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はじめて「ファミコン」を買う

 11月10日発売になった,「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」を買いました。発表になってすぐにヨドバシカメラに予約を入れて,発売日にケトル事ができたのですが,届くまでにワクワクし,遊んで楽しかったものって久々でしたから,ちょっと新鮮でした。

 かくいう私,ファミコンもスーパーファミコンも,その後続く任天堂の据え置き型(コンソール)は一度も手に入れたことがありません。ポータブル型については何度か買っていますが,それもゲームボーイアドバンスが最初で,子供のうちに買ったことは一度もありません。

 ファミコンについてはPC-6001を買って満足していた(しようとしていた)ことがあり,ファミコンを認めるわけにはいかないという屈折した意地がありましたし,スーパーファミコンについてはメガドライブが,Nintendo64についてはセガサターンが,GameCubeについてDreamcastが・・・と,ことごとく反主流な選択肢によって任天堂を選ばなかったということが繰り返されてきました。

 いや,ゲームキューブは,マイナー機に仲間入りしたことで守備範囲に入ってきたのですけど,任天堂という巨大ブランドが私を素直にさせなかったというのが正しいでしょうか。

 任天堂は優れたゲームデザインを行うゲーム会社ですし,ゲームの本質,遊びの本質をぶれずに追求し,いつも原点にぱっと戻ることが出来る,素晴らしいクリエイター集団です。お金もあるし優秀な人も揃っていて,アイデアだけではなくそれを形にする値からにも長けています。

 ですが面白ければ何をやってもいいと考えないところはさすがで,自らを律したり,なにが自分達を高めているかをちゃんと理解しているところが,世界でも希有な企業だと思います。

 概して成功者というものはおごり高ぶるものですが,任天堂の視線はいつも変わらず,ファミコンから現在のWiiUに至まで,変わっていないと思います。純粋に楽しく,健全で,PS3やPS4のゲームとは,脳みそのちょっと違った部分が喜んでいるように思っています。素晴らしいです。

 素晴らしいのですが,一方で私はその同業他社に対しての厳しさに反発を持っていて,同じく作品に敬意を払いつつも「きらい」なディズニーと同じ方向を剥いていました。

 ゆえに,任天堂のハードウェア,特に最強と言われたファミコンとスーパーファミコンを欲しいと思わなかったのです。

 昨今,レトロゲームのブームが来ています。こうした過去を懐かしむブームが来るには当然時間が流れないといけませんから,随分昔の話になったのだなあと感慨深いのですが,そんな流れの中でファミコンがこうした形で,しかも任天堂自らの手で復活するとは思いませんでしたし,それを私が手に入れることも,想像していませんでした。

 かくして,私が初めて買ったファミコンが,やってきました。

 聞けば,どこも予約完売で品薄になり,プレミアが付いているほどの人気とか。限定品といっていないのに再入荷の予定もないらしく,任天堂としてもこんなに人気になるとは思ってなかったんじゃないでしょうか。

 値段は税込みで約6500円とそれなりにしますが,そこは真面目で面白い任天堂のことです。内蔵ゲームの選択UIはわかりやすくストレスフリーですし,小さくなったコントローラも全く使いやすさを損なっていません。

 画面もかつての低画質アナログテレビをシミュレートする演出を盛り込んでいますし。ハードウェアも放熱対策やEMC対策に結構なお金と手間をかけてあります。この手のゲーム機にありがちな中華製のものとは,もう別次元の完成度です。

 説明書も見ずに,一通りゲームをやってみます。

 なつかしい。私はファミコンを買ったことが一度もありませんが,それでも当時の事ですから,友人宅に遊びに行けば,必ずファミコンで遊ぶことになります。あの銀色の箱も,本体の色合いも,あのファミコン独特の音も,全部懐かしい。

 当時一番親しかった友人が,これをやるためにファミコンを買ったという,マリオブラザースをまずやってみます。うん,これです,これこれ。

 本当に懐かしいなあ。二人でプレイするのに,共同でクリアしているはずなのに,いつの間にか殺し合いになっていくんですよね。当時知恵を絞って,どうやって相手をはめるか,必死になったものです。

 思わず,カセットをずらして遊ぼうと手が動いてしまいました。いかん,カセットなんてなかったんだ・・・

 アイスクライマーもエキサイトバイクも懐かしいです。いやー,この頃のファミコンは,他のパソコンやゲーム機とは一線を画していて,ゲームセンターのゲームを家で満足に遊ぶことのできる,唯一無二のマシンでしたからね,それを再認識しました。

 そして,パックマン。さすが本家の移植だけに面白いです。5歳の娘も夢中です。

 大きくなってからなので遊ぶことのなかったDr.マリオや星のカービーも面白く,実に良く出来ています。

 膨大なタイトルから選ばれた30本のうち,私が本当に当時面白いと思ったものは少ないし,「懐かしい」と思うこともないのですが,その分新規に遊んで十分に楽しいものばかりで,これ,ぜひいつでも買うことの出来る定番ゲーム機にして欲しいと思います。

 残念なのは,このゲーム機は全く外に対しての拡張性を物理的に持っていません。SDカードスロットとか,何らかの端子があれば期待も出来るのですが,そういう外と繋がるものは一切存在しないのです。

 内部はタブレット向けのアプリケーションプロセッサらしく,これでファミコンのエミュレータを動かしているものだと思いますが,フラッシュメモリを搭載してダウンロードしたゲームを残しておくとか,SDカードでゲームを追加できるとか,そういうのがあると,いいんだけどなあと思いました。

