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リビングに人が集まるようなオーディオシステムを考える

  • 2013/03/28 12:54
  • カテゴリー:散財

 ぼちぼち新居への引っ越しが射程距離に入ってきましたが,先に考えなくてはならない面倒なことがたくさんあるのが分かっていても,ついつい楽しくてやってしまうのが,趣味を楽しむ環境の整備です。

 新居のコンセプトは,一人で過ごす場所とみんなで過ごす場所のメリハリをつける,です。決して広くはない家ではありますが,みんなが集まるリビングとDKは出来るだけ障害物をなくして,見通しの良い空間を作ることを目指しました。

 そしてなにより,ここに自然と人が集まる「仕組み」を入れることが大事です。一人でいるより,ここに来た方が楽しい,面白いと思うような,そういう仕組みをハードウェア,ソフトウェア共に整備していきたいと思っています。

 こういう場合,まず第一に上がるのが大きなテレビです。

 確かに大画面の高画質のテレビは,人を引き寄せるわかりやすさがありますが,一方で大画面でなければならないものを,家族みんなで日常的に見るというのはなかなかないものです。

 ニュースや天気予報,バラエティ番組などの放送コンテンツは,極端な話内容が重要ですから,ワンセグだってかいません。42インチのプラズマで見たいなぁ,と自然に思わせるコンテンツは,それこそBlurayの映画ソフトくらいでしょう。

 ではどうするか。

 我々家族は,みんな音楽が好きですし,その音楽を良い音で聞くことの楽しみを知っています。音が出ればなんでもよいと思ってはいませんし,オーディオ機器による音の差があることも,そして価格による差があることも認めています。

 そして音楽を聴くという楽しみには,自由度があります。何かをしながら聞き流すことも出来ますし,一音一音を聞き逃さないように集中して楽しむ事もできます。これは映像を見ることとは随分違う事です。

 従って,リビングに,他の部屋には設置できないようなオーディオを設置すれば,自然にリビングに人が集まるはずです。

 しかし,音楽を聴くには,ソフトが必要です。ソフトがCDなどの物理的なメディアだと,どうしてもそれをリビングに置かねばなりませんし,また本当に楽しむには所有するすべてのCDをおいておくのがベストです。しかし,そんなことをすればリビングは狭くなり,また猥雑になって,落ち着きません。

 てなわけで,リビングに用意すべきオーディオを,以下のように考えました。

(1)ネットワークオーディオは必須

 私が所有するCDはすべてFLACでNASに入っていますし,ハイレゾ音源も少しずつ増えています。嫁さんのCDも半分くらいはFLACになっているようですし,ネットワークオーディオプレイヤーがリビングのオーディオの核になることは,もはや揺るぎないです。

(2)iPadとの連携

 嫁さんはiPadを片時も手放さない人ですが,iPadで操作ができ,AirPlayに対応していれば,iPadとオーディオ機器が連携します。便利なはずです。

(3)スピーカーはCM1を使う

 私を含め,家族が最も支持しているスピーカーが,B&WのCM1です。これが出す音は他のスピーカーの音とは一線を画すものであるので,このスピーカーの設置されている場所は,非常に強い吸引力が働くはずです。スピーカーにCM1を選ぶ事が出来て,欲を言えばCM1を出来るだけしっかり駆動できるアンプが欲しいところです。

(4)FMラジオ

 我々はFMラジオが大好きで,特にNHK-FMはかけっぱなしにしていることが多いです。FMチューナーはアンテナがないと厳しいですから,出来ればインターネット経由で聞くことが出来ればよいですね。N-30はそれが出来ています。

(5)SACDは再生したい

 ネットワークオーディオを中心にするとはいうものの,SACDについてはディスクを再生する環境が欲しいです。SACDをリッピング出来れば必要ないのですが,そういうわけにはいきませんし,SACDはまだ所有数が少ないですから,リビングに並べておいてもよいでしょう。

(6)でもシンプルにまとめたい

 テレビとまとめて設置しますので,Blurayプレイヤーもおくことになります。出来ればSACDとBDは1つの機器でかかるようになって欲しいです。

 また,配線がややこしいと見た目も良くないですし,操作が難しいと使う人が限られてしまい,みんなが集まる部屋には不適切です。


 とまあ,いろいろ書いたのですが,こういう条件をすべて満たすようなシステムを作るのは,なかなか選択肢がないんですね。ネットワークオーディオに対応していてもFLACは未対応とか,日本語が通らないとか,SACDに未対応とか・・・

 そして検討の末,以下のようなシステムに決着し,早々と機材を買いました。

・ネットワークオーディオ+アンプ
 DENON DRA-N5

・BDプレイヤー
 Pioneer BD-150

 まずDRA-N5ですが,192kHz/24bitまで対応したハイレゾネットワークオーディオプレイヤーに,65W+65Wのアンプを内蔵したレシーバーです。FMチューナーも内蔵しますが,インターネットラジオに対応し,NHK-FMも設定出来るのでばっちりです。

 DLNA1.5でNASにアクセス可能,FLACにも対応し,日本語も通ります。ジャケ写はさすがに出ませんが,これはまあいいです。

 そしてAirPlayに対応し,iPadのアプリから操作が可能です。スピーカー端子はバナナプラグですので,太いケーブルを使うこともできます。CM1も全く問題なく使えます。

 光デジタル入力とアナログ入力を備えているので,ちょっとしたシステム拡張も可能です。

 価格は実売で3万円程度なのですが,なんとamazonで20%オフのセールをやっていて,24000円ほどで買うことが出来ました。N-30よりも安く,アンプまで入っているので助かりました。

 そして,SACDは実売1万円で高機能,高品質で知られる,BD-150をチョイスです。1万円前後の低価格BDプレイヤーは結構激戦区なのですが,案外機能に差があります。例えば,パナソニックは伝統的にSACDがかかりません。ソニーはDVDのアップスケールに定評がありつつ,現行機種からSACD再生機能を外しました。

 DENONは3万円から,マランツは5万円からと価格帯が違ってきますし,OPPOも検討しましたが,1万円のプレイヤーで十分だと思っている人には,ちょっと高価です。

 BD-150にもネットワークオーディオ機能がありますが,FLACに対応しませんから,これは使わないことにします。ただしDLNAで映像コンテンツを再生する機能は便利に使えそうです。

 そして,テレビは買い換えず,日立のP42-XP035です。BDプレイヤーとはHDMIで接続します。BDを再生する場合について言えば,BDプレイヤーの価格が1万円でも10万円でもそんなに大差はないでしょう。DVDのアップスケールには性能のいい物が欲しかったのですが,仕方がありません。

