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さようならPowerMacintosh7600

 私がまともなMacintoshを買ったのは,PowerMacG3が登場した1998年だったと思います。このサイトにも時々登場したPowerMacintosh7600です。

 G3が出たばかりで,旧機種の7600は確か18万円程度まで価格が下がっていました。今考えるとG3を23万円程度で買っても良かったと思うのですが,当時の私は妙なこだわりがあって,7600をわざわざ探して買ったのでした。

 買ったばかりの車で秋葉原まで出かけ,初めての「新品」のMacintoshを買ったワクワク感は,通信販売で買い物をすることが普通になった今では味わえない物があるように思います。

 7600は第2世代のPCI-Macと言われる範疇に属し,その起源は8500/7500/9500にあります。MacintoshがIBM-PCの技術を取り入れて,少なくともハードウェアがオリジナリティを失うようになったのがG3からですので,7600はMacintoshがまだまだプレミアムマシンだった時代の面影をあちこちに残しています。

 例えばストレージ。内蔵のHDDやCD-ROMはSCSI-2で繋がっています。外部にはSCSI-1が出ていますので,SCSIを2本持っているマシンというのは,かなりハイエンド指向だといえると思います。

 アクセシビリティもよく考えられており,フタを開けてロジックボードに手を入れるまで,ねじ回しを使うことは1度もありません。PCIは3本,プロセッサはカードで用意されており,アップグレードをも思いのまま,ゆとりのある電源容量にドライブベイも3.5インチフルハイトが2つ,5インチが1つ,フロッピーが1つとコンパクトな割に十分です。

 G3も同じ筐体でしたが,拡張性という点で7600の方がやや勝り,面白そうと言う理由で選んだのでした。

 それまで使っていたCentris650+PPC601カードという組み合わせに比べると天と地の差で,処理速度もメモリ搭載量もなにもかも満足でしたが,その後G3を会社で使うようになってからは,やはりG3の速さに「しまった」と思ったものでした。

 ところがOSXになると事情が違ってきます。G3も信じられないくらい遅いマシンになってしまいました。その頃,7600にはG4/800MHzが奢られていましたが,7600もG3もOSXに最適化されたハードウェアを持っていないため,CPUのパワーによる差が表面化しやすいようでした。

 OSXで快適な運用を目指し,意地になって拡張を重ねた経緯は,この艦長日誌でもかならず触れているのですが,最終的にOSはMacOSX10.4をインストール,CPUはPowerPCG4/800MHz,メインメモリ464MByte,HDDはATA133の80GByte,DVD-ROM,FireWireが3つにUSB2.0が5,ビデオは内蔵VRAMをフル実装とRage128のカードで2画面対応,ファンも静音対応のものに交換してあったりと,体感的にはiBookG4/1GHzなんかとそんなに変わらない速度で動くマシンになっていました。

 会社のG3は,プロセッサカードが手に入りにくいという理由で数年前に処分,数々の相性問題をくぐり抜けてお金と手間をかけてきた7600を会社に持ち込み,なにかと活躍してくれました。

 しかし,会社はすでにWindows一色。セキュリティ面からもMacをサポートしない方針が出ていて,目立たない所にこそっと置いて使うのが精一杯だったのです。

 これまで異動があっても連れて回っていましたが,それももう限界と,今回の異動をきっかけに処分することにしました。

 プロセッサカード,USB/FireWireコンボカード,ATA133カード,ビデオカード,HDD,メモリを抜き取り,後は所定の廃棄物処分の箱にいれてきました。

 置き去りにするのはかわいそうでしたが,自宅に持って帰るのも大変ですし,会社では使い道もない上,異動の度に席が狭くなると言う状況ですから,後ろ髪引かれる思いを断ち切って,ただありがとうといってその場を立ち去りました。

 一時はロジックボードの予備まで常備していたくらい大事にしていたのですが,その予備も結局一度も使われること無しにとっくに処分されています。

 考えてみると,9年です。90年代後半のマシンとしては信じられないくらい長生きしましたなあと思います。当時だったら,そうですね,PCならPentiumIIの233MHzですかね,Slot1の時代ですよ。

