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MJテクニカルディスク第3集

  • 2007/05/21 15:59
  • カテゴリー:散財

 「MJ無線と実験」というオーディオ雑誌があります。なにかとオカルト色の強いハイエンドオーディオの世界ですが,自作中心の雑誌として長い間親しまれてきました。昨年1000号というたいへんな記録を打ち立てたことも,少しだけ話題になりました。

 で,ここがオリジナルのLPを出しています。その名も「MJテクニカルディスク第3集“月の光”」です。

 第3集と言うからには第1集と第2集があったのでしょうが,私が知るのは第3集です。それもかなり昔から広告が出ていて,ひょっとするともう在庫が底を尽きるのではないかと,不安に駆られて買うことにしました。

 テクニカルディスクと名乗るくらいですから,技術的なテストが可能な音が収録されていて,先日無線と実験のバックナンバーをPDFにしようとスキャンをしているときに,このディスクを使ってレコードプレイヤーをチェックする方法を特集しており,私も試してみたくなりました。なにせ,今私が使っているプレイヤーは,中古のジャンク品を格安で買ってきて,以来素性も分からずに使ってきたもですので,ずっと心配だったのです。

 なんでもショウルームに行けば直接買うことができるそうですが,面倒なので通販にしました。ちなみにレコード屋さんでは売っていません。

 一緒に同じようなディスクでCDもあるので,こちらも思ったのですが,誠文堂新光社のホームページからは,1回の注文で複数の商品を買うことが出来ないそうで,買う場合は連絡を別途よこせ,とあります。メールを送ったのですが,2週間以上放置されてしまったので,仕方がないからLPだけでとりあえず注文をすることにしました。

 それが先日届いたのですが,2枚組で,1枚目は竹松舞というハーピストの演奏を収録したもの,2枚目はテクニカルディスクです。

 いやー,新品のLPなんて買うのは,何年ぶりでしょう。新品のLPを袋から取り出すときの感動を,久々に味わいました。

 2枚目には,溝を切っていないトラックがあり,ここに針を落とすと,インサイドフォースキャンセラーのチェックを行うことが出来ます。

 針は,レコードの溝に対してある角度で接していますから,ディスクが回転すると内側に引っ張られるような力が発生します。つまり,溝の左右の壁にかかる力がアンバランスすることになってしまい,これは好ましくありません。

 そこで,トーンアームには,外側に力をかける機構が用意されていて,内側にかかる力をキャンセルすることができます。この,内側にかかる力をインサイドフォースといい,これをキャンセルする機構をインサイドフォースキャンセラーといいます。

 私のトーンアープにもついているのですが,本当に正しく動いているのか疑問でした。

 試してみると,とりあえず正しく機能している様子です。インサイドフォースキャンセラーを0にするとスススーと内側に針が流れていきますし,インサイドフォースキャンセラーを増やしていけば,次第に針は外に流れるようになります。

 一般に,針圧と同じ重さにあわせるとされているインサイドフォースキャンセラーですが,それも針の形状による物らしく,確かに丸針のカートリッジならほぼ同じ設定で針の流れが止まります。しかし,楕円針やファインラインなどの特殊形状の針では,多めにかけないといけないようです。

 例えば,AT-F3/2では針圧の1.5倍ほど,AT7Vでは1.6倍ほど余計にかけないと,針の流れが止まりません。

 同時に針圧のチェックです。標準的な音量のトラックと,それより3dB大きな音の入ったトラックがあり,どちらも歪まないように再生できるならokというチェック法です。

 テクニカのカートリッジはどれも優秀で,標準針圧でどちらもクリアです。V15typeVxMRは少し重めの1.8gにしないと歪みました。面白いものです。

 手持ちのカートリッジで一通りこのチェックを済ませたあと,今度はトーンアームの共振周波数を見る事にしました。

 3Hzから20Hzくらいまでスイープする溝が刻まれたトラックがあり,ここに針を置くと,そのトーンアームの持つ共振周波数でシェルが大きく振動します。

 それを見てどうするのという話ですが,例えばレコードが反ってしまって,5Hzくらいの振動があったとします。もし,トーンアームが5Hzで共振すると,レコードのそりでトーンアームが大きく振動することになってしまい,音が途切れたり揺さぶられたり,ひどい場合には針が飛んだりするわけです。

 説明書によると,これが大体10Hzから13Hzくらいだとよいのだそうです。

 早速測ってみます。AT-F3/2やAT7Vは大体8Hzくらいです。V15typeVxMRで9Hzという感じです。ひどかったのはAT15Ea/Gで,5.5Hzでした。

 ところで,V15typeVxMRやME97HEはには先端にブラシがついています。これはホコリを取る,静電気を除去する,という目的以外に,レコードの反りなどで上下する振動をダンプするためのものとされているのですが,ダンパーとしての機能については目で見て確かめるわけにも行かず,あまり信用していませんでした。

 ところが,今回の共振の実験をすると,ダンパーのおかげでほとんど振動しないのです。確かに振動の方向が縦ではなく横なので効果的なダンピングが行われているとは思いませんが,それでも目で見て振動に気が付かない程です。

 この共振周波数を下げるには,トーンアームの重量を下げる必要があります。トーンアームそのものを軽くするわけにも,カートリッジを軽くするわけにもいきませんので,シェルを軽くすることになりますが,すでに私にシェルは軽いものですので,もう手がありません。AT15Ea/Gはちょっとひどいとしても,それ以外は8Hzくらいですので,諦めました。

 こうして素性を確認した上で聞き慣れたLPを聞いてみましたが,正直,あまり違いは分かりません。まあ,少なくともレコードに致命傷を与えないような状況であることが分かっただけで,よしとしましょう。

 で,1枚目をようやく聞きます。クラシックですので私にはあまり馴染みがありませんが,その割には楽しんで聞きました。特にB面のラヴェルは結構いいな,という感じでした。

