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2007年10月09日の記事は以下のとおりです。

未来に触れるTouch

  • 2007/10/09 16:06
  • カテゴリー:散財

 出ましたね,iPodTouch。

 ポータブルオーディオプレイヤー(という範疇に収まっているかどうかは別議論ですが)にしては高額な商品,9月末日と言われながら直販サイトの顧客の一部には9月20日過ぎに届き,それ以外は10月になるまで音沙汰無しでイライラする人が続出,しかもWindowsでは最初の起動時にかかっているロックを解除できないという初歩的なトラブルの発生と,なにかと話題に事欠かない大型商品でした。

 9月初旬に発表になった時,私はとりあえず16GBモデルをヨドバシの通販サイトに予約。高いなーと思いつつ,iPhoneで絶賛されたユーザーインターフェースを手に入れるチャンスですし,あのアップルがまた革命を起こすのではないかと,そんな期待に対価を払うことにしました。

 それで,直販サイトとリテールストア以外は11月になるとか,目処すら立ってないとかいろいろ噂が飛び交いましたが,結局私はこの連休に手に入れることが出来ました。

 使ってみた感想ですが,評判通りの素晴らしいユーザーインターフェースでした。また,このユーザーインターフェースを実現するために,タッチパネルという部品がここまで進歩していることにも驚きました。Grafitiなどは,所詮抵抗方式のタッチパネルの性能に妥協した産物であると思い知りました。

 1つ1つの技術は既知の物であるかも知れませんが,これらを統合することで新しい価値を創造するということがどれほど素晴らしくまた難しいことか,私は初代iPodを予約して手に入れた時の感動をもう一度味わうことになったのです。

 CoverFlowはMacOSX10.5で標準的な機能として採用されることになっています。iTunesだけの機能から,OSの機能に格上げされたCoverFlowは,デバイスの壁をも越えて,新しい「見せ方」を我々に浸透させていきます。

 そしてネットワークにつなぎ,Safariを使ってみます。まるでターボが効いたときの加速のように,iPodTouchは全く別のマシンに化けたような錯覚に陥ります。HalfVGAに過ぎないLCDで,これほど美しくWEBが見られるとは。

 縦で見にくいと思えばすぐに横に出来るし,つまめば拡大縮小が思いのまま,みたい部分をダブルタップすればちょうどいい大きさにしてくれるし,入力だってこれまで用意されてきたどのソフトウェアキーボードより使いやすいものです。

 細かいところでまだまだ不満もありますが,この薄っぺらい手のひらサイズの端末で世界中の情報が手に入るのかと思うと,まさにスタートレックの世界だなあと思いました。

 今でも日本のメーカーに対する信頼は厚いですが,果たしてiPodTouchを見て,これを日本のメーカーは作れるんでしょうか。


 さて,手に入れるまでの1ヶ月間,いろいろこのiPodTouchというマシンを冷静に考えてみたのですが,Appleがあくまでオーディオ/ビデオプレイヤーだと言い切るのは,これは一種のカムフラージュではないのか,と思いました。

 海外まで目を向けると,ポータブルオーディオプレイヤーはWiFiを搭載するのが次のテーマになっているのがわかります。Zuneしかり,Sansaしかり。

 しかし,ユーザーがそれで幸せになるのか,便利になるのか,ないと困る物になるのか,という点で見ると,やはりメーカーサイドの「搭載可能だったので搭載した」という独りよがりな押しつけに過ぎないように感じるのです。

 それもそのはずで,こうした新しい機能や付加価値を搭載しないと,1万円以下のプレイヤーとまともに競合してしまいます。安い商品は利益も薄いので数を出す必要がありますが,中国メーカーも含めてこのクラスの商品の市場はすでにすし詰め状態です。しかも安く作ることでしか競争できない単機能な商品は,その競争によって利益がますます少なくなります。

 そこで高付加価値モデルへのシフトがおきますが,大きさや電池寿命,メモリ容量で一定の水準に達した現在,ユーザーは別に安い物でも不満を持たなくなり,メーカーが用意する付加価値に憧れてくれなくなるわけです。

 ここにメーカーの都合で進められる高機能化(と高価格化)とユーザーの要求が少しずつ乖離していく状況が生まれるわけです。

 オーディオプレイヤーにWiFiがついて,それで何をしましょうか。AppleはiPodTouchで直接音楽を購入できるようにとWiFiを搭載しましたが,インフラの整備までやるはずもなく,そこはスターバックスと手を結びました。

 認証に必ずWEBブラウザが必要になるから,どうせならフルブラウザのSafariを搭載した,というのがAppleの説明ですが,このSafari搭載というのが,実は無限の可能性を秘めていると気付いた人は多いはずです。

 数年前ならいざ知らず,今はちょっと恥ずかしいWeb2.0という言葉に代表されるように,AjaxなどでWEBベースでありとあらゆるサービスが実現可能になっています。

 10年以上前にサーバ/クライアントシステムなどともてはやされましたが,これが特別なインフラや特別なプロトコルを用いず,ごく自然に利用可能なっているんです。

 重い処理はサーバに,軽い処理はクライアントに,必要な物はWEBブラウザだけ,しかもWiFiで繋がる,なんていう話を並べてみると,もはやiPodTouchは,すでにPDAやシンクライアントと呼ばれる物と同等になっていることに気が付きます。

 iPodTouchにはメールがない?確かにPOP3もSMTPも使えません。でもGmailがあるじゃないですか。メモ帳がない?確かにそうですね。でも自分のblogにメモ書きを残せばどこでもそのメモを見ることが出来ます。

 iPodTouchとiPhoneの本質は,ここにあるのではないかと思います。

 こうしてサーバ側が強力なサービスを,WEBブラウザしか持たないプアな端末に提供できるような下地が整うと,ありとあらゆる物がWEBブラウザを搭載するようになり,我々はあらゆる場所で,そこにあるどんなマシンをつかっても,必要な情報にアクセス出来るようになります。もはや「持ち歩く」必要はありません。行った先に窓はあり,そこから手を伸ばせばどこでも同じ情報が瞬時に手に入るわけです。

 機能アップはサーバ側を改良すれば可能で,端末側に改良は基本的には必要がありません。ストレージ容量も端末には必要がありません。すでにGmailの容量はiPodTouchのストレージ容量を超えています。

 かつてユビキタスというむずがゆくなる言葉を連発した人がいましたが,この人のビジョンも結局「繋がる」という所止まりでした。繋がることは手段であり結果ではないことは誰の目にも明らかでしたが,またしてもAppleによってこの事実にはっとさせられたわけです。

 え,WiFiで携帯機器でWEBブラウザ搭載はiPodTouchやiPhoneが初めてではないって?それではあなたの思う「初めての端末」は,小さく軽く洗練されていて,WiFiもWEBブラウザも必要としない人でも「欲しい!」と思わせるような魅力的なものでしたか?

 Appleのしたたかさはここら辺で,iPodTouchを欲しい人の中には「WiFiなんかいらんな」とか「WEBブラウザなど使い道がない」と思う人もいるはずです。いわばそれらはおまけで,気が付いたらiPodTouchと一緒にWiFiとWEBブラウザがどうにもならないくらいに普及しているのです。まさに「トロイの木馬」とはこのことです。

 そういう商品が5万円近い値段でバンバン売れる。WiFiを売りにするでもなく,WEBブラウザを搭載することを売りにするでもなく,美しいデザインと新しいユーザーインターフェースでこの高額商品がどんどん売れてゆく,他のメーカーにこんな芸当はまず無理でしょう。

 初代iPodがその後の音楽プレイヤーを大革命したのと同じように,iPodTouchがまた次の革命を起こすことを,私は期待したいと思います。コンピュータメーカーであったAppleが音楽プレイヤーに参入したことそのものを,歴史的な出来事として評価すべき時が,やがてやってくるかも知れません。

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