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2006年08月25日の記事は以下のとおりです。

冥王星の悲運

 ここ数日世界が注目する議論の行方が,日本時間の昨夜10時半頃に決着しました。

 冥王星を惑星から除外するかどうするか,というテーマが議論される舞台となった国際天文学連合のでの多数決によって,冥王星は惑星の地位を失いました。

 宇宙の話を一惑星に過ぎない地球に生活している,しかも人間という一種族が勝手に多数決などで決めていいのかやら,教科書を書き換える必要のある内容を「選んだ覚えもない」代表たちが勝手気ままに決めていいのかやら,まあいろいろな意見や考え方があるとは思いますが,一応「惑星」定義を決めるのは天文学者の仕事ですし,太古の昔から我々庶民は彼らの決めたことを信じて生きているわけですから,いいんじゃないかと思います。

 私は天文・気象にとんと疎い理系の人なわけですが,それゆえかなり正確性を欠いている部分があると思いますし,所詮テレビのニュースレベルの情報を信じて書いているだけなので,そのあたりはご容赦下さい。

 そもそもこの話は,惑星の定義がよく考えてみるとあいまいだなあ,というところからスタートしたようです。

 数年前に同じ国際天文学連合で,19人からなるワーキンググループがこの問題を一度議論しているのだそうですが,やっぱり意見が割れて決着しなかったらしいのです。

 わざわざ議論されるに至った理由はいろいろあるようですが,まず冥王星の軌道が特殊であること,その領域に冥王星を超える大きさの天体が見つかったこと,そしてそれまで地球の半分くらいと思われていた直径が実は1/5程度しかなかったことにあるようです。特に1990年代以降の観測技術の進歩により表面化してきた問題だということでした。

 その領域からは今後も天体が発見されることが予想されたので,今後それは惑星なの?惑星じゃないの?という疑問に答える必要が出てきました。これまでは冥王星を超える大きさの天体(2003UB313:通称Xena)は惑星ではないとされていて,なのにそれより小さい冥王星は惑星であり続けるなんておかしいじゃないかと,そういう矛盾を解決するのが彼らにとっても懸案事項だったのです。

 もし冥王星が惑星ならそれ以外の天体も公平に惑星にしないといけないし,それ以外の天体が惑星じゃないなら冥王星も惑星から外さないとね,というのが今回のテーマだったわけで,ここ数日のニュースでは前者の流れが優勢で「惑星の数が12個に増えるかもしれない」ということだったわけです。

 それがころっと反転し,「やっぱ冥王星も惑星から外しちゃいましょう」となり,惑星は結局8個になった,というのが,この会議の結論だったのです。

 3000人近い天文学者がプラハに集結してこの問題の決着を図った様子を想像するとなかなかエキサイティングなのですが,最終的には参加者の多くが「冥王星は科学的に見て,他の惑星とはやっぱり違うよなあ」という意見でほぼ一致したそうです。

 そうなると,冥王星を惑星として残すかやめるかは,もはや科学の議論ではなくなります。科学に正直な科学者は,

「他の惑星とは明らかに違う性質の天体を惑星というくくりでまとめることは,科学的に許されない!」

 というもっともな意見を主張しますし,人間味あふれる現実主義の科学者は,

「まぁそうはいうてもやね,長年親しんできた冥王星を今更惑星ちゃいまっせ,なんちゅうのは,実際問題無茶なんちゃうのんかいな」

 という大衆を味方にしそうな意見を述べます。

 事務局も数日間の議論で結論を出せずに,結局挙手による多数決を取ることになりました。しかしこれは,科学者の集まりですからどちらの意見が通るかは自ずと答えが出ます。

 結果は当然,冥王星は惑星ではない,ということでした。

 ここで決まった惑星の定義は,

・それは、太陽を巡る軌道に存在しなければならない
・それは球状の形態を形成できるほど十分に大きな物体でなければならない
・それは、その軌道上の物質を「clear」にしていなければならない

 という3つです。3つ目はちょっとややこしいですね。冥王星の軌道は海王星の軌道と交差している部分があり,太陽からの距離で並べると順番が入れ替わることがあるのはご存じでしょう。今回の惑星の定義においては,こういった軌道の交差があったらいかんよ,といっています。

 ちょっと不思議な気がするのは,他の惑星とは性質が異なる冥王星によく似た天体がいくつか見つかり,今後も見つかる可能性が高いから,それらを惑星と見なすのは無理がある,がスタートだったのに,数の話は問題にならなくなっている点でしょう。

 文言だけ見ると数と言うより,やはりその性質が問題だったといえるので,もし地球の軌道上にもう1つ地球があったら,それはやっぱり「惑星」になるんでしょう。(ちょっと考えてみましたが,そりゃもう1つ地球があればそれは惑星ですよね)

 逆に2003UB313が冥王星と異なる軌道で,海王星の軌道と交差していないなら,冥王星を出し抜いて惑星に昇格したかもしれないのですね。(これも少し考えてみましたが,そんな天体が見つかれば紛れもなく惑星ですね)

 では今回惑星から外れた冥王星はどうなるのかというと,dwarf planet(わい小惑星)という新しいカテゴリが新設され,2003UB313と一緒に分類されることになるそうです。一応めでたしめでたしです。

 しかし,これによって我々の常識は大きく覆されることになります。教科書も百科事典も書き換えないといけません。もちろん学校の授業も対応を迫られます。この知識を最初から知っていたか,途中で訂正を受けて覚えたかによって世代間のギャップが生まれ,20年後には「生まれたときには冥王星は惑星じゃなかった」組が一大勢力を形成していることでしょう。

 個人的には,いきなり格下げされた冥王星の立場になって,惑星の定義を明確にしてこなかった人類の落ち度を認めた上で,今後はこの定義を運用するということで決着しても良かったかなあと思います。

 100年後に「冥王星がなぜ惑星かって?そりゃ人類がそのころ未熟だったからだよ」と,親子が空を見上げて話し合う姿があったら,なんだかいいなと思いませんか。

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