 それで,BDP-150をオーディオディスクの再生機として使う場合ですが,アナログで接続するのではなく,DRA-N5とデジタルで繋ぐことにします。こうすると,特にパーツのグレードや物量で決まると言われる音質を,DRA-N5に任せることができます。

 まあ,BDP-150とDRA-N5のどちらでDA変換するのが良いかなど,ドングリの背比べのような気もしますが,回転系を持つオーディオ機器は案外音質に有害なノイズを出すもので,アナログにする部分は回転系から隔離した方が望ましいでしょう。

 しかし,BDP-150のデジタル出力は同軸で,DRA-N5のデジタル入力は光です。変換を入れると不細工ですから,私は安い方のBDP-150を改造し,光出力を取り付けようと考えています。

 いやなに,ちょっと調べてみると,背面のUSB端子を基板から外せば,光出力のコネクタを代わりにハンダ付けできるようなのです。

 パターンは引いてあるということですから,ここから配線を飛ばせば,USBも温存しながら光デジタル出力を追加できます。

 背面の穴は開け直しになりますから手間はちょっとかかりますので,しばらくはアナログで繋ぐことにします。うまくいったらまた報告します。

 DSDを直接アナログに変換するSACDプレイヤーと違い,PCMに変換してからDA変換するプレイヤーの場合には,その変換アルゴリズムが音質を決定する大きな要素になります。その意味ではBDP-150は少々物足りないといえますが,88.2kHz/24bitは立派なハイレゾですし,どうしても納得出来なければ,私が気に入って使っているPD-D9を持ち込むだけの話です。

 新居への引っ越しは4月9日。ちょっと気が早いですが,どうせ買う物ですし,それだったら在庫のあるうちに,しかも安いうちに買って置いた方がよいです。引っ越し荷物が少々増えますが,そんなに大きな物ではありません。むしろ引っ越しから早期にセッティングが出来る事をメリットとすべきでしょう。

 ちなみに嫁さんは,音質うんぬんより,自分でも簡単に操作ができることに安堵したようです。難しい操作は,実際に出来るか出来ないか以上に,疎外感を感じるものなのでしょう。

ということで,次回は早速届いたDRA-N5のレビューです。

SA-76は21世紀のカシオトーンたるものか

  • 2013/02/06 15:46
  • カテゴリー:散財

 正規の音楽教育を受けたわけではない私の初めての鍵盤楽器は,電動式の空気オルガンでした。今にして思えば,親戚が我々に不要品を押しつけだけだったように思いますし,事実,そんなに値打ちのあるものではなかったように思います。

 幼かった私も,鍵盤を押せば音が出るという事に興味はあっても,音楽を演奏することが出来たわけではありませんから,鍵盤楽器は難しいという先入観が出来上がり,ますます苦手意識と和音を出す事への憧れが強くなっただけでした。

 ところが,中学生の時にコンピュータとギターを手にした私が,和音をある程度自由に出せるようになって,鍵盤楽器への抵抗が減ってきました。そこで手にしたのがミニ鍵盤のキーボードです。

 いろいろ悩んだのですが,入手の関係から,カシオの「サンプルトーンSK-1」を入手し,随分遊んだ覚えがあります。

 SK-1は安価なサンプリングキーボードですが,サンプリングが出来るという機能以外にも正弦波合成方式のシンセサイザー機能を持っていたり,ブラスアンサンブルはなかなか分厚い音が出てきたり,ビブラートだけではなくポルタメントまで装備していたり,リズムとコードを指定すればそれらしい伴奏をしてくれたりと,なかなか遊びがいがありました。

 4音ポリですから,難しいコードは押さえられませんが,左1つ,右3つという基本的なコードパターンを覚えたキーボードでした。原点ですね。でも当時,せめて6音ポリならなあと,伽叱ったことをよく覚えています。

 その後,いくつかのシンセサイザーを手に入れて打ち込みを始めるようになってから,ミニ鍵盤に触れることなど全くなかったのですが,おかげさまでミニ鍵盤へのアレルギーは私にはまったくなく,機会があればまた使ってみたいなと思っていました。

 そんなおり,娘が音の出るおもちゃを面白がるようになったので,ここは定番のおもちゃであるミニキーボードを買ってみようと思い立ちました。ミニ鍵盤で機能満載でおもちゃとして良く出来ており,価格も手ごろと言えば,これはもうカシオトーンです。

 といいつつも,実のところカシオトーンには良いイメージを私は持っていません。ミニ鍵盤のキーボードとは言え,やはり楽器ですから,音も思想も楽器でなければいけません。そのためにはちゃんとした楽器メーカーから出ているものでないといけないと思っているわけですが,探してみるとこの手のお手軽キーボードって,もうカシオ以外からは出ていないんですね。

 それで,カシオトーンがどれくらい進化したかを見てみようと,簡単に調べてみました。なにせ,25年前のカシオトーンにはがっかりさせられましたし,本当に欲しかったのはヤマハのポータサウンドでしたからね。

 なになに・・・37鍵モデルで実売3000円ちょっと,44鍵モデルでも5000円ほどですか・・・安くなったものですね・・・100音色にリズム用のパッド付き,ディスプレイもLCDですか・・・なかなかやりますね・・・え,8音ポリ!

 参りました。カシオトーンと言えば4音ポリが当たり前なのに,37鍵モデルでさえも8音ポリです。すごいじゃないですか。

 しかもデザインも立派な物です。以前のカシオトーンから一皮むけたような,とてもまとまったポップなデザインです。37鍵モデルではブラックとグリーン,44鍵モデルではブラックとオレンジという,カラーリングもかわいらしいです。

 むむ,MIDIないとか,ペダルがつかないとか,キートランスポーズができないとか,ピッチベンダーやモジュレーションホイールがないとか,そういうことはこの際割り切れるくらい,面白そうです。

 ということで,娘に買い与えるという口実で,結局買ってしまいました。カシオのSA-76,44鍵モデルです。約5000円。

 37鍵のSA-46でもよかった(しかしSA-46なんて往年のカセットテープみたいでオッサンにはビビビときますよねマジでスーパーアビリンって感じで)んですが,せっかくの8音ポリですから両手で弾きたいし,右手もバンバン転回してトップノートで歌いたいじゃないですか。

 ですので,ちょっと大きくなりますが,SA-76にしたというわけです。決して,某アニメ映画でキーボード担当の女の子が使っていたとか,そういう不純な理由では一切ありませんのでゴホンゴホン。