 もしG3を買っていたら,こんなに長生きさせることはなかったと思います。Macintoshが熱かった時代の産物である7600は,私にとっては忘れられないマシンになると思います。

 これまで,無茶な検討に付き合わされて満身創痍のマシンは,本日私の手によって電源を落とされ,解体されました。もう二度と電源源が入れられることはないでしょう。本当にご苦労さまでした。

T50RPも復活

ファイル 152-1.jpg

 リスニング用に購入したSTAXのヘッドフォンを使う前は,音楽を創ることのウェイトも大きかったため,使っていたヘッドフォンはずっとモニタータイプでした。

 ATH-M7PROXに始まり,フォステクスのT50RPを使っていますが,これに出会ったのは2004年9月ですので,もう4年になるんですね。

 面で振動するという独自の駆動方式が創り出す独特の音は,そのトランジェント特性の良さから,ウソのない音がするものと,今でも特別な信頼を寄せています。これが1万円ちょっとで買えるというんですから,破格値だなあとも思います。

 4年もするとイヤーパッドが痛んでしまうもので,もともとあまり出来の良くなかったT50RPのパッドが,とうとう破れてしまいました。

 ヘッドフォンのイヤーパッドをバカにするとえらい目に遭います。つけ心地が悪くなると言う程度なら辛抱で済ませることも出来ますが,明らかに音が変わります。緩やかな変化ですので気がつかないかも知れませんが,スポンジの劣化によってつぶれてしまったパッドは,明らかに音質を悪くさせます。

 だから,なんかおかしいなと思ったらすぐに交換するのがよいのです。パッドは消耗品ですのでね。

 4年間も交換しないほっといたことも問題ですが,破れた以上交換するしかありません。フォステクスの直販サイトに3セットオーダーして(3セットもあれば10年くらい大丈夫じゃないでしょうか),今あるイヤーパッドを改造してみます。

 ATH-M7PROX(改)のパッドももうだめになっていたので,ここからスポンジを取り出し,T50RPのパッドをカッターで切り開き,詰め込みます。切り開いた部分を貼り合わせて改造終了。元々T50RPのパッドは評判が悪く,スポンジの高さがないせいで耳を圧迫し,長時間の装着が難しかったのです。私も3時間が限度ですね。

#ATH-M7PROXについては,以前ドライバユニットを移植したATH-M30のパッドを捨てずに残してあったので,これに交換することにしました。気がつかなかったのですが,このパッドも随分改良されているようで,装着感が抜群に良くなっているのと同時に,音も良くなるんですよ,本当に。

 装着感の改善のために,ティッシュを内側に詰めたりした人がいたのですが,これは実は音が変わってしまいます。低音が出にくくなる(片側だけやってみて左右を比較するとよくわかります)ので,イヤーパッドも音作りの重要な要素であると痛感したのですが,それならやはりパッドの中のスポンジを増量して高さを稼ぐのがよいでしょう。

 やってみると,かなり楽になりました。音もむしろ良くなるくらいでした。

 今日になって,その交換用のイヤーパッドが届いたのですが,一見してその違いには気がつきます。

ファイル 152-2.jpg

 左側が新しいもの,右側がこれまで使っていた古いものです。

 改良されているんだか,コストダウンされているんだかわからんのですが,スポンジが新品になっているのでふかふかです。合成皮革も厚手のものになっていて,しっとりとしています。全体的にかためになっているので,しっかりとした装着感が期待できそうです。

 早速試してみると,随分快適になっています。長時間使っていませんのでその辺はわかりませんが,少なくともこれまで柔らかかったことでハウジングのゴツゴツした感じが伝わってきたのが,しっとりと包み込むような感じになっています。形の崩れもないので,ホールド感が格段に上がっています。

 音を出してみますと,これもなかなかいい。新品に変わったことで改善されたこともあるでしょうが,音を犠牲にしないでこれだけ装着感を改善できていることに,やっぱ専門家がやると違うんだなあと思いました。

