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2008年10月23日の記事は以下のとおりです。

テスタの修理

  • 2008/10/23 12:02
  • カテゴリー:make:

 ところで,先日の土日は,ふとしたことから随分時間のかかる修理をやる羽目になりました。

 それは,バーグラフ式のデジタルテスタです。1985年頃だと思いますが,今はなきソアーというメーカーから,バーグラフ式のデジタルテスタが出ていました。

 なんでもかんでも「デジタル」が優れていると盲目的に言われた80年代,テスタも例外なく,アナログ式のテスタは古くさいものとして扱われていました。

 ただ,電子工作の世界は,ベテランのおじさんたちが「アナログテスタには変化を見たりフルスケールに対する割合をぱぱっと確認出来るという良さがある」などと吹聴して回ったこともあり,アナログとデジタルが拮抗すると信じられていた特異な世界でもありました。

 ならばデジタルテスタでアナログのような表示をさせればいいんじゃないか,と本気で考えた面白い人たちがいて,それが先程のバーグラフ式デジタルテスタとして世に出るわけです。

 まあ,ちょっと考えればわかるんですが,せっかくデジタルになっている情報を,わざわざLCDのセグメントに1つ1つ割り当ててバーグラフにしてしまっても,何の意味もありませんわね。

 アナログは連続量だから針で示されるわけですし,デジタルは離散量だから数字で表示出来るのであって,本質的なデータの扱い方と表示方法を切り離し,入れ替えただけでは,それぞれの弱点を組み合わせただけの,最弱のテスタが出来上がるだけです。

 面白い,とそれなりに評判になったと記憶していますが,主流になることもなく,また後継機種が出ることもなく,さらに加えると絶賛する声もないまま,メーカーであるソアーと共に消え去りました。

 余談ですが,三和,日置などと列んで,テスタのメーカーとして知られたソアーですが,どうもこの少し後で倒産し,マザーツールとカスタムの2社に分かれたようです。どちらのテスタも店頭で見ることが出来ますが,正直どちらもぱっとしないという印象が私にはあります。

 デジタルテスタのサンプリングレートが上がり,連続変化をある程度捉えることが出来るようになり,これを視覚的に表現するために,数字での表示と一緒にバーグラフを出すテスタは普通に売られていますね。1つにサンプリングレートの向上と,1つはバーグラフを補完的に使うという役割の整理により,このアイデアは後世に残ることとなったわけです。

 というわけで,その時代が生んだ迷えるバーグラフ式テスタですが,私が手に入れたのはひょんなことからです。

 高校の1年と2年の夏休みに,大阪日本橋のジャンク屋「デジット」でアルバイトをした私は,そこで大変お世話になった店長さんと時々立ち話をするのが大好きでした。確か大学の入学が決まった冬だったと思うのですが,デジットから少し離れたビルに,デジットの2号店を出すという話を耳にし,開店直前に様子を見に行ったのです。

 店長の姿が見え,いつものように話を始めたところ,デジットの2号店としてここの店長も兼務するということ,店の名前は「客をデバッグしてやる」という挑発的な意味で「デバッグ」にした,ということを聞きました。

 デジットよりはもう少し綺麗なものを扱うことにしたらしく,いわゆるジャンクというよりも,今で言うアウトレットショップのような雰囲気を目指していたように思います。

 結局デバッグは紆余曲折を経てCCPというケーブルやコネクタの専門店になり,今はもう跡形もなくなっています。

 で,そのデバッグの開店時の目玉商品の1つが,先のバーグラフ式テスタでした。といってもソアーのものではなく,おそらくソアーのOEMと思われる,別のブランドのものでした。DT3100というのですが,ググってもかすりもしません。

 本体は水色で,いかにも80年代の色をしていますが,およそ測定器っぽくありません。付属品はテスタリードだけで,ケースもカバーもありません。説明書は英語のみで,外箱は簡素なボール紙です。これが確か3000円か4000円か,そんな値段だったと思います。いや,この価格はデジタルテスタとしても安いんですよ。

 手にとって「面白そうですね,買っていきますよ」と私が言うと,上機嫌な店長は「1000円でええわ」と気前よくサービスをしてくれました。お得意さんだろうが身内だろうが商売は商売と言い放つ店長が,どういうわけだかこの日は大盤振る舞いだったので,私は気味が悪くなったほどです。「入学祝いやとおもっとき」と,ニコニコして下さったことを,私は今でも覚えています。