 でも,こういう割り切りがまた任天堂の良さでもあります。拡張できない,というのは,現在の仕様,選んだ30本のゲームが,万人に受け入れられるという強い自信の表れです。なんであれが入っていないんだ,なんでこんなものが入っているんだ,という声がある事もすべて飲み込んだ上で,わずか30本を選び,しかも増やすことが出来ないようにして退路を断つというのは,かなり大変だったはずです。

 いうなれば,この30本のチョイスも,彼らの作品です。

 蛇足ですが,ここ最近私も昔のゲームを楽しむことが増えました。タイトーの昔のゲームも集めたタイトーメモリーズも発売当時に4つ買ったのです。しかし,いずれPS3はPS2の互換機能を実装すると期待してPS2は引っ越しの時に処分したのに,すっかりPS2は過去のものになってしまいました。

 このままではPS2のソフトが全部ゴミになってしまうとずっと気になっていた私は,先日意を決してPS2の中古を買い,これでタイトーメモリーズを散々遊びました。いろいろ意見はあると思いますが,それでも「レイフォース」と銘打ったゲームがきちんと遊べるのは,とても魅力的です。

 実のところ,アングラな商品に手を出せばいろいろなゲームで遊べるのは確かでしょう。しかし,そこまでするのもなあと思いますし,昔のゲームであったとしてもきちんとした対価を支払って,氏kルべき人の収入になるような形で手に入れたいと思うので,怪しい物には手を出しなくありません。

 なので,次はぜひ,「セガクラシックミニ メガドライブ」を期待したいです。そうそう,小物入れのメガCDをくっつけられるようにしてあるとうれしいです。

KT-1100Dの顛末~番外編

 KT-1100Dをいろいろ調べているうちに,受信周波数のズレは検波部にある,コイル(俗にディスクリコイルと呼ばれている)の不良である可能性があることがわかって来ました。。

 検波した結果をそのまま音声信号に使うチューナーではないKT-1100Dのことですから,同調点を見つけるだけのものだと油断していたのですが,その安定度が受信性能に大きく影響することも実際にいじっていくうちにわかってきました。

 KT-1100Dの(同調点を探すための)検波部は,一般的なクアドラチュア検波です。位相を90度ずらすために特殊なコイルを使うのですが,修理に出したらこのコイルが壊れていたので交換されたとか,他機種ですが受信周波数がずれてどうしようもなかったのに,これを交換したらスカッと治ったとか,まるで胡散臭い健康食品みたいな話がWEBで出てきます。

 私は高周波とコイルには大した知識もないので,コイルなんてのは銅線をグルグル巻いたものだから壊れるわけがないと思っていたのです。

 ですが,この検波用のコイルの劣化というのは,内蔵のコンデンサの不良によるものなのだそうです。まあ,この世界にいれば常識なんでしょうが,私は知りませんでした。

 先日比較用に手に入れたKT-1100Dは,L9というコイルを調整しきれないという問題を抱えていたわけですが,まさにこれがこのコイルの故障です。内蔵コンデンサが劣化していて,調整範囲に入ってこないという理屈です。

 だったらコンデンサを交換すれば済む話じゃないかと思ったのですが,これが実に甘かったのです。

 コイルは正の温度特性を持っています。これを相殺するために負の温度特性を持つコンデンサを内蔵してあるのですが,この負の温度特性のコンデンサというのが,なかなか簡単には手に入りません。

 これを通常のセラミックコンデンサなどに交換してしまうと,正の温度特性を持っていて,かつ盛大に狂うため,温度の変動で簡単に共振周波数が変化してしまうわけです。

 容量は大体100pF程度なんだそうで,これはまあどうにかなるとして,温度特性だけは材料の問題ですので,工夫でどうにかなるようなものではありません。困りました。

 セラミックコンデンサというのは,材料をうまく調合することで,様々な温度特性を持つものを作る事ができるのですが,残念な事に温度特性をきちんと管理したものは以前のような旺盛な需要がなく,特に負の温度特性を持つような温度補償用コンデンサは,現在ほとんど生産されていないのだそうです。

 いや,確かに温度補償コンデンサと銘打ったものは現在も作られていますが,これは温度特性が±0のものがほとんどであり,正の温度特性を持つコイルの補償につかうような負の特性を持ったコンデンサは,さっと探してみてもなかなか売っているお店がないのです。

 負の特性といっても-200ppm/℃くらいですから,±0ppmのメジャーな温度補償コンデンサに比べても僅かな変動でしょう。そこで先日,コイルを基板から外し,内蔵のコンデンサを取り外してから基板に戻して,基板上で100pFのCH特性のものを付けてみました。

 目論見通り,ちゃんと調整範囲に入るようになり,正常に動作するようになったのですが,そのまま朝まで放置して置くと,盛大に周波数がずれてしまい,放送波を受信出来なくなっていました。

 CH特性ではだめなんですね・・・

 ということで,負の特性を持つコンデンサを手持ちから探してみましたがありませんでした。SL特性という,+300ppmから-1000ppmという,大きなバラツキ範囲を持つものならあったので,これに交換してみました。容量は少し小さめの91pFです。

 結果,前回ほどの大きなズレはおきませんでした。朝になっても放送波をきちんと受信していましたが,その翌日には完全に受信周波数がずれてしまっていて,結局このコンデンサはあきらめました。

