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シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その5

 カートリッジ祭りの最後は,どうしても試してみたくなった新しいカートリッジの話です。

 前回も書きましたが,私はシュアとオルトフォン,オーディオテクニカとデノンという当たり前のメーカーのカートリッジしか使っていませんでした。MCは言うに及ばず,MMのような量産品でも数多くのメーカーがその個性を競うカートリッジの世界は広く,楽しいものであるはずなのに,なんと私はもったいないことをしていることか。

 ただ,一方でOEMが多い世界でもあるので,メーカーは違うが中身は同じ,と言うものが多いのもまた事実です。あれこれと手を出すことの意味のなさも分かっているつもりです。

 そんな中で,カートリッジの老舗であるグラドが目に入ってきました。好むと好まざるに関わらず,売り上げを立てるのにDJ用は外せないカートリッジの世界において,グラドはDJ用途のものを作っていないんですね。

 かといって保守的な高価なものばかりかと言えばそんなことなく,1万円くらいから多くのラインアップを持ち,またモデルチェンジも頻繁にあって,都度新しい技術と音に挑戦しています。

 私などは「大丈夫かいな」と心配になってしまうほど,私のような庶民にはありがたい存在なグラドですが,つい先日まで「聞いたことはあるけど」という程度の認知度でした。

 しかし,1万円程度の安いMMカートリッジでも,周波数特性は50kHzまで伸びるというウソのようなスペックを謳っていますし,チャンネルセパレーションも他のカートリッジの頭一つ飛び抜けている値が書かれています。

 グラドはMMというよりMI型ばかりをラインナップしていますが,セパレーションが良好なのもMI型の個性の1つです。

 つい,この3月にエントリーレベルが新製品で一新された事も知り,ならば試してみる事にしました。改良を重ね最新の設計で楽しむアナログレコードというのも楽しいもので,現代のスピード感のある音がアナログで楽しめるかも知れません。

 たくさんあるラインナップのうち,私が選んだのはPrestige Blue2というものです。

 Prestigeシリーズはグラドのエントリーレベルのラインナップですが,数と言い価格レンジと言い,まさにグラドのメインストリームではないかと思います。

 最廉価のBlackは3ピースのカンチレバーで,GreenはBlackの選別品です。Blueは4ピースのカンチレバーで,選別品はRedになるそうなのですが,私はその価格差から選別までは必要なく,そのかわり4ピースという高級機と同じ構造の音を聞いてみようと思いました。

 聞けば,グラドは現代のMCカートリッジを発明した人なんだそうです。しかし今のグラドにMCのラインナップはなく,これはMCに限界があり,これを越えるのが彼の考案したMI型(FB型というそうです)だという結論に至ったから,らしいです。

 まあ,この手の話にはウソも混じるので真に受けるわけにはいかないのですが,ウソでもそこまでいうならぜひ聞いて見たいものです。

 ということで,それでも1万円ちょっとで手に入ったBlue2を早速試してみます。

 MIらしい芯のあるしっかりした骨組みに,ワイドレンジで密度の高い音がを均一に纏っている印象です。高解像度,高コントラストで鮮やかな音は現代的で,伝統的なカートリッジとはちょっと風味が違いますが,似た傾向のオーディオテクニカほど尖っておらず,多量の情報がすっすと頭に入ってきます。

 派手な音にありがちな歪みっぽさはなく,きめの細かい音がしており,それは大音量でも破綻せずしっかり粘ってくれます。目の前の霞やもやが一気に晴れたような感じがあり,からっとした湿気の少ない風のような心地よさです。

 ちょっとサ行がきついかなあと思いますが,欠点はそのくらいです。

 聴き疲れることもなく,かといってメリハリの強い音で常に興奮状態にあるわけでもなく,とても自然に鮮度の高いが耳に入ってくることは音楽を愉しむには理想的とも言え,個人的にはジャンルと問わないオールラウンダーだと思いました。

