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イコライザアンプの大改修とMCカートリッジの個性

 先日からアナログレコードの再生に,コツコツを取り組んでいます。

 なにせ,日々の生活に忙しく,またそれが楽しかったりするので,時間を気にせず没入していくオーディオにはなかなか取りかかれないのですが,それでも10分15分お時間を見つけては,アナログらしい音を聴くために作業をします。

 きっかけは先日も書きましたが,V15typeiVの入手です。これに安いtypeIII用の互換針を差し込んで,私もようやく本物のV15を手に入れました。

 案外いい音を出すので,ついつい楽しくなっていろいろなレコードを聴いてみたわけですが,ラックからレコードを出して眺めていく鬱に,どうもCDで手に入れていない音源もいくつか発見され,これをデジタル化しないといけないという,新しい課題が見えてきました。

 気分とレコードに合わせてカートリッジを選んでトーンアームに取り付けて,ゼロバランスを取ってから,やはり気分とジャンルに合わせて針圧を増減,レコードを慎重にターンテーブルに載せてクリーニング,ゆっくり針を落としてリードインのパチパチに胸を膨らませるという演奏が始まるまでの儀式は,人によっては「道」とよべるほど洗練されているかも知れませんが,これを面倒と思ってしまうとアナログの良さがすっ飛んでしまうわけで,積極的に楽しめることもまた,その人の素質やスキルであろうと思います。

 私などは緩い人なので,こういう手続きが楽しいのはいいとして,どうせその時だけという刹那感もありますから,完璧を求めるようなことは最初からしません。だからこそアナログレコードという底なしの金食い虫の淵をのぞき込むことなく生きていられるんだと思いますが,ゆえにノイズやハムといった絶対悪にさえ,大らかであることが出来ます。

 不思議なもので,レコードのゆっくりとした回転や,ほのかに灯る真空管のヒーターなんかが目に映ると,ハムやノイズに寛容になってしまうものです。これを録音しておき,別の機会に再生すると途端にハムやノイズも気になって仕方がないという経験は,多くの方がされているんじゃないかと思います。音は音だけ作られているのではないという証拠です。

 ちょっと脱線しましたが,最終目的が録音である以上,それなりのクオリティでないといけないわけで,どうせその時だけだからと大らかに構えていたイコライザアンプのハムやノイズに,真剣に取り組むことになってしまいました。

 私のイコライザアンプはいくつか自作した後,K&Rというガレージメーカーのキットを使っています。創意工夫が光る回路はCR型とNFB型のいいとこ取りをし,現代的でスピード感のある音を実現している一方で,音質的な部品へのこだわりが解像感のある。しなやかな音を奏でてくれます。

 MCヘッドアンプも同社のものですが,これも半導体とトランス方式のどちらの弱点も克服する完成度の高さを安価に実現しています。

 電源と実装は私が手元でやったわけですが,これがまあなんとも適当で,電源は三端子レギュレータで済ませていますし,ケースは安いアルミの小さいケースに十重に押し込んでいるお粗末さです。

 電源トランスも近いところにあるし,ワイアリングにも制限があるので,ハムも出まくりです。

 これではいかんと,改修を行うことにしました。

 まず,電源トランスを少し小さいものに替えて,基盤との距離を稼ぐことにしました。その上で純鉄のシールド板を立てて,電磁誘導によるハムを軽減させます。

 電源回路は面倒なのでこのままでもいいんですが,負電源の7912のパスコンが不適切だったので仕様書に従って大きめの値の電解コンデンサを追加しました。とうも発信しやすい不安定な状況にあったように思うのですが,この対策でノイズも減りました。

 ワイアリングも見直し,アースの取り方も時間をかけて検討しました。試行錯誤をしましたが,ACの3Pコネクタをノイズフィルタ内蔵のものに交換し,ノイズと共にACからの誘導ハムをシールドでカットしました。

 MMではほぼハムもノイズも気にならない程度に押さえ込みましたし,MCでも少しハムが残っているくらいに出来ました。ここまで格闘するのに4時間かかってしまいました。なんと贅沢なことか。

 これまでは,レコードに針を落としていれば,無音部分でハムが聞こえて興が冷めてしまったのですが,今回の対策では無音部分のスクラッチノイズよりもハムが小さいので,針を落とすともう気になりません。このくらいで手を打つことにします。

