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2007年06月05日の記事は以下のとおりです。

図書館と理系の本の関係

 先日,地元の図書館に初めていってきました。ここに引っ越してきてから結構な時間が経っているのですが,なかなかきっかけがなかったのです。

 私は子供の頃,毎週のように図書館で本を借りていました。当時は3冊までという制限があり,返すときにまた3冊借りて,しかも同時に市内の2箇所の図書館をはしごしていました。

 小学校の4年生ぐらいの時だったと思うのですが,初めて出かけた市内の図書館で見つけた奥澤清吉さんの電気の本(書名は失念)を借りて以来,結局中学生の時ぐらいまでずっと自転車で通い続けたと記憶しています。

 当時は子供向けの電気電子関連の本がたくさんあり,いくら借りてもきりがないほどでした。今にして思うのは,ほとんど絶版になってしまっているこれらの本を買って手元に置いておくべきだったということですが,マンガが350円の時代に1500円の本はあまりに高価で,最終的に購入出来たのは4つほどでした。そして4つとも,私の宝物です。

 初歩のラジオや子供の科学で知られる誠文堂新光社と,ラジオの製作で知られる電波新聞社が双璧でしたが,子供向けの本,とりわけ図書館の定番となっていた本は誠文堂新光社のものが多く,内容も非常にしっかりとした物が揃っていました。

 初歩の製作技術,初歩のラジオ技術などの「初歩の」シリーズ,デジタルICを使ったゲームを作る本,奥澤清吉さんの「はじめて」シリーズ,泉弘志さんの簡単な電子工作のシリーズなど,今でも読んでいて楽しい本を,何度も何度も借りてむさぼり読んだことが懐かしいです。

 子供向けの本を読み尽くすと,今度は「電子展望」の別冊といった難しい内容の本や,コンピュータの本にも手を出しましたが,内容はさっぱりわかりませんでした。でも,当時の私は,トランジスタやOPアンプが出てくる回路図があれば,それで満足でした。

 働くようになり,ある程度のお金が自由になると,そのころの本を買いたくなって探してみましたが,電子工作のブームは過去の物となって,初歩のラジオも絶版になり,技術家庭科や図画工作の延長にあると考えられていたこの分野の凋落にあわせて,どの本も入手が難しくなっていました。

 古本を探してみましたが,図書館ではどこにでもあった本が,なかなか見つかりません。個人で買う人は少なかったのでしょうか。

 最近,またかつて読んだそれらの本を見てみたくなって,今住んでいる場所の図書館を探してみました。すると幸いなことに,自宅の近所にちゃんとあります。

 今時の図書館はすごいですね,インターネットで在庫の確認が出来たり,予約も出来るんですね。早速懐かしい署名を検索してみると,ちゃんと出てきます。発売から30年近く経っているこれらの本は,一体どれだけの人たちに読まれたことでしょう。

 それで,先日言ってみました。

 古い施設で,いかにも市の図書館という雰囲気です。低いカウンターも,張り紙に難しい漢字が使われていないのも,係の人がエプロン姿なのも,子供が走り回っているのも,においも,なんだか懐かしいです。

 大人のくせに児童書のコーナーに向かい,そこで電子工作の本を探してみます。少しだけ見つかりました。私が買った数少ない本も列んでいます。中を開くと,昭和58年からの日付印が連なっています。

 開架になっていない本を書庫から出してもらって全部で7冊借りてきました。昔は3冊だったのに,今は10冊までokなんですね。

 変わっていない図書館も,実は変わっていることがわかりました。まず,係の人が市の職員ではありませんでした。合理化のためだと思いますが,委託されていました。市内の別の図書館では大手書店に委託されていたりするんですね。

 それに本の検索。昔はそれをお願いできる図書館司書という方がいらっしゃったものですが,今は基本的に端末で調べられます。確かに署名や出版社が分かれば便利でしょうが,こんな感じの本が欲しい,というリクエストに応えられてるんでしょうかね。

 予約も端末で出来ます。他の図書館にある本を移動してもらうのも端末です。気軽ですが,顔を合わせてお願いするのも,子供だった私には楽しみの一つだったことを思い出し,便利になるのは結構だけど,今の子供は大人と話をするという機会がどんどん失われているんだなあと感じました。

 現在,本はたくさん売れるベストセラーか,全く売れない本の二極分化が起こっています。本屋さんも,大規模書店は元気でも,中小の書店は厳しい状態です。

 図書館もこれに関連して,ベストセラーに人気が集中し,私の街では1000人もの人が順番待ちをしているんだそうです。

 原則として,図書館は人気のある本は複数の購入を行って待ち時間を減らそうと努力するのですが,さすがに1000人ということになると,10冊も20冊も買わないといけなくなってしまいます。

 しかし,図書館の予算は限られていて,同じ本ばかりに使われてしまうことは,幅広い本を蔵書として持つことを難しくしてしまいます。

 高価であったり,特殊であったりするような本でも,図書館に入ることを計算に入れると3000部や5000部は作れます。しかし,本の購入予算が,どこでも買えるベストセラーに多くあてがわれると,こうした本は図書館にすら入らなくなります。

 短期的には買うことが難しい本を見る事が出来なくなりますし,長期的にはそもそもこうした本が出版されなくなってしまうでしょう。

 だから,最近の図書館の運営に対して,専門家からは問題提起もなされているようです。考えてみると,いわゆる大量消費の現在のベストセラーに,30年後に残しておく必要のある本がどれくらいあるのか,しかもそれを20冊も30冊も残しておくべきなのか,確かに疑問です。買おうと思えばどこでも買えるという手軽さもベストセラーの良いところでもあるわけですし。

 一方で,本の種類に限らず,読みたいと思う人に平等に読む機会を提供することも図書館の大事な使命の一つです。たくさんの蔵書があっても,利用してくれくれない図書館はそもそも存在意義を問われかねません。

 図書館という範囲ではなく,出版や流通,果ては文化という点にまで根ざした,難しい問題だなと思います。

 とりあえず私の街では,市で購入する最大数量を決めて,それ以上は買わないということにしたようです。

 ところで,懐かしい気分の私は,インターネットで古書を探すことが簡単にできるようになった事を知って,片っ端から調べてみることにしました。

 そのうちいくつかは購入することが出来たのですが,ちょっとした感動があります。気になったのは,図書館払い下げのものが見つかったり,図書券向けに特別に用意される上装版が売られていたりすることです。

 確かに,図書館も蔵書を処分することがあると聞いていましたが,資料性の高いこれらの本でも処分されてしまうというのは,ちょっとした寂しさを感じたものです。

 理工系の本が売れなくなっています。出版社も数を減らしたり,そもそも点数を増やそうとしません。CQ出版社のような大手でも初版3000部で絶版という本も珍しくありません。3000部といえば,全国の書店の数よりも遙かに少ない訳ですから,手軽にどこでも手に入るということは,すでに期待できないのが現状です。

 こうした本の引受先として,図書館の存在が大きかったといいます。その図書館も,予算の削減やベストセラーへの集中から,購入しないケースが増えているらしく,結局理工系の本は,ますます手に入りにくくなってしまうわけです。

 ですから,もし気になる本があったなら,その場で買っておかないと,次に目にする可能性はほとんどない,といっても良いわけです。

 つらつらと書いてみましたが,ベストセラーや雑誌を見ないで,わざわざ書庫から昔の本を出してもらうような人間がいた方が,図書館としても面白いでしょう。今借りた本を返すついでに,新しい本を借りてこようと思います。休日の散歩も兼ねて。

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