 あまりに楽しいので,一気に2枚ほどアルバムを楽しみました。この音がこの価格で買えてしまうのに,もっと話題になってもいいと思うのですが,そこはやっぱり保守的なアナログオーディオの世界だけに,シュアとオルトフォンとデノンでいいや,ということになっているのかも知れません。

 確かにこのあとM44Gと比べてみたのですが,M44Gの肉太な押し出し感の強い音は,それはそれでとてもエキサイティングで楽しいです。不思議なことに,PrestigeBlue2を聞いた後では,いつも感じるようなM44Gに対する物足りなさや一種の妥協のような感情が全く顔を出さず,心底「いい音だなあ」と聞き惚れてしまったのです。

 方や最新の設計による現代の音,方や半世紀を経た古典的設計の伝統的な音,しかしどちらもいい音だと,そんな風に思えることがとても面白く感じました。

 このあたり,レンズと似たようなものがあるかも知れません。古いレンズは解像度も低く,その時の製造技術で量産可能なもので妥協した設計をしていますが,それはそれで個性的で味わい深いものである一方で,最新の設計と高度な量産技術で磨かれた最新のレンズは,今のトレンドをきちんと掴んだ高解像度,高コントラストです。

 思うに,50年前の設計者も,きっと高解像度を目指していたんだろうけども,諸処の事情でそれが許されずに妥協を重ねたんだろうと思うのです。だからもし,その50年前の設計者に今の最新の設備と技術を提示したら,きっと現代的なレンズを作ると思うんですね。

 カートリッジも同じで,違うのは相手がLPレコードという古い伝統的なものであるということです。レンズが相手にする被写体はまさに目の前にある「最新」のものですから,このあたりはちょっと考え方が違うかも知れません。

 ちなみに,あまり聞いていなかったオルトフォンの2M REDも真面目に聞いてみました。なぜかうちではこのカートリッジは針圧を3g以上かけないと歪みが消えず,あまり長時間使えないなあと思ったわけですが,腰がしっかりと座った,いかにもMMという太い音を持ちながら,現代的な解像度の高い音がしていて,アンバランスさを感じるほどです。

 アンバランスさと書きましたが,このあたりPrestigeBlue2は見事で,MMの個性と現代的な音が一体感を持っており,不自然さが全くありません。素晴らしくまとまっています。良し悪しではありませんが,この点で2M Redはちょっと息苦しさがあります。(この重さは針圧が大きいことから来ている可能性もあり,針圧を軽くするともっと軽やかな一体感のある音になるのかも知れません)

 ということで,常用していたV15typeVxよりも澄んだ音が欲しい,DL-103よりも伸びのある音が欲しいと,常々思っていた所にPrestigeBlue2がこのすべてを満たして現れました。

 なんやかんやで最後にはV15TypeVxやDL-103に付け替えて終わるのに,PrestigeBlue2だけは2枚のアルバムを聴き通したわけで,これでもう常用決定という感じです。

 いつでも同じ音が出る信頼性や,セッティングによって音がどれくらい変化するかというセッティングの難しさなど,まだ分からない事も多いのですが,大変魅力的なカートリッジに出会いました。

 必ずしも高価である必要はなく,定評あるロングセラーでなくても,とてもいいものがあるということを,今回のPrestigeBlue2は私に教えてくれました。

 使いこなしの難しさがあるかも知れないのでまだ断言出来ませんが,この価格でこの音は大変素晴らしく,もしおすすめを聞かれたなら,このPrestigeBlue2を真っ先にあげることにします。

 

シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その4

 V15typeVxMRの修理に際して久々に「カートリッジ大全」を開いて見ました。これがめっぽう面白いので,ついつい関係ないところも読んでしまいます。

 ここに,モノラルカートリッジの話が出ていました。そういえば,オーディオテクニカのAT-MONO3だけは値上がりせずに昔の値段のままだなあと思って読んでいると,そのメリットや存在理由が書かれています。