 実のところ,V15typeIVを楽しめれば,MCでのハム退治なんて必要はないはずなのですが,幸か不幸か私はMCカートリッジの決定的なすごさに気が付いてしまい,これで録音をしようと思った事で,ムキになってMCでのハムやノイズを押さえ込むことに夢中になったのでした。

 Kenny DrewのEverything I Liveというアルバムを,カートリッジをとっかえひっかえで聴いていたときのことです。確かにV15typeIVはいい音を出すのですが,いまいち見通しが良くなく,ピアノとの距離が近く,ペタッと張り付いて聞こえます。

 そこで,ものは試しとAT-F3/IIにしてみると,くぐもって聞こえたピアノが華やかになったと同時に,目の前にすーっと音が通る道のようなものが通り,ピアノとの距離がリアルに生まれ,コトッという弦の振動以外の音もきちんと出てくるようになりました。

 おお,なんという空気感,これはAT-F3/II独自の音なのか,それともMCの音なのか,あるいはオーディオテクニカの音なのか,気になって仕方がありません。

 そこで,AT-15Eaにしますが,急に音の空間が狭くなりました。ならGRADOのPrestige2ならどうかと交換するも,さらに窮屈になって聴いてられません。音が籠もって狭いところに押し込められて,首をすくめているようです。

 DL-103に交換すると,AF-F3と同じように,頭上の蓋が取れたような開放感と新鮮な空気を感じ,ピアノと私の距離が適度に生まれました。前の前がぱっと開けた感覚は,AT-F3/IIと同じ傾向です。

 ただ,AT-F3/IIが華やかすぎたのに対し,DL-103は実に適度で,焦らず落ち着いた,重心の低い音を出してくれます。いや,これは実に聴きやすくて心地いいです。

 AT-F3/IIはきらびやかで,1970年代初期のジャズピアノのアルバムを現代風に甦られてくれますが,ちょっと冷たい感じがして,これならCDで聴くのが正しいよなあと思うくらいです。さすがDL-103,日本の標準器です。

 ということで,MMかMCかの違いは,なんとなくMCの方が線が細いくらいに考えていたのですがとんでもない,MCの空間表現能力であるとか,音源との距離感の再現能力であるとか,まるで冬の朝に深呼吸するような爽やかさというのは,理由はさっぱりわかりませんが,もう認めなくてはならないほどはっきりしています。

 一方でMMの閉塞感,音源との距離の近さと窮屈さはなんでしょう。まるで,ピアノの弦にマイクを立てて,平面的に拾っている感じです。(というか実際にはそうやって録音されているんだから正しい再生をやってるわけですが)

 この距離感の近さが有利に働くソースもあるんですが,少なくとも今回のEveryting I Loveについては,見通しの良さと音源との距離感がとても重要であると感じました。そう,まるで,私が鍵盤を前に座って,自分で演奏をしているかのような感じです。

 ああ,なんと奥が深いことか。

 と,こんな顛末があって,デジタル化はDL-103で行う事が決まったのでした。それで,なんとかハムとノイズを低減させる必要に迫られたわけです。

 惜しいのは,DL-103が丸針であり,特に内周でのトレース能力が他の針に比べて低いことでしょう。それでも,0.65ミルの丸針とは思えないほどの音を出してくれるのでいつも感心しますし,丸針であることも含めて,DL-103のバランスを作っているのだと思うので,かつて存在した楕円針がラインナップから消えているのも,わかる気がします。

 DL-103が凡庸な音を出すカートリッジに過ぎず,よほどV15typeVxMRの方がいい音をさせるというケースももちろんあります。MCとMMの違いがここまではっきりわからないソースも多いです。

 だから,どのカートリッジで聴けば楽しいかを考えるのが楽しいのだと思います。おそらく,どのカートリッジを選ぶのが正しいかという正解などないのでしょう。楽しいかどうか,それに尽きるのがアナログレコードの再生なんだと思います。

 忘れてはいけないのは,これを楽しいと思えない人が大半であるという事です。また,これを楽しむためには手間だけではなくお金もかかるという現実があります。

 だからCDに置き換わったことは正しいですし,良いことだったと私は思います。

 

