,見やすく,高級感も出ました。この改造はおすすめです。

 SBMのLEDは,今は緑になっていますが,これも品がないんですね。もともとDTC-59ESJにはLEDは使われていませんし,緑色もどこにもありません。だからとってつけたような不自然さがあるんですが,これをアンバーにしました。落ち着いたいい色で光るようになり,こちらもおすすめです。

 そして,いよいよ組み立てたところで,問題発生。メカをオープンしても開ききらず,しばらくすると勝手に閉じてしまいます。DATを取り出すときにも同じで,手でぐいっと開かないと,せっかく出てきたテープがまた吸い込まれてしまいます。

 もう一度分解して見ましたが,DATのローディングの機構の,油ぎれのようです。開ききる手前で一番重くなるところがあるようで,ここでモーターが回りきらず,リミットスイッチを押せないまま,閉じてしまうのです。

 注油してやるとスムーズに動くようになり,問題はなくなりました。

 これで作業は終了。


・自作のMOS-FETアンプ

 先日,アナログプレイヤーをメンテした際に,アンプの入力セレクターを改造しました。これまではPHONO入力からイコライザアンプに入っていたのですが,以前から書いているとおりイコライザアンプは外部に用意しましたので,PHONO端子は使わずにいました。

 ですが,ただでさえ入力端子が足りない中,遊ばせておくのももったいないので,内蔵のイコライザをバイパスし,PHONOも単なるライン入力になるようにしたのです。

 この時,電解コンデンサも交換すべきだったのですが,面倒でやらなかったのです。

 しかし,今回,カセットからDR-100mk2で録音をしている時に左右が入れ替わっていることに気が付きました。どこで入れ替わっているのかよく分からず,結局結線を外してアンプをラックから取り出してしまいました。

 結局,ここまでやったんだからと,電解コンデンサの交換をしました。

 自分が高校生の時に,部品屋さんで集めた電解コンデンサを,今こうして外して交換し,捨てることになるとは,感慨深いものがあります。

 今見ると,1970年代後半の設計らしく,電解コンデンサも大容量のものが使われていません。小さく安くなったコンデンサのおかげで,今の常識よりは,1ランクは小さなものが使われている印象です。

 これを一気に交換します。といっても,電源基板がほとんどで,使われていないイコライザの電鍵ラインに入ったものが他にあるくらいです。パワーアンプ部のドライバ基板には1つも電解コンデンサはありません。

 交換しても,別に問題はなし。左右に入れ替わりもアンプ内部の話ではなくほっとしました。


 ということで,私の手持ちの古い機器は,一通り交換を済ませました。手持ちのFine Goldはほぼ払底したのですが,電解コンデンサは使わずにストックしても腐ってしまいますから,在庫を持たずにとっとと使った方がいいです。

 もう10年くらいはこのまま使えるかなと思いますが,果たしてこんなにかさばるオーディオ機器を,持ち続けることの意味も分からなくなってきます。もし仮に,私が今日死んでしまったら,家族は困るだろうなあと,そんな風に思いながら交換作業をしていました。

 難しいものです。

GX-Z9100EVを初めてメンテ

 確か1993年だったと思うのですが,GX-Z9100EVというカセットデッキを買いました。10面円近い買い物でしたが,ようやくちゃんとしたカセットデッキを手に入れたと,とてもうれしかったことを覚えています。

 当時の目的は,FMで放送されていた,なも放送を含むライブの録音とアーカイブです。バリコン式の安物アナログチューナーに,カセットデッキは1971年生まれのA-450という組み合わせで始まった私のエアチェックですが,F-757と5素子八木アンテナの導入で一応残せる音質を入り口に据えることが出来ました。

 ここに4万円くらいで購入したアイワのXD-S260というDATを導入して,2時間そのまま番組を丸取りすることに成功し,カセットへのダビングを丁寧に行う環境が手に入りました。

 これは革命でした。1時間の番組を丸取りする方法はなく,カセットテープでは1度カセットを反転させないといけません。うまくCMで反転できればいいんですが,早すぎると番組の後ろを録音できなくなるし,遅すぎるとテープが終わってしまいます。

 そういう不安をDATで2時間録音できるようになってからは,全くせずに済んだわけで,音質も時間も,もう完全なタイムシフトです。

 こうなると,今度は最終のアーカイブメディアに,安価なカセットを使ってどんどんライブラリを増やしたいですね。しかし,A-450では音質に限界がありましたし,きちんと録音できているかを確認出来るのは,録音が終わってからになるので不安でもありました。

 そこで,FMエアチェックプロジェクトの総仕上げとして,3ヘッドのカセットデッキが必要だったのです。機種選定は個人的に好印象だったTEACから選ぼうと思っていましたが,買った人の意見やテープを傷めない工夫,そしてフェライトヘッド採用による耐久性の高さから,アカイを選ぶ事にしました。

 アカイの最上級機種は伝統的に,3ヘッド,クローズドループキャプスタン,PLLにdbxという特徴を引き継いでいましたが,残念な事に実質的なアカイの最終モデルであるGX-Z9100EVではdbxは非搭載となっていました。

