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2010年04月08日の記事は以下のとおりです。

メーカーに煽られる消費者と3Dテレビ

 AV業界は3Dでもちきりです。

 タモリ倶楽部じゃないですが,そっちのAVではありません。(それはそれでどんなものか見てみたいですが)

 国内外のテレビ関連メーカーで,テレビの3D対応が進んでおり,2010年はその元年と言われています。

 わずかに高いだけでかつてない経験が出来るという触れ込みで一気に普及させたいとするメーカー側に,当初否定的だった評論家達が,ここへきてどういうわけだか「いいんじゃないの」と提灯をぶら下げるようになって,風向きが変わりつつあるように思います。

 私としては,商機を逃さないと頑張るメーカーさんには,B-CASやら補償金やらダビング10やらの問題を常に提起し続けて,とっとと解決してもらった方がみんなが幸せになるのではないかと思うのですが,考えて見るとこれは国内問題であって,海外で苦戦を強いられている日本のメーカーとしては,世界的潮流である3D化を進めないわけにはいかないのでしょう。

 最初に断っておきますが,私は3Dには極めて否定的です。ただし,映画館でも3Dを体験したことがない人ですので,その上での否定です。

 理由をごちゃごちゃ書くことすら無駄だと思われるほどバカバカしい話だと思っているので箇条書きにします。いや,メーカーや提灯評論家たちはすでにここで書くことなど,論破したつもりでいるので,私は声高に主張しません。

・メガネがいる
 -> 家族揃って大晦日に,3Dメガネをみんなしながら紅白をみるんですか?
   なんちゅうサイバーな家族ですか,そいつは。
   生まれてからずっと「テレビはメガネをして見る物だ」と思って
   育つ子供の気持ちになってみて下さい。

・家族の崩壊が進む
 -> メガネが足りない場合,メガネをしたくない場合,メガネをしていない人は
   普通に家族揃って一緒にテレビを見られません。
   よくも大画面テレビが「一家団欒の中心」などといえたものです。

・コンテンツがない
 -> 徐々に揃うでしょうが,そんなことより先にBlurayの普及じゃないですか。

・手軽な無料放送である地デジで試せない
 -> 一般の人たちは地デジで十分なんですよ実際。

・体に合わない人がいる
 -> 頭痛,めまい,疲れ,違和感,吐き気,肩凝り・・・
   そこまでして3Dでみたいかと。

・3Dでみたいものがない
 -> ひな壇バラエティーで奥行きを感じたいですか?
   ニュースで奥行きが必要ですか?取材映像は3Dじゃないですよ。
   北朝鮮からの映像は未だに4:3のSD解像度ですし。

・テレビの役割
 -> テレビの役割は,映像の伝送であって,仮想現実の伝送までは
   多くが望んでないじゃないでしょうか。

・画質の低下
 -> 3D(2Dの疑似3D化も含む)のために演算パワーや消費電力,
   帯域をあてがうより先に,もっと先にすべきことがあるんじゃ
   ないですか。

・そもそも誰のため
 -> 消費者が欲しいといって用意されたものではなく,メーカーの
   都合で出てきたもので,うまくいった試しがありません。

・そもそもテレビをみない
 -> みなさんテレビみてます?


 先日,朝電車の中でつらつらと,「押しつけられる違和感」を感じながら,昨今の3D化に煽られる状況を考えていると,過去に似たような違和感を感じて成功した事例って本当にないのかなあと考え込んでしまいました。

 例えば,白黒テレビを見た人は,しばらくするとやっぱりカラーが欲しいと思います。メーカーはカラーテレビを作り,消費者のニーズに応えるわけです。

 アナログテレビが誕生したとき,その解像度は14インチ程度のテレビを前提に決められたわけですが,消費者は大画面テレビと,大画面化によって必要になった高画質化を望みました。

 それらはテレビの主流となったわけですが,繰り返すとおり消費者のニーズが先にあったということが共通しています。ごく自然な流れです。

 では,消費者のニーズが少なく,メーカーの押しつけの結果大失敗に至ったものをちょっと探してみましょう。今回のテーマは,本来はこれです。


・4チャンネルステレオ

 ステレオがブームになり,立体音響の素晴らしさが浸透したあと,単純に後ろにもスピーカーを置こう,と安易に消費者を煽った4チャンネルステレオ(あえて当時の書き方であるチャンネルと書きます)は,1970年代に各社がこぞって実用化しました。
 最悪だったのは,真面目に4チャネル分の音を記録できるようにフォーマットに手を入れたメーカーがある一方で,ステレオの音から残響成分を取りだしただけのなんちゃって4チャンネルステレオも存在し,これらがメーカーごとに「うちのが一番」と展開されたことで,用意しないといけないものや実際の効果の違いが大きくバラツキ,消費者にそっぽを向かれたという事実です。
 後にサラウンド,などといって10年ごとに手を変え品を変え,似たようなものが出ては消え出ては消えして現在に至っていますが,消費者は音に包まれることよりも,音を持ち歩いて個人で楽しむ事を選んだのです。