 受信周波数のズレというのは,無線機器にとって致命傷であり,基本性能の1つを欠いていることになりますから,このコンデンサは非常に重要な部品であるといえて,早急にちゃんとした部品に交換したい所なのですが,前述したようになかなか手に入りません。

 で,再度手持ちの部品を確認すると,なんとまあ小学生の時にテレビから外したセラミックコンデンサがいくつか出てきて,これがオレンジや紫色のペイントがなされた,負の温度特性を持つものだったのです。

 容量も,100pFや68pFという美味しいところが見つかり,試して見ることにしました。

 交換したのは,オレンジのペイントがある100pFです。

 オレンジのペイントということは,-150ppm/℃ということです。別の言い方をすればPH特性ですね。実は,コイルメーカーのとある「ディスクリコイル」の仕様書を見たことがあるのですが,これに内蔵されたコンデンサが,まさに100pFのPH特性でした。

 早速試してみます。

 83MHzをSGで作り,指定されたテストポイントの電圧を測定し,0VとなるようにL9を調整します。フタを閉じ電圧を見続けて,どのくらいの電圧のズレがあるのかを確認していきます。

 同じ事をSL特性のコンデンサでもやったのですが,随分と変動をしていました。しかし,今回のコンデンサではほとんど変動しません。大きくずれても4mV程度で,それもいつのまにか0Vに戻っています。

 常用機のKT-1100Dにも同じテストポイントに電圧計を取り付けましたが,その変動はほとんど同じでした。受信周波数の温度特性については,2つのKT-1100Dはほぼ揃い,どちらもほとんどずれないという結果を得ました。

 今回入手したKT-1100Dは動作保証という触れ込みでしたが,結果はL9の故障で受信周波数がずれていて,しかも調整不可能な状態でした。修理にはL9の交換しか方法がなく,それは素人には無理です。

 私の場合,L9を分解して劣化していた内蔵のコンデンサを取り外し,外にそのコンデンサを取り付けて修理を行ったわけですが,L9の詳細も不明,修理のための部品も入手が難しいですし,修理出来たかどうかを確かめる方法も簡単ではないことを考えると,このKT-1100Dを修理して使えた素人さんがどれくらいいるのか,甚だ疑問です。なんだか心配になってきました。

 せっかくですので修理を終えたKT-1100Dの他の調整をぱぱっと済ませて,常用機と同じ程度の性能が出るようにしておきました。セパレーションは50dB弱と言うところですが,これ,電波の強度が強いと良い値が出てきますので,アンテナやブースターと言った受信環境の改善がまず先にくるように思います。

 現在,2台のKT-1100Dが82.5MHzのNHK-FMを50時間ほど連続受信していて,時々SGにつなぎ替えては諸特性を確認しています。理想を望めば切りがなく,実用レベルとしてこんなもんかというあたりで2台が揃ったところで,FMチューナーの検討はおしまいにしようと思います。

 ちょうど今週は,寒くなるときもあるそうです。25度近い暖かい部屋と,10度近くになる寒い部屋で状態を確認出来る貴重なタイミングでもありますので,今週は継続して様子をみていきます。

 KT-1100Dの検討は10月頃から取り組んでいますので,延べ1ヶ月もこんなことを続けていました。ロシアからMC1495のパチモンを買ったり,わざわざ秋葉原の若松へLA3350を買いに出かけたりといろいろあったわけですが,目標に届かない結果に対しても納得出来るだけのことをしましたし,データも揃いました。

 それにしても,温度補償コンデンサというのは大事な部品ですね。それに本当に綺麗に温度補償が出来るのです。大昔のアナログ無線機の温度特性をこういう方法で維持していたのだと思うと,すごいなあと感心します。

 さて,この修理をしたKT-1100D,まずまずの性能になっていますが,どうしましょうかね。もうちょっと手元に置いてから,部品取りにするか,予備機にするか,友人に進呈するか,考える事にしましょう。

 

KT-1100Dの顛末~その2

 KT-1100Dを常用できないなあと思ってはいても,横幅43cmもあるFMチューナーをそこらへんに放置して置くわけにもいきません。場所ふさぎで目障りですし,空席になっているFMチューナーというポジションのレギュラーの椅子を埋めなければなりません。

 KT-1100Dは先日も書いたように,セパレーションが大きく変動してしまい,ピーク時には70dBを越えるのに,時々刻々と値が悪化して,30dB台にまで悪くなってしまいます。悪いなら悪いままで安定してくれた方がまだ手が打てると思うだけに,途方に暮れていました。

 加えて,回路図がなく,元の状態を記録していないので,こうなった原因が部品の交換によるもの(交換ミスも含む)のか,あるいは故障してしまっているのか,そうではなくもともとこんなものだったのかが,すでに分からないという事が問題になってきました。

 そこで2つの方法を検討します。

 1つはかつての常用機であるF-757を復活させること。オーディオアナライザに19KHzのフィルタを装備しましたし,ステレオエンコーダーにMSG-2170を導入しましたので,調整は以前よりも綺麗に出来ると思います。どこまで性能が追い込めるか,チャレンジです。

 もう1つは,先日書いたように,別のKT-1100Dをもう1台手に入れ,これと比較することです。セパレーションの変動がもう1台でも起きるのか起きないのか,部品の付け間違いはないかを比較するという目論見です。

 しかし,KT-1100Dは人気機種です。オークションでも1万円程度で取引されることも多くあるわけですが,今回の目的程度では1万円はさすがに出せません。

 しかし,運良く安く(といってもそれなりに高かったんですが)動作品を手に入れる事が出来ました。

 改造品だと今回の目的を達成出来ないので,壊れていないことと改造されていないことを祈っていましたが,届いたものをドキドキしながら確認すると,幸いにしてそれは杞憂に終わりました。