やっぱりDE-04も調整してみた

 先日手に入れて,なかなかよい感触を得ているポケットテスターDE-04ですが,うちのテスターがことごとくそうであるように,この手で再調整を行って,測定値が他のテスターのものと大きく違ってこない状態にしないと,どうも落ち着きません。

 とはいえ,これを行うには調整方法を調べないといけないわけで,そう簡単にはいかないものでもあります。

 DE-04も,良く出来ているとはいえ,0.5%近くも値が小さく出ている状況をどうも看過できず,うちで調整ができないものかと調べてみました。

 DE-04はサンワのPM3のOEMと言われているだけあって,類似点が多くあります。そしてその類似点というのは,概ね同じLSIを使っていることに起因していたりするものです。

 調べてみると,FS9711LP3というLSIを使っていることがわかりました。残念ながらデータシートはFS9721しか入手出来なかったのですが,後継品種だということなのでこのまま進めます。

 FS9721のデータシートによると,調整方法は昔ながらの半固定抵抗で行うとあります。リファレンス回路にもこの半固定抵抗は用意されていますが,果たしてDE-04にも同じものがありました。繋がっているLSIの端子も同じです。

 DE-04のVR2というのが,直流電圧の調整用なのですが,これをいじればとりあえず調整出来るようです。レンジごとの調整はどうするのか,という話になると,これはもう分圧抵抗の精度に依存するので,このVRだけでは追い込めません。

 ここまでわかれば簡単です,いつもの基準電圧発生器を34401Aと一緒に繋ぎ,同じ値になるようにVR2を回すだけです。

 レンジ間の相対精度が揃っていることは前回の確認でわかっていますので,半固定抵抗の調整だけである程度追い込めるはずです。

 で,やってみた結果が以下です。

 まず,基準電圧発生器を34401Aで測定した値です。

2.5017V
5.0035V
7.5054V
10.0066V

 うーん,以前とちょっとだけ値がずれています。34401Aがズレたのか,基準電圧発生器がズレたのか・・・でもまあ,立派なもんですけどね。

 そして,DE-04を調整した結果です。

2.502V 0.3mV 0.011991846%
5.00V -3.5mV -0.069951034%
7.51V 4.6mV 0.061289205%
10.01V 3.4mV 0.033977575%

 まず,ぱっと値を見てみます。34401Aの値を4000カウントに丸めた値が,そのまま出てきていることがわかります。誤差何パーセント言う話ではなく,丸めた結果が同じになっていると考えると,DE-04としてはもう誤差ゼロと言ってよいです。

 であらためて誤差を見てみます。0.07%以内に入っており,かなり良い値になっています。これなら胸を張って正確だという事が出来るでしょう。

 で,今回の比較対象が34401Aによる実測ですので,これまでの「製造元による実測値」とは違います。もちろん,すでに基準電圧発生器の電圧がズレている可能性も大きいのですが,仮に両者の値のズレが34401Aだけで起きたと考えて,これまでの結果と比較をやりやすくするため,製造元の実測値からDE-04がどれくらいズレているかを再度計算してみます。

 製造元による実測値は,これまで同様,

2.50165V
5.00302V
7.50454V
10.00533V

 とします。

2.502V 0.013990766%
5.00V -0.060363540%
7.51V 0.072755958%
10.01V 0.046675122%

 とまあいうわけで,34401Aがズレていたとしても,十分過ぎる精度で落ち着いていることがわかります。7.5Vについては7.50Vと表示すべきところなのでしょうが,どのみち最終桁は±1くらいは当てにならないものですし,これでもう十分でしょう。

 DE-04という使い勝手よく,スペックも十分なテスターに,精度まで備わりました。これでもううちの測定環境は盤石で,はっきり言えば調整出来ないものや,2000カウントの古いテスターはすべて処分してしまおうかと思うくらいです。

 ただ,最近のテスターはバッテリチェッカーが付いていないことが多く,DE-04はもとより,うちでもP-10以外には付いていません。

 P-10のバッテリチェッカーは使用頻度も高く,結構便利に使っているので,これがあるから,すでに調整が出来なくなってしまうほど壊れているP-10を捨てられないでいます。