 価格は1セット2000円と,オーディオテクニカに比べて割高ですが,初期型のT50RPを持っている人は,ぜひ交換をおすすめします。同じヘッドフォンかと思うくらい,改良の恩恵を受けることが出来ますよ。

 つくづく,T50RPっていうのは,お気に入りの音を出すんだなあとしばらく聴いていました。あまり評判が良くない一方で,海外のスタジオでは多くの導入実績もあるので,結局好みの問題なのかもしれないなあと思っていますが,私はこのヘッドフォンの柔らかい感じと,それでいてきちんと音が出ている感じが好きなので,STAXとは使い分けています。

 イヤーパッドがこうして改良されて,結果としてアップグレードする楽しみをまさかT50RPで味わうことになるとは,うれしい誤算でしたね。

VMS30mk2は蘇るのか

 さて,VMS30mk2のお話です。

 VMS30mk2は,これまでにも散々書いてきてた通り,オルトフォンのMMカートリッジです。厳密にはMI型と呼ばれるもので,オルトフォンはこれを「VMS型」とわざわざ呼んでいます。

 MMという方式はシュアーに多くのパテントを押さえられていて,多くの会社が回避のために似たような方式のカートリッジを作ったという過去がある(日本国内ではこれらのパテントが成立しなかったので,国内メーカーは国内に限ってMMカートリッジを販売していました。でも輸出はできなかったのです。オーディオテクニカはこの特許の回避にVM型を考案し,大きな顔で輸出していました)のですが,VMS型についてもその1つと考えてもらって構いません。

 VMS30mk2はVMS型における,1980年代の最高級カートリッジで,当時のカタログを見てみると35000円の値段がついています。針が楕円針をしのぐファインラインだったことも高価格の理由だったと思いますが,実際スペックは最高級にふさわしいものを持っていました。

 さて,私は高校生になっており,古いステレオ一式を格安で手に入れ,その中に含まれていたベルトドライブのレコードプレイヤーを,ようやくまともに動くレコードプレイヤーとして,不満がありながらも辛抱して使っていました。

 何から何までちゃちなプレイヤーだったのですが,カートリッジとスピーカーをいい物に変えると劇的に改善されると信じていた私は,付属のくだらないカートリッジではなく,私でも買うことの出来るような高級カートリッジがないものかと,探していました。

 そんなおり見つけたのはVMS30mkです。なぜか1万円で売られていて,喜んで買いに行ったことは以前ここにも書きました。

 しかし,今にして思えば期待していたほどの効果があったとは思えず,トーンアームやイコライザアンプなどが役不足であったことが理由だったのだと思います。

 中古でレコードプレイヤーをDP-2500に変えたときに,カートリッジをシュアーのME97HEにして,以来VMS30mk2の出番がなかったのですが,先日から様々なカートリッジを買うようになって,VMS30mk2も復活させたいなと思うようなったため。交換針を買ったのが少々前の話です。

 VMS30mk2の交換針は,純正は手に入らなくなった久しく,ナガオカのものもほとんど見たことがありません。JICOの互換品には対応品がなく,まさに八方ふさがりな状態なのですが,あるサイトで「VMS30Emk2用のものが使えた」とあるのを見つけ,私もVMS30Emk2の交換針である「D30E/2」を注文したのです。

 ところがこれは失敗でした。ひずみみが大きく,以前の針の方がずっといい音がします。また,少々レベルが大きいようで,これは互換性がないのだろうと結論しました。5000円が無駄になった感じです。

 そこでリベンジ。オルトフォンの海外サイトを見てみると,交換針の対応表が出ています。これによると,VMS20Emk2用の交換針「D20E/2」が,VMS20シリーズ全機種とVMS30mk2に使えるとあります。これは期待できると,早速注文しました。

 試してみますと,ひずみは激減しました。少なくともD30E/2よりは全然よいです。レベルは大きめなのですが,これが正解だったと胸をなで下ろしていると,別の場所がビリビリと歪みます。