 これまでモノラルカートリッジなどに興味もなく,欲しいなどと思った事はなかったのですが,それはメリットを理解していなかったからで,縦方向の動きに対して電圧を発生しないというのは非常に大きなメリットを生むと分かりました。

 現在のLPレコードのステレオ方式である45-45方式は,モノラルとの互換性を高く持つ事で知られていますが,モノラルのレコードをステレオで再生してもちゃんと音が出ることがその特徴です。

 私もそう考えて,モノラルカートリッジなど欲しいと思わなかったのですが,冷静に思い出してみると,本来モノラルのはずなのに,妙にステレオっぽく聞こえたものです。これは,アンプのモノラル/ステレオスイッチを切り替えてみればはっきりわかるもので,この2つはモノラルレコードでも明らかな違いを持っていました。

 何でかなと考えてみると,音は確かに左右で同じであっても,ノイズは左右別々に出るので,これが左右を完全に一致させない理由になっているのですね。それゆえに我々の頭は,これを左右が異なる音としてステレオと認識するのでしょう。

 そうなると,せっかくのモノラルが不完全なステレオになってしまうわけで,これはとても残念です。やはりモノラルなら,ノイズもモノラルでないと。

 それを実現するのが,モノラルカートリッジです。

 調べてみると,デノンのDL102,オーディオテクニカのAT-MONO3,AT33MONOが手に入りやすいようです。価格はAT-MONO3だけ1万円ちょっと,それ以外は3万円くらいです。

 はっきりいって,どんなMCカートリッジでも実売1万円はこのご時世赤字なはずで,いつ値上がりするか分かりません。ということであわててAT-MONO3/LPを買いました。

 音を出してみたいのですが,そもそもうちにモノラルのLPなんぞあるんかいなと探してみると,1993年に復刻したビートルズ・フォー・セールのモノ版が出てきました。なんかいろいろ持ってるんですねえ,私は。

 これを早速聞いて見たところ,新たな感動がありました。ノイズもモノラルというのは,なんと聞きやすいものか。音に集中出来るというか,自然に耳に入ってくるというか,いかに左右でノイズが違うという状況が不自然であるかがよくわかります。

 でないとモノラルカートリッジなどとっくの昔に廃番になっているはずで,それが複数の選択肢から選べるというのですから,やっぱりマニアに支持されてるんですね。

 世の中には,オーディオマニアの行き着く先の1つに,モノラルというのがあるそうで,でっかいタンノイをわざわざ1本だけ買ってドンと真ん中に置いて音を浴びたりするんだそうです。まあ,考えてみるとSP盤マニアも蓄音機マニアも,自動的にモノラルマニアですわね。

 極端なマニアは別にしても,制作者が想定した再生装置で音を出すのが一番制作者が聞いて欲しい音なわけで,制作者の意図を理解するには,それが一番の近道でしょう。

 時代的な話が理由だとしても,モノラルを想定しているならモノラルで聞くのがよいだろうと思います。その点で,モノラルカートリッジを手に入れたことはささやかながら,その第一歩であったと思います。

 実のところ,我が家にはビートルズのLPのセットがありまして,ちゃんとモノラルなんですね。もったいなくてほとんど聞いていませんが,やはり今度聞くときはAT-MONO3で聞こうと思います。

 さて,これでアナログ祭りも最終回,と思ったのですが,ふとしたことからあるカートリッジに興味を持ち,そんなに高いものでもないのでこれも何かの縁と購入しました。

 そういえば私はカートリッジとオーディオに目覚めるきっかけをくれたシュア,自分で初めて1万円を越えるカートリッジを購入したオルトフォン,低価格カートリッジを大事にする姿勢に共感した現代的な優等生オーディオテクニカ,そしてNHK-FMを聞いて育った人には必ず必要なデノンのDL-103以外を買おうと思ったことが一度もありません。

