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2010年03月16日の記事は以下のとおりです。

オームの法則を導出し電気抵抗の本質を暴く

 「なぜ」「なに」が今も昔も口癖な私は,出来るだけものの原理や経緯,歴史を知るようにしてきました。

 一見すると無関係なものであっても背景には時間的な連続性がある,という発見があったことは,自然科学のような厳密な世界であっても,人間という生物が生まれて死んで次に伝えてという,生物としての基本的な行動によって積み上げられたものであることを改めて感じるきっかけになりました。

 私は子供の頃から電池に豆電球を繋いで光らせたりして,電流が流れると熱くなることを経験的に知っていましたので,オームの法則については一切疑うこともなく,ごく当たり前のこととして受け入れてきました。

 受け入れるも何も,実験すれば一発ですし,ドイツのオームという人が自然現象として発生していることに実は規則性があったことを「発見」したと学んだ以上,それ以上の疑問はわかなかったのです。

 ですが,オームの法則はその重要性が最高レベルである割には,電圧 = 抵抗 x 電流という式の導出は避けて通れないはずです。

 先日,『高校数学でわかる半導体の原理』という本を読み終えて,我ながらすっかり過去になった高校時代の数学をえっちらおっちら掘り起こしたのですが,その過程で「抵抗の原理」について触れたくだりがありました。

 常識なのかも知れませんが,私は電気抵抗の原理を真面目に考えたことがあまりなく,なるほどーと膝をうちました。今回は,私自身の知識の整理をするために,オームの法則を導出します。

 電流というのは簡単に言うと電子の流れです。単位時間あたりに流れる電子の数と考えると直感的でしょうか。(正確には電子だけではありませんが,導体中の電流について考えるということで,電子とします。)

 導体は,自由に動くことの出来る自由電子が加えられた電圧によって引っ張られて動き,これが電流という概念として,我々が理解しているものになります。

 電子はかかっている電圧で引っ張られるので加速され,本来なら速度が上がり続けることになりますが,主に原子にボコボコぶつかってしまうので,ある速度でバランスします。

 しょっちゅうぶつかれば速度は落ちてしまうので,低い速度でバランスします。そうすると単位時間あたりにながれる電子の数は減るわけで,これが電気抵抗の原理です。

 さて,電子が持っている電気の量(これを電荷と言います)をQとし,電圧がかかることによって出来る電場をEとすると,この電子が引っ張られる力Fは,

  F = QE

 です。また,電子は質量を持っていますが,これをmとし,力がかかったことで生まれる加速度をaをすると,

  F = ma

 です。まだ大丈夫ですね?

 左辺が同じFですので,2つをくっつけてしまって,

  QE = ma

 せっかくですから変形して,加速度aを左辺に持って,

  a = QE / m

 としておきましょう。Qもmも一定ですので,要するに電場が強いと加速度も大きい,というくらいに考えておきましょう。あたりまえの話です。

 それで,この電子が時間tで動く距離を考えてみます。加速度を積分して速度にし,これに時間をかけると,距離yが出てきます。

  y = 1/2 a(t^2)
   = 1/2 (QE / m) (t^2)
   = (QEt / 2m) t

 移動距離は速度に時間をかけたものですから,3行目でいう(QEt / 2m)がずばり速度ということになります。

 つまり,速度をvとすると,

  v = (QEt / 2m)
   = (Qt / 2m)E

 となります。お,速度vは電場Eに比例するといってますね。

 さて,一方電流というのを改めて考えてみます。電流は単位時間あたりに流れてくる電子の数だったわけですが,さらに単位面積あたりの電流を電流密度と呼ぶことにします。電流密度をJ,流れてくる電子の数をnとすると,

  J = Qnv

 です。流れてくる数が多いほど,流れてくる速度が大きいほど,電流密度は大きいということです。さあ,先程のvを代入してみましょう。

  J = Qn(Qt / 2m)E

 我々が目指しているのは,電圧と電流の関係ですので,電流密度は電流に,電場は電圧に置き換えていきましょう。

 まず電流Iは,電流密度に導体の断面積をかけたものです。断面積をSとすると,I=JSです。ですから,

  I = Qn(Qt / 2m)ES

 です。次に,電場は,かかる電圧に比例し,距離に反比例しますので,導体の長さをL,その両端にかかる電圧をVとすると,E=V/Lです。ですから,

  I = Qn(Qt / 2m)(V / L)S

 となります。狙い通り,左辺には電流I,右辺には電圧Vが入りました。これをさらに変形します。

  I = {(SntQ^2) / (2mL)}V

 さらに,Vを左辺に持ってきます。そうするとほら,

  V = {(2mL) / (SntQ^2)}I

 となって,電圧は電流に比例する式が出てきました。ということは,この式の{(2mL) / (SntQ^2)}は比例定数,すなわち電気抵抗ということになります。

 この比例定数,つまり電気抵抗を示しているはずの,

  (2mL) / (SntQ^2)

 をちょっと眺めてみましょう。まず分子ですが,mは電子の質量で決まった値ですから,導体の長さが長くなればなるほど,電気抵抗は大きくなります。

 次に分母ですが,導体の断面積が含まれています。つまり,導体の断面積が大きいほど電気抵抗は小さくなることを示しています。

 現実はどうでしょうか。導線の長さが長いと電気抵抗は増えますし,導線が太くなればなるほど,電気抵抗は小さくなりますね。よかった,あってます。

 ということで,今回やったことと言うのは,電流は電子の流れであるということから電子の振る舞いを式にして,これが最終的に電圧と電流にどう関係するかを記述してみた,ということになります。

 ややこしいことをやっていますが,結局の所電気抵抗というのは電気の流れやすさの逆数であり,電流の定義から断面積が増えれば電流が大きくなる,つまり電気抵抗が下がるというのは,実に当たり前の話です。

 でも,オームの法則というごく当たり前な話でさえも,発表当時は全く顧みられることがなかったわけで,我々がここまでたどり着くのに,やはりそれなりの壁を乗り越えてきているということを感じます。

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