 おかしいなと元の針に交換すると,歪みは出ません。

 一難去ってまた一難,やはりD20E/2もダメだったようです。

 純正と互換品を比べてみると,針の先端の位置がす故知違っていて,オーバーハングも違う値になってしまいそうです。歪みの原因がこれではないかと思いましたが,ずらして針を差し込んでも状況は変わりませんので,これだけが原因ではなさそうです。

 レベルが大きいのがとにかくおかしいと,針を手前に引っ張り出し,コイルと磁石の位置を少しだけ遠ざけることを考えたのですが,失敗すると怖いですから,どうせ使い物にならないD30E/2で実験です。

 結果は上々。不思議なことに,1mmほど針を引っ張り出すと,レベルもちょうど良く,歪みも減ります。まだ純正品には追いつきませんが,あれほどひどかったD30E/2がここまで良くなるのですから,期待大です。

 続けてD20E/2で同じ事を試みますが,不幸はここでおきました。ピンセットで針をアルミのパイプをつまむと,場所が悪かったのか,くちゃっとつぶれてしまいました。

 90度ずらしてつまんで復活刺せましたが,細かい作業ですので,針を保護するガードを外して,作業性を上げようとしたところ,手元が狂ってガードがくるっと回ってしまいました。

 が0度は引っ張り出してあった針を直撃し,あわれ,アルミパイプは真ん中から真っ二つに折れてしまいました。

 こうなると,もう諦めるしかありません・・・

 短くなったパイプに磁石を接着剤で接着したり,D30E/2の針にD20E/2の磁石を移植するなどいろいろ試してみましたが,どれもダメでした。

 そこで,純正の針をばらして,アルミパイプを切り出し,これでおれたパイプをつなぐという方法を考えたのですが,これも結局失敗。結果的に,純正1つと互換品2つの合計3つの針が全滅し,VMS30mk2は全く音を出すことが出来なくなってしまいました。

 さすがにこれはまずい。

 純正の針をとにかく元に戻そうと頑張ることにしました。切り出したパイプは短めだったので,磁石を差し込む時に接着剤を使えばなんとか固定できそうです。

 ダンパは黒く変色し,堅くなっているのがわかったので,D20E/2のダンパに交換です。VMS型にはサスペンションワイヤというリン青銅の細い針金が針のズレを防いでいますが,これは面倒なので使いません。

 なんとか組み立てて,ドキドキしながら音を出します。

 ?

 抜群にいいのです。伸びる高音,しっかりした低域,バランスの取れた中音域,もちろんひずみ波ほとんど感じません。抜群です。

 とりあえずなんとかなったということで,その日はもう遅かったので寝てしまい,翌日MJテクニカルディスクで性能を確認です。きっと悪いに違いありません。

 翌日テストしてみると,これがなかなか良いのです。高域は少なくとも16kHzはクリアしていますし,もともとVMS30mk2では良かったチャネルセパレーションについても,25dB以上確保できているようです。

 ダンパの柔らかさでも左右される共振周波数は8Hz程度で,うちでは普通の値ですし,レベル差もほとんどなく,なかなかよい成績であることがわかりました。

 ここで考えてみると,針が摩耗するのに約1000時間。LPレコードで1000枚以上に相当しますが,私が当時持っていたレコードは10枚程度。これをそれぞれ100回聞いてようやく針が摩耗するんです。

 どちらかというと,スタイラスクリーナーが流れ込んだり,経年変化でダンパのゴムが劣化していることが問題であることは以前から分かっていて,これを交換したことが今回の結果に繋がっているようです。

 何分素人のやったことですから,レコードを痛めてしまうかも知れません。だけど,少なくともこれだけいい音が出ているのだから,レコードに致命的な影響を与えるとはちょっと思えません。

 1万円を無駄にして,手元に残ったのはゴミとなりました。交換したダンパを提供してくれたことは褒めるべきですが,結局スタイラスチップはほとんど使われる事なく,捨てられてしまいました。もったいないことです。

