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2008年12月11日の記事は以下のとおりです。

FA77mmF1.8Limitedを買う

  • 2008/12/11 15:09
  • カテゴリー:散財

 私は正直,ペンタックスのリミテッドレンズを「三姉妹」と呼び,FA77mmを次女と言ったりFA43mmを長女と言ったりするセンスには嫌悪感がありますし,FA77mmに「トロトロ」などという気持ち悪い愛称を付けることにも激しい抵抗があるので,リミテッドレンズの評判を額面通りに受け取ることはしないでおこうと思っていました。

#そういえばコシナの廉価版広角レンズを「三姉妹」と呼ぶ人もいましたね。私は三女の20mmF3.5を持ってますが・・・

 ただ,ペンタックスは昔からレンズの良さにボディが付いてきていないと言われることがあったくらいのメーカーで,単純な良し悪しを越えて,他には代わりがいない個性の豊かなレンズを継続的にリリースし,レンズのペンタックスという評判を不動のものにしてきました。

 多層マルチコーティングの先駆者であったり,後の世にパンケーキレンズと呼ばれることになる薄型レンズがプレミアがついて高値で取引されたり,放射能レンズと言えばスーパータクマーかズミクロン,あげくFA☆85mmF1.4はあまりの性能の良さにニコンがパクったとかホントかウソかわからん話まで出てくる始末です。

 一般的にはカメラそのものの良さが評判になりやすく,レンズの良さを高い評価に繋げるのはある程度のマニアから上だと思うのですが,何十年もレンズの良さを訴求し続ける,目立たないしわかりにくいけど真面目なスタンスは,もっと評価されてしかるべきと思います。

 そのペンタックスも残念ながら往時の勢いはすでになく,多くのレンズが他社のOEMだったりする現実に,過去を知るファンは涙したことかと思いますが,良いように解釈すればどこが作っても同じような安い(けど性能はいいんですよこれが)ズームレンズはあえて他社から調達し,ペンタックスしか出来ないような個性のあるレンズに資源を集中したと考えれば,ファンも(勝手に)納得するんじゃないかと思います。

 そんな中でFA77mmF1.8Limitedです。

 リミテッドレンズの素晴らしさは,数値だけで追い込まず設計者の感性と撮影結果からチューニングを重ねた光学系に,往年のタクマーレンズを彷彿とさせるアルミ削りだしの鏡筒,そしてAFレンズながらマニュアルレンズとしての使い勝手を全く犠牲にしない「撮影する楽しみ」を満喫できるところにあります。

 おそらく,この手のレンズのなかでは最も支持され,成功したレンズだろうと思うのですが,銀塩時代に生まれたフルサイズのFAリミテッドレンズには31mm,43mm,77mmの3つがあります。どれもすばらしい個性を持つレンズで,高い評価を得ています。

 また,国産の単焦点レンズとしてはそれなりに高価であり,憧れのレンズでもあります。

 私も,このレンズの素晴らしさには随分昔から憧れていて,ニコンをやめてペンタックスに鞍替えするかと何度も思ったものです。結局ニコンとペンタックスを使い分けるという方針で「両方」のユーザーになってしまうわけですが,特に欲しかったFA43mmはまともなボディが揃った時点で手に入れて,期待以上に感性に訴えるその写りに大変満足をしていました。

 FA77mmについては,むしろFA43mmよりも欲しかったといってもいいと思います。しかしやっぱり高価です。ちゃんとした使い道がはっきりしているならともかく,とりあえず押さえておくか,では手が出せない価格です。

 しかし,あの吸い込まれそうな前玉,たまりません。

 そうこうしているうちに,来年2月に値上げになることが発表されました。実に2万円以上の値上げです。ますますあの魅惑の前玉が遠のいてしまいます。

 しかもこれからボーナスシーズン。工場が国内から海外に移転されることも決まっているので,特にFAリミテッドレンズには駆け込み需要が集中することが予想されます。すでに現時点でシルバーは在庫が切れている店が多く,ブラックも安売り店から順に消えているような感じです。

 ええい,悩んでいる場合ではない,と買うことにしました。FA77mmF1.8Limited-Blackをとうとう買ってしまいました。

 なお,FA31mmについては,不思議と全然欲しいと思わないんですよね。高価であることもそうですし,広角を得意としない私にとっては完全に持て余し気味です。しかもこれをAPS-Cのデジタル一眼に付けると46mm相当ですから,全然うれしくありません。

 さて,昨日の夜,荻窪のさくらやさんにお願いしたFA77mmが届きました。銀塩時代のレンズだけに,箱は小さく,昔ながらのグレーの箱です。10万円クラスの大口径中望遠レンズが収まっている箱とはちょっと思えません。

 取り出してみると,これは50mmレンズかと思うようなコンパクトなレンズです。Planar50mmF1.4/ZFよりも小さいでしょう。

 しかし,その密度感というか,凝縮感には感動的なものがあり,アルミ削りだしの鏡筒の質感の良さと剛性感に,まず最初にノックアウトされてしまいます。すばらしい。

 そしてレンズキャップを外して,前玉をのぞき込みます。いやー,吸い込まれそうです。幸い傷やホコリもなく,とても綺麗です。77mmでF1.8という大口径レンズですが,フィルター径は49mmです。