(1)F-757の再調整

 F-757はチューナーとしては高価でしたし,パイオニアにおけるフラッグシップモデルでしたから,そんなに悪いものではないはずなのに,今ひとつ評価が低いです。

 銅めっきのビスにハニカムシャシーと,いかにもバブルな趣向を凝らしたモデルで,しかしながらメンテナンス性は最悪で部品の交換もやる気が失せるほどですし,カタログや取説に書かれたスペックはどう考えてもウソで,知識も技術もなかった30年前の私でさえも「これはあやしい」と疑ったほどです。

 デザインは悪くないし,電波環境が良ければ音質は良いと思うのですが,今にして思えば電波の質が良くないと,性能を発揮できないモデルという事になるのでしょうね。このチューナーの評価が分かれるのも,無理からぬことです。

 ただ,FMチューナーというのはオーディオ機器である前に,無線機器です。受信機として電波をつかまえる性能が高くないと話にならないわけで,そこはさすがに定評のあったケンウッドにはかなわないということでしょう。

 とりわけ,都心部におけるマルチパスへの耐性であるとか,混信であるとか,電波は強いんだけども質が悪いという地域での性能の高さは使って実感するほどずば抜けていて,F-757ならジュルジュルというマルチパスで発生するノイズが全く出ないなど,頭一つ抜け出ている感じがしました。

 たかがFM放送になにを,と私も思うのですが,これだけの違いがあると認めるしかないなあと思います。

 とはいえ,私もF-757の長年のユーザーです。実家ではマルチパスも少なく,極めて高音質でエアチェックが出来ました。どこまでKT-1100Dに迫ることが出来るか,頑張ってみましょう。

 調整の結果,こんな感じになりました。

・NORMAL時
 歪率 L: 0.0686dB  R: 0.0688dB  MONO: 0.0782dB
 S/N L: 74.27dB  R: 74.33dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 57.49dB  R->L: 55.89dB
 
・SUPER NARROW時
 歪率 L: 0.299dB  R: 0.294dB  MONO: 0.302dB
 S/N L: 74.47dB  R: 74.40dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 40.76dB  R->L: 43.24dB

 うーん,悪くない数字,というよりなかなか良好です。確かに突出した性能とは言えませんが,FMチューナーとしては十分過ぎる性能です。

 ただし,放送波を受けてみるとジュルジュルというマルチパスによるノイズの発生が時々ありましたし,音質も硬い割には輪郭が曖昧でぼやーっとしています。FMラジオの延長にある音です。

 この性能が安定して出るんだから,なんだかもうF-757でいいんじゃないかと思った時もありましたが,KT-1100Dの音を聞いてしまうと,やっぱりもうちょっと頑張ってみようと言う気になりました。F-757はこのまま押し入れにしまうことにします。

 ところで,FMチューナーの心臓部である検波の調整を行う際に,なかなか歪率が0.3%以下に下がらずとても苦労しました。きっとコツがあるのだと思いますが,素人が試行錯誤でいじっているだけではなかなか収束しません。アナログと高周波の難しさを味わったことを欠いておきます。


(2)もう1台のKT-1100Dと比較する

 届いた2台目のKT-1100Dは傷も多く,あまり程度が良いとは言えないものではありましたが,とりあえず受信はしますし,中を見ると改造もされていません。故障していなければ,今回の目的を達成出来ますから,傷には目を瞑りましょう。

 SGで信号を入れて見ると,周波数のずれが大きくて,調整がかなりずれてしまっているようです。このままでは前に進まないので,まずは調整からです。

 ところがここで問題が発生です。検波段のコイルの調整(L9)なのですが,ここはテストポイントの電圧が0Vになるように調整をしなければなりません。なのに,0Vになってくれないのです。

 0Vに近いところまで動かすと,もうコアが飛び出して外れそうになります。それにその状態ではうまく受信が出来ない様子です。

 検波段をきちんと調整しないと,その後の性能が出ないので頭を抱えましたが,とりあえず折り合いを付けて調整を進めます。じっくり検討するのは後です。

 歪率もぱぱっと調整し,セパレーションも69dB位を出したところで蓋を閉じて1時間ほど放置すると,やはり40dB台まで悪化していました。再調整しても1時間ほどでずれてきますが,50dB台を下回ることはなく,偶然かもわかりませんが50dB程度で落ち着くポイントで調整が出来たような感じです。

 発熱も結構ありますし,叩けばセパレーションが変動します。基板をたわませても同様です。程度の差はあれ,KT-1100Dというのは,温度変化でセパレーションの性能が大きく変動するものと考えて良さそうです。

 また,気に担っていた左右のレベル差についても,今回のKT-1100Dでも8mVほどありました。

 ケンウッドのチューナーは,高価なアナログ乗算器を使ってまでステレオ復調の理想を追いかけた回路になっています。アナログで,しかもディスクリートですから,温度や電圧,部品のばらつき,経年変化などの影響を強烈に受けるのは間違いなく,「よくもまあここまでやるよなあ」と私などは思います。今ならDSPで一発ですからね。

 まあ,セパレーションも実用上40dBが出ていれば問題なしと言われていますし,70dBが50dBになったことに,普通の放送波で気が付く人などいないと思いますから,きっと当時はクレームもなかったんだろうと思いますが,複雑なアナログ回路を手なずけることの難しさを痛感しました。今ならこんな回路は却下されるだろうなあ。

