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2007年01月09日の記事は以下のとおりです。

skipサービスと東海道新幹線

 昨年の秋から,全日空(以下ANA)がskipサービスなるものを始めました。

 実家への帰省を新幹線から飛行機に切り替えてから数年,運賃の問題よりもWEBで決済まで済ませることの出来る便利さがすばらしく,もう新幹線に戻る気がしません。

 しかもシステムの変更行われる度に便利になっていきます。そしてとうとう,チェックインまで省略されるようになったチケットレスの完成形が,このskipサービスです。サービス改善にどん欲な会社というのは,全体に活気があるものです。

 ANAはskipサービスを導入するにあたり,持っていると便利なEdy内蔵のマイレージカードを会員全員に無償で郵送する徹底ぶりで,チケットなしでいきなり手荷物検査場に直行という「失敗したときの損害の大きさ」という不安を乗り越え,ぜひ使ってみようという気持ちになっていました。

 私にとって今回の帰省は,skipサービス開始後初めて飛行機を利用する機会だったのですが,年末年始の混雑の中にも関わらず,あえて挑戦する覚悟を決めて羽田に向かうことにしました。

 skipサービスというのは,チェックインを必要としない「究極のチケットレス」で,

(1)WEBで空席状況を調べる
(2)便を予約する
(3)クレジットカードで運賃を決済
(4)座席の予約も済ませる
(5)当日いきなり手荷物検査場に直行
(6)検査官にチケットを見せる代わりにマイレージカードをカードリーダにかざす
(7)そのまま搭乗口まで進む
(8)登場時にゲートのカードリーダに同じマイレージカードをかざして乗り込む

 と,これだけの話です。

 以前ですと,自動チェックインを使っても,空港でチケットを決済したクレジットカードを使って受け取る必要があって(それでもチェックインに列ぶ必要がなく楽ちんだった),行きの時点で復路のチケットを受け取っている場合には,自動チェックイン機を使うか,窓口に列んでチェックインを行う必要がありました。

 Edyを内蔵したマイレージカードや携帯電話を使えばこの自動チェックインもかなり楽になるよう,後に改良されるわけですが,結局チケットを受け取ったり,チェックインが必要になったりするわけなので,手間は一緒です。

 これがskipサービスだと,マイレージカード1枚持っていけば,行きも帰りも,チケット受け取りもチェックインも,全然行列しなくて済むわけですので,帰省客でごった返す時期には大変ありがたいサービスです。

 ただ,いきなり手荷物検査場に直行と言われても,もしなんらかの手違いがあって認証が出来なかったりすると,私はせっかく列んだ手荷物検査の行列から,いきなりチェックインの行列に列び直す羽目に陥ります。

 私は,いつもチケットを受け取ったり,チェックインを済ませたりしてから空港内のレストランなどで見送りに来てくれた友人と食事をしていました。チケットの受け取りで一度トラブルがあったときは,食事の時間を削って事なきを得たことがあります。

 ですが,skipサービスでは,トラブルの有無が判明するのは手荷物検査場です。当然すでに食事のために時間を使ってしまった後だけに,何かあったら時間不足に陥ってしまいます。これはゆゆしき問題です。

 つまり,トラブルが絶対にない,ということを前提にしたシステムだという事になります。余程の自信があるんでしょう,このシステムに。いくらでも問題など出てきそうなものですが・・・もしコンピュータの問題かなにかでskipサービスが完全に停止したら,全部窓口で処理しないといけませんが,大勢の人が出発ギリギリに窓口に殺到する状況を,一体どう処理するつもりなのでしょうか。

 今回は都合により友人の見送りもなく,食事もしないで済む時間だったので,空港についたらいきなり手荷物検査場に向かいます。

 結論から言うと,この心配は杞憂でした。いや,なにかトラブルがあった場合のリカバーが完璧だったということではなく,何も問題が起きなかっただけですので,果たして杞憂と言っていいのか,私には分かりません。

 それ程待つことなしに手荷物検査の行列に列びますが,自分の順番に予想以上に早く到達すると,いつものように係の方から「チケットを拝見します」と促されます。

 「skipサービスなんですが」と私が恐る恐るいうと,「ではカードをこちらに」と指示されるので言われたとおりにかざすと,あっという間に認証が終わり,何度ともなかったように手荷物検査を済ませる事が出来ました。