 まあ,それでも最上位機種です。むしろ自然なノイズの消え方に定評のあるDolby-Cだけで十分という判断もあり,購入に至りました。

 それから27年。一度も修理も分解もせず,使えていました。テープガイドのグリス固着という持病も出ず,初期の音を維持してくれているように思ったのですが,それでももう30年近いわけですから,ここは1つケミコンの交換だけはやっておこうと,思い立ちました。

 GX-Z9100EVは,プリアンプがディスクリート構成のDCアンプなので,信号系に混電話が入っていません。それでも大量の電界コンデンサを交換しましたが,d年原型を含むプリアンプ以外にふんだんに使われていました。

 詳しいことは分かりませんが,ぱっと見るとオーディオ用の高級なコンデンサのように見えます。しかし秋月あたりではオーディオ用のものが一般のコンデンサと同じような値段ですので,躊躇なく交換していきます。

 交換が終わり,電源を入れて音を確認します。問題はなさそうです。しかし,なぜだかメタルテープを検出しません。メタルテープの検出スイッチが動作していないように思うのですが,うまく動かずその日は力尽きて寝てしまいました。

 翌日,続きをやるのですが,その過程でどうも基板がシャシーに触れたらしく,煙がもくもく出てきました。

 すぐに電源を切りますが,なんとか動いているようです。煙が出たというkとオハ,もうその部品は確実にアウトですから,本当は交換したいのですが特定出来ませんので,先に進みます。

 テスターで信号経路を追いかけていくと,問題の場所が特定,どうも,裸の製材を差し込むタイプのコネクタに,洗剤を差込損ねてしまったようで,1つの穴に2本のケーブルが刺さっていました。

 くだらないミスでしたが,これを戻している途中にまたショート,今度は煙は上がりませんでしたが,モーターの誤動作が止まりません。

 完全に壊れてしまったのですが,回路図を追いかけていくと,14Vから5Vを作ってマイコンに供給する電源ICの出力が出ていません。入力に入ったヒューズ抵抗があやしいと睨んで調べると,やはりここが800kΩくらいになっています。

 外して確認すると,やはり焦げています。これが原因だったのですね。

 電源ラインのショートでヒューズ抵抗が燃えているなら,他への影響はほとんどないでしょう。不幸中の幸いでした。

 三端子レギュレータは1Aのタイプで,ショートに対しても保護回路が働きますが,ここは安全を考えて2Aのチップヒューズに交換します。これで復活。

 今度はメカです。テープガイドの固着はないと思っていましたが,固着寸前の状態で,ジワジワと動作していることに気が付きました。これではいつ固着するか分かりません。

 最初はばらしてグリスの入れ替えをしようかと思ったのですが,テープガイドの位置の調整が面倒で,ミラーカセットも持っていませんから,現在のテープパスをよく見てから考える事にしました。

 透明なハーフのテープを何度も再生してみましたが,テープパスは非常に良好で,これを分解してしまうのは惜しいと考えました。そこで模型用の柔らかいオイルをテープガイドに注入して,スムーズに動くようにしました。

 これでとりあえず大丈夫です。

 リールのトルクが弱くなっていて,これはおそらくゴムの劣化によるものと思いますが,IPSSが動作しないなどの問題はありますが,それ以外は問題なし。これでしばらく使えそうな感じです。

 30年の汚れを綺麗に落として組み立てて完成。このデッキは隙間がないので,内部にホコリが入り込まないので,内部はとても綺麗です。

 ということで,カセットデッキはとりあえず復活。録音機能も問題なしで,再生音も昔の状態を維持してくれています。肝心なアーカイブしたテープには,例えばカシオペアやJIMSAKUなどが元気いっぱいの演奏をしているライブがあったり,人間椅子,PSY.Sなど,今ではもう忘れ去られているようなものまで,いい状態で残っています。

 これをとにかく,デジタル化しておかないといけないなあと,思っているところです。

 それで,気をよくした私は,DATのデッキを確認してみることにしました。ソニーのDTC-59ESJとアイワのXD-S260の2つですが,後者の方が導入が早かったので,こちらで録音したテープが多いです。

 ですが,XD-S260はトレイが出てこず。トレイ駆動用のゴムベルトが伸びていましたが,これを交換してもまともに再生せず,貴重なテープを切ってくれました・・・

 ここで私は気が付きました。サルベージすべきなのは,カセットデッキではなく,DATなのだということを。

 カセットデッキはそれでも修理がやりやすく,最悪新品を買うことも出来るでしょう。しかしDATはもうダメです。新品はおろか,程度のいい中古を探すことも難しく,かつ高度なメカゆえに,修理も大変難しいです。

 音が出るとはいえ,途中でドロップアウトが出たりすることは想像にたやすく,DATのデッキをとりあえず動く状態にして,ICレコーダで録音しないと本当にまずいなと思いました。

 DATは現在修理中ですが,並行してPCMレコーダーを選定中です。デジタルINのあるレコーダーって,本当に少ないので困っています。

 しばらく,30年前の機材と格闘することになりそうです。


 

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