 負荷抵抗が入るだけの機能ですし,負荷が入るということはそれだけ電池に負担をかける(特にボタン電池など小さい電池)ということでもあるので歓迎されない機能でもあるのですが,そのあたりをわかった上で,損電池をさっと「捨てるか捨てないか」判定する事の出来るこの機能は,やっぱり欲しいのです。

 テスターがこうして調整可能になり,自分で精度管理を行えるようになると(もちろん公式な測定結果としては採用されないわけですが),気分がいいというのもありますが,それ以上に長年使い続けることが出来るという安心感が出てきます。

 測定器は,動くようにするだけでは修理もメンテも出来た事にはならず,調整して誤差がどのくらいあるかを明確にして初めて,使えるようになります。周波数の基準はもう手に入れましたし,中国製の安価なものとはいえ基準電圧も手に入れました。

 素人の測定環境としては,もう十分なところにきたと思います。なにを信じていいのやら,と言う子供の頃のその疑問に,ようやく回答を出せたように思います。

 

HP-12C Platinumを買った

 DM15LとDM16の入手,そしてHP-15CLEの再評価と,HPの電卓漬けになっている昨今ですが,特にDM16でlogの計算をさせるプログラムをいろいろ検討する過程で,随分手に馴染んできたような実感が出てきました。

 通常の四則演算は普通の電卓の入力(ALG)に慣れているが現実ですが,関数については国産の関数電卓がどうにも馴染めず,ずっとポケコンで来ていますから,RPNでスイスイ使えるようになってしまうと,もうこれ以外の電卓は使えそうにありません。

 で,実際に使い込んでみると,世の中の主流をしめる縦長の電卓よりは,横長の電卓の方が私は使いやすく,思えばポケコンも横長だから使いやすいと思って使っているのかも知れないと思うくらい,もうそれだけが理由で電卓の置き換えを考えてしまっています。

 その点で言えば,同じHPのRPN電卓であるHP35sも今ひとつな感じですし,HP30bを改造したWP34Sもやっぱり今ひとつです。やっぱりHP-10Cシリーズなんでしょうね。

 で,HP-15CLEは動態保存機。DM15Lは自宅用,DM16は職場で使うという配備を考えたのですが,DM16はカードサイズでキーも押しにくいシートキーです。ちょっとした計算には,手が伸びにくい計算機である事がわかってきてしまい,あらためてオリジナルのサイズ感やキーの押し心地が大事であると再認識しました。

 でも,DM15Lをもう1つ買うのはもったいないです。HP-15CLEを買うことはもはや普通は出来ませんし,どうしたものかと考えていると,そう,HP-12Cが現行機種である事を思い出しました。

 HP-12Cは金融電卓と言われていて,主にアメリカの金融関係者が使う「便利グッズ」です。登場から30年以上経過してなお,このジャンルの標準として重宝されているそうです。きけば,金融関係のテストでも,持ち込みが許可されているとか。

 オリジナルは他のHP-10Cシリーズとハードウェアを共通にするのですが,他のモデルがディスコンになってからは,ちょっとずつ改良が進んでいて,記念モデルも含めると様々なバリエーションが存在します。

 金融電卓ですので,関数は最小限に絞り込まれていて,やっぱりsinやcosはありません。でも,y^xはあるし,expやlog,lnもあるので,随分助かります。

 それに,統計計算があるのはうれしいです。しかもHP-15Cのそれより強力で,加重平均や2パラメータの推定や相関関数を求めると言った機能が追加されています。
加重平均はありがたいです。HP-15Cでもプログラムを組んであるくらいですし。

 一方で,プログラムは申し訳程度といっていいくらい窮屈で,サブルーチンは使えずジャンプはGTOのみ,そもそも複数のプログラムを入れておくことは想定されておらず,あらかじめGTO命令で実行する行を設定しておもむろにRUNするしかありません。

 ジャンプ先はラベルが使えず,行番号による指定です。ですから,プログラムを修正して行が変わると,ジャンプ先もすべて変更する必要があります。

 プログラムの低機能さは編集にも現れていて,行の削除と挿入が出来ません。なんとまあ,プログラムメモリすべてがGTO 000で埋め尽くされていて,ユーザーがプログラムするというのはつまり,その行を別の命令で上書きするということです。