 あまりにさくっと済んだ私の手続きを私の後の人が思わず「すげー」と声を上げたとき,同時に私も心の中で「すげー」とつぶやいておりました。

 この時受け取るぺらぺらのレシートには,登場予定の便,座席,搭乗口の案内が記載されていいます。このように,本来ならチケットに記載されたであろう情報を,現場で始めて目にするのは,検査の後になってしまうのです。やっぱり不安・・・

 さて,いよいよ機内への案内が始まりました。行列に列んで,改札機に用意されたカードリーダーに,先程のマイレージカードをかざします。

 これまたあっという間に認証が終わり,出てきたレシートを受け取って座席を確認します。

 はい,これでおしまい。

 帰りも全く同じです。

 面白いのは,手荷物検査を済ませると,その予約はskipサービスを済ませた扱いになる(つまりチェックインが済んだ事になる)んですね。だから,携帯電話でskipサービスの利用方法のサイトへ飛ぼうと思っても,skipサービスは使えませんときちんと案内が出てくるのです。

 マイレージカードを忘れてしまえばオシマイかというとそうでもありません。事前に携帯電話にQRコードを取り込んでおくか,印刷しておけば,これをカードリーダーにかざすことで同じ結果を期待できるそうです。マイレージカードを持っていない人やたまにしか飛行機を利用しない人でも利用できるというのは,素晴らしいことです。こういうことは,確固たる信念がなければ真っ先に削られてしまう仕様の1つでしょう。

 また,自動チェックイン機もまだ設置されているので,これを利用することも可能です。

 それで冷静に考えてみたのですが,私は今回の帰省に際して,結局行きも帰りも切符の手配に列んだりどこかに出向くことを一度もしませんでした。すべてがネットで自宅にいながらに手続きが完了し,本人であるかどうかの確認は非接触のICカードで一瞬のうちに完了,です。

 果たしてこの手軽さ,東海道新幹線では可能でしょうか。数年前に調べて雲泥の差があった新幹線のシステムが,ひょっとしたら改良されているかも知れないと期待して調べなおしましたが,結果は全く変化なし。ANAが同じ時間で幾度の改良を重ねてきたのに比べて,あまりにもやる気がないなあと感じます。

 勝手に比較してみます。

・WEB予約と決済
 東海道新幹線でも可能ですが,会員になる必要があります。クレジットカードの機能を持つカードを持っていなければならず,これは年会費として1050円がかかります。飛行機の場合,予約までなら誰でも可能,決済は手持ちのクレジットカードでokですし,決済が済めば座席の予約も,多くの場合skipサービスも受けられます。
 年会費が必要な会員限定という段階で,本来新幹線が持っている手軽さを損なっています。一方,手続きが面倒で新幹線のように自由席に飛び乗る手軽さがないと言われた飛行機がここまで便利になっていることを,JR東海は知らないのでしょうか。

・予約の可能時期
 予約は,飛行機では2ヶ月前,新幹線では1ヶ月前からです。2ヶ月前からだとさすがに予定も立たないものかも知れませんが,実は毎年同じ時期に帰省ラッシュがあることを考えると,予定が立たないからではなく,立てようとしないだけの人がたくさんいるということだと思います。
 2ヶ月前に予約が可能な飛行機では,もし予定が早くに立つ場合,その特典として割引と好きな便を利用できるわけです。これが新幹線だと1ヶ月前からですので,結局発売と同時に予約が殺到してしまいます。つまり早くに予定を立てた人に対して,何の還元もないわけです。公平といえば公平ですが,その割にWEBからの予約が会員限定なわけですから,矛盾しています。

・切符
 前述の通り飛行機はskipサービスやチケットレス,自動チェックインによってチケットの存在はもはや形式的なものになっています。これを持っていることだけがすべてではない,ということです。
 一方の新幹線は,結局会員でない人はいつもの通りみどりの窓口で列んで買うしかありません。一見さんお断り,ってやつですね。
 それに,新幹線では,結局最終的には切符を手に入れなければなりません。会員カードで改札をパスし,検察を受けることが出来て初めて,飛行機に列んだと言えるのでしょうが,そんな未来は当分来そうにありません。

・運賃
 基本的には飛行機の方がはるかに高価です。ですが,ご存じの通り,特に私の利用する東京-大阪間はドル箱路線で,格安料金の設定があります。これを上手に使えば東海道新幹線より安くなることもしばしばです。
 さすがに年末年始はそうはいきませんが,新幹線に対してとんとんくらいの料金には出来ます。燃料費の高騰から運賃が値上げされて飛行機の方がやや高めになりましたが,便利さと速さはわずかばかりの差額を十分に補って余りあります。
 ただ,この春にもう一度値上げがあります。これで差が開くとちょっと考えるかも知れません。
 新幹線には割引は基本的にはありません。むしろ繁盛期には価格が割高になります。会員限定のサービスでは割引があるそうですが,これは私には現時点で無関係なので考慮しません。