 話は少し飛ぶのですが,今回カシオを楽器メーカーとして調べてみたところ,なんか最近破竹の勢いなんですね。びっくりしました。

 昨年の発売になった本格的なシンセサイザーであるXW-P1とXW-G1は,25年も前のCZやVZシリーズの再来と話題になっていますし,これまでの出来があまりにナニなので完全に無視していた電子ピアノも,Priviaシリーズで随分高評価を得ているようです。

 そもそも,ソフトシンセ万能時代が10年ほど前にやってきて,ハードシンセはもう終わったと誰もが思ったわけです。

 1970年代,シンセサイザーはそれこそ個人発明家が試行錯誤の末にコツコツと手作りするのが当たり前だったわけで,一部のプロや専門家しか使わない特殊な楽器ゆえに,高価でかつ台数も限られ,お店も制限されていました。だから小さい会社でもどうにかなったんでしょうね。

 シンセサイザーにもデジタル技術とLSIが必須になった1980年代中頃から,技術的に優位だった日本の大手メーカーが台頭します。潤沢な資金を持ち,開発と生産設備への多額の投資に耐える規模と大量生産が可能な製造技術を有し,高機能な製品をたくさん作り,たくさん安く売って,それまで特殊な楽器だったシンセサイザーを一気に身近なものにした日本のメーカーは,技術でも販売でも,当時の中小メーカーを圧倒しました。キーボード専門誌には日本のメーカーの記事と広告が踊り,海外メーカーの製品の扱いは小さくなる一方でした。

 しかし,他の工場製品と同じように,大量生産に見合うだけの市場がなくなり,価格競争に陥ると,途端に新しい技術への開発投資も抑えられてしまい,日本のメーカーからは魅力的なシンセサイザーが登場しなくなります。

 シンセサイザーは日本人にとって身近な物でしたが,日本のメーカーが目立たなくなってくると,海外の個性的なメーカーがにわかにクローズアップされ,広く知られるようになります。

 ですが,別に海外のメーカーにしてみれば,無理に大きな商売をすることなく,相変わらず個人に近い小さな組織で高価で台数の少ないシンセサイザーをコツコツと作っていたわけですから,別になんとも思っちゃいないでしょう。

 そして近年,ソフトシンセもなんとなく行き詰まり,ハードシンセの再定義が行われつつあって,その復権の兆しが見えてきました。

 日本のシンセサイザーメーカーがようやく復活するのかと思っていたら,三社ともその勢いは既になく,そこへ颯爽と登場したのが,カシオです。

 日本の古参シンセサイザーメーカーがなかなか浮上のきっかけをつかめずにいて,一方の海外メーカーはいたずらに規模を負わずに面白いものを作っているこの状況で,電子楽器の専業ではないメーカーが再参入を果たすことの意味は,案外大きいように思います。

 巨大な資金,高度な製造技術,豊富な人材,そして大きな販路。カシオは電子楽器の世界では謙虚ですが,実は巨人であることを我々は忘れてはいけません。

 噂によれば,ここのところ不調の電子楽器メーカーからリストラされた技術者がこぞってカシオに入社しているとかいないとか。XVの次としてのXWだったら,ちょっと笑えないですよね。

 技術力もそうですが,音楽を創る道具としての楽器はかくあるべし,と言う思想がカシオに宿ると,もう怖い物はないように思います。

 ちょっととりとめもない文章になりましたが,カシオの再参入はそれなりに計算された,このタイミングを狙って行われた,本気の再参入だったと,私は思っています。

 思い出してみると,ヤマハ,コルグ,ローランドのシンセサイザーは,ステージでとにかくよく見ました。プロと同じ楽器を使いたい,同じは無理でも同じメーカーの楽器を使いたい,そういう気持ちはごく普通のものです。音楽産業は縮小の方向といいつつ,ライブは盛況ですし,クラブシーンも実に元気です。

 こういうところで目にする楽器が,市場と作るのだろうと思います。今,ヤマハ,コルグ,ローランドの楽器が,こうしたところに出てくるのって,ずっと少なくなっているように思いませんか。そして,これが出来る体力があるのが,カシオだったりするんじゃないかと,そんな風に思うわけです。

 若い人には我々オッサンのようなおかしな先入観はありません。パイオニアがDJ機材メーカーとして成功したのと同じように,素直にその良さを評価して受け入れる若い人が,カシオを愛用すると面白い事になるなあとそんな風に思うのです。

 閑話休題。

 えーとSA-46の話でしたね。5000円とはいえ楽器ですので,使ってみた感想です。


・全体の印象

 かわいらしいデザインですし,かなりまとまったよい印象を持ちますが,それでも細部には良くも悪くもカシオらしいエッセンスが見え隠れします。左右のスピーカーの位置にある,半円状の模様など,余計だと思うんですがね。

 ぱっと見ると,1970年代のポータブルレコードプレイヤーとか,ラジカセのような印象を受けます。黒とオレンジという配色が妙に70年代っぽいなあと思いました。

 大きさの割に軽くて,手に取った瞬間「軽いな」と思うのですが,かといって演奏中にその軽さを意識するようなことはなく,案外しっかりしています。

 また,ちょっと感心したのは運びやすさ,持ちやすさです。本体の上側を握ると,裏側のくぼみに指がかかり,無理なく持つ事が出来ます。これはいいです。思わずクリンゴンの伝統の武器「バトラフ」のように振り回してしまいました。

 スイッチ類は可もなく不可もなく,価格相応の感触です。鍵盤についてはもう少し頑張って欲しかったかなあと思いますが,黒鍵が押しにくくて,これは支点がかなり手前にあるからだと思います。ま,値段を考えると贅沢かも知れません。

 ただ,見過ごせないのは,鍵盤を押すと,押していない隣接する鍵盤側にかなり大きな隙間が出来て,子供の指なら入ってしまうのです。この状態で隣接する鍵盤を押し下げてしまうと,指をかなり強烈にはさんでしまいます。実際,娘の指は真っ赤になっていました。子供向けに作られているのに,子供に危険な製品というのは,日本製だから仕方がないのかなあと思います。


・音

 なかなか大したものだと思います。ピアノはさすがに無理があると思いますが,限られたROMによくもここまで詰め込んだなと思うくらい,良く出来ています。

 私が気に入ったのは,ストリングスアンサンブル(40と41)です。アタックもリリースもよく調整されていますし,粒が細かく,8音ポリらしく音が綺麗に残ってくれるので,とてもこの機械から出ているとは思えないでしょう。これ,例えばピアノやギターの弾き語りにちょっと加えてみると,かなり馴染んで「おっ」という反応が返ってくるんじゃないかと思います。