 手作りの高級MCカートリッジは置いておくとして,ないないといわれつつMMカートリッジのメーカーはそれなりに存在しており,なのに私はそれらをほとんど知りません。でも,今生き残っているMMカートリッジですから,なにかしら個性があるに違いありません。

 そんな中,どうしても試したいものが出てきました。次回はそのお話です。


シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その2

 シュアのフォノカートリッジ生産終了を聞きつけてあわてて手に入れたM44GとM97xEを,早速使ってみました。

 2015年に私はトーンアームをグレースのG-940に交換しています。真面目にアナログをいじるのはこの時以来です。ワクワクするものですね。

 シェルはオーディオテクニカのMG-10を長年好んで使っていますが,余っているのが1つしかないので,今回はAT-LT13aを1つ買いました。
 
 まず,M97xEです。中級とはいえ,なかなか繊細でいい音がしますよ。今14000円ほどですから,25年前に8000円ほどで買ったME97HEと同じクラスでしょう。

 ME97HEは正直がっかりしたカートリッジでしたが,M97xEは悪くありません。ただ,適正針圧と書かれた2.0gでは,ちょっと腰の位置が高い印象です。

 そこで針圧をぐぐっと増やします。おお,腰が据わってきました。私の好きなV15typeVxMRに近い音になってきましたよ。これだけ出れば今の私の耳には十分。よし,これでOK。

 次にM44Gです。まず出力電圧が大きく,一発目の音がでかいです。

 それだけでもう元気な印象を受けます。バンバン前に音が出て,モリモリ低音が出ています。高域に伸びもないし,繊細さも解像度も足りませんが,それがどうした。

 とても楽しい音がするカートリッジです。これを30年前に聞いていたら,やっぱりダメな安物と思ったでしょうが,今は違います。元気で結構。

 ただ,常用するかと言えばちょっと違う気がします。繊細さがない,エネルギー感がすごいという個性がメリットになるソースなら,これほど楽しいカートリッジもないでしょう。

 さて,こうして試してならしてみて好印象だった私は,ちゃんと組み付けて針圧などの条件出しを行う事にしました。オーバーハングもちゃんと確認して,しっかりシェルに取り付ける作業を行うのです。

 自室が散らかっているので,事故を防ぐためにダイニングのテーブルで行います。私のお気に入りのV15typeVxMRは,破損が怖いのでカプセル型のケースから,もともとシェルの入っていた紙製のちゃんとした箱に入れ替えてあります。

 2階のダイニングから1階の自室に戻るときに,不幸が起きました。階段を降りていると,4つほど抱えたカートリッジ(V15typeVxMR,M97xE,M44G,DL103)を入れた箱が,パラパラとこぼれて床に落ちてしまったのです。

 軽いものですし,紙箱に入れてありますし,多少の音質変化には目を瞑るとして,壊れることはないだろうと油断していたのですが,確認するとV15typeVxMRとM97xEはスタイラスガードが上に上がって,スタイラスが紙箱の内壁にぶつかっています。

 折れていないかをあわてて確認しましたが,それはセーフです。

 でも,スタイラスガードが動くほどですので,かなりの衝撃があったのでしょう。音を出して確認すると,M97xEとM44G,そしてDL103は大丈夫でした。

 V15typeVxMRは・・・なんと左chの音が小さくなっています。

 しばらく聞いていなかったカートリッジですので,今回の落下が原因だったかどうかはわかりません。ただ,紙箱の中にプラスチックの破片が転がっていたことが1つ,なにより今左の音が小さいという事実が,すでに異常である事を物語っています。

 測定をしてみると,やはり左chは2割ほどレベルが低いです。2割というとかなりですが実はわずか1.5dBですから,一応このくらいならスペックに入っていることになります。