 私にとっては3台目のテスターで,これで測定にも幅が出るなと喜んでいたのですが,使ってみるとあまり便利なものでもなく,次第に出番が減っていきました。

 その後,電池を何回か入れ替えて使えるようにはしてあったのですが,先日思い出したようにスイッチを入れてみると,動作しません。電池をしばらく替えていないなあと思いつつふたを開けると,見るも無惨に液漏れしていました。

 ソニーの電池は,百発百中で液漏れしますね。本当に時限爆弾です。

 アルカリ電池の液漏れは本当に始末が悪く,基板を溶かしてしまうことは昨年にも書きました。電池金具はボロボロですが,幸いなことに基板には浸透していない様子です。

 そこで,修理計画です。出番がないのでもう捨ててもいいかと思いましたが,やはり思い出の品ですし,測定器には違いありませんから,とりあえずやってみましょう。

 電池金具は,リン青銅板で作り直してみましょう。ちょっとバネが弱いですが,なんとかなるでしょう。同じサイズに切り取り,曲げて加工すれば出来そうです。

 そして土曜日,修理を始めます。金具を交換するのに全部ばらすことになったのですが,それはそんなに難しくありません。20年経っているとは思えないほど,中は綺麗です。

 金具を交換し,電池を入れてみると,あれ,動きません。表示が出ないのです。ちょっといじっていると表示が出たので,電池金具の接触だろうと,組み立て直します。

 しかし,組み立てると表示が出ません。

 これは困った。

 もう一度ばらしてみますが,やはり表示が出ません。LCDは外し,その下のシールド板を外して確認をしますが,目視ではなにもおかしいところはありません。

 見ると,シリンダ型の水晶発振子があります。これがクロックを作っているのでしょうが,動かない場合はクロックを疑うのがセオリーです。オシロスコープで確認すると,やはり発振していません。

 少なくとも,電源を入れて水晶発振子が発振していないというのは正しい動作ではありませんね。そこで,指で触ったり何度か電源を入れてみると,ノロノロと発振が始まるのがわかりました。発振開始に数秒もかかるのですが,こんなに発振しにくいのでは不安定すぎます。

 でも,もともとこれでちゃんと動いていたのですから,もう一度組み立ててみます。しかし,やはりだめです。

 今度は順番に確認していきます。基板単体で発振するのを確認し,シールド板を取り付けます。まだ発振してます。LCDを取り付けると発振停止。うーん,これは面倒です。

 水晶発振子が劣化することは,しばしばあることなので手持ちの32.768kHzと交換しますが,最初から発振しないか,発振しても同じような様子です。発振子が悪い訳ではなさそうです。

 ならばと外付けのコンデンサの値を調整しますが,10pF未満にしてもあまり変わらず。32kHz位の水晶なら,発振を安定させるためにコンデンサを小さなものにすると良いので,直列にして5pF位にします。

 そうするとかなりすっと発振が始まるようになりました。それまで正弦波だった波形も,矩形波に近くなってきました。力強くなってきたので気をよくして組み立てます。

 LCDを付けたところではまだ大丈夫です。しかしケースに入れると発振しません。何度か電源を入れると数秒後に画面が出てきます。しかし,それで2時間ほどもするとまた発振しなくなるのです。

 うーん,これでは使い物にならんなぁ,と,シールドのために切り刻んだ銅箔テープを手にくっつけながら,白んだ窓の外をながめて布団に入りました。

 翌日,改めて基板を見てみると,どうも水晶発振子とLSIのパターンが長すぎて,浮遊容量が大きそうに見えます。私のような素人でも,こんなパターンは危なくてひきません。

 考えたのは,LSIの足を浮かせて発振子を直接ハンダ付けし,最短距離で配線すること,それがダメなら発振器を別に作り,外部入力でクロックを入れてやろうという,2つのプランです。

 まず,最短距離での配線をやってみます。すると,強力な発振が始まります。これならいける,そんな風に思って組み立てますが,やはり大丈夫そうです。

 最終的に組み立てて何度か電源を入れてみましたが,問題なし。制度も確認してみましたが大きな誤差もないので,このまま使えそうです。

 というわけで,あまり便利ではないキワモノテスタですが,一応直って何よりと言ったところです。どうして壊れてしまったのか,なにが悪かったのか分からずじまいですが,結果良ければすべて良し。少なくとも発振しやすい方向で改善をしたのですから,今回やったことは無駄にはならないはずです。

 改めて思ったのですが,うちにあるテスタはどれももう10年以上のものです。中には20年以上昔のものもあります。メインで使っているのは秋月の安物ですし,予想通りそれぞれみんな値が違います。なにが正しいのか,もう分かりません。

 ちゃんとしたテスタを買い直す時が来たのかも,知れません。

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