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2008年07月11日の記事は以下のとおりです。

F-757を調整してみる

  • 2008/07/11 15:58
  • カテゴリー:make:

 最近,日曜日の午後など,特に聴きたい音楽があるわけでもないようなときは,FMラジオを聞くことがあったりします。

 エアチェックに耐えないような番組ばかりと旧来のファンは(私も含め)FMから遠ざかる一方ではありますが,少し考え方を変えてみるとその面白さに気が付きます。

 FM放送は,その特徴から高音質,ステレオ放送がウリでしたから,エアチェックを前提とした音楽放送を中心として親しまれてきたわけですが,FM放送の特徴は別に高音質というだけではありません。

 1つは混信がない。同じ周波数なら強い電波が勝ち,弱い電波は消されます。ということは,地域に密着した小さいサービスエリアを前提とする,地域放送局が成立するわけです。

 1つには電波の状況による,音量の変化が少ない。AMラジオとFMラジオを車の中で聞き比べれば分かりますが,AMラジオは走っていると音量の変化がけっこうあります。一方のFMラジオは,きちんと音がきこえていれば音量があまり変わりません。声を聞くときなどこれは結構重要で,カーラジオにFMというのは実に相性がよいのです。ということは,車の中で聞いていて楽しい番組が揃うことになります。

 高音質以外にも,FM変調をかけることで得られるメリットはあり,やはりFMは存在意義があるなあと,そんな風に思います。

 それで,以前は高音質一辺倒だった放送局側の考えも,こうした状況から個性が出てくるようになります。地域FMなどはその最たる例でしょうし,NHK-FMが比較的トラディショナルな方針であるのに対し,他の民放大手は娯楽性を高めています。

 それが技術的に,あるいは音質的にも大きな差となっており,NHK-FMの音質の高さはマニアの間では知らない人はいない程です。対してJ-WAVEなどは音質を積極的にいじって,車の中などで聞きやすくする先駆者でした。

 私のFMの受信環境は,ラジオなどという簡便なものがないおかしな状態ゆえ,F-757というパイオニア製の比較的高級なチューナーがメインです。F-757はAMステレオが受信できない以外はほとんど後継機F-777と同じで,F-777が中古市場でも大人気であることに私は結構気をよくしています。

 当時展示品かなにかを2,3万円で購入したことしか覚えていませんが,それまで使っていたアナログチューナーに比べて,受信性能も音質も安定性も格段に向上したことが印象に残っています。

 ところが,NHK-FMだけやたらと歪むのです。他は全然大丈夫なんですが,時報やピアノ,サ行の音が濁ります。これはとても辛いです。

 私の地域はいわゆる強電界地区ですので,大げさなアンテナを上げなくても十分とされているのですが,私は横着をして部屋に引き込まれているTVのアンテナから分配をして,FMチューナーに入れています。レベルは主要局すべてでS5,NHK-FMも例外ではありません。

 例えば,TOKYO-FMやJ-WAVEも同じように歪むなら,電波に問題があるという気がしたのですが,問題はNHK-FMだけです。それまで絶対の信頼を置いていたF-757に,ちょっと疑念が沸いてきました。

 いろいろ調べて見ると,やはりチューナーは経年変化に弱いらしいです。高級機ほど調整箇所も多く,20年も経てばまず再調整をしないと性能は出ないとのこと。

 しかし,調整をお願いするにはサービスセンターに持ち込む必要がありますし,F-757を購入してからすでに16年,断られてもおかしくない状況です。今後も維持していこうと思うなら,自分で調整くらい出来た方がいいです。

 調整そのものは難しくありません。むしろ楽だと思いますが,基準信号発生器と呼ばれる高価な測定器がなければ,全く手出しが出来ないのです。

 ともあれ,F-757のサービスマニュアルを探してみます。海外のマニアはなんでもかんでも自分でやる熱い人が多く,そのせいか海外サイトにはサービスマニュアルがよく出回っています。サービスマニュアルも著作物ですので限りなく黒に近いグレーなのですが・・・

 サービスマニュアルによる調整手順は予想通り簡単で,測定器さえあれば出来そうな感じです。

 さて,問題は基準信号発生器です。買うと言っても新品は数十万円,それで出来ることはFMラジオの調整だけ。いやー,これはさすがに買えないです。中古は数万円くらいで出てきますが,今欲しいといってすぐに見つかる訳ではありませんし,それに数万円で出来ることが相変わらずFMラジオの調整だけです。却下でしょう。