 しかし,もともとこんな差がなかったので,壊してしまったという思い気分が私に乗っかかってきます。

 V15typeVxMRのスタイラスを互換性のあると言われているM97xEに取り付けてみるとほとんど左右でレベル差がありません。ということは原因は本体にあるという事になります。V15typeVxMR・・・とても気に入っていたのに,残念すぎます。

 悔しいので,中をあけていろいろいじってみます。これでレベル差が小さくなることがあれば,そこに原因があったことになります。

 でも,なにをやってもレベル差は変わりません。どうにもならないのでもうあきらめました。

 M97xEでマイクロリッジのスタイラスをつ買うかと思ったのですが,やっぱり私の知るV15typeVxMRとは違います。あの音をもう聞けないのか,そう思うと,悔しくて仕方がありません。

 そこで,私はこのV15typeVxMRを捜す旅に出ました。

 シュアのV15シリーズはすでに生産が終わっていて,交換針もままならない状態です。いきおいマニアが高価で取引している状況で,正直そこに私が参加するのも気が引けたのですが,自分で招いたことですから,つべこべいってられません。

 針のない本体だけが安価に売られていることを期待しましたがあいにくそういうものはなし。某オークションでも見当たらず,万策尽きたように思われましたが・・・

 続く。

シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その1

  • 2018/05/07 12:37
  • カテゴリー:散財

 かの有名なギターメーカーであるギブソンの破綻が伝えられたことも残念ではありますが,この連休でオーディオマニアをしみじみさせたニュースは,なんと言ってもシュアのフォノカートリッジの生産終了でしょう。

 今どきレコード関連商品の生産終了など驚きもしませんが,それがMMカートリッジの雄であるシュアであり,また生産縮小ではなく完全な終了である事に,目を疑った人も多かったのではないでしょうか。

 かくいう私もびっくりした口で,すぐさま大手量販店にM44GとM97xEを手配しました。(無事に買えました)

 今回の驚きは,おそらくLPレコードの生産と販売数が増えていて,LPレコードのカッティングを復活させたレコード会社の話が出てくるなど,レコードの追い風が吹く中での生産終了であったこと,そしてDJ用の定番でさえも生産終了になるという事実に,すっきりしない物があります。

 シュアの主力商品はすでにヘッドホンやマイクに移行していますから,カートリッジなど痛くもかゆくもないビジネスであったはずです。世の中にはシュアよりも小さい会社でも,カートリッジの生産を続けている会社などいくらでもあります。

 需要が減った,材料費が上がったなどを理由にするなら,値上げすれば済む話だろう,現にオーディオテクニカもデノンもそうやってカートリッジの生産を続けているじゃないかと思うのも,無理はありません。

 加えてLPレコードは小さいながらも安定した需要があり,少しずつ拡大している状況です。CDの生産が減っている中で生産が増えている音楽メディアはLPレコードのみです。

 それに,DJの必需品である堅牢で太い音のM44シリーズが果たす役割を考えると,安易に「やめる」などと言えないんじゃなかろうか,と思うわけです。

 特に,CDに移行した80年代後半,いよいよカートリッジも全滅かと思われた中でも今日まで生産を維持できたのは,DJがこぞってシュアのMMカートリッジを使ったからであり,シュアにとっても我々にとっても,足を向けては寝られないはずです。

 
 ただ,このシュアの決断が,苦渋の選択であった事も読み取れます。

 シュアは生産終了のプレスリリースにおいて,品質の維持が困難になったことを理由に挙げています。

 まず,近年の状況として,品質を維持できず,コストや納期に問題が出てきたと言っています。これは,すでにMMカートリッジを生産するための金型や生産設備に寿命がきていて,更新をしないといけなくなっていることを意味しています。

 当然金型や設備の更新を検討する事になるのですが,そうした検討を慎重に行った結果生産終了を決断したとあります。つまりこれらの投資に見合うだけのリターンがないので,このまま更新しないで終息させますということです。