 音そのものが余り良くないという評価をしている人もいますし,私もそんなに音の良さを感じたわけではありませんが,それでもLPでこれだけの音を録音しようというのは大変なことだろうと思います。


 一応,アナログプレイヤーの入り口くらいには来たでしょうか。あまり深みにはまるときりがありませんが,もう少しくらいは頑張って見たいところではあります。

 しかし,肝心のLPがなかなか手に入りにくい感じです。先日渋谷の中古レコード店に来ましたが,やはりそれ程の品数がないのと,全体的にお値段も高めでした。10年前なら,あるいは20年前なら,もう少しお手軽だったんだけどな思ったのですが,今度こそ本当にLPレコードは死滅するのかも知れません。

*istDLを買う

  • 2007/05/15 15:01
  • カテゴリー:散財

 先日,私の誕生日だったのですが,誰も祝ってくれないので,自分自身に誕生日プレゼントを買いました。

 というのは口実で,買った物はペンタックスのデジタル一眼*istDLです。

 なんで今さら,と思われるでしょうが,安かったのです。30800円。送料まで入れるともう少しかかりましたが,それでも32000円までです。

 いや,少し前にカメラ量販店で3万円にポイントという破格値でたたき売られていたのは知っていて,それに比べればかなり高いと思われるのですが,同じところで1月だったか,3万円で処分されていたのを一度買い逃していたので,今回は買おうと思い,注文をしたのが金曜日の夜,届いたのが日曜日の昼でした。

 ペンタックスのデジタル一眼は,*istDが出たときから迷っていたのですが,当時は結局レンズ資産を生かそうということでニコンにした経緯があります。ただ,MZ-10やMEsuperをジャンクで手に入れて修理したことをきっかけにFA43mmを買ってしまったことから,このレンズを常用して使い切るにはデジタル一眼が必要だろうと,そんな風に考えていました。

 だからといって,何万円もするボディーを買うのも非現実で,安売りでもされていたら買うかな,くらいのものでした。

 *istDLは2005年の発売で,*istDシリーズの下位機種にあたります。小型軽量,低価格を狙ったもので,ペンタミラー搭載というあたりがいかにも低コスト機であることを主張しています。(ついでにAFセンサーも3点と少ないです)

 とはいえ,基本性能は初代*istDシリーズと変わらず,600万画素,1/4000秒のシャッター,Kマウント/M42マウントなど幅広いレンズを装着可能と,私が欲しい機能はきちんと確保されていますので問題はなし。これが3万円ちょっとなわけですから,処分とはいえペンタックスが気の毒なくらいです。

 色はシルバーとどちらかというと好みではありませんが,色についてはこだわらず,その時手に入る色を「何かの縁」と納得するのが私の姿勢。果たしてシルバーも,安っぽさが強調されますが,そんなに悪い色ではありません。

 てことで,インプレッションです。

・小さい,軽い
 今でこそD40やE-410など,小型軽量のデジタル一眼がたくさん出ていますが,このサイズとこの軽さを2005年で実現していたというのは,さすがにペンタックスだなあと思います。

 D2Hには重さを感じさせないデザインの良さとホールド性の良さがありましたが,*istDLは実際の大きさよりも大きく見えるような感じがします。特にグリップが大きいので,損をしているように思います。

 加えて重量には落とし穴があり,単三4本という重たい電池を必要とします。これを入れると,一気に重量感が増してしまい,せっかくの軽さを満喫出来ません。ここにCR-V3というリチウム電池を使えば軽くなりますが,不経済です。私はエネループを使うことにしましたが,見た目の華奢さに反してちょっと重たいなと感じました。


・シャッター
 MZ-10の修理で分解をしたシャッターユニットと基本構造は同じと思われ,ミラーの上下,シャッターの開閉などすべての動作を1つのモータで行うシャッターユニットのようです。

 これはどういうことかと言うと,それぞれの動作は個別に制御されているわけではなく,モータの回転によって順番に行われるということです。それだけメカも電気回路も簡略化できるのですが,どうしても動作が緩慢になりますし,ずっとモータとギアの音が「ジー」とし続けます。これはD2Hなんかと比べても非常に違和感のあるところで,MZ-10を使ったときの感触そのものといっていいと思います。

 個人的には,MZ系の持病であったモータのピニオンギアの割れが起きないように,負荷の最適化設計がやり直されていることを期待したいです。

 そんなわけで,シャッターの動作はあまり心地よい物ではありません。ただ,連写をしない限りは,こんなものかと割り切れますし,そこは一眼レフですから,やっぱりシャッターを切ったときの楽しさは十分に備わっています。


・使い勝手
 これは慣れの問題も大きいのですが,結構操作に戸惑います。カーソルボタンの中央にあるokボタンの役割がちょっと意外で,階層化された設定メニューで,下の階層に進みたいと思ってokボタンを押してもダメだったり,ちょっと統一性がないように感じます。


・開放測光と絞り環の連動
 これは後で気が付いた事なのですが,開放測光のためにある,絞り値の連動レバーがないんですね。しまった*istDLだけか,と思って慌てて調べてみると,ペンタックスのデジタル一眼にレバーのついている機種はないようで,つまり絞り環を使って絞り値をボディに伝達することが出来ません。

 SuperAやProgramAといったプログラムモードを搭載した一眼レフと同時に用意されたAレンズの場合,絞り切った位置に固定するAポジションがあり,さらに電気接点が最小絞り値を伝達するので,ボディから絞りを制御出来るようになりました。

 当初はこの仕組みのないMレンズなどのために,絞り値を伝達するレバーも併設していたのですが,ボディから絞りを制御できればこのレバーは必要がないわけで,低コスト機から次第に省略されるようになります。