・Lカセット

 これも1970年代ですね。コンパクトカセット(いわゆるカセットテープです)を一回り大きくしたもので,テープの幅を広げ,かつテープの走行速度を速めて高音質化し,オープンリールの性能とカセットの使いやすさを兼ね備えたものとして登場しました。
 しかし,消費者はカセットテープの性能向上を望み,Lカセットはあっという間に死に絶えました。後に登場するメタルテープによるカセットテープにより,オープンリールさえ完全に消え去りました。それだけあのサイズの使い勝手が良かったということでしょう。


・クリアビジョン

 アナログテレビ放送の高画質化を行う手法として,映像信号の隙間に高画質用の信号を挟み込み,対応のテレビで見れば高画質になるという触れ込みで1980年代後半に始まりました。でも,結果は一目瞭然。消費者は微々たる高画質化を地上放送で期待などしてなかったのです。


・FM文字多重放送(みえるラジオ)

 1990年代に始まったFM文字多重放送ですが,今放送されている音楽の曲名やキャンペーン情報を一緒に放送できるということで,それなりに期待されたようです。しかし,ラジオを聞いている人が常に文字情報を見られる環境にいるのか,と言われればそんなわけもなく,やっぱりラジオを聞いている人がどんな人なのかを見誤った結果ではないかと思います。


・AMステレオ放送

 1990年代に鳴り物入りで始まったAMステレオ放送は,始まって10年もすると,受信機の入手さえ難しくなりました。AMラジオを聞いている人がどういう人たちで,何を望んでいるのかを完全に見失った結果でしょう。個人的には残って欲しかったんですが・・・


・キャプテンシステム

 もうね,恥ずかしくって「ニューメディア」なんて,口に出来ませんよね。超ナローバンド,低解像度,少ない色数で貧弱な表現力,緩慢な動作,それでいて結局なにが出来るのかさっぱりわからないのに,トップダウンですごいすごいと言われ続けた代表格でしょう。知らない?ええ,知らないままで結構です。


・レーザーディスク

 それでも普及してた,と言う人もいるでしょうが,冷静に考えるとレーザーディスクなどは,マニアしか持ってませんでした。
 光学ディスクに映像を入れるということで得られるメリットは,頭出しが素早いことと,画質が優れていること,あと製造が楽で値段が下がることだったはずですが,そもそも映画で頭出しをすることは少なく,高画質化と言っても所詮525i,しかも値段は全然下がらず,では一般への普及などあるはずはありません。
 だから,カラオケ用に偏ったわけです。


・DCC

 音質云々は別にして,コンパクトカセットをディジタル化したDCCは,ミニディスクに敗れました。これは勝ち負けというより,DCCが少なくとも国内の消費者のニーズを無視していたことにあると思います。消費者は十分高音質になったコンパクトカセットのディジタル版が欲しかったわけではなく,録音と編集のできるCDを欲しがったということなのです。


 ・・・まだまだあると思いますが,AV関係だけでもぱっとこれだけ見つかりました。まあ,メーカーもそんなに悪意があったわけではないでしょうが,古今東西,消費者というのは案外賢く,あざとい考え方でものを売ろうと思ってもダメなものです。

 そう考えていくと,3Dテレビっていうのも,似たようなもんだと思えてなりません。

 私はむしろ,3Dは映画館で楽しむもの,と言うことになるんじゃないかと思っています。大画面,大音響,そしてあの独特な雰囲気と,映画を見るということだけを目的に足を運び,お金を払い,2時間拘束されるあの覚悟が,映画を映画館で見ることの意義であり価値であるわけですが,ここに3Dによる非日常が加わるということの方が自然です。

 一方で,個人で映画館を持つ事など出来ませんが,ミニ映画館を作るための方法として,プロジェクタやサラウンドシステムが売られています。でもそれはマニア向けで,そうした設備に価値を見いだせる一部の人の趣味の世界なわけです。しかも,どんなにお金をかけようとも,結局のところ映画館のサブセットに過ぎません。

 3Dが家庭に入ることがあるとすれば,この世界からになるのではないかと思います。普通は映画館で楽しむ,マニアはそれを自宅で再現する,再現することそのものも目的になる,という形で,細々と使われていくのではないでしょうか。

 消費者というのは賢いくせに,面倒くさがりです。おそらくメガネをすることを面倒くさがり,次第にメガネをしなくなります。メガネをしないと,3Dにならないのですから,3Dテレビの必要性も出てきません。そうするとコンテンツ,特に地デジでは3Dになる可能性は低くなり,3Dテレビは絶望的状況になります。

 別の言い方をすると,3Dで見たいときだけメガネをしますが,それってプロジェクタで映画を見ることと,同じ気分ですわね。せっかく映画を見るんだから,できるだけいい状態で楽しみたいということです。ですからAVマニアも,ニュースや天気予報は普通のテレビで見ているんです。

 そんなこんなで,私は3Dテレビは黒歴史になると思っているのですが,声高に3Dを叫んでいないメーカーを良心的だとも感じています。

 引っ越ししたら,いいテレビを買いたいなあとずっと思っていましたが,もうすぐ引っ越しという絶好の機会が訪れます。実は,もう新しいテレビを手配済みで,今回のテーマは,そのテレビの選択を正当化する屁理屈だった,というオチなのです。

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