 いやいや,なんでシュアより小さい会社が出来る投資を,シュアができないのよ,と思うかも知れません。でも,これは作っているカートリッジの違いによるのです。

 今さらですがMMカートリッジはMoving Magnetの略で,カンチレバーに付いている小型の磁石を振動させ,本体のコイルで発電する仕組みです。針交換が出来ることが特徴ですが,なにせ磁石ごと外せるようになっているので,その取付精度は良くなければなりません。

 そうすると高精度の金型を使い,プラスチックで成型しないと現実的な価格で作る事が出来ません。もっとも,最近だとアルミ無垢材から1つ1つ削り出す方法もあるかも知れませんが,それだって何万円もかかるでしょう。

 高精度の金型は非常に高価で,作るのに何千万円もかかります。元を取るには大量に作るかないわけで,1000個作っただけでは1つ数万円もかかってしまうわけです。

 それに,いかに大きな会社とは言え,数千万円の投資を,20年かかって回収するという話はなかなか体力的に厳しいわけで,それならさっさとやめてしまった方が楽ちんです。

 じゃ,なんで小さい会社がそんな投資に耐えてカートリッジを作ってるのよ,と思うかも知れませんが,生産規模が小さくても成り立っているカートリッジは,ほぼMCカートリッジであることに注目して下さい。

 Moving Coilの略であるMCカートリッジは,カンチレバーについているのは磁石ではなく,コイルです。本体には磁石があり,コイルが振動することで発電する仕組みです。

 構造的に針交換が出来ないことはご存じの事と思いますが,ユーザーの手元でいわば「分解と組み立て」をしないカートリッジですので,工場から出るときにしっかりと作っておけば,それでいいことになります。

 ということは,金型を使って高精度な部品を作る必要はなく,極端に言えば1つ1つ手作りで調整しながら作る事も出来るわけです。

 つまりMCカートリッジは生産数が少なくても成り立ちますが,MMカートリッジは生産数が大きくなければならず,固定費が非常に大きいのです。

 こういう背景もあり,零細業者のMCカートリッジは手作りに近く,とても高価です。一方で,数千円で買えるシュアのM44Gなど,この値段でこの音が出ることに,改めて驚かされます。

 シュアのカートリッジには。MCカートリッジがありません。MMでも高級なものはすでになく,中級以下のものしか存在しません。つまり,すべて安価でなくてはならず,しかし高精度な金型が必要なので初期投資が大きく,長い期間,大量に生産することでしか成り立たない商品であることが,今回の生産中止の理由です。

 単価を上げるのは1つの解決策ですが,それだけでは問題は解決しないのです。

 シュアのMMには,他に代えることの出来ない強い個性があります。私もその個性が大好きであり,いろいろ試してみても,最後にはシュアに戻ってきています。オルトフォンがあるじゃないか,オーディオテクニカがあるじゃないかという意見もあるでしょうが,私は置き換え出来ないものだと思っています。

 まして,MCは音はもちろん,そもそも出力電圧が違うのでMMの置き換えには使えません。

 それが今後はなくなるというのですから残念ですし,CDは消えてもLPは残りそうなのにシュアのMMを体験出来ない若者が増えるのかと思うと,これも残念でなりません。

 同じような苦しい心の内であるのが,おそらくシュア自身でしょう。個人的にはM44Gだけでも残して欲しかったですし,それくらいなら出来るんじゃないかとも思っていますが,すでにシュアのカートリッジはメキシコ生産になっていて,もしかすると生産設備すべてが重荷になっているのかも知れません。

 そんなわけで,今年の夏には生産終了となるシュアのカートリッジは,すぐに入手が困難になることが予想されます。買い占めとか転売とかそういうケチな話ではないのですが,あれほど有名であるにもかかわらず馬鹿にして一度も聞いたことがないM44Gはぜひ聞いてみたいし,かつての中級クラスとはいえ現在のフラッグシップであるM97xEも,馬鹿にしないで使ってみたいと思い,両方とも購入しました。