 *istDシリーズはすべての機種でこのレバーが省略されています。従ってまともに使えるレンズはAレンズ以降のものになってしまいます。

 使える使えないも大事ですが,私にとっては絞り環が使えないことも結構問題で,特に絞り優先AEでは絞り環を使うのが当たり前でしたから,ボディで絞り値を設定するという操作には,まだちょっと慣れていません。

 悪いことに,*istDLでは,絞り優先AEで絞り環をAポジション以外の位置にした場合,レリーズの時に設定された絞り値に絞り込まれることはなく,開放のままになってしまいます。

 この動作はある意味では正しい動作で,測光を開放で行っているのだから,撮影時も絞り込まれないのは当然ということでしょう。実際にそうして撮影された写真は,とりあえず適性露出になっています。

 これが絞り環で絞り込みが常に行われるM42レンズなどではどうかというと,絞り込み測光が行われる(絞り込んだ状態の明るさを開放値として持つレンズを取り付けたと解釈される)訳ですから,一応絞り優先AEも使えるわけです。

 ではMレンズなど初期のKマウントのレンズだけまともに使えないのか,となるわけですが,そこはさすがにペンタックスです。開放測光用のMレンズを実際に絞り込んで,適性露出を得る「ハイパーマニュアル」が用意されています。(気になるのは*istDLではハイパーマニュアルとは呼んでいない事で,ハイパーマニュアルを名乗るには何か他に条件があるのかも知れません。)

 マニュアルモードでにしてAE-Lボタンを押すと,一瞬絞り込まれて,適性露出を得ることの出来るシャッター速度がさっと設定されます。ここから絞りをいじるなり,シャッター速度をいじれば露出の補正も自由自在。

 実際に絞り込んだ結果ですので露出も正確です。この方法を使えばAレンズでもAFレンズでも,絞り環が使えます。

 実は,M42レンズを使って絞り優先AEを使ってみたのですが,どうも2段ほどアンダーになるのです。初期不良かなと思ったのですが,調べてみるとそういう物らしい。狂っている理由は実はよく分からないのですが,ハイパーマニュアルでは適性露出になってくれます。

 一応説明書にも,露出の誤差が出ると注意書きがされていますが,2段もアンダーになるというのは誤差というレベルではありません。ファインダースクリーンの問題だという記事も目にしましたが,それならFA43mmでも同じ事が起こっていいわけで,M42だけで起こっているということを考えると,装着レンズによる露出の補正が行われていないことが問題なのではないかと思います。実際,Aレンズで絞り開放で撮影すると,やっぱりアンダーになります。ROMを内蔵してレンズ情報を伝達できる仕組みがないと,どうも駄目なんじゃないかと思います。

 もしそうだとすると,機械的な互換性があるのに,肝心な部分で互換性を失っていることになります。ROMを持つレンズを使えば補正も出来る訳ですから,ROMの内レンズでもう少しオーバーになるようしてくれてあっても問題はないはずで,なぜそうなってしまったのか,もう少し考えてみたいと思います。


・サクサク感
 悪い物ではないと思います。切れ味という点で言えば物足りませんが,不用意に待たされることもなく,撮影のリズムは崩されません。必要にして十分という感じでしょう。


・画質
 良くも悪くも,一般受けのする画質です。JPEGのポン出しでも使い物になる画質だと思います。600万画素のAPS-CのCCDはこなれたCCDと言えて,特に破綻があったり,使いこなしに難しい訳ではないようです。

 画質も,鮮やかとナチュラルの2つを大きく選べるようになっています。ピクチャープログラムでは鮮やかに固定されてしまうので注意が必要ですが,むしろ受けのいい写真を撮るには鮮やかになっていた方がいい場合もあるでしょう。

 私の場合,幸か不幸かRAWで使うことに慣れているので,JPEGでは使いません。


・現像ソフト
 PENTAX PHOTO LABORATORYというソフトが付属しています。RAW現像ソフトなのですが,これが非常に使いにくいです。画面の拡大は出来ず,ルーペでの一部拡大だけですし,ほとんどの機能で使いにくいなと感じるものでした。

 考えてみると,NikonCaptureもCaptureNXも1万円以上するソフトなわけで,これと付属のソフトを比べるのも酷なのですが,現像のエンジンが最新のものを使える 現像ソフトは,やはりそれなりに使いやすくあって欲しいものです。

 ただ,ペンタックスがすごいのは,初代*istDのユーザーに対しても,最新のソフトを無償で提供していることです。PENTAX PHOTO LABORATORYはバージョン3になって,エンジンをSILKY PIXのものに変更になりました。

 定評ある現像ソフトでもあるし,なにより*istDが最新のK100Dと同じ画質を得られるようになるということがすごいことでしょう。

 それに,昔撮影した画像でもRAWであれば,最新の現像ソフトを使って画質を向上させることが出来るわけです。古い機種を見捨てない姿勢も素晴らしいですが,蓄積された財産を最新の技術で処理できることのメリットも大変に素晴らしいと思います。このあたりはニコンも見習って欲しいところです。

 ところが,私の環境では,最新のバージョン3にアップデート出来ませんでした。付属のソフトはバージョン2.1で,アップデータがバージョン3を検出できないと作業を中止してしまいます。

 この春に入れ替えられたアップデータの仕様のようで,2006年夏に用意されたアップデータを使っておかないと最新のアップデータを使えないようです。電話して確認すると古いものをCD-Rにして送ってくれるというありがたいお返事だったのですが,その後調べてみるとペンタックスのアメリカのホームページには古いアップデータがまだ残っていて,これを使って最新のアップデータまで使えるようになりました。

 SILKY PIXのエンジンですが,なめらかさは定評がある通りですが,どうも不自然なのです。被写体と背景の縁におかしな縁取りが現れたりするので,ちょっと困ったなあという感じです。もう少し試行錯誤が必要なのかも知れません。