 結果的に,VMS30mk2は蘇りました。かつて私が「いまいち」と思ったこのカートリッジも,今聞くと実に上品で,洗練された音がします。これを常用するのはちょっともったいないのでサブに置いておきますが,カートリッジを購入した金額の交換針を捨ててしまったことがちょっと悔しいところです。

 心配なのは,次に本当に針が悪くなって交換するときはどうしよう,ということなのですが,さすがにそれは当然先でしょう。その時には,もう諦めるしかないと思います。

 VMS30m2と先日の320Uを聞き比べると,似て非なる物という印象です。レンジの広さと解像度はVMS30mk2,しっかりした安定感は320Uの勝ちです。どちらも上品な音であることは同じなのですが,これだけ個性が見えると,面白いものです。

DL-103と320Uが加わった

 

 DL-103を買いました。

 とうとう買ってしまいました。なんか,散財しないと,じっとしていられないのです。

 土曜日,ちょっと体がだるかったのですが,一念発起して秋葉原の量販店に出向き,お目当てのDL-103を探します。ありましたありました。

 さらに,6月から値上げになる,オーディオテクニカのシェルも買っておきます。今までMG10という安物を使っていましたが,AT-LH13/OCCというちょっと高級なシェルを1つ試しに買ってみると,これがなかなか格好がよいのです。

 音は,正直わかりません。MG10でも十分と思いますが,高音がぼやけないようになったという感じがしました。まあ,せっかくMMとMCを使い分けるようになったのですから,とりあえずこのシェルも2つもっておきたいところで,それでついでに買うことにしました。

 店員さんを捕まえ,ガラスケースから出してもらうときに目についたのが,オルトフォンのMMカートリッジの在庫処分です。

 そういえば先日,オルトフォンが1980年代後半から販売していたMMカートリッジのシリーズを生産中止にした話が出ていました。

 オルトフォンといえばSPUシリーズに見られるMCカートリッジですが,私にとってはVMS型というMMカートリッジのイメージも強い会社です。オルトフォンが現行で持っていた2タイプのMMカートリッジ両方が終了となってしまうのは,ちょっと残念な話です。(DJ用途のMMカートリッジはあるのかも知れませんが,私にはあまり関係のない話です)

 オルトフォンのMMは,500番台と300番台の2つがあり,それぞれに針のタイプの違いで3種類に分かれています。後で針だけ交換してアップグレードが出来るのですが,さすがに300を500にするわけにはいきません。

 処分価格を見てみたのですが,さすがに500番台のものは1万円を超えています。あたりまえの話で,それでも安いんですが,衝動買いにしてはちょっと高い。300番台ですと1万円までで揃っています。

 私が買ったのは320Uというもので,価格は3800円くらいだったと思います。交換針だけでも3000円ちょっとするので,なかなかお買い得だったとは思います。

 まあ4000円ほどのカートリッジですから,それほど期待もしないで帰ってきました。

 早速試してみたのですが,これがなかなか。MMだからとパンチのある音を想像していたらちょっと違っていて,MMらしくない繊細な音が出てきます。プラスチック製の高級感のかけらもない外側と,T4Pコンパチの本体を無理にネジ止めするアダプターのため不格好,加えて芋虫みたいな不細工な形と地味な色で随分損をしていると思うのですが,ある人はクラシックもいける,と言うほどのカートリッジで,確かにそれは言い過ぎではないと感じました。

 針の形状が変わると高域の出方も変わるのですが,320Uは300番台の最上位だけあって,ファインラインです。高域も22kHzまで出るんだそうです。見かけによらず,非常に上品な音ですね。

 困ったのは説明書です。OMシリーズやコンコルドと共通のものらしく,取り付け方やメンテの方法など一般的なことがちょこちょこと書いてあるだけです。スペックや交換針の品名など,個別のデータはどこを探しても見あたりません。