 さて,次です。部品の交換が正しく行われているかを確認します。特に抵抗です。

 2台のKT-1100Dの基板を交互に見て,抵抗とコンデンサの確認を1つ1つやってきましたが,これはありがたいことに,交換ミスは見つかりませんでした。


(3)結局のところ

 まず,セパレーションの変動は「こんなもんです」が結論です。実用上折り合いの付くところで調整をするのが対応になりそうです。

 そして部品の付け間違いはありません。左右のレベル差も,いずれのKT-1100Dにも同程度ありますので,こんなもんでしょう。

 とまあ,1台目のKT-1100Dが「こんなもんだよ」となったところで,調整を適当な所で落ち着け,うちのレギュラーに戻すことになったわけですが,そうと決まったからには効果のなかった電源用のトランジスタを内部に戻すことをやります。

 また,一部交換を忘れていた抵抗を金属皮膜に交換します。また,スチロールコンデンサをマイカコンデンサに変えます。スチコンも温度特性に優れたコンデンサですが,マイカコンデンサの方が温度特性は良好です。

 そして,検波回路のスチコンも交換です。今回いじっていて分かったのは,検波回路の調整がずれているとセパレーションも急激に悪化するという事です。また,セパレーションがずれた状態で,SGの周波数を僅かに前後させると,セパレーションが70dBを越えるような状態になったりします。

 つまり,セパレーションというのは,セパレーションの調整がずれるだけではなく,受信周波数のズレや検波の性能で大きく変わってくると言う事です。

 そこで,検波基板のコンデンサもマイカに交換しました。

 こうした対応をしたのですが,再調整をしてもやっぱりセパレーションの変動は大きいです。とはいえ,通電をして機内が十分に暖まってからだと50dB以上を確保しますし,面白いのはそこからジワジワと良くなっていき,68dBくらいまで改善したりすることもあるのです。

 結局そこから悪化してしまうのですが,それでも50dBを割ることはなくなってきました。うまく調整が出来たんだと思います。

 もうこれでいいです。これ以上いじっても良くなるような気がしませんし,この音なら多少の問題があっても常用機の価値があります。

 あとは,常時電気を食っているのを防ぐ為に主電源スイッチを追加すること,安全のためにヒューズを追加すること,AMアンテナの端子をプッシュ式に交換する改造をやって,この件は終わりです。

 そうそう,KT-1100Dにはトリマコンデンサが3つ使われていますが,ことごとく劣化していたので,秋月で売っている20pFの赤色のセラミックトリマに全部交換しました。すっきりです。

(4)最終性能

 うちの常用機の椅子に引き続き座ることになったKT-1100Dの最終性能です。

・WIDE
歪み    L:0.0075%    R:0.0074%    MONO:0.0068%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:64.2dB    R->L:64.5dB (Max 74dB)

・NARROW
歪み    L:0.0167%    R:0.0153%    MONO:0.0174%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:62.2dB    R->L:61.8dB


 歪みの少なさが素晴らしいですよね。このことでざらつきのない,解像感を強く感じるきめ細かな音が出てきます。そのくせ輪郭ははっきりしていて,聴き疲れしないというのは多くの人が異口同音に述べるように,本当だなと感じます。

 セパレーションについても,このKT-1100Dの最高値は74dBをたたき出すのですが,それは短時間でずれてしまい,24時間で見てみると50dBから68dB位の間を変動しているような感じです。

 dBで見れば大きな変化なのですが,漏れてくる信号のレベルを考えてみると,100%変調時の出力が0.65Vなら,たった2mV漏れてくるだけで50dBですし,70dBといえば200uVなんですよ。

 確かに片チャネルが無音の状態で漏れてくる音はわかりますが,両方から出ている放送波の受信状態で,50dBと70dBの近いが分かるかと言えば,わからないと思います。

 それに,50dBでも漏れてくる音よりもステレオ復調時のノイズの方が耳障りだったりします。あまりこのあたりでカリカリするのは,精神的に疲れてしまうのでやめようと思います。

 ただ,40dBになると楽器が中央に寄ってくるのではっきりわかります。ボトムとして50dBはキープしたいところです。


(5)最後に

 もう1台のKT-1100Dですが,役割を終えた今,どうしようかなと思っています。オークションで流すというのも面倒だし,誰かにあげようかと思うのですが,それもちゃんと調整をしてからにしないといけませんし。

 MC1495やらFL表示管のような貴重な部品も入っているので,部品取りとしておいておくのも手だなと思いますが,それにしても置く場所ももったいない・・・

 安いものではなかったので,捨てるという選択肢は考えたくありません。お世話になっている友人にFMチューナーが好きな人がいて,彼はかつてD3300-Tを手に入れたはいいが,故障のため調整を追い込めなかったという苦い経験をしているので,彼がまだFMチューナーに興味を持っているようなら,調整済みで差し上げようと思っていますが,調整が終わるのがいつになるか・・・

KT-1100Dの顛末~その1

 先日から散々悩んでいるKT-1100Dですが,いろいろやってますがうまくいってません。セパレーションが時々刻々と変動して,ちっとも安定しないのです。

 はっきりいって万策尽きたと言っていいと思います。

 詳細は次に述べるとして,結論を書けば,どこか壊れているか,こんなものかの,いずれかだと思います。もう疲れました。


(1)LA3350を予熱する

 フタを開けた状態でセパレーションを最良点に持っていっても,時間が経てば平気で30dB以上悪くなってしまうという,とんでもないドリフトを起こしているKT-1100Dですが,筐体内には結構な発熱がある電源回路が存在しているので,温度の変化は結構あります。