・SDカード
 *istDLはSDカード専用です。しかし,CFを使う必要もないし,SDカードは高容量品が安く買えるので,むしろありがたいくらいです。手持ちの1GB(遅いです)を使っていますが,RAWではちょっと枚数が少ないですし,速度も遅いので,150倍速の2GBを注文中です。

 特に撮影後の記録時間と,そこから再生までの時間,画像の消去の時間が短縮されることを期待しています。


・そんなわけで・・・
 M42のレンズが使えること,FA43mmが使えること,これに加えて軽くて小さいというのは,私が*istDLを買おうと思った理由を十分に満たしています。撮影していて楽しいと思うのはさすがにD2Hで,質感といい音といい操作感といい,全く歯が立ちませんが,では*istDLがダメかというとそんなことは全然なく,気軽に外に持ち出せるカメラであると思います。

 なんといっても,FA43mmが常用できるようになったというのが最大のメリットです。早速使ってみましたが,階調が深いと言いますか,彩度の低い色でも情報が飛ばずに,きちんと粘っているように思います。

 これでリチウムイオン電池ならいう事ないし,縦位置と横位置の自動検出があれば,縦位置を多用する私にとっては手間が省けてありがたいところですが,低コストの機種では,無理な注文なのかも知れません。

 単三の電池は,いつの間にか切れていたり,液漏れしたりして,私はどうも好きにはなれないのですが,使いたいときにさっと使えないことは,ひょっとしたら最大のデメリットになるような気がします。

 いずれにせよ,D2Hに買い増すデジタル一眼としては,あまりに性格が違いすぎることでちょうどいい組み合わせになったのではないかと思います。

 課題ですが,現像ソフトによる画質の調整にはまだまだ慣れが必要です。精進しないといけません。

 あとレンズですね。この小さなボディを生かした,取り回しの良いズームレンズを1つ手に入れたいところです。

 それにしても,これが3万円か・・・ちょっと前なら考えられないことです。

3年ぶりの携帯電話の買い換え

  • 2007/05/08 13:29
  • カテゴリー:散財

 携帯電話を買い換えました。

 いっときますが,私はどっちかというと携帯電話が嫌いな人で,あると便利だから持っているという程度の凡人です。

 そんなだから,携帯電話に求める物は,通話とメールとiモードなどのちょっとしたブラウザであって,それ以外のカメラや音楽再生,ゲーム,テレビなどの機能は全然必要性を感じていません。

 さらにいうと,そんなだから,大きく重たいことはなにより苦痛なわけです。携帯電話は持ち歩いてこそ価値があるわけですが,大した期待もしていない携帯電話が必要のない機能で肥大化することは害であると思うわけです。

 人それぞれなので,あくまで私特有の考え方に過ぎず,実際の所こういうニーズを満たす電話機はほとんど発売されないか,発売されても傍流のマイナー機種になっていることが多いのです。

 ところが,ドコモの703シリーズでは,一気に私の好みに近づいてきました。モトローラのM702iSなどもかなり気になったのですが,無理矢理海外の携帯をドコモ仕様に仕立てた故のいびつさに違和感があり,結局買わずにいたのですが,久々のストレート型で厚さ9.9mmというD703iには,スクエアなデザインもあって,私の琴線に触れたのでした。

 機能的にも妥協はなさそうです。メモリカードは使えませんが,カメラも音楽再生も期待しない私にとってはかえって邪魔なくらいで,その潔さにかえって好感を持ちます。むしろ興味深いのは,システムはD903などの上位機種と共通なところも多く,700シリーズながら,900シリーズに匹敵する機能を有していることでしょうか。

 大事なことはサクサク感。最近の三菱の携帯電話はこのあたりもなかなか良くできていて,やはりD703iは私にとってはぴったりという感じです。

 AUあたりでは,ストレート型の薄型携帯は,デザインコンシャスで人気が高いのですが,D703iも同じ路線で人気が出るかなと思っていたらさっぱりのようで,先日実家のある大阪に戻った際に機種交換をしたときの価格は,3980円でした。もっと安いところもあったと思います。

 さて,ちょっと使ってみたところで,インプレッションです。

・薄い
 なんといっても9.9mmです。ズボンのポケットに入れても違和感がなく,鞄に入れても膨らみません。これだけでもこの携帯電話の価値があるというものです。

・取り回しが楽
 これまで使っていたSH900iは折りたたみで,分厚く角が丸いことから,ポケットから取り出す時になかなか摘めず,イライラさせられることもしばしばです。D703iの場合,薄い事に加えて角張っており,また長いのでささっと摘み出して使うことが出来ます。

・操作感もよい
 ボタンも少し飛び出していることから押しやすく,SH900iに比べても快適です。ただ,縦に長くボタンの位置が低いので,手に持ったときにボタンが若干押しにくいです。

・キーロック
 ストレート型は勝手にキーが押されてしまうことが懸念されるため,キーロックは必須なわけですが,D703iはD903などと違い,キーロックボタンの長押しでロックの施錠と解錠を行います。これがなかなかテンポが悪く,結構厄介です。
 それに,キーロックの自動施錠は,待ち受け時にのみ有効であるらしく,例えばメニューを表示させたままだったりするとロックが自動でかかりません。言われてみれば納得のいく仕様ではあるのですが,ある時はロックがかかり,ある時はロックがかかっていないという挙動の違いに,結構考えてしまいました。
 そうそう,PWRキーを押せば,ロック中でも画面が点灯し,メールなどの状態が確認できます。この操作では解除は出来ませんが,解除するに値するかどうかを手軽に確認できるのは便利です。加えて着信中は通話開始で一時的にロックが解除されます。キーロックは誤動作防止と利便性のトレードオフですので,この仕様はとてもよく考えられたものだと思います。