 この結果,連休は軽いアナログ祭りになったのですが,不幸はここから始まります。

 続く・・・

 

シグマの17-50mmF2.8を買いました

  • 2018/04/02 12:26
  • カテゴリー:散財

 D300を実用機にする最終投資として,レンズを買う必要がありました。D300の使い方をしっかり決めないと,どんなレンズを選ぶべきか定まりません。

 もし,レンズ交換をしないで幅広い撮影を行うならば,高倍率ズームを選ぶ事になるでしょう。でも,これらは概して暗く大きく,そして画質は凡庸です。

 趣味に走るなら単相点レンズになるのですが,APS-Cで1200万画素でISO1600が限界で,世代的に古いデジカメですから,ちょっと厳しいです。

 なら,普段の撮影は出来るだけ1本のズームで済ませるとして,必要に応じて交換するという普通の使い方を考える事になるのですが,そのズームに何を選ぶかがまた考えどころです。

 まず,焦点距離は35mm換算で28mmスタートは絶対ダメ。そしてそんなに投資できませんので,純正はパス。価格からシグマとタムロンが残りますが,私はシグマに愛想が良く,タムロンとは相性が悪いので,ここはもうシグマを選びます。

 そうすると,テレ端が70mmまでいくか,50mmで止まるかで選択肢が別れますが,前者は最新の設計でUSB Dockにも対応,しかし画質は今ひとつと言われていて,しかも実質F4通しです。

 後者なら設計は古く,USB Dockも対応しませんしデザインも今ひとつですが,F2.8通しで画質にも定評があり,その上安いです。

 F2.8通しで24-70mm相当のレンズが,27000円ですよ。これはなんか問題があっても文句も言えないくらいの,バーゲンプライスです。

 まあ,昨年秋からAFのピントの件で何度も工場送りをしてきた面倒から,USB Dockが使えない事とデザインが古いことは気になるところですが,リニューアルされてもしばらくは価格は高いでしょうし,今の安いレンズがディスコンになるのも惜しいですから,これはもう買ってしまいましょう。

 というわけで,我が家にやってきたのが,17-50mmF2.8EX DC OS HSMです。

 改めて書きますが,F2.8通しで,24-70mm相当(35mm換算)の明るい標準ズームです。実売が26000円ちょっとですが,高級なガラスを使い,この手のズームとしては小さく出来ています。2010年の発売という事なのですでに8年が経過した古いレンズではありますが,その画質は定評があり,シグマらしい解像度を褒めるレビューをよく見ます。

 しかも,手ぶれ補正付き。古い設計なのでその効果は最新のものに比べて弱いといいますが,それでも2段くらいは稼げるので,ISO1600止まりのD300には,明るいことと相まって,大変頼もしいレンズです。

 淡色で解像度重視のシグマは私も気に入っていて,調整のためのメーカー送りも覚悟の上で,このレンズを選びました。

 届いたので試しました。想像以上の良さに大変満足です。

・大きさ,重さ,デザインや質感

 明るい標準ズームとしては小さく,全く問題になりません。重さはそれなりにありますが,それもしっかりした安定感に繋がっていると思います。なにも問題はありません。

 デザインは,かつてのシグマの野暮ったさがもっと強いかと思っていましたが案外そうではなく,金色の帯が目障りですがそれを除けば悪くありません。ちょうど最新のレンズの統一されたデザインに移行する過渡期のものといえるでしょう。

 質感も良くて,手に馴染みます。35mmF1.4|ARTに近い手触りなので,これなら文句なしです。


・使い勝手

 50mmにすると少々伸びますが,それも許容範囲です。私は,伸びたときの不格好さがどうしても気になる人で,それが故にズームは好きにならないのですが,このレンズは伸びると言っても2倍くらいですし,伸びたときにもちゃんとデザインのバランスが考えられているので,好印象です。シグマは随分いいものを昔から作っていたんですね。