 他は・・・あんまり好印象の音はなかったです。生楽器はあまりリアルではないし,オルガンも立ち上がりが遅くて少なくともロックやジャズには向きません。シンセ系についても,シンセブラスは全然下品じゃないし,SE系は全然キラキラしておらず,これでは周りの楽器に埋もれて終わりです。使えません。

 そうそう,歪んだギターは,波形そのものの再現が簡単なので,SA-76でも結構面白い音がするのですが,いかんせんこの手の音色は演奏法でそれらしさを作り出すものですので,ピッチベンドやビブラートがないこの機種では,もうどうにも使えません。シンセリードもウインド系もそうです。


・良いところ

 多くの方が指摘していますが,ボリュームがスライド式のアナログボリュームになっています。1つ前の世代のSA-45だと,ここはスイッチ式だったそうなのですが,電源を切ると音量が初期化されることがとにかく不評でした。

 そこを改善するのにアナログボリュームというのはどうなのよ?と思うのですが,アナログボリュームの方が使い勝手は良いのですから,これは歓迎すべきところでしょう。

 あと,チューニングが細かく出来ます。440Hz±99centで調整可能な世界で最も安いキーボードなんじゃないでしょうか。トランスポーズは出来ませんが,目一杯ずらせば半音動かせるわけですので,結構使い道があるように思います。

 そうそう,デモソングはかなり派手で,本当にこれだけの音が入っているのかと思うほどです。良い意味で従来のカシオトーンを裏切る最たる例だと思いますけど,デモソングの常として,これだけの音楽を自分で演奏する術は用意されていないんですよね。

 あと些細なことですが,音を出しながら音色を切り替えると,それまで鳴っていた音の音色は変化せず,次に押さえた音から新しい音色になります。同時に2音色音を出すことが出来るワザなのですが,例えばリリースの長いストリングをから,急にブラスに切り替えるときに,ストリングスがスパッと鳴り止んでしまうととっても不自然なわけで,SA-76はそういうことがありません。

 トーンリメインとか,そういう言い方をするすばらしい機能ですが,実はこれ,1980年代後半よりも後にようやく出てきた機能なんですよね。それも高級機に限られた機能で,ステージで使うシンセサイザーには必須の機能となりました。確か,EnsoniqのVFXが最初だったんじゃないかなあと思うのですが,それが5000円の鍵盤にも当たり前のように搭載されていることに,年寄りの私は感慨深い物を感じました。


・残念な所

 まず,せっかくの音の良さを使いこなせないことへのフラストレーションをなんとかして欲しいです。ピアノ系はペダルがないので全く使い物にならず,前述のようにシンセリードやサックスなどもピッチベンダーがないので演奏上の工夫が出来ません。

 ビブラートでそれらしさを演出する音色ではモジュレーションホイールがないのでやはり工夫の余地がありませんし,そうやってふるいにかけると使える音色というのはオルガンやストリングス(あとオケヒット)に限られるように思います。

 ペダルはジャックだけ用意してくれればいいし,ピッチベンダーやモジュレーションホイールは近接センサやタッチパッドで構いません。とにかく操作できる手段がないことには,どうにもならないのです。

 あと,ドラムのパッドへの音色アサインが駄目です。バスドラム,スネアドラム,ハイハットと,まあここまではよいですが,なぜクラッシュシンバルがないのか,なぜタムタムがないのか,これじゃフィルインが決められないじゃないですか。

 惜しい。いちいち惜しい。

 また,やっぱりキートランスポーズは欲しいです。私がすべてのキーのコードを均等に覚えていないことは恥ずかしいこととしても,44鍵しかないキーですから,トランスポーズで有効に使いたいじゃないですか。

 それと,電源を切ったら設定を忘れるというのは最悪です。せっかくチューニングをしても,電源を切るとゼロに戻されるんです。つまり,その場限りの緊急時用の機能だと割り切らないといけないのです。

 そんな楽器あるかいな。

 私は家の楽器はすべてA=442Hzでチューニングをしていますが,こういう用途には使えないです。それに,設定値を変更するのにボタンを回数分だけ連打する必要があることも困ります。だって,99centまで調整出来るわけでしょ,100回近く連打させて,電池が切れたり電源をOFFにしたらまたゼロに戻るなんて,これ社内で問題にならなかったんでしょうか。

 せめて設定値くらいはマイコンのSRAM領域に残しておいて,バックアップするくらいのことはやって下さい。

 そうそう,電池が単3を6本も使うというのは,残念すぎます。せっかく軽く小さく出来ているので,電池6本で随分重たくなります。ACアダプタを別売りにするんだったら,電池での運用をもっと便利にしてくれないといけないです。

 せめて4本です。6本だとエネループを一度に充電出来ません。昇圧回路を使ってくれとは言いませんが,今どき4.8Vもあれば十分スピーカーもなりますよ。

 そのくせアルカリ電池で公称6時間てのはちょっと短いです。コルグのMicroPianoは同じ単三が6本でも15時間も持ちますからね。


 もう一つ,繰り返しになりますが,大事な事なのでもう1回書きます。安全性については疑問です。押した鍵盤と押していない隣の鍵盤との間に結構な隙間が出来て,子供の指なら入ってしまいますが,この状態で押していない鍵盤を押さえると指をはさんでしまいます。

 さらに,鍵盤の端の部分に尖っている部分があり,はさむとかなり痛いです。ついでにいうと,鍵盤が上がっている状態だと,本体の下ケースの部分にかなりの隙間がありますが,鍵盤を押せばこれがかなり狭くなります。指をはさむとかなり痛いと思います。

 ということで,細くて柔らかい指を持つ1歳や2歳の子供が使う場合には,事故に気をつけないといけないと思いますが,子供のすることですからそれはもう無理。やっぱり親の目の前で使わせるのが精一杯で,出来れば触らせたくないなあというのが本音の所です。


・まとめ

 かなり進化していると思われた21世紀のカシオトーンに対して,私は過度な期待をしていたようです。確かに音はかつての(安物)GM音源並になっていますし,同時発音数も8音になっていますが,それ以外は進化しておらず,残念なままです。

 ただ,これが5000円であることを思い出すと,進化とは低価格化なんだとはっとさせられます。そういう意味では確かに21世紀のカシオトーンなのかも知れません。

 ところで,カシオトーンが好きな人というのはたくさんいるもので,2音ポリの80年代のモデルとかを「最高」とか言う人もいるんですね。だけど,私にはよく分かりません。和音が出ないとやっぱり使い物にならないと思います。シンセサイザーの歴史を紐解くと,ポリフォニックシンセの誕生がいかに画期的なことであったかを思い知らされますし,電子楽器誕生前の鍵盤楽器に,モノフォニックのものなどなかったことを,ちょっと思い出してみると良いかもしれません。