・カメラ
 カメラには期待をしていませんでしたが,それで正解でした。画質も次第点で,QRコードの読み込みと,ちょっとしたメモくらいの感じで使うのが精一杯というところでしょう。ついでいうと縦位置では,ついついカメラに指がかかってしまうので,写真に指が写り込んではがっかりすることもしばしばです。

・日本語入力
 文字も見やすく,レスポンスもよいので日本語入力にはストレスを感じません。また,自動でカーソルが右に移動する機能があるため,同じキーの連続押下で文字を出すこと(たった,などの入力ですね)で,いちいち矢印キーを押す手間も省けます。
 戸惑ったのは小さい「っ」などの入力で,SH900iではタ行を6回押せば出てくるのが,D703iでは「つ」を出し「小文字」キーを押します。キーを押す回数はD703iの方が少ないのですが,キーを押しかえるという作業になれないうちは,スムーズに入力出来ないです。
 そうそう,基本的なことですが,SH900iはキーの読みこぼしがありました。D703iではそれはありません。これだけでも実に快適です。

・待ち受け画面
 私はあれこれカスタマイズする人ではないのですが,カレンダーの表示に制約があるのがちょっと困りました。カレンダーは表示エリアの最低1/3を必要とする大きなもので,SH900iのように画面の隅っこにちょこっと出すという事が出来ません。待ち受け画面と重なってしまい見にくくなるので,私は結局非表示にしました。

・画面
 QVGAですが全然問題はなし。輝度も発色も十分で,私はこれ以上の液晶を欲しいと思いません。ただ表面は傷がつきやすい感じがあるので,保護フィルムは必須でしょう。

・まとめ
 ドコモでは唯一無二な携帯電話ですので,10mmを切る厚さにストレート型が欲しいと思えば,これ以外に選択肢はないわけですが,特に不満は見つかりません。とてもプラスチッキーですので所有欲を満たす満足感はありませんが,デザインも色も(私は黒にしました,というより黒しか在庫がなかったのです)気に入っていますし,操作感も良い。これまで私が,いかにSH900iを我慢して使ってきたかがよくわかりました。

 携帯電話を持ち歩くことが苦にならなくなったことは本当に大きいのですが,反面で落としやすい,壊れやすいということもいえるでしょう。SH900iは実に頑丈でしたから,ちょっと扱いを変えないといけないかも知れませんね。

CM1で手に入れた至高の世界

  • 2007/04/23 15:52
  • カテゴリー:散財

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 ついこないだスタックスのイヤースピーカを買ったばかりなのに,今度はスピーカを買ってしまいました。

 言い訳すると,別に衝動買いをしたわけではありません。300Bのシングルアンプをいじる過程で,どうして音が良くならないのだろうと悩み,ひょっとしたらスピーカが原因ではないかと思ったことがスタートで,これはもういいスピーカを実際に手に入れて試してみるしかないと結論したところで,あるスピーカがとても欲しくなったのです。

 B&WのCM1。イギリスの名門B&Wが満を持して発売した小型のモニタースピーカです。2006年に登場するや国内外の賞を総なめにし,激戦区である2本セットで10万円という価格帯において,その価格を遙かに超える内容に,ライバル達がくずおれたと言われる,ベストセラーです。

 様々なレビューはもとより個人の購入者のインプレッションに至るまで,その感想はまさに絶賛であり,否定的な意見があってもそれはこのスピーカの目指す方向性が個人的な趣味に合わないという話に過ぎません。


 1年ほど前,ふとしたことからB&Wの800を聴く機会がありました。言うまでもなくB&Wのフラッグシップモデルなわけですが,この時私が驚いたのは非常に低レベルなお話で,ボーカルがしっかり真ん中で定位して,まるで目の前で歌っているようだと感じたことでした。

 私はことスピーカに関して言えば,こういう感動を味わったことがないヘタレで,リスニングポイントを変えればボーカルの位置も変わるとか,音程によって聞こえる場所が変わると言った,音質云々を難しい言葉で表現するまでもない,低次元な悩みを抱え続けていたのです。

 自分の世界の狭さにはうんざりするのですが,スピーカなんていうのはこんなものだと,そんな風に割り切っていました。そういう限界の中で,地に響く低音やら天に突き抜ける高音やら,と小難しい評価をしている物だと思っていたわけです。

 しかし,B&Wの800を聴いてから,2本のスピーカでもきちんと空間を展開できると知ります。そして,解像感や周波数帯域の広さなどは,こういう定位感がまず最初にあってから議論される物であることも知るわけです。

 これまで使っていた私のスピーカはJBLの4312Mです。名機4312をそのまま小さくしたレプリカですが,300Bシングルの検討を続けていく中で,その測定結果と実際に出てくる音の間にどうしても埋まらない差が出てきてしまって,ものすごくフラストレーションがたまっていました。

 300Bシングルのスペックは改良前の無帰還の状態でも21Hz~22.3kHz,改良を重ねて負帰還を2.8dBかけた最終の状態では12.3Hz~27kHz,ダンピングファクタは3.6ですから,何度改良をしても,音が出た瞬間にいつも感じる「あ,帯域が狭いな,だめだなこりゃ」という印象は,どうもアンプに起因するものとは思えません。

 しかし,4312Mはそれでも2本セットで6万円ほどもするスピーカで,かのJBLが世界中で販売しているロングセラーでもあります。だから4312M疑うよりも,自作のアンプを疑うのは,今の私のスキルなら無理からぬところです。

 それだけではなく,やはり音程によって聞こえる場所が変わったり,ボーカルの位置が安定しないことも気になっていて,これもアンプの位相特性が悪いせいだと決めてかかっていました。

 しかし,やはり納得がいかない。スピーカをいい物に変えて,どれくらい改善されるのかを確かめたいなあと思っていたのですが,4312Mがどれくらいの位置付けで,ここからステップアップするにはどんなスピーカを選べばいいのか,さっぱりわからないのです。

