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2010年04月09日の記事は以下のとおりです。

家電を買って思うこと

 最近,高額な家電を買うことがあって,消費者としてお店の現実を見ることがありました。

 私は若い頃,日本橋のパソコン店で働いていましたので,近隣の電気屋さんも含めて,1990年代の大阪における買い物についてはそれなりに分かっているつもりでしたが,それ以後についてはあまりよく分かっていません。

 しかし,その「それ以後」という部分こそ,家電の買い方が大きく変わった時ですので,今回久々に当事者になるにあたり,この点も意識していました。

 特に大阪という所は,挨拶代わりに「それでなんぼになるの?」と言うのが決まりでしたので,それ前提の価格が値札に付いていました。言い値で買うのはバカがすること(大阪でバカとは軽蔑の言葉です)と言われていて,1円でも安く買うことが重要なスキルでした。

 私がお店にいたころも,彼女にいい所を見せようと,頑張って値引きに励む男の姿がちらほらあったのですが,ああいうのはだめですね,私も人間ですので,意地悪して値引きに応じませんでしたが,一方で女の人の価格交渉には一発底値で応じた記憶があります。

 その後,通販の台頭があり,店舗を持たず,店員を雇わず,展示をしないという低コスト戦略で価格を下げる店が価格をぐぐっと引き下げました。

 同じくらいに,巨大な量販店の寡占が進み,とりわけ北関東戦争と言われる家電量販店の熾烈な闘いに勝利したヤマダ電機が,その強烈な販売力で価格の決定権を握ります。

 それまで,その地方ごとに展開していた各量販店は,ヨドバシカメラやヤマダ電機の進出により次々と倒れていき,特に大阪は梅田に出来たヨドバシカメラによって,完全にその勢力図が書き換わり,日本橋に至っては街そのものが変貌してしまいました。

 インターネットによる情報の共有もこの間進み,kakaku.comに見られる価格の比較サイトが一般の人の認知を受けて,どの店だといくらになった,というような,個人レベルの価格交渉結果さえ広まるようになりました。

 我々は,あるお客さんに出た金額は,自分が買うときにも適用されると思いがちですが,実はそんなことはありません。3000円値引いたことで20万円の売り上げが立つならそうするかも知れませんが,それでも他のお客さんが2000円の値引きで買ってくれるなら,そっちに売った方が得です。無理に3000円引くことはありません。

 そもそも,その日のノルマが達成されていて,特に売り上げが欲しい状況に置かれてなければ,値引きなんか全く出てきません。決算前,月末など,少しでも売り上げが欲しいときに,しかもその売り上げに責任を持っている「ちょっと偉い人」に話をすると,一発目からいい金額が出てきたりするのは,そのせいです。

 我々はどの店員さんと話をしても,お店と話をしている気分でいますが,最近は店員さんごとの個人成績が厳しく問われる時代なので,どちらかというと店員さんそのものと話をしているという気分でいた方が正しい場合があります。他の店にお客が流れてもそんなことは