 モノフォニックのシンセサイザーを否定するわけではありません。モノフォニックのシンセサイザーには,単音の楽器であるだけの価値が備わっていて,他の楽器に負けない太さとかスピードとか,逆にチープさとか,そういう音そのものの存在感はもちろんとして,奏法によって表現力を高めるという事が可能になっていないといけないのです。

 管楽器には多くの奏法があって,音程,音色,音量が時間的に変化するよう,演奏者は巧みに操作をしています。モノフォニックの楽器なら,これがないといけないと思うのですが,カシオトーンは,単純にポリフォニックシンセからコストを理由に同時発音数を減らしただけに見えて,私は楽器演奏の本当の楽しさをスポイルしていると思っていて,結果「楽器なんて楽しくない」と思う人が出ている可能性を,憂いているのです。

 まあいいや,5000円だし。

逆ポーランド電卓はWP34Sを常用することに決定

  • 2013/01/28 15:11
  • カテゴリー:散財

 HP20bという逆ポーランド記法の電卓を3500円で買ったのが2010年11月。すでに2年以上の時間が経過しているのですが,まともな活用法もないまま,引き出しにしまい込まれておりました。逆ポーランド記法であるということは最大の特徴ですが,もともと金融用の電卓なので,科学技術用の計算には向かず,使い道がないという状況だったのです。

 以前書きましたが,このHP20bはHPという大手メーカーの電卓なのに,回路図もファームウェアも公開されていて,ATMELのARM7コアのSoCを使ったプラットフォームとしては破格の存在でした。しかしこれに挑む勇者は数少なく,大して盛り上がらないうちに下火になってしまったように思います。

 ですが,1つだけ特筆すべき物があります。WP34sというプロジェクトです。

 これは,HP20bとその上位機種であるHP30bのファームを,科学技術計算向けのオリジナルなものに書き換えてしまおうという大したプロジェクトなわけですが,その結果得られる電卓というのがまた素晴らしく,HP42s相当の基本科学技術計算,HP16Cばりの2,8,10,16の基数変換,数学関数や統計関数,単位変換の追加が行われており,普段使いではHP35sを越える使い心地です。特に電気設計者には手厚い配慮がある感じがします。

 しかも,オプションの32kHzのクリスタルを取り付ければRTCが常に時刻を刻みます。これを生かしたストップウォッチも実装されています。

 WP34sを知ったのが昨年の今頃で,書き換えをしようかといろいろ画策していましたが,バタバタして結局取り組む機会を逸していました。しかし,当時まだまだ不安定だったVersion3が安定してきたという事もあり,1月12日からの連休に意を決して挑戦することにしました。

 細かい事を書くのは面倒なので省略しますが,新しいファームを書き込むのが大変でした。元々のファームはERASEしてしまったので,もう電卓として機能しませんし,書き込みツールであるMySambaでは本体に接続してくれないので,新しいファームを書くことも,古いファームに戻すことも出来ない状態に陥り,一時は完全にゴミになるところでした。

 あれこれ試行錯誤を行って,ATMELが配布するSAM-BAを使って書き込みが出来たときには,久々にガッツポーズでしたよ,ホント大変でした。

 書き込みを済ませ,動き出したWP34sの使い心地は素晴らしく,気が付いたら逆ポーランド記法を難なく使いこなしている私がいました。特にdBへの変換が一発で出来たりするのが,とても便利です。

 バグもちらちらあって,計算結果に誤りがあったりするそうですが,複素数や行列の特定の条件で発生するそうですので,当面は問題ないでしょう。

 速度も比較的速く,今のところ「アレが出来ればいいのになあ」という残念な印象を持つ事はありませんでした。いやはや,良く出来ています。

 そうなってくると欲しいのはオーバーレイです。

 HP20bに比べてWP34sのキーアサインは大幅に変わっているので,そのままでは使いにくくて仕方がありません。そこで本体やキーに張り付けるオーバーレイが用意されています。

 プリンタで印刷して張り付けるのも手ですが,良い品質の完成品が6ドルで販売されているのでこれを使う人も多いようです。

 私の場合,まずは印刷したものを張り付けてみました。配布されている画像ファイルを600dpiで印刷するとぴったりなサイズになるようで,これをステッカー用の印刷用紙に印刷します。

 キーの部分はくりぬいて張り付けるのですが,これがまた大変な作業でした。

 散々手間をかけた割には,見た目も悪く,大失敗。ないよりマシ,と言う程度の仕上がりに私もがっかりです。

 不細工でもとりあえず張り付けたオーバーレイによってちょっと触ってみたところ,想像以上の良さでした。これはビビビときますね。

 このままでは惜しい。実に惜しい。

 観念してオーバーレイを買うという手もありますし,作り直そうという気もします。どうしたものか・・・と悩んだのですが,どう考えても有償で配布されているオーバーレイには勝てないと悟り,予備も含めて2枚注文しました。

 さあ,ここまで来るともう止まりません。

 家と会社で便利に使いたいと思った瞬間,もう1台欲しいと思ったわけですが,先日HP20bとHP30bは国内の在庫が払拭していることを確認済みで,こうなるとアメリカのamazon.comあたりから買うしかありません。

 28ドル程度ですので,送料までいれて日本円で5000円までなら即買い,と決めてHP30bを探してみると,あろうことか日本のamazonの在庫が復活,価格は計ったように4900円でした。

 そして,これを眺めてしばし,腕を組んで考え込みます。

 HP30bはキーの感触も良いそうだし,高級感が高いそうです。これが主力機になることは目に見えていますが,そうなった場合に,壊れたらどうしよう・・・代わりはないし・・・ええい,もう1台追加だ。

 ということで,2台買いました。なんということか・・・

 それでもですね,2台で9800円です。

 WP34sは抵抗の並列(コンデンサの直列でもいいんですが)の値を求める計算をメニューに押し込むようなことはせず,貴重なキーにアサインしてあるくらい,電気屋さんとって便利になっています。

 余談ですが,dBの計算や抵抗の並列の値などは,別にちょこっとプログラムを組めば済む事で,試しにHP-15C LEでプログラムを組んでキー一発で呼び出せるようにラベルを割り当てたら,とても快適な使い心地になりました。よく使う機能がぱっと呼び出せるかどうかは,とても大事な事だとわかります。