 うーん。

 なんか,ハンドアセンブルをやってた時代を思い出しましたよ。アセンブラでもラベルは使えましたからね,これは厳しい(でも楽しい)。

 初代HP-12Cは,これに加えて最大99行までという制限まで付いて,まさにプログラミングはおまけ機能のようなものだったのですが,後継機種では400行まで拡張されました。されましたが,ほかの制限は改善されておらず,ラベルもサブルーチンも使えず400行もプログラム出来るかよ,と私などは突っ込んでしまいます。

 お値段は一頃安かったそうなのですが,今は若干高めです。正規代理店が日本国内にはないということもあり,ますます入手が難しくなっている中,amazonで並行輸入品を入手出来るのが救いだったりします。

 HP-12Cはいろいろなバリエーションがあり,amazonで買うと値段もまちまちなので混乱しますが,私の場合特にこだわりがあるわけではないので,最も安いものを6900円で買うことにしました。HP-12C Platinumという機種です。写真を見ると,キーの所まで銀色で,hpのロゴも10年ほど前に使われていたものです。

 ん?この機種は随分古くて,今はもう売ってないんじゃ?

 新品ならいいかと,ポチって届いたものを確認すると,やはり2005年に発売された,HP-12C Platinumの2世代目(F2232A)でした。

 もともと,HP-12C PlatinumはHP-12Cのデラックス版として2003年に登場していて,ノーマルのHP-12Cよりも高速で多機能なモデルと位置づけられていたそうですが,そのノーマルのHP-12Cも1990年代半ばにはCR2032で動くようになり,2008年にはARMコアになったことで,Platinumよりも高速なってしまったそうです。

 その後,記念モデルやなんやでややこしいことになりましたが,レジスタの数やキーのアサインなどの機能的な違いはノーマルとPlatinumの2者間だけだと思っていけば良く,逆に言うと買うときにはこの2つの違いについて知っておくと失敗しないということになると思います。
 
 そういえば,2000年頃と言えば,惜しまれながらHP200LXが消え,WindowsCE機であるJornada720なんかが出ていた時期でした。私はJornada720をしばらく使っていたことがあるのですが,そういえばなんとなく質感が似ています。

 HP-15CLEがいろいろと残念なモデルだったことはよく知られていますが,個人的にはキーのグラグラが許せなく,触っているとモチベーションが下がっていくのがわかるわけですが,私が買ったHP-12C Platinumについては心配無用で,心地よいクリックのある,しっかりしたキーを持っています。

 私はHP35sもキーが気に入らないことも理由の1つとして,あまり使おうという気が起きないのですが,このキーの感触なら常用できます。

 CPUはARMではなく6502ベースのもので,なんとCR2032が1つだけ使われているモデルです。電池交換時にはメモリが消えるんじゃないかと思うのですが,素早くやれば大丈夫かも知れません。今度試してみましょう。

 金融計算は,私は幸か不幸か日常的に行う状況にありませんし,そんなに興味のある分野でもないので,まあそんなもんかで済ませるとして,統計計算は便利ですよね,やっぱり。

 それに,DM16であれだけ苦労したy^xも一発で,三乗根がぱっと出てくるところに感激してしまいましました。
 
 さて,ここまでくると,やっぱり常用機にしたいですよね。

 常用機には,dBの計算ができないといけません。そのために常用対数が必要ですが,あいにくHP-12Cにはありません。そこでプログラムです。

 HP-15CLEやDM15Lと同じように,抵抗の並列接続や電力の計算も入れておくとより実用性が高まりますが,HP-12Cでは複数のプログラムを使い分けることが難しくなっているので,実際の操作方法まで同じに出来ないのが厳しいところです。

 というわけで,HP-12Cで電力のdB,電圧のdB,抵抗の並列接続,電力の計算,そして常用対数を求めるプログラムを作ってみました。

 なにせGSBが使えませんので,まずGTOでそれぞれの先頭の行番号を設定してからR/Sキーを押すことになります。起動方法が他と異なるのはすごく面倒なのですが,仕方がありません。

 ただ,機能ごとに開始行の番号を覚えられるはずもないし,修正すれば行番号が変わってしまうことも考えて,プログラムの先頭にジャンプデーブルを設けることにしました。これ,マシン語のプログラムを作るときにはよくやった方法ですね。