 そもそも,針圧をあわせるのに,昔もらってきたカタログを広げないといけないというのは,どういうことだと思います。これが始めてのカートリッジだったりすると,途端に困っちゃうんではないでしょうか。

 てことで,価格以上の性能で,とりあえず満足。

 続けてDL-103です。

 これまた,何も加えず,何も引かず,の音ですね。だからといって情報量が少ない訳ではありませんし,刺激の少ない音を出すので全然疲れません。

 私の持っているカートリッジの中出は大柄で,針も太いのが目で見て分かりますからあまり期待してなかったのですが,私の印象は「すばらしい」です。

 V15でしか味わえなかった,ボーカルの定位が,他のカートリッジで味わえたこともちょっとうれしいことでした。他のMM,他のMCでは全然こういうことはなかったので,長年生き残っているカートリッジにはそれなりの理由があるんだなと感じます。

 冷静に聞いてみると,この音はFM放送の音そのものなんですね。NHK-FMがDL-103を使い続けていることはよく知られた話で,業務用の信頼性と性能が,アマチュアにも長年支持されているのですが,CDが出てくるころからエアチェックに勤しんだ私としては,DL-103の音がとにかく懐かしく,里帰りをしたような気分になりました。いい買い物をしたと思います。

 新しいカートリッジが手に入ると,それが奏でる音の違いがやはり楽しみで,これを積極的に活用しようと考え始めるとさらに面白くなってきます。

 反面,数が増えると出番のないカートリッジも出てきますが,それも仕方がありません。

 これで当面カートリッジの増強はなしです。安物ばかりではありますが,このラインナップでカバーできないレコードはないでしょう。

 それで,実はもう1つ話があります。VMS30mk2の交換針の話です。先日D30Eという,VMS30E用の交換針がVMS30mk2に使えるらしいと言う情報を元に互換品を買ってみたところ,歪みが多く使い物にならないという結果に落胆しました。

 しかし,一応3万円を越える値段の高級MMカートリッジです。復活させたいと思う気持ちは変わらず,オルトフォンの海外サイトを見て使える針を探したところ,D20EというVMS20E用の仮が使えると書いてありました。

 使えなかったのは,選んだ針が違ったからだなあと,針を買い直したのですが,それが同時に届いていたのです。

 これも試してみたのですが・・・続く。

オーディオテクニカのカートリッジを買っておく

 6月からオーディオテクニカのカートリッジが値上げされる話はすでにここにも書きました。上げ幅だけ見るとかなり大きな物になっているのですが,反対意見などは見る事もなく,むしろ「これまでよく頑張った」「それでも十分安い」などという好意的な意見が多数のようです。

 私個人も同様ですが,それでもあと1ヶ月は(さらに)安い価格で買えてしまうと言うのですから,やっぱり駆け込みで買っておこうと思うのが,これ人情というもの。

 特にコストパフォーマンスの秀でたモデルが値上がりするので,値上げ告知前に購入したAT-F3/2,告知後に購入したAT7V,そしてシェルは外せないところでしたが,定価に対して実売価格が非常に安いAT15Ea/Gというカートリッジについても,かなり気になっていました。

 確か26000円ほどの定価に対し,実売は1万円を切っています。シェル(MG-10だと思われます)付きでこの価格ですから,さらにお買い得感があります。

 調べてみるとこのAT15Ea/G,VM型カートリッジのリファレンスとして随分昔からあるもののようです。特性としては特にワイドレンジであることもなく,非常に凡庸な性能のカートリッジのようです。

 オーディオテクニカのVM型カートリッジは,シュアーの持つMM型の特許を回避する独自の技術で作られており,その結果多くのメーカーにOEM供給を行っていたことでも知られています。

 ですからVM型の音は,私も意識しないうちにどこかで耳にしていた可能性があるのですが,このAT15Ea/Gというのは,それらのカートリッジの基準となるものであって,むしろ凡庸であることを求められていると言えるわけです。