 聞くところによれば今のキーアサインには反対意見もあるそうですが,かたくなに専用キーに割り当てられている状況をみるに,どうもWP34sの開発者は電気屋さんなんじゃないかと思います。

 こんな電卓,どこにも売ってません。ゆえに壊れたりなくしたりしたときにダメージは大きいと予想され,「あああのときもう一台買っておけば良かった」などと後悔するくらいなら,「2台も買うことなかったなあ」と後悔するほうがよっぽどよいように思えてきました。と,自らの行為を正当化しておきましょう。

 オーバーレイを3枚買わなかったことを今さら悔やむわけですが,まあ1台は予備機ですし,いざというときに部品の移植が出来ればそれでいいので,オーバーレイは2枚でもなんとかなります。

 さらに,せっかくですから最新のファームを用意しましょう。先日のHP20bでは正式公開版のV3.1build3311を書き込みました。昨年11月の公開です。

 開発中のバージョンを見ていると,すでにV3.2になっているようで,1月23日現在の最新版はV3.2build3360ですので,これをダウンロード,手に入れたHP30bに書き込みを行います。

 一度WP34Sを書き込むと,以後はデバッグモードに入ることによって,少しは簡単に書き込みができるようになりました。Dを押しながら電源を入れ,ONキーを押しながらSを押し,もう一度Sを押すと,Samba Bootモードに入ります。ここでMySambaを使えば,わずか24秒で書き換え完了です。

  32kHzのクリスタルと18pFのコンデンサの取り付けも終わって動作の確認を一通り行った後で,オーバーレイを張り付けていきます。

 2台のHP30bと1台のHP20bの書き換えが終了,ほぼ同時に届いた2枚のオーバーレイはそのまま2台のHP30bに貼り付け,HP20bについてはもう一度プリンタで印刷して,綺麗に張り付けてみました。

 さすが専用のオーバーレイだけに,綺麗に張り付けられました。まるで市販品のような仕上がりです。

 自分で印刷した物は,全開と打って変わって綺麗に張り付けられたのですが,シールが分厚いらしくて曲がったところから剥がれてきます。これは残念です。もう少し薄いシールを探して貼り替える必要があるかもしれません。

 HP30bとHP20bを交互に使ってわかったのですが,違うのはキーの感触だけじゃないんですね。HP30bの液晶のコントラストはHP20bよりも高く,見やすいです。また液晶にカバー(風防と言います)が付いていますので,傷や破損にも強いです。

 キーのタッチは,HP30bの方が良いというのが一般論ですが,HP20bもそんなに悪いわけではないと思います。HP30bの方がチャタリングもあるし,押した感触はあっても入力されていないなどのトラブルがあって,どうも信用出来ないという印象もあります。

 そうこうしているうちに,カチッという感触がなくなってしまったキーが見つかりました。また,強く押すベキっと音がして,キーが壊れてしまいました。

 こうなるともう分解しかありません。戻せなくなる可能性もありますが,このまま置いておいても仕方がありませんので,分解します。

 HPの電卓はキーの下側が支点となり,上側だけが押し込まれるような特異な構造をしています。これが独特の押し心地を作っているのですが,HP30bのキーはこれを簡略化した構造で,すべてのキーが下側で枠にぶら下がったような構造になっています。

 このつながった部分がしなって,独特の反発力を作っているようなのですが,基板上にあるメタルドーム(ペコ板といいます)を押すために,キーの裏側から直径1mm程のピンが出ており,これがゴムのシートを介して,ペコ板を押し込むようになっています。

 今回の故障は,このピンが折れてしまっていたことでした。完全に折れてしまったのであれば復活は難しいのですが,曲がっているようでしたので,これを慎重に引き起こします。

 どうも,キーを強く押したことで曲がってしまったようなのですが,こういうのって日本のメーカーの品質基準だと,ちょっと出荷できないんじゃないかと思うくらい,やわな感じがします。2009年に発売になった電卓ですので,本来だったら改良されてしかるべきだと思うのですが,そうならないところに,おおらかさを感じます。

 予備機を買っておいて正解でした。

 一方で,HP20bはゴムのメンブレンの上にキートップが被さるような,よくある普通の構造です。押し心地は確かに良くないかもしれませんし,ストロークも大きく使いにくいのですが,丈夫そうと言うのは大きなメリットだと思います。

 この手の物って,機能とか値段とか(もしくは完全なる趣味性の高さとか),そういう文脈で語られることも多いのですが,結局最後には「もっと使っていたい」と思わせる吸引力が勝負です。

 それはボタンの感触かも知れませんし,ぱっと見た目の格好良さかも知れません。最終的には「好みの問題」で片付けられる要素でもあるわけですが,とはいえヒット商品というのはそれが大多数の人々に支持された結果であるのですから,軽く考えるわけにはいかない,重要な部分じゃないかと思います。

 そしてWP34sには,それがあると私は思います。

 キーや形状などのハードウェアデザインはHP20bやHP30bそのものですから,ソフトウェア(と強いて言えばオーバーレイ)がその使い心地を決めていますよね。HP20bもHP30bも,決してハードウェアとしては良く出来たものではなにもかかわらず,この心地よさですので,個人的にはよい勉強になりました。組み込みソフト屋さんには,もっと頑張ってもらわないといけません。

 ところで,HP20bをWP34Sにすることに始まり,HP30bを買って改造,HP15CLEも引っ張り出して使って見たり,HP35sを使ってみたりと,ここしばらくHPの電卓を触ってきましたが,それぞれに個性があるもので,全然使い心地が違います。入力方法が同じと言うだけで,もう別物だといっていいでしょう。

 確かにWP34Sは使いやすい多機能な電卓ですが,実はHP15CLEが一番使いやすいなと感じたりしています。ぱっと見るとキーも少ないし,7セグメントのLCDですので不便そうに思うのですが,良く出来ているので,ストレスなく入力出来ますし,表示も十分に寝られていて,これで困ることはありません。未だに愛用者が多いというのも,なるほど頷けます。

 HP15CLEはもったいないので常用しません。WP34Sをガンガン使う事にしましょう。

マルチクイックMR730ccを買いました

  • 2013/01/17 12:09
  • カテゴリー:散財

 先日,離乳食を作るために茹でた小松菜を包丁でトントンと細かく刻んでいる嫁さんを見て,こういう作業こそ機械化すべきじゃないのか,と言う問題意識がぐいっと頭をもたげて,調理家電を探してみることにしました。