 ですので,GTOで001を設定すれば10*log(x)を,002なら20*log(x),003なら電力,004なら抵抗の並列接続,005ならlog(x)にジャンプするようになっています。そして006行目から010行目までは予備としてあけてあり,今後プログラムを追加しても大丈夫なようになっています。これも昔よくやった方法ですね。

 厄介だったのは,20*log(x)のプログラムから,log(x)をコール出来ないことでした。サブルーチンがあればRTNで元のプログラムに戻ることが出来るのですが,GTOしかないので決まった行にしか跳べません。

 そうすると,別のプログラムから呼び出すときに,元のプログラムに戻ってくれなくなります。なので,残念な事にせっかくのlog(x)はそれぞれのプログラムごとに,埋め込む事になってしまいました。

 ああ,なんだか,大昔のコンピュータを使っている気分です。

 プログラムの呼び出しも面倒ですし,常用出来るかどうかも疑問ではありますが,前述のように統計計算は強力ですし,実はパーセントに関係する計算も強力で,普段使いには便利です。

 こうした,金融計算と科学技術計算,コンピュータ科学用の計算を1つに統合したのがWP34Sだったりしますが,これが使いやすいかと言えばそんなこともありませんし,機能ごとに機種が分かれているのも悪くないと思います。

 HP-12Cは職場で使う事にしましょう。現行機種ですから,壊しても大丈夫です。

HC-20の修理~完結編

 HC-20の修理を先日行った話を書きました。LCDの一部に線が入るのに,深追いはせずそのままにした,ということにしたわけですが,やっぱり気持ち悪いので,きちんと時間を確保してから,仕切り直しをすることにしました。

 まあ,どうせ接触不良か接点の汚れ,ゴミを挟み込んだかなんかが原因だと考えていたので,分解して綺麗に掃除し,再度組み立てるだけですから,1時間もあればわると踏んでいました。

 さっさとばらして,LCDを基板に組み付ける金属のフレームの破損箇所を修理し,LCDのガラスや基板,ゼブラゴムの汚れを取り除きます。

 そして丁寧に再組み立てを行います。今回はうまくいきました。

 電源を入れてみますが,残念ながら,全く改善していません。同じ場所に,同じ長さで,同じ濃さの縦線がスパッと入っています。

 この縦線,中央よりやや左側,真ん中から縦1本だけ16ドット分(つまり我慢の下半分)の長さで入っているのですが,完全に表示が行われないわけではなく,ここだけ表示が極めて薄くなるのです。

 なにも表示しない状態だと背景他のピクセルとそんなに変わらないのですが,文字を奥津か表示するとどんどんその線だけ白くなり,文字が増えれば増える程白くなります。

 このラインの配線抵抗がほかよりも大きい場合にこういうことが起きるのですが,私はこれを,ゼブラゴムの圧着不足や端子の汚れのせいだと思っていた訳です。

 しかし,綺麗に清掃し,かつてないほど完全に組み立てたのに,全く同じというのはちょっと解せません。

 コントラストを調整すると,一応ピクセルが黒に点灯したりするので,LCDそのものが死んだわけでも,LCDコントローラが死んだわけでもないようですし,ここで行き詰まってしまうかと思われました。

 そんなとき,偶然基板のパターンをあちこち触っていると,あるところで線が消え,
綺麗に表示が行われる箇所が見つかりました。指を離してしまえば白い線が復活しますが,触っている間は完治するわけで,この段階でLCDやコントローラに加えて,ゼブラゴムや組み立て方にも問題がない可能性が高くなってきました。

 もしやと重い,触った場所のパターンを見ていくと,なにやら傷が付いて,切れそうになっているパターンが見つかりました。肉眼ではギリギリ切れていないよう思うのですが,万が一ということで,銅線でこのパターンをつないでみました。

 すると,白い線が消えて,見事に治っています。

 うーん,どうやら,パターンがほとんど切れてしまい,高抵抗でかろうじてLCDに電荷が流れ込んでいたということでしょう。LCDはいわばコンデンサで,高インピーダンスです。だから,こうしたケースでも完全に消えてしまわず,コントラストが著しく低下した部分として表面化するのでしょう。