 セパレーションの最良点は大体74dBくらい(これはかなりいい数字です)なのですが,これがすぐに50dB台になり,フタを閉じれば40dB台,そのまま一晩放置すると30dB台まで悪化しています。

 これだとやはり温度変化ではないかと思う訳ですが,指でさわって特性が大きく変わる箇所を探してみると,一番大きい変化をするのはLA3350でした。

 ステレオデコーダICであるLA3350を,38kHz生成用のPLLとして使っているのがKT-1100Dですが,このPLLのVCOのフリーラン周波数が温度で大きく変動します。事実,フリーラン周波数をぴったり19kHzにするとセパレーションの値は70dBを越えますが,1Hzでもずれると60dB台止まりです。

 LA3350に繋がる抵抗をすべて金属皮膜に変更し,コンデンサはマイカコンデンサに置き換えて,温度特性を小さくしてみたものの変化無し。これはもうLA3350自身の問題と考えるしかありません。

 そこで,LA3350を暖めることにしました。

 気温の変化も含めて,LA3350を一定の温度に出来ればいいのですが,そのためにあまり大げさな装置は組みたくありません。そこで,パワーアンプの熱暴走対策用のバイアス回路をちょこっといじって,一定温度で発熱する回路を作りました。

 実際に発熱する熱源たるパワートランジスタと熱結合したバイアス生成用のトランジスタの2つで構成され,自身の発熱はもちろん,周囲温度によるコレクタ電流の増大を押さえる回路です。

 さっと試作して,ドライヤーで暖めたり冷やしたりしても,コレクタ電流が一定に保たれることを確認しました。これで一定の温度になっているはずです。設計では,14Vで65mAから120mAくらいまで調整可能にしてあります。

 熱源トランジスタのVCEは約12Vでしたから,これに100mAを流せば1.2Wです。表面温度w調べて見ると,60度くらいになっています。

 これをLA3350にくっつけてみます。

 なるほど,VCOの周波数は安定してきました。しかし採取的なセパレーションはやはり変動します。変動の幅は小さくなっているように思いますが,それでもフタを閉じて40dB台になってしまいます。きっとLA3350だけではないんでしょう。

 結局この回路は外してしまいました。


(2)カレントミラーの熱結合

 先日も書きましたが,MC1495の電流出力を引っ張り出すカレントミラーを熱結合してみました。実は,熱結合前に,トランジスタの片側だけを触っても全然セパレーションが変化しなかったので,きっと意味のない対策だろうと思っていたのですが,やってみたら本当に効果がなく,がっかりしました。


(3)基板のたわみ

 面白い事に,基板を上から押し込む方向にたわませればセパレーションは悪化する方向に,逆に引っ張り上げてたわませれば,良くなる方向に値がずれていくのです。物理的な位置関係や歪みが変わることで10dB程もセパレーションが変化するのですからよっぽどで,ベークで出来た基板だけに熱による変形は大きいだろうと思いました。

 そこで,基板を固定しているビスを緩めて,熱の変化でも基板が変形しにくいようにしてみました。

 結果はダメ。変化無しです。


(3)熱源を外に出す

 KT-1100Dは,安定化されていない22Vから,安定化した14Vを得るための電源回路を持っています。制御用のトランジスタが比較的大きな放熱器にネジ留めされており,これが結構な熱を放っています。

 フタを閉じれば筐体が徐々に熱を持つようになります。

 最終手段として,この熱源を外に出して,密閉された空間の温度上昇を食い止めようと考えました。

 やったことは単純で,熱源たるトランジスタを放熱器ごと取り出し,筐体の背面に取り付けて,ケーブルで基板に取り付けます。

 かなり機内の温度上昇は押さえられ,フタを開けてももわっと熱い空気が吐き出されることはなくなったので,その結果が楽しみだったのですが,一晩放置した後のセパレーションは43dB。確かにいくらかの改善はありますが,それでもこの悪さです。

 それに,熱源を外に出すという作戦は,外気温の変化には無抵抗です。この日の朝は冷えましたので,そのせいで大きくずれた可能性はあります。

 どっちにしても,これはあまり大きな効果はありませんでした。


(4)万策尽きた

 ここまでやっても改善が見られないということですので,仮に温度変化が原因だとすれば,その影響を受けている原因箇所は複数あるという事でしょう。それらすべてを熱的に対策するのは無理です。

 あるいは,本来なら温度変化を受けないように作ってある回路が壊れているケースです。一見するとちゃんと動いている回路ですから,故障箇所を探すのは難しい作業です。これもしんどいですね。

 最後に,こんなものだという話。KT-1100Dという機種は,温度に対してセパレーションが大きく変動するものだということですが,そんな話は聞いたことがありませんし,可能性は低そうです。

 やっぱり,この個体の故障ではないかと思うのですが,動作確認前にケミコンの交換を始めたもんですから,交換ミスがあるのかも知れません。だからといってこんな温度変化に関する問題が出るとは考えにくいのですが,どっちにしても私が今考えうる対策は,もう全部やりました。そしていずれも効果に乏しいものでした。

 これで折り合いを付けるしかないなあと思うのですが,幸いにしてもう1台,KT-1100Dの動作品を入手出来る事になりました。

 動作品と言っても,とりあえずステレオ受信が出来るというだけの話ですから,本当に大丈夫かどうかはわかりません。

 しかし,この新しいKT-1100Dで温度変化がないなら,やはり故障していたということになるでしょう。逆に,新しいKT-1100Dも温度変化が大きいのであれば,この機種はこんなもんだとあきらめも付くというものです。