 いわゆるフードプロセッサーのたぐいになるわけですが,これははっきりいって,とっても面倒な代物です。そこそこ大きいので使うためにも保管するにも場所を取る,電源の確保が大変,お手入れに手間がかかる,案外うるさい,ということで,それこそ一日中みじん切りをやってる人ならいざ知らず,結局包丁でやった方が楽だし早いということになりかねません。

 裏を返すと,これらの問題が解決すれば導入してもよいわけで,フードプロセッサーの欠点として何十年も語られているのに改良されていないはずはないと,ちょっとamazonを見てみることにしました。

 そうすると,ありました。タイムセールをやっていて,しかもキャッシュバックがあるというので,とりあえずポチりました。

 ブラウンの「マルチクイックMR730cc」です。お値段は9500円。泡立て器付きです。

 この商品,いわゆるブレンダーです。どかっと設置して使うのではなく,50cm程の棒状の本体の先端に,花びらのように開いた部分があり,ここに高速回転するブレードが付いています。液体を混ぜるのはもちろん,ちょっとしたものなら回転するブレードですりつぶすことも可能です。

 しかも,この先端部はステンレス製で,調理直後の熱い物でも冷まさずに処理できます。飛び散ると危ないと思いますが・・・

 先端部を外して付属のスライサーに本体を差し込むと,みじん切りが可能です。もちろん特別に付属する泡立て器を使えば,結構面倒な泡立ても楽ちんです。

 ま,このくらいなら別に普通の商品ですが,このMR730ccが素晴らしいのは,コードレスであることです。

 この手の調理家電は電動工具と同じで,結局ACで動くものに,コードレスタイプはかなわないというのが,私の認識でした。ところがえらいもんですね,最近のコードレスは。

 パワーも十分,連続動作時間もAC機と変わらない時間を確保し,使いたいときにさっと手にとって使う事が出来る格別の便利さと見事に両立しています。使わない時は専用スタンドに立てて置くと,いつも満充電です。

 しかし,使って見るまで油断は禁物です。

 先週末実際に使ってみました。

 まずブレンダーです。ブレンダーを使う作業の定番はなんといっても,自家製マヨネーズです。

 小学校の家庭科の授業で油を徐々に入れるべき所を,1回の投入量をどこまで増やすことが出来るかというゲームを始めたバカ男子(もちろん私が筆頭です)が,しきい値を超えた油の量に突然分離してしまい,女子に怒られたあげくにお通夜のように無口で食することになってしまったあの一件以来,マヨネーズを作るなんてことは考えないようにしてきました。

 説明書にあるように,材料を揃えます。油・・・これはオリーブオイルでもよいそうです。面白そうです。酢・・・酸っぱければよいということで,レモン汁(というかポッカレモン)でいきましょう。塩とコショウは私の気持ちを込めて,多めに入れておきます。

 最初に卵を付属のカップに入れて,他の材料を投入していきます。そしてブレンダーを黄身を潰すように回転させます。

 おー,みるみる乳化していきます。小学生の私に見せてやりたいです。

 味見をしましょう・・・うえぇ,ゲロマズ-。

 オリーブオイルの味しかしません。酸味はさわやかと言うより,そのまんまレモンです。塩もコショウもたくさん入れたつもりでしたが,個性的な油と酸味が強烈過ぎて,全然足りない印象です。

 これはマヨネーズではなく,オリーブオイルとレモン汁だと思って食べようという事になりました。よく言われるように,マヨネーズは油の味がそのまま出てきます。美味しい油と言われてもピンと来ません。

 嫁さんの「普通の油と普通の酢でやったら?」という心ないコメントに,「それなら味の素のマヨネーズでええやんけ」と涙目で返すのが精一杯でした。

 気を取り直し,みじん切りです。こちらが本命ですね。みじん切りと言えば玉葱,玉葱と言えばカレーです。

 私は玉葱を2玉使うのですが,玉葱を1/4に切ってスライサーに入れます。あれ,2玉入りません。仕方がないので1玉半だけにしておきます。

 スイッチON!ぐいーんとブレードが回転し,玉葱が細かくなっていきます。しかし,量が多すぎたのか,全体に細かくならず,細かい層と荒い層が分かれてしまいました。

 これではいかんと,荒い層まで細かくなるよう,しぶとく電源を入れ続けます。ああ,やり過ぎて細かくなりすぎました。

 フタを開けると,あわれ,玉葱おろしが出来上がっておりました。ドロドロです。

 ま,まあいい,最終的には玉葱は溶けてしまうんだから,これでいいんだよ,と自分に言い聞かせますが,これだけドロドロだと,きつね色になるまで炒めることが出来ない事に気が付きました。油と混ぜて熱を加えるだけです。

 ここで失敗を悟った私は,ばれないようにさっさと煮込みに移行します。

 完成後,口に入れて,私は嫁さんに謝りました。

 まず,玉葱のつーんとした味が強烈です。そしてあの独特の甘みが全くなく,コクもありません。その上,カレーがまるですり下ろした山芋でも入っているかのように,ネバネバしています。

 やっぱあれですね,みじん切りにして十分な熱を加えて甘みを出すことをしないと,さっぱり美味しくありません。

 ちなみに,半玉残った玉葱は,うまくみじん切り出来ました。要するに,量が多すぎたことが失敗だった,と言う話ですね。1玉が限界だと覚えておきましょう。

 MR730ccは単純な家電だけに,使いこなしが必要です。そこが面白さでもあるわけですが,私は完全になめてました。

 ということで,まとめておきましょう。


・よいところ

 なんといってもコードレス。いちいち電源を用意することもなく,作業中に邪魔にならず,これはもう別の商品といっても良いくらいです。

 ブレンダー,スライサー,泡立て器の3点セットで,主な調理はほとんど可能です。しかもほとんどのパーツは食洗機で洗うことが出来るので,片付けも簡単です。

・わるいところ

 結構大きく,重たいです。片手で握って使うのですが,小さい手の女の人にとっては,やや使いづらいんじゃないかと思います。子供なんかが使う事を想定していないのかも知れないですね。

 スライサーは処理量の限界を超えると失敗します。逆に少量過ぎても処理できません。適量は失敗をしながら覚えておくしかないかも知れません。それに,元々期待していた小松菜は水分量が少なく,スライサーではきちんと粉砕できなかったらしいです。

 お手入れは楽なのですが,すべてのパーツが食洗機対応ではないので,何を食洗機で洗ってはいけないかを覚えなければなりません。失敗すると壊れます。

 スタンドに立てて置くといつでも充電された状態でさっと使える便利さはあるものの,案外設置面積があるのと,背が高いので結構な存在感があります。スタンドに引っかけるのは、見えないに位置にある穴にきちんと合わせないと外れて転んでしまいますので,適当に置くという気軽さはありません。