 唯一困ったのは,AFでフォーカスリングが回ってしまうことです。いや,回ることそのものは問題ないのですが。AF時にはフォーカスリングに触ってはいけないという制約がとても面倒です。

 ぱっとレンズを構えてAF-ONを押した際に,クークーと変な音がしてAFが動かなくなりました。壊れた!と慌てたところ,なんとフォーカスリングを左手で握っていました。

 これを避けて構えると,どうもバランスが良くなくて,しばらく試行錯誤をしていました。今はもう慣れましたが,こんな面倒な事になるくらいなら,もうフォーカスリングを廃止してくれた方がよいです。

 というのも,ものフォーカスリング,回転角が小さすぎ,MFが実質的に難しく使おうという気が起きないからです。


・画質

 これはいいです。私のはあたりだったと思います。

 どの頂点距離でもジャスピンで,とても高い解像度です。さすがにキレキレという言葉を使うほどのものではありませんが,私が欲しい解像度はちゃんと持ってくれています。

 ワイド端の周辺でちょっとあまいかなと思いますが,絞れば安定しますし,問題ありません。テレ端は切れ味もいいし,ボケも悪くないので使い勝手があります。

 片ボケもなく,歪みも少ないいいレンズなんですが,残念なのは像面湾曲があるのと,周辺での甘さが出ることです。このことで,測距点を動かした時のAFがあまり期待出来ません。

 とはいえ,全然実用レベルで,神経質になる必要はありません。

 色はあっさり,しかしきちんと出ています。これは私の見たままを映すレンズです。Lightroomでの処理でも相性が良く,レンズプロファイルによる補正も違和感がありません。十分使えます。

 ところで,私はあまりボケにはこだわらない人で,主題以外を省略する方法として適度なボケがあればいいと思うのですが,このレンズはあまりボケが綺麗ではありません。

 開放でぼけた背景を見ると,いかにもズームレンズですといったような,ちょっと波打ったような模様のボケが出ています。プリントから少し目を離せば気になりませんし,汚いと言うほどひどいものではないと思いますが,すーっと溶けていくような模様のないボケではないし,徐々にフォーカスが外れていく時のボケの変化が美しいわけではないので,そこは価格相応だと考えた方が幸せになれそうな気がします。


・手ぶれ補正

 手ぶれ補正はやっぱり古くささを感じます。2段くらいが限度ですし,それもいつも効くとは限りません。幸いまだ誤動作や画質の劣化に遭遇してはいませんが,ないよりまし,くらいに考えておいた方がよいと思います。

 それと,AF-ONでは手ぶれ補正は動かないんですね。このレンズに限った話ではないと思いますが,いちいちシャッターボタン半押しは面倒なものです。


・総じて

 Lightroomで現像し,調整して印刷して評価しましたが,このレンズはいいですね。安いのですが,あたりだったようです。

 色も解像度も私好み,D850にも付けてみましたが,とても言い画質で驚きました。もちろん純正のレンズにはかなわないですが,D300の画質で考えればベストマッチだと思います。

 大きさも手頃で手に馴染み,画質も十分。F2.8の明るさに手ぶれ補正,35mm換算で25.5mmから使える広角に70mmまでのテレ端で汎用性も十分ということで,まさにD300にぴったりです。よい買い物をしました。

 感じた事は,D300だとギリギリレンズによる画質の違いを味わえると言うことです。これより古いと,ちょっとレンズの性能差が出にくくなるでしょうね。

 それと,やっぱりD850はすごい。AFの速さもそうですし,画質などはもう桁違いです。AEの精度も素晴らしく,とにかくトータルで圧倒的です。D300もいいカメラですし,レンズの違いが分かるカメラではありますが。実使用にはそれなりに我慢を強いられることもありますから,やはりデジカメは最新機種がいい,ということですね。

 

 

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