 いずれにしても,これで修理が出来ました。

 本体を慎重に組み戻し,動作確認を行って完成です。

 途中,7歳の娘が寄ってきて,なんだこれは,と興味津々です。

 小さい画面に少ない文字数,その割には立派なキーボードを持ち,あげく小さなプリンタがギギギギと怪しげな音をたてて,文字を印刷するというのは,タブレットやスマートホンを見慣れた彼女の目にも,奇異に映ったことでしょう。

 カタカナであれこれと打ち込んでは印刷をして遊んでいますが,これが35年ほど前に登場した時には,電池で動く本格的なパソコンとして世界中で驚きの声が上がったことを,当然彼女は知りません。

 さて,そんなわけでとりあえずHC-20やX-07を含めた,小型コンピュータはすべて故障から解放され,良い状態で動態保存できるようになりました。

 完全にLCDが劣化してしまったシャープのポケコンは年を追うごとにダメになっていき,予備機のPC-1245はもちろん,PC-1251やPC-1246すらも,危険な状態になっています。PC-1211などは言うに及ばず,このままだとPC-12xxシリーズは全滅してしまうかも知れません。

 幸い,PC-1500シリーズやPC-1600シリーズは大丈夫で,この違いは何だろうと首をひねりたくなるのですが,現状では劣化したLCDを復元する方法はなく,かといって進行を遅らせるにも限度があるなかで,いつまでこれらの機種を残しておけるか,頭の痛い問題です。

 

HC-20の修理

 先日,思い立ってHC-20の修理を敢行しました。

 何が悪かったって,LCDの劣化がひどくなっていました。

 もともと,HC-20のLCDは表側の偏光フィルムがめくれてひび割れてしまい,剥がして交換したのですが,この時も表面がカサカサになり,酢酸の酸っぱい臭いがひどかったことを思い出します。

 そう,フィルムで問題になっている,ビネガーシンドロームです。

 あれは,トリアセチルセルロースなるベース材が湿気や熱で化学反応して劣化するという現象なのですが,1990年代にはポリエステルやPETに変更されて,こうした現象は見られなくなってきました。

 ですが,HC-20は1980年代前半の製品で,光学フィルムだったこともあってか,当時圧倒的な使用量があった写真用フィルムと同じ素材でLCDを作るのが普通だったのでしょう。

 とりあえずこれでしのいだのですが,当然裏側の偏光フィルムや反射フィルムも同じようになることが予想されるわけで,いずれ修理が必要になるだろうなあと思っていました。

 昨年の年末,年末恒例の動作チェックと電池の充電で,いよいよLCDの劣化がひどくなっているのをみて,修理の準備をしていたのです。

 X-07の修理では,ここでも書きましたが,粘着性の偏光フィルムをガラスの裏側に張り付け,上からシルバーの塗料を吹き付けることで良い結果を得ました。同じ事をHC-20でもやろうと考えて,片面に糊のある偏光フィルムを購入しておきました。

 いざ,修理です。

 HC-20を分解し,LCDを取り出します。すでに何度も分解しているので,LCDの金属製の枠が金属疲労で壊れていて,基板に固定する部分がありません。

 LCD本体を取り出すと,あの酸っぱい臭いが強烈です。反射フィルムも偏光フィルムもいっちゃってます。

 この2つを綺麗に剥がし,同じ大きさに切った偏光フィルムを張り付けます。そして裏面を,シルバーで塗装します。

 ここで,ガンダムマーカーエアブラシシステムを,手持ちのコンプレッサー(タミヤのREVO)で塗装してみました。概ねうまくいったのですが,やはり圧力が足りないようでもあり,吹きつけにはかなりの時間がかかったことと,失敗を繰り返したことを書いておきます。

 出来たらLCDを組み直して,本体を組み立てます。が,どうもLCDの組み立てに失敗しているようで,LCDに筋が入ります。

 何度か分解して筋を消すのですが,なにせ筋が消えてうまく言ったかどうかがわかるのは,組み立てがほぼ終わってからですので,やり直しは時間もかかりますし,壊してしまう怖さがあります。

 完璧を求めると,本当にきりがなく,多少妥協できるところで今回はやめました。すでに2枚の基板を接続するフレキとコネクタの接触が怪しくなっていて,うまく起動しないときが出てくるようになっています。

 今のところ問題はないのですが,HC-20は手元に置いておくべき名機の1つであるだけに,今後も様子を見ていかねばなりません。

 

 

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