 ヒントになるのは,かつて感じたB&Wの音でした。

 当時の私は不勉強で,B&Wといえばノーチラス,ノーチラスといえば高い!という今年か頭になく,小型の物は余り目にしないということもあって自分にはもったいない物だと漠然と考えていました。

 ところが,ある時広告で600シリーズという小型のスピーカを見て,急にB&Wを身近に感じ感じるようになったのです。

 そこで早速B&Wのスピーカをいろいろ調べてみましたが,600シリーズはお手頃な価格で小さいのですが,評価は今ひとつ。かといって700シリーズや800シリーズはちょっと高価で手が出ません。予算は2本で12万円くらいまでなのです。

 ところが,CM1という2本セットで10万円程度のスピーカが見つかります。805Sと同時に開発され,その血統を受け継ぐ小型のモニタースピーカとして登場し,そして世界中で絶賛されていることは前述の通りです。

 これなら間違いなかろう。モニターというのはおかしな色づけをせず,素直な音を出すことが使命です。そして805Sの血統を受け継ぐとあれば,その再生能力に俄然期待は高まります。少なくともボーカルの定位感については間違いないでしょう。

 視聴をしようと思いましたが,体調を崩したりしてなかなか機会もなかったのですが,ぐずぐずしていてはいつまで経っても買えないだろうと,意を決してお店に電話をしてみました。

 結果,ごこも在庫切れで,次の入荷は6月初旬とのこと。意を決したのにこれはなかなか厳しい現実です。

 唯一,ヨドバシカメラには在庫があるということで,これを買うことにしました。色はメープルで,欲しかったローズナットやウェンジはなかったのですが,私は色は選ばない人で,その時々に手に入る色を何かの縁だと受け入れて使っています。

 価格は99800円にポイント10%でした。まだまだ安いお店もあったのですが,在庫も持っていませんし,ポイントを考えると十分安いと思います。

 持って帰れないので配送料を払い,届けてもらったのが先日の土曜日。

 せっかくだからと置き場所も真面目に考え,ちょっとした模様替えをしてからセッティングをします。

 ドキドキしながら300Bシングルで音出しです。

 最初の印象は,低音が出すぎなんじゃないのか,でした。どーんとベースが鳴りますし,バスドラムもバスンバスンと出てきます。高音についても耳障りなほど出ており,なんとまあ賑やかなスピーカなことだと思いました。

 でもこれは4312Mと比べて聴いてみて,4312Mの狭帯域に慣らされたせいだと分かります。特別強調されている音ではないので,すぐに馴染んできます。

 そして注目のボーカルの位置ですが,これはもう期待以上。自分が左右に動いてもボーカルの位置は変わりません。座り込めば頭上で歌っている感じがします。ボーカルだけではありません。楽器の位置がきちんと定位し,前後の位置関係もはっきりとします。そうそう,まさにこの感覚が欲しかったのです。

 スピーカの外側からも音がきこえたりするのはちょっと感激で,ステレオ再生の本来の意味は,2つのスピーカで音場を再現することにあったのだと改めて思い出した次第です。

 さて,アンプを変えてみましょう。

 300Bシングルは中音域の太さが印象的で,ボーカルの質感がたっぷりです。その代わり帯域の狭さを感じ,同時に解像度の低さも気になります。

 5998プッシュプルは30分のウォーミングアップの間にどんどん音が変わる面倒なアンプですが,最終的には300Bにはなかった帯域の広さが印象的です。低rpの三極管に割には低音はタイトで,とても元気な音が出ています。

 20年前に作った2SK134/2SJ49のMOS-FETアンプでも試してみましたが,これが実は一番バランスが取れており,好印象でした。ボーカルの真の太さとワイドレンジ,そして解像感を適度に併せ持っていて,おそらくこれが一番普通の音なんだろうなあと感じました。CM1にはやはり半導体アンプの方が相性が合うのかも知れません。

 一緒に隣で聴いていた友人も同じような感想を持っていたようなのですが,これって実は測定結果や回路形式による傾向と一致するのが面白いですね。

 半導体アンプは多量の負帰還をかけ,低歪みを実現し解像度を上げ,しかも帯域はDCから100kHzまでまっすぐに伸びています。一方で300Bシングルは3dB以下という浅い負帰還で特性を欲張らず,中域のエネルギー感が生きる無帰還に近い状態で動作させることで,その太さが実現しているようです。その代わり繊細さはありません。

 5998のプッシュプルは10dB程度の負帰還をかけているアンプですが,裸特性の良さもあってかこのくらいの負帰還でも50kHzを再生できるほど広帯域ですし,とても元気があります。

 私の結論は,やはり300B。低音と高音はそれほど私にとっては大事な物ではなく,どちらかというと中域の質感があるのが好みです。解像度のなさはやや残念ではありますが,そういうのはイヤースピーカで聞けるわけですので,ここは300Bという真空管の個性を楽しむことにしましょう。

 しかし,アンプを変えてその違いがこれほど分かるという事は,4312Mではありませんでした。CM1の懐の大きさは,こういうところでもわかります。

 最後にイヤースピーカでも聴いてみましたが,これはもう別世界ですね。音場感が薄い代わりに,本当に細かい粒まですかっと見える解像感が強烈です。

 そんなわけで,CM1を鳴らしながら,とうとうここまできたか,と感慨深い物を感じていました。決して高価なシステムではありませんが,自分が欲しいと思っていたものが手に入った幸運は,お金では買えない満足感をもたらすものです。

 高さ30cmという小柄なエンクロージャと,わずか13cmの小さなウーファーからはとても想像も出来ない音が出ているCM1は,単純な帯域の広さだけではなく,そのぴしっとくる定位感から練りに練られたスピーカであることをうかがわせます。10万円でこれほどのスピーカが手に入る世の中になったことが信じられない気分です。