・空港もしくは駅までのアクセス
 羽田までは京急を使えば早くて便利。大阪伊丹からはシャトルバスを使えばこれまた楽ちんです。シャトルバスは高速道路の事故などで簡単に遅れますし,定員になると定刻前でも発車するので,信用に足る存在ではありませんが,伊丹空港と大阪南部を結ぶ経路は実質これだけですので,文句は言えません。
 一方新幹線はアクセスになんの問題もありません。これは当然ですね。

・所要時間
 のぞみで2時間30分,飛行機は1時間ですので,差の1時間30分で空港までのアクセスや手荷物検査にかかる余計な時間を帳消しにして,まだ十分なおつりが来ます。同じ時刻に到着するように設定しても,朝ゆっくりできる飛行機は非常に楽です。

・手続き
 新幹線には手続きはなにもなく,改札と車内の検札くらいのものでしょう。飛行機はskipサービスを使っても手荷物検査を避けるわけにはいきません。持ち込める手荷物もバッグ1つですので,これも新幹線と違って預けることになります。これもまた列ぶんですね。
 そんなわけで,やっぱり時間的なゆとりはないといけません。ただ,危険なものの持ち込みを防げているのは手荷物検査のおかげであって,新幹線だって本当は実施されてもおかしくないと,私は思っています。時速300kmで走行する密閉された空間に,刃物を振り回したり毒ガスをまいたりする人がいたり,まして爆弾などが持ち込まれたりすると,受ける被害は飛行機のそれと大差はないのではないでしょうか。

・急用への対応力
 予約も何もないけどとにかく行こう,ではすまされないが飛行機で,新幹線なら自由席がありますから,どうにかなります。この「万が一」の対応は心強いものがあります。

・旅の気分
 これはもう新幹線の圧勝。新横浜を過ぎて,名古屋までの時間で駅弁を広げ,大きな窓越しに刻々と変化する景色を眺めながらの食事には,飛行機にはない魅力があります。
 実は2時間半という時間もなかなか絶妙といえて,食事して一眠りすれば,大体新大阪に到着しています。
 喫煙者にとって,たばこが(いろいろ制約があるにしても)吸えることは,これはもうそれだけで十分なメリットでしょうね。

・安全性
 これはもう,なんともいえません。気分次第,運次第でしょう。ダメなときはダメ,そういうものだと思います。
 ただ,潜在的な乗客の心理の差にはなっているようで,私の見るところ,飛行機の乗客には,それがたかだか1時間の搭乗であっても,みんなある種の覚悟があるのか,それとも運命共同体としての連快感がそうさせるのか,とにかく非日常の世界という空気ゆえ,あまり横柄な人もいないし,お行儀の悪い人も目にしません。
 しかし新幹線ではこうはいきません。見るに堪えない行儀の悪い人を散見するのは,それが陸上交通だから,日常の延長に見えるから,でしょうか。その点で新幹線というシステムは偉大であると思います。


 いろいろ比べてみましたが,新幹線は,それでも鉄道という交通機関が持つ「旅のプロセス」を楽しむきっかけがたくさん残っています。その点飛行機は結果だけを求めるものだと言えて,うまく使い分けるのがよろしいと,それが私のたどり着いた結論です。

 新大阪駅から大阪環状線や地下鉄御堂筋線を使って移動する際の,もっとも大阪らしい街と人を堪能するのもまた楽しいもので,こうした魅力は鉄道という庶民の足がまだその機能を失っていないことを十分に感じさせてくれるものです。

 残念なのは,そうした魅力にあぐらをかいて,努力を怠るJR東海の存在でしょう。ちっとも便利にならない東海道新幹線は,国鉄時代のそれと同じです。JR東日本管内の新幹線はそこそこ便利になっていますが,これにすら及ばないのは,JR東海が東海道新幹線を独占しているからに他ならず,「国民の財産」を利益を生む打ち出の小槌としてしか見ていない,なによりの証でしょう。

 私が東海道新幹線を使わないのは,これが気に入らないからなのですが,どうにかならないものなのでしょうかね。その意味でも,航空会社には頑張ってもらいたいものです。

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