 単純な道具故に,使いこなさねば役に立ちません。慣れてくれば手放せなくなるほど便利になることは間違いなさそうですし,なんと言ってもコードレスですから,根本的に問題となる煩わしさはかなり解決しています。ここで面倒になってしまうと,ずっと使わなくなってしまいますから,最初は嫌でも無理に使うくらいの気持ちの方が良いかもしれません。

 ところでこれ,嫁さんへのプレゼントです。いや,なにもええ話ではないんですよ,クリスマスのプレゼントをもらったのに,私は用意をしておらず,針のむしろにいるような気分で年を越さねばならなかったのですが,これはいわば,その自責の念から逃れるための手段という側面もあったりするのです。


 

NSpire CAS with TouchPadを買いました

  • 2013/01/15 12:59
  • カテゴリー:散財

 円安が進行しています。1ドル80円は昔の話,90円も目前という急転直下っぷりに,株価も踊っています。

 ここしばらくの円高と,実はアメリカ製の商品が大変に魅力的なものになってきているという現状に加え,それらを入手する方法が昔に比べてはるかに楽になったことがあって,結構気軽にアメリカ製の商品を買うことがあったのですが,円安になるとそういう訳にもいきません。

 ということで(なにがということでだ),TIの電卓,Nspire CAS with TouchPadを買いました。9500円でした。

 なんで今さら電卓,しかもTIなのよ,とツッコミがありそうですが,まあ聞いて下さい。アメリカでは,TIは教育機関向けのビジネスを本気でやっているメーカーで,電卓もその部門の管轄です。

 単なる電卓ではなく,電卓を使った教育環境を揃えていて,例えば今回のNSpireは生徒一人一人に配り,先生は先生専用のNSpireで指導をする,というシステムが販売されています。

 よく言われることですが,アメリカでは電卓,それも関数電卓が高等数学の学習に積極的に取り入れられており,答えを導き出すためのプロセスを訓練します。日本ほど記憶力と計算力を試されるわけではなく,そこは機械に任せましょうというのが,かの国の考え方のようです。

 また,アメリカでは各種の公的な資格試験に関数電卓の持ち込みが許されています。実質的には,関数電卓無しで試験に挑むのは無理と言われるほど,大事なアイテムです。日本でも一部の試験には認められていますが,それほど重要でもなければ,数も多くはありません。

 という事情もあって,アメリカでは電卓が現在進行形の商品なのです。日本のように吊しで数百円とか,あるいは景品でもらったとか,高機能な電卓やポケコンは死滅したとか,そんなことはなく,きちんと進化して新製品が販売されています。

 そしてこの世界の覇者が,Teaxs Instrumentなのです。

 TIの電卓は日本ではほとんど見かけませんが,それは日本で売れないからです。TIの電卓は世界中で売られています。しかも最新の技術を使って,どんどん進化しています。最新のNSpireCXというモデルは,QVGAの65000色表示可能なTFT-LCDに,CPUはARM9をおごり,SDRAMとNANDフラッシュを装備した,かつてのPDA並の重装備です。USBも搭載,電池はリチウムイオン電池を内蔵していています。

 こういう進化を遂げた電卓は日本にはないのですが,それでも日本ではポケコンという独自の文化が花開いており,こちらもやはり高等教育機関で用いられていましたが,それももう廃れてしまいました。

 前置きが長くなりましたが,私は小さくてボタンがいっぱいついていてディスプレイが付いているものには目がありません。これまでにもポケコンや電卓をちょくちょく買ってきましたが,不思議なことにTIの電卓には手を出してきませんでした。

 避けていたわけではないのですが,別にRPNでもない普通の電卓をわざわざ海外製で買うこともなかろうと考えてのことですが,普通じゃないとわかれば俄然欲しくなるのには,困ったものです。

 私が魅力的に感じたのは,CASという機能でした。数式をそのまま処理するというやつです。中学生の頃,文字を使った数式の計算を覚えた時に,電卓やその高級版であるパソコンで,数字を計算することしか出来ないことに疑問を感じていました。やりたいことは式を変形し文字を残したまま方程式を解くことだったのに,実際の数しか出てこないなんてのは,所詮は計算機だなあと思っていました。

 それが,Mathematicaに出会ってから,意識が大きく変わりました。しかし高価なソフトです。個人で持つことなど出来ずに,ここまで来てしまいました。

 ですが,アメリカではこの数式処理が,電卓で出来て,学生が個人で使える環境が出来ているんですね。それがこのCASという機能です。

 あのMathematicaが1万円で使える,という話で一気に盛り上がり,折からの円安の影響が出る前にさっさと購入に至ったのが,このNSpire CAS with TouchPadです。

 カラー版でかつ最新のNSpire CXにはあえてしませんでした。カラーである必要を感じなかったこと,充電池内蔵だと使いたいときに電池が切れているともうお手上げになってしまうこと,モノクロの機種でも出来る事は同じであるということで,NSpire CAS with TouchPadにしたのです。

 さて先日届いたNSpire CAS with TouchPadですが,嫁さんの最初の一言は,「サイビコみたい」でした。

 いやー,サイビコなんて,普通の人はしらんよ・・・

 たしかにそういう印象はありますが,こっちはCASを持っているんですよ,もう桁違いです。失敬な。

 電池を入れ,OSを最新の物にアップデートし,ちょっと使って見ます。とはいえ使い方がよくわかりません。

 CASですから,例えば式を入れてENTERを押すと,式を解いてくれます。計算結果を出してくれません。試しに,電気回路では定番の計算である,20*log(2)と打ち込みENTERを押すと,20*log(2)と出てくるだけです。

 つまり,このNSpireにとって,20*log(2)は20*log(2)だけが正解であり,これを計算して数字にしてしまうことは,近似値を求めているだけのことなのです。

 もちろん,NSpireは近似値も計算できます。CTRLキーを押してからENTERを押せば,6.020599913と計算結果が出てきます。でもこれは正解ではないんですね。

 入力が数式の近い形でできるし,大きな画面は入力した式がそのまま残っていて,履歴もたどることができます。これはいいですね。

 それと,CAS機能のお約束で,二次方程式の解の公式を求めてみます。おー,あっさり答えが求まります。ついでに三次方程式の解の公式は・・・えらい時間がかかってますな,どれどれ・・・こんなに複雑な答えなら無理もないです。


 ようやく,リファレンスマニュアルに目を通したところです。もう高校や大学の数学など忘れてしまっていますが,少しずつ思い出しながら,この唯一無二の機能を楽しんでみようと思います。

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