 他にもいろいろいいスピーカもあるのだと思いますが,価格以上の価値を持つ優れたスピーカを探し当てるのはなかなか難しい物で,好みの問題はさておいてもこのCM1というスピーカは,まず最初に検討してみる必要のあるスピーカであると,胸を張っていいたいと思います。

 300Bシングルについても,これくらいアンプのカラーを味わえるようになったわけですから,負帰還量を切り替えるスイッチを取り付けてみようと思っています。無帰還,3dB,6dBと3つくらいに切り替えて,そのキャラクタの違いを楽しむのもよいのではないかと楽しみです。

 で,4312Mですが・・・サブのスピーカに格下げとなり,MOS-FETのアンプに繋がっているのですが,音を出した瞬間に感じるあのがっかり感はCM1に慣れた耳にはより厳しく,まるでラジオや電話からきこえる音のようにさえ感じます。ここまで悪いと,他に使い道も思いつきませんし,どういう風に使うべきかと悩むところです。

 

イヤースピーカーで手に入れた至極の世界

  • 2007/04/16 15:38
  • カテゴリー:散財

 スタックスという,小さなオーディオメーカーをご存じですか。

 埼玉県にある小さな会社で,1938年に創業。1990年代に一度倒産しましたが,社員有志が会社を復活させ,現在に至ります。

 その独自技術とは,世界でここだけが作っている,静電駆動型のヘッドフォンです。「イヤースピーカー」と銘打ったこのヘッドフォンは,現在一般的な電磁駆動型のヘッドフォンと違った原理で駆動される特殊なヘッドフォンです。

 駆動原理が特殊なため,ドライバーユニットと呼ばれる専用のアンプがなければ動作させることが出来ません。だからiPodにつないだり,パソコンにつないだりということが簡単にはできません。

 しかし,その音質はまさに別次元。繊細,立体的,音場感,ワイドレンジなどいろいろな言葉が思い浮かびますが,一言で言えば「まるでそこにいるかのよう」というのが最も近い表現でしょうか。

 この「イヤースピーカー」を始めて体験したのは20年前,友人がオーディオマニアである叔父さんのお下がりを持っていて,これを少しだけ使わせてもらったことがあります。この時は,まさに目の前にぱーっと広がる空間に別次元のものを感じたと同時に,音の細さに物足りなさを感じました。

 その後何度か購入を考えたのですが,音楽を聴くためにと言うより音楽を作るために必要としたヘッドフォンに,この「イヤースピーカー」は不向きと考えて,結局買わずに来てしまいました。

 そんな折,友人がMDR-SA3000というソニーの高級ヘッドフォンを購入したのですが,これをちょっと聴かせてもらって,頭の中にぱーっと広がる音場と繊細さに感激して,モニターヘッドフォンにはない心地よさを知ってしまったからもう大変です。

#ちなみに友人のMDR-SA3000は,購入1年と数日で片側から音が出なくなってしまい,まさにソニータイマーの餌食となってしまいました・・・

 モニターヘッドフォンをリスニングで使うことに少々疲れを感じるようになったこともあり,純粋に音楽を楽しもうと真面目に「イヤースピーカー」の購入を検討することにしました。

 どの品種を買うかも大変に悩んだのですが,受注生産の最高級機種は論外としても,あまり安いものを買うのももったいないです。SRS-2050Aというお買い得な戦略モデルと,SRS-3050Aという中核をなす中級機種の2つで悩みました。

 SRS-2050Aでも十分そうで,しかも性能の割には割安感があっただけに最初はこちらを考えていましたが,後で買い直すのは大変ですし,価格差を考えるとSRS-3050Aにしておいた方が,きっと幸せになれそうです。これが規準となり,これに対して上か下かで判断される,そんなリファレンスモデルが手の届くところにあるのであれば,やはり多少無理して買っておく方が後悔しないでしょう。

 機種は決まりました。とはいえ,在庫を持っているお店も少ないですし,価格もなかなか高いですよね。今すぐ必要な物でもないので,何度かくじけてしまったのですが,一念発起。安くて信用できそうなお店を探すことにします。

 見つけたのは,東京・中野にあるオーディオショップです。価格はもちろん送料も安く,代引き手数料も無料で,しかし安さだけで勝負しているわけではないという感じが滲み出ているお店でした。

 きけば在庫もあるということで,すぐに予約。こういうのは勢いが大事です。ぐじぐじ迷っていてもなにもいいことがありません。

 代引きで発送してもらい,翌日の土曜日に届くようにお願いをしました。ああ,あれほど悩んだ買い物が,あっという間に決着してしまいました。

 当日,「イヤースピーカー」は,想像以上に大きな箱に入ってやってきました。

 ドライバーユニットは昔とそれほど大きさも変わらず,デザインの古くささも相変わらず。ですが奇をてらったデザインよりずっとましで,私は好きです。

 ヘッドフォン本体は想像以上にチープな感じです。四角く不格好なイヤーパッドも昔のままなら,そのほとんどがプラスチックで作られている華奢な感じも昔のまま。重量級の音が外観から想像できないあたりも,イヤースピーカーの伝統でしょうか。

 自作プリメインから出ているプリアウトと,300Bシングルの間にドライバーユニットを挟み込み,電源を配線してヘッドフォンと接続します。これで用意は完了です。

 ドキドキしながら,SACDをならしてみます。

 まず,安心をしました。期待以上あったわけではないのですが,期待通りであったことがまずなにより大事なこと。そしてこの20年で随分と音の傾向が変わってきたんだなあと思いました。

 それまでの印象は,解像度はずば抜けて高く,定位感が素晴らしい反面で中音域の張り出し感や低域のパワーの不足した,痩せた音がとても残念というものだったのですが,このSRS-3050Aではそうした不満を全く感じません。高域から低域までとてもフラットで,おかしな味付けも全くありません。どーんと落ちていくような低音,すーっと上っていくような高音,そしてしっかりと目の前にある中音と,それぞれの繋がりの良さは,ヘッドフォンにありがちな窮屈さとは無縁です。