 ところで,ベストに調整したときの測定値ですが,これがなかなかよい値が出てきたんですね。セパレーションは大きくずれるのですが,それ以外は安定しているので残念なのですが,参考までに書いておきます。

・WIDE時
 歪率 L: 0.0068%  R: 0.0068%
 S/N L: 74.0dB  R: 74.0
 セパレーション L->R: 73dB  R->L: 73dB
 

 このうちセパレーションが,どんどん悪くなってしまい,そのうち30dB台になります。外気温の影響も受けますし,これを実用的に使うというのは,ちょっとないなあと思います。

 大事な事はピーク性能ではなく,安定した性能です。F-757は絶対性能はこんなに良くないと思いますが,安定性はよいので,こっちを常用することも視野に入れようと思います。

QX5FDで懐かしい打ち込みをやってみる

 コンピュータによる自動演奏の楽しさは,PC-6001のPLAY命令で知りました。自動演奏と当時に和音を出せる面白さは,当時自らの手で和音を出す術を持たなかった私にとって,まさに「出来る事が増える」という画期的な事件でした。

 電子楽器,自動演奏,オーケストレーションというこの3つは,その後の私の趣味の柱の1つを担うまでになりますが,中学生の時の私はそんなことなど全く知りません。

 その後,同じように面白さに目覚めた弟がPC-6001の後継機として,OPMが使える当時唯一のマシンであることを理由にX1turboを選び,私も少し触りました。ただ,X1turboには当時最強のFM音源を搭載可能ではあっても,それを操る方法はほとんど用意されなかったので,使いこなしたという印象は持っていません。

 そうこうしているうちに,D-20というローランドのシンセサイザーを手に入れるわけですが,10万円前半のアマチュア向け機器に,使い物にならない中途半端なシーケンサーを内蔵してプロ用の機器に近い値段になったという,まったく話にならないマシンを喜んで使っていたことを恥ずかしく思います。

 ただ,当時はフロッピー付きのシーケンサーが付いているというのはとても未来的で,当時のプロならみんな持っていたコルグのM1が「ワークステーション」を名乗っていても,フロッピーディスクまでは搭載していなかったことを考えると,D-20は本気度でM1を越えていたと言えます。

 私はまんまとその気合いに騙されたといえる(だって当時178000円もしたんですよ,D-20は)のですが,でもそれに見合う音源やシーケンサーとしての完成度を持っていなかったD-20には,明らかにオーバースペックな機能が搭載されたという事だと,買ってから気が付くわけです。

 そのD-20のシーケンサーですが,ローランドですし,フロッピーディスクも搭載しているのですから,そこはやっぱりMC-500やMC-300譲りかと思うじゃないですか。MC-8で革命を起こし,シーケンサーという一般名称に背中を向け「マイクロコンポーザー」と名乗り続け,プロの期待に応えているMC-500がビルトインされるなら,D-20はとんでもなくお買い得なマシンになっていたはずです。

 しかし,残念な事に,D-20のシーケンサーはMC-500と違うだけではなく,全く使い物にならないものでした。ステップ入力が全く出来ない,もたつく,よたる。ペダルを使ってリアルタイム入力をするとシーケンサーの同時発音数をオーバーする,テンポを変更出来ない,イベントを編集できない,クオンタイズが使い物にならない,などなどです。

 ステップ入力が出来ない事と,イベントを編集できないことはもはや致命的で,これじゃアナログのMTRとなにも変わりません。何度か使ってみたのですが全然ぱりっとした仕上がりにならず,MIDIシーケンサーとはこういうものなのか,あるいはD-20だからこんな程度なのかが分からない,そんな状態が続いていました。

 そこで,外部にちゃんとしたシーケンサーを繋ぐことを考えました。しかしお金のない高校生が,おいそれとシンセサイザー1台に匹敵するだけの買い物をするわけにはいかず,当時既に旧型となっていたQX5の展示品を4万円で買ったのでした。

 これも今にして思うと,そんなに安いものではなかったと思いますが,4万円でまともに動くMIDIシーケンサーを手に入れる事は現実的には難しかったと思います。

 果たしてQX5はどうだったかというと,これが実に楽しかったのです。ステップ入力をあの少ないキーと小さなLCDで行うのは至難の業かと思っていたら,なんのことはない,鍵盤から入力が出来るので非常に楽でした。

 イベントの編集も出来ますし,なによりテンポがずれたりよたったりせず,ばしっとタイミングが出ます。

 慣れればあの小さなLCDでなんでも出来るようになりました。QX5で不満や不足を,当時は感じませんでした。そりゃそうです,D-20とMatrix-1000だけだったのですから。

 QX5はバッテリーバックアップがありましたが,外部ストレージへの記録はカセットテープで行いました。でもこれは時間もかかるし,信頼性も低いので,QX5の演奏データをD-20のシーケンサーで一気録りし,これをD-20のFDDで記録する方法を取りました。

 この方法だと,D-20でイベントの編集は出来ませんし,QX5に戻すことも出来ません。だからQX5で作ったデータを文字通り録音するだけになってしまうのですが,FDDで記録が出来ることは便利でしたし,ステージでもD-20だけできちんとしたシーケンスを演奏出来たので,なかなか便利に使っていました。

 QX5FDはすでにこのころ出ていて,確かにQX5FDを買っていればこんな面倒な事をしなくても済んだだろうし,編集も出来て便利だったろうなと思いましたが,買い直すだけの経済力もなく,そのまま高校時代を過ごしたのでした。

 その後,大学生になってアルバイトをしてからは,Macを手に入れ,念願のPerfoemerを使ってシステムを組みました。鍵盤と音源の数も増えていき,様々な音を混ぜて作る事の面白さを堪能していました。

 そのうち,就職と引っ越しで機材の処分をしたことでシステムは整理されていくのですが,一番問題だったのはMacとPerformerです。Macが新しくなるとPerformerは動かなくなります。動くようにするには少なくない費用がかかるので,使用頻度から考えて後回しとなっていきました。

 単純なMIDIシーケンサーだけでよかったのに,DigitalPerformerにしないとMacOSXに対応しないなどの問題もあり,もうPerformerについていくのはあきらめたのです。
 
 結局,高品位な音源と膨大な同時発音数を期待して購入したRD-700や,個性的で太い音のMicronを楽曲作りで使うことは一度もないまま,10年の時間が流れています。

 そんなおり,娘がピアノを始める事になり,当座私のRD-700を使ってもらうことになりました。もっといいものが欲しくなったら,その時考えてくれればいいです。

 私もRD-700で久々に遊んで見たのですが,やっぱりマルチトラックで楽曲を作ってみたくなります。

 しかし,Performerはすでに動く環境がなく(PCベースだとこれが一番頭が痛いですよね),QX5はすでに処分してしまいました。冷静に考えると,私は今,全くMIDIシーケンサーを持っていない状態だったのです。

 これはいかん。MIDIシーケンサーを使った打ち込みの楽しさを伝承せねば。

 カット&ペーストで作るのも,DAWを使うのもいいんですが,やっぱりMIDIのイベントを1つ1つ見ていじることの面白さも,堪能出来る環境がないと・・・でもそういう機材ってすでにもう絶命しているんですよね。

 かつては市場を二分したローランドのMCシリーズも,ヤマハのQXシリーズも現行機種はありません。すでに20年近く前に新しいものが出なくなっています。

 なら,中古を買うか。

 名機QX3を買うことも考えましたが,値段よりもなにより,大きさが大きすぎです。こんなに大きいと邪魔で仕方がありません。

 使い慣れたQX5をオークションで探してみると,安いです。これでいいかなと思ったところで,QX5FDが見つかりました。これも安いです。

 かつて欲しかったQX5FDです。この値段なら買ってみてもよいでしょう。

 想像以上に程度のいいQX5FDを落札し,届いたのが少し前です。軽く動作確認をして,分解掃除を済ませて,実際に使ってみました。

 ケースのプラスチックの劣化があって,ビスを差し込むボスが数本折れて締まったものを修理したり,電源ケーブルを直出しからメガネコネクタに変更したりと,ちょっとした改造をやってから,早速打ち込みをしてみましょう。

 RD-700につなぎ,ハイハットだけでまずメトロノームを作ります。次にピアノを入れて,ベースを入れ,ドラムを入れます。

 1時間ほど格闘し,出来上がったのは沢田研二の「勝手にしやがれ」です。
サビを入れる所で力尽き,なんだか不完全燃焼のままでした。

 最初はなかなか慣れないのですが,やっているうちに体が勝手に動くようになってきました。QX5はDISPLAYキーを押すことで,小節,トラック,テンポと言った情報がすべてあの小さなLCDに表示出来る慣れた人向けのモードがあるのですが,私もこれの方が見やすく感じるくらいです。

 ベースも,8部音符で刻む部分はテヌートで演奏したいわけですが,鍵盤ではなかなかテヌートが再現出来ません,そこでステップ入力で入れていきます。

 次はドラムです。私はドラムはすべて手で打ち込みます。パターンを並べる方法は使いませんし,繰り返しも含めて全部手で打ち込みます。可能ならリアルタイムで入れた方が,強弱もきちんと入っていくので楽な上に楽しいです。

 とまあ,こんな感じでピアノ,ベース,ボーカル,ドラムを入れたわけですが,本当はここから先が面白くなるはずでした。ですが,RD-700のマルチ音源としての使い方がよく分かっておらず,結局5トラック目を入れる事が出来ずに,ここであきらめてしまったのでした。

 ということで,出来上がった曲はとても短く,楽器の数も少ないまま,ベロシティの調整もパンの調整も,各トラックのレベルのバランスも取る事が出来ないままあきらめたので,なんだか「ミュージ君」で譜面通りに打ち込んだ素人丸出しの音楽になってしまいました。

 とても悔しいですし,いやいやこんなもんじゃないのよ,と言い訳をしたいところです。

 ところでQX5は,データを蓄積するSRAMがバッテリーバックアップされていたので,電源を入れればすぐにデータを再生出来たのですが,QX5FDはバックアップがないのですね。手に入れてから初めて知りました。

 電源を入れる前にFDにデータを記録し,再生したいときにはFDからのロードをしないといけないということなのですが,ステージで使う時に,そんな面倒な作業をしているだけのゆとりってあるものなんでしょうか。もしロードエラーが起きてしまったらアウトですし,そもそもFDを忘れてきたらもう終わりです。

 複数の曲を演奏するときにはFDでロード出来ないとダメですから,QX5では話にならないわけですが,QX5FDにバックアップ機能を付けてくれれば良かっただけなのになと,今更ながらに残念です。

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