 さて,購入してみて思ったのですが,どうもオーディオテクニカのVM型は,大きくて不細工な形をしているものです。AT-V7もごっつくで,見た目で随分損をしているなあと思ったものですが,AT15Ea/G(余談ですがどうもATの後に続くのが数字の時はハイフンがなく,アルファベットの場合にはハイフンがつくというのが,オーディオテクニカのカートリッジの命名ルールのようです)はさらにごっつくて不細工です。

 オーディオテクニカのマークはなかなか格好いいのですが,これがシールで前頭部に貼り付けられており,このあたりが非常に安物っぽく感じられます。同じオーディオテクニカでも,MC型には格好いいものが多く,AT-F3/2もAT33シリーズも,それぞれのコンセプトをよく体現しているよいデザインだと思うのですが,VM型で「おっ」と思ったのは,20年ほど前にペンギンの形をしたものを見たときだけです。

#今時の若者はそんなもん知らんでしょうな

 音を出してみましょう。AT15Ea/Gは出力が他に比べて大きいようで,その結果S/Nも有利です。音は可もなく不可もなく,ナローレンジなわけではないがワイドレンジでもない,元気がないわけではないが快活でもない,解像度はないわけではないが繊細さはない,といった感じで,よく言えば非常にバランスの取れた,悪く言えばすべてが中途半端な印象です。

 なるほど,これが基準になっているというのは,よく分かるお話です。

 この中途半端なカートリッジの,私にとっての意味というは,やはりこれを基準に出来るということに尽きます。

 AT15Ea/Gを基準とすれば,同じVM型のAT7Vはさすがにワイドレンジでパワーもあります。ただ,全体的に重たさがあり,突き抜けるような伸びやかさはなく,このあたりがVM型(MM型)の個性でもあるのでしょう。

 V15typeVxMRにについては,やはりこれが私にとっては一番だなあとつくづく思った次第です。AT7Vは明らかにこのカートリッジとは方向性が違い,AT15Ea/Gには方向性の一致を若干期待したのですが,やはり明らかに違っていました。腐ってもV15の名を持つカートリッジです。その中域の圧倒的な存在感は,AT15Ea/Gを聴いた後だと非常に誇張された嘘くさい音であることに気が付くのですが,私がこの音を好きなのだからもう仕方がありません。

 せっかく面倒臭いLPレコードを聴くのですから,CDや他のカートリッジでは代わりにならない,そんな価値を見いだしたカートリッジは,結局好きになると言うことでしょう。

 AT15Ea/Gにせよ,AT7Vにせよ,その方向を突き詰めればCDになるように思います。これがAT-F3/2ではCDにはならず,V15typeVxMRに至っては全く正反対と言えるかも知れません。

 ここまで来ると,あとはDENONのDL-103が欲しいですね。VM型のリファレンスではなく,日本のカートリッジのリファレンスであるDL-103は,誰もが「凡庸」と言います。しかし,一方で抜群に音のいいカートリッジとも言われているわけですが,果たしてこの2つが両立するのかどうか,非常に興味があります。

 DL-103が26000円ほど,これに対しAT15Ea/Gは10000円弱。

 オーディオテクニカは,いわゆる大量生産でカートリッジを作るメーカーとしては,おそらく世界でも珍しい存在になってしまいました。このAT15Ea/Gに限らず非常に良心的な価格と水準以上の性能,そしていつまでもぶれることのないコンセプトと,本当にいい仕事をしているなあと感心します。

 そして,そろそろDJ達がアナログレコードを見放しつつあるようです。絶滅すると言われたレコードがそれでもしぶとく生き残り21世紀を迎えましたが,それももう数年でダメになってしまうという意見もあります。

 いや,マニア向けに少量生産が可能で,価格も自由度のあるMC型については,今度も細々と作り続けられることでしょう。しかし,VM型(MM型)については,今のうちに買っておかないとまずいことになるかも知れません。

 すでにV15シリーズは生産を終了しています。そのDNAを受け継いでいると言われているM97やM95も,やはりV15とは比べものにならないと個人的には思います。確実にアナログレコードとカートリッジの時代は,終わりを迎えつつあるように感じました。

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