 もちろん,繊細さや定位感,立体的な音場感はかつての記憶通りです。べったりと頭の真ん中に張り付くボーカルが,ちゃんと目の前にぽかっと浮かび上がります。ここ一番で気合いを入れた音が,どんな物にも邪魔をされずにそのままスコーンと出てくるあたり,さすがの一言です。

 そして,それまでのヘッドフォンでは,徐々に盛り上がる楽曲に「このあたりで頭打ちになるなあ」という覚悟を前もってしていたことに気が付きます。覚悟をしながら聴いていて,あまりにストレートにその盛り上がりを処理するこの「イヤースピーカー」にあれっ,という肩すかしを食らって,はっとします。

 もう楽しくて,とっかえひっかえCDを入れ替えて聴いてみます。

 オープン型なので外の音がそのまま聞こえることもモニターヘッドフォンと違うところでやや心配したのですが,立体感のある精緻な音に外の音が自然にブレンドされることで,まるで本当にスピーカーで聴いているかのよう。

 軽くて装着感も快適であるせいもあるのでしょうが,外の音がきこえつつ,頭の真ん中ではなく目の前に広がる空間は,本当にこれがヘッドフォンで再生されているのかと錯覚するほどです。

 そして同じソースをスピーカーでも聴いてみますが,一瞬でがっかりさせられます。スピーカーで聴いているのに,奥行きが感じられず,ボーカルが浮かび上がるような音場感もありません。楽器の場所も曖昧です。

 10万円のヘッドフォンは100万円のスピーカに匹敵する,と誰かが言ったような記憶があるのですが,10倍は言い過ぎだとしても,あながちウソではないでしょう。

 どんどん聴いていきます。

 お気に入りの「Eddie Higgins / Don Wilner Live At The Van Dyke Cafe」を聴いてみます。「ああ,ピアノはそんな位置にあったんだ」と驚きます。そして,左側に妙なノイズがあることに気が付きます。ノイズというより歪みです。

 これはまずい,初期不良かも知れないと慌てて,別のヘッドフォンで聴いてみますと,目立たないのですが,それはやっぱり聞こえます。どうやら何かがビリついているようですが,これまで気が付かない程目立つことのなかったこの音が,「イヤースピーカー」なら耳障りで仕方がないのです。

 そこにある音をすべて,良くも悪くもすべて,そのままに出す。本当に正直な音響機器です。

 観客の話し声も,食器の音も,すべてがそのままにきこえます。つまり,私はこのライブに来ているような感覚を味わっていたことになるわけですね。大したものです。

 SACDとCDの違いもよく分かるようになります。SACDが音の消えていく最後まで音源の位置がぼやけないのに対し,CDはある音量になると,ざざっと音が散らばって平面的になってしまいます。すーっと奥に消えていく感じがSACDには顕著で,もう普通のCDには戻れないなあと感じます。

 定価9万円,実売7万円ちょっとという,ヘッドフォンとしては破格の値段ではありますが,振動板やイヤーパッド,ハウジングに高そうな素材を使って何十万円もするヘッドフォンに比べると,必要にして十分な低価格な素材を使って,本当にお金のかかる部分にお金をかけた9万円のヘッドフォンには,まさに良心を感じます。

 実際,桜の木で作ったハウジングや,バイオセルロースの振動板を使っても,「イヤースピーカー」に限って言えばそれ程の効果もないのではないでしょうか。それほど,この製品は高い完成度を誇っているということでしょう。

 雑誌の評価でも,もう戻れない世界と書かれていました。本当にそうだと思います。そして,この音が私にとって,±0という絶対位置に置かれた事を,本当にうれしく思います。

 その上で,意外に健闘しているなあと思ったのが,モニターヘッドフォンとしてずっと使っている,フォステクスのT-50RPです。

 「プアマンズスタックス」と呼ばれることもあるヘッドフォンですが,15000円ほどという価格の安さとは裏腹に,なかなか良い評価を得ているようです。

 私もこれを始めて使ったとき,繊細さと解像度の高さを感じました。

 「イヤースピーカー」と比較してみると,T-50RPはさすがに低音が良く出ていたり,頭の中にへばりつく感じがして,いかにもダイナミック型だなあと思い知らされるのですが,その傾向はやはりフラットを目指していて,「イヤースピーカー」のそれに近いのです。

 他のヘッドフォンがいわゆる「どんしゃり」になる傾向が少なからずあるのに対し,T-50RPはそのあたりなかなか愚直で,いい音も悪い音もそのままに,という傾向で作られていることを,改めて感じました。

 これで3万円ほどの上位機種や,リスニング用の製品が出たりすると,ひょっとしてかなりすごいことになるんじゃないのかなあと思ったりします。

 音楽を楽しむためには,それ相応の機材がやはり必要であることは事実で,知らずにいればすんだ世界も,知ったが故に我慢できなくなるものです。

 SACDしかり,「イヤースピーカー」しかり。

 贅沢かも知れませんが,それで得られる世界は大変に価値あるものです。比べて分かる違いではなく,長時間使ってなんとなく感じる差,こういうものにお金をかけることは,おそらく無駄なことではないでしょう。

 SACDに「イヤースピーカー」の組み合わせは,現状で手に入る再生環境としては,おそらく上位に位置する物であろうと思います。電源やケーブルに気を遣うことはしていませんし,その生ぬるい心構えがなによりダメと怒られそうですが,私自身はとうとうここまできたんだなあという感慨があったりするのです。

 日曜日,注文していた「カーペンタース」のSACDが届きました。カーペンタースのファンはもちろん,オーディオマニア的にも大変評判になったものです。これについてはまた後日。

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