 この49mmというのは結構重要なことで,タクマーレンズの時代は広角から中望遠まで,とにかく49mmに収まっていました。ニッコールもそうだったのですが,出来るだけフィルター径を変えないようにしよう,と頑張っていたようです。

 加えて,昔のレンズは前玉も小さく(これはむしろ直径の大きなレンズを量産する技術が未熟で,とても高価な特殊レンズになっていたことが理由でしょう),レンズ全体もコンパクトでした。

 Aiニッコールの105mmF2.5もそうですが,前玉が鏡筒の直径ギリギリまで大きいレンズはとても格好がいいものです。同じ直径の前玉でも,もしフィルター径が72mmだったらきっと不細工に見えることと思います。目が大きい方が美しく見えるというのは,人間も同じかも知れません。

 K10Dに取り付けて見ます。ファインダーをのぞき込むと,明るい視野と案外自然な画角に気が付きます。115mm相当になるというので一瞬の非日常を感じるかと覚悟をしていたのですが,それもありません。私は案外,凝視をするタイプの人間なのでしょう。

 絞りを開放し,とりあえず室内でそこら辺の写真を撮ってみてみます。

 写したものは何でもないものですが,非常にびっくりしました。線は繊細でありたおやかで,深い色調と豊かな階調をたたえています。今自分が見ている実物をも越えるような気さえします。勝手なイメージですが,この写りが男性的か女性的かと問われれば,それはやはり女性的と言うほかありません。

 ボケもとても綺麗で,うるさすぎることはありません。ただ,銘玉と呼ばれる数々の85mmレンズのような,混じりけのない無垢なボケということはないです。そこはやはり傾向というか,クセというか,このレンズの個性があります。

 それと,色収差が大きいですね。銀塩時代に作られたレンズで,しかもスペックで追い込まないというコンセプトのレンズだったわけで,収差の修正には慎重だったと思うのですが,そういう事情も考えてこの色収差をきちんと理解している人でなければ,現代の10万円のレンズとしてはクレームの嵐となったのではないでしょうか。

 銀塩時代には問題にならなかった収差も,デジタルになってピクセル等倍が当たり前になると,かなり目立つものです。特に1000万画素を越えると実害はないけども目立つ存在です。

 個人的には,色収差を補正するのに他の特性が引っ張られることも好きではなく,個性としてある程度は許容した方が面白いと思っています。どうしてもというなら現像ソフトで修正も可能ですし。

 このレンズも,F2.8からF5.6位が最も特性がよくなるとされていますが,F1.8でも全然大丈夫です。この手のレンズは絞りを開放するとわざとらしい写真になったり,ボケの不自然さや汚さが目立ってしうものですが,FA77mmについてはそれはなく,絞り開放も積極的に使っていけるという実感を持ちました。

 続けて,銀塩でも試してみましょう。MEsuperを引っ張り出し,FA77mmを装着します。そして期限切れになったコニカミノルタのセンチュリア200をつめます。久々のフィルム装填です。

 ファインダーをのぞき込むと,新たな感動がありました。35mmフルサイズの視野の広さ,そしてマニュアルフォーカス全盛のカメラが持つファインダーの見やすさは,FA77mmの素晴らしさを一瞬で理解させる力があります。

 最近のレンズはAFが前提ですのでピントリングの回転角は小さいものなのですが,FA77mmはマニュアル操作もちゃんと考えてから,昔のレンズ並みに回転角が大きく,AFレンズのクセにしっとりした高いトルクと相まって,完全にMFのレンズとして通用します。早速10枚ほどシャッターを切りましたが,実に楽しいです。

 レンズは本来ガラスで出来ているもの。ガラスの持つ密度感に我々人間は憧れがあり,グラスでも工芸品でも,ガラスで出来た品物に惹かれます。最近のカメラのレンズは軽く,プラスティックも使われて,それでも非常に良く写るようになりました。しかし,ガラスの塊であって欲しいという願いも一方で強く,ペンタックスのリミテッドレンズには,この欲望を満たすものがきちんと備わっています。

 以前も書きましたが,写真というのは,カメラやレンズの性能だけで撮るものではありません。カメラを持った感触,ファインダーを覗いたときの感覚,そしてシャッターを切ったときの振動や音が,もっと写真を撮りたい,という気持ちにさせてくれるのです。

 今回のFA77mmとFA43mmは,私の期待を裏切らないものでした。完全な趣味の世界として,この2つは私の常用レンズになると思います。高い買い物ではありましたが,価値ある買い物だったと思います。デジタルにも銀塩にも,どちらにもどんどんいきましょう。

 ところで,このFA77mm,シリアルナンバーが9000番台なんです。ちょっと調べて見ると,2007年の段階ですでに10000番台になっているそうですから,私のFA77mmは今から2年は経過したものということになりそうです。

 それで,実はFA77mmの話,これで終わりではありません。ちょっと厄介なことになってしまったのですが,それはこの続きで。

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