 ま,悩む前にふたを開けてみましょう。

 でかい1枚ものの片面基板が顔を出します。安いベークライトの基板です。ここにびっしりと部品がついています。調整可能なコイル,トリマコンデンサ,可変抵抗もおびただしい数になっていて,これすべてを調整するともう大変なことになると想像がつきます。これだから高周波はいやなんです。

 とりあえず,放送波でどうにかなるところまで調べてみます。まずStep1,フロントエンドのバリキャップ電圧の確認です。サービスマニュアルは海外仕様なのでこの通りの電圧にはなりませんが,PLL-ICとして同じソニーのCX7925を使っている他のチューナーを調べて,これに近い電圧になってるかどうかをみます。

 するとやはり結構ずれています。高い周波数側をあわせると低い周波数側があわなくなるので困ったものですが,そもそも国内向けの仕様が見つかりませんから仕方がありません。一応ここでは,90MHzの時に21.5Vになるようにしておきました。

 次にトラッキングです。76MHzと90MHzの2つの放送波をつかまえて,TP10の大きさが最大になるよう,交互に調整をします。しかし,そう都合良く76MHzと90MHzで放送をやってくれているわけはありません。76.1MHzと86MHzの2つを見つけ,これで調整を行います。結構ずれている感じです。

 次は中央付近の周波数を受信し,IF段の調整です。ちょうどNHK-FMの先代が83.1MHzなので,これを使います。TP10を見ながら,最大になるようにIFトランスを調整します。

 次は検波出力の調整。同じく83MHzを受信し,TP4とTP5の間の電圧がゼロになるよう,トランスのコアを抜き差しします。これも割合簡単です。

 さあ,次のステップで私の手は止まりました。モノラル時の歪率調整です。83MHzを受信し,音声出力端子の歪率が最小になるようにするのですが,歪率計がありません。低歪率な正弦波発振器もなければ,低歪率なFM送信機も基準信号発生器もありません。まさか1kHzの正弦波を流し続けてくれるような,そんな永久放送事故な放送局があるはずもなし。

 ただ,NHK-FMの歪みっぽさがこの段階で消えてくれればうれしいなあと,調整箇所であるトランスのコアをグリグリ回していたら,ペキッと嫌な音がしてコアがかけてしまいました・・・うわぁぁぁぁあ

 ・・・このSTEPは飛ばしましょう。サブバランス調整というのやります。これは簡単で,83MHzを受信してTP3が最小になるようにすればよいらしいです。楽勝。

 次はMPXのVCOです。TP7が38kHzになるように調整ですが,ここはPLLがロックすればよいので,多少いい加減でもどうにかなるでしょう。

 次はパイロットキャンセルの調整。ステレオ放送を受信し,漏れてくるパイロット信号19kHzが最小になるようにしますが,ステレオ放送で無音を出し続けてくれるような永久放送事故な放送局があるはずなし。次。

 えと,ステレオ時の歪率調整・・・出来ません。次。

 えとえと,ステレオ時のチャンネルセパレーション調整・・・1kHzの正弦波を方チャネルだけ流し続けてくれるような,しかも時々左右を入れ替えてくれるような,そんな怪奇現象のような放送局があるはずもなし。次。

 次は・・・ありません。

 ということで,肝心な調整が出来ずに終わってしまいました。コアもかけてしまいましたし,いろいろいじりましたから,このままほっとくわけにもいかないでしょう。どうにかせねば。

 足りないものは,歪率計,低歪率な正弦波,そしていろいろな設定が可能なFM送信機です。

 実は歪率計と正弦波発振器は,最近PCを利用して実現するフリーソフトが存在し,お金のない自作派は随分救われています。私も救われたかったのですが,Windowsの動いているマシンで一番高速なのは1.3GHzのCeleron。しかもGPU非搭載です。あまりに非力で使い物になりませんでした。

 しかし,ふと手元を見ると,そこには2.5GHzCore2Duo,GeForce8600搭載のMacBookProが!

 実はBootCampを試してみようとWindowsXPを入れてあったりしたので,これを使って歪率計と正弦波発振器を用意しましょう。正弦波発振器は出力をSPDIFにするとアナログ回路での歪みを無視できます。

 ただ歪率計(スペアナ)だけはそういうわけにもいかんので,ローランドのUA25を使ってUSBから入力します。

 試して見ると,これはすごい。スペアナなんて,サンプリング点を65536にしても18fpsで表示できています。32768にすればほぼリアルタイムですよ。すごい。ノイズフロアも-100dB以下と,実用上十分。オーディオに限って言えば,もう測定器級だといってもいいんじゃないでしょうか。

 問題はFM送信機,いわゆる基準信号発生器です。これは本当にどうにもなりません。

 まてよ,FMトランスミッタを使えないか・・・最近のワンチップFMトランスミッタは高性能化が進み,音質もかなり良くなっていると評判です。

 幸い,会社にSiliconLab社製の高性能な評価ボードがあったので,ちょっと借りてきました。これはUSBで様々な設定が可能で,周波数,送出レベル,デビエーション,入力のミュートやパイロット信号の有無など,およそ測定に必要なことはPCの画面上で切り替えることが出来ます。

 このボードの実測値を見てみると,明らかにチューナーの性能に負けています。しかし歪率は0.3%をちょっと上回る程度ですし,チャンネルセパレーションも40dBくらいです。これを基準に調整してもこの性能を上回れないのですが,でもこのボードで最善を尽くせば,実力はもっと上に来ている可能性もあります。

 ないよりまし,これでやってみましょう。ありがたいことに,このボードの音声入力はSPDIFが許されています。

 接続を済ませ,各種ソフトを入れて,早速試してみますと,予想以上の好印象です。調整箇所を動かせば,それに従ってすすーっとスペアナが変化します。正弦波そのものの歪みも小さく,案外いいところに調整が出来そうです。

 最終的に歪率は測定限界に近い0.3%まで追い込みました。このチューナーのスペックもこの程度ですから,ベストといってよいでしょう。また19kHzのパイロット信号の抑圧などはわかりやすく,目視でもノイズに埋もれる位のレベルに追い込めます。

 チャンネルセパレーションもしっかり調整。ただ,やっぱり結構漏れるみたいですね。送信側の問題かも知れないのでなんとも言えません。

 調整のための環境さえあれば,作業そのものはとても簡単。やはり調整前がベストになっていたわけではなく,若干のズレがありましたから,経年変化だけは避けられないようです。

 早速試聴です。はっきりいって,よくわかりません。もともと高音質を指向したソースも少なく,NHK-FMは相変わらず歪みだらけですので,よく分かりません。よく分からないのですが,気が付いたのが低音がしっかり出てることでしょうか。

 iPodを送信機に繋いで音を出してみましたが,アンテナを直結しているせいもあり,iPodを直接聞いているのとなにも変わりません。少なくともこの段階で,Hi-Fiオーディオ機器としてのFMチューナーであることに,私は自信を持ちました。

 となると,NHK-FMの強烈な歪みの原因ですね。どうもこれは,マルチパス障害のようなのです。

 なぜ民放ででないのか分かりませんが,テレビのVHFアンテナは,FM放送の帯域では指向性がちょうど180度反転します。直接波ではなく,むしろ積極的に反射波をつかまえているような状態なので,受信レベルが良くてもマルチパスが起きまくっているのは確かです。

 歪みになるか,ジュルジュルという音になるかは,直接波と反射波の到達時間差によるものがあり,また送信周波数にも関係がありますので,そう考えるとNHK-FMでだけ歪みが出るというのは納得出来ます。

 試しに,アンテナ端子と金属製のラックをくっつけてみると,歪みがなくなりました。やはりマルチパスですね・・・

 下手に素人がいい加減な機器で調整を行わずともよかったのかも知れません。ベストではなくても,十分な性能を持っていることは確かだったわけですし。

 問題の解決には,さらにFMアンテナを調達しないといけないことになりました。以前はマルチパスなど出なかったので,T型のフィーダーアンテナはすでに捨ててしまいましたし,賃貸ですから屋根上に7エレのFMアンテナなど上げるわけにはいきません。(そういえば実家では最初にあげた3エレ八木が台風に飛ばされ,5エレにしました・・・)

 ということで,まずはフィーダーアンテナを買ってきましょう。数百円で買えるはずです。昔はスーパーにも売ってたくらいだったのですが,最近はとんと見かけなくなりました。まだ売ってるのかと心配になって調べると,大手量販店にはありそうです。会社に帰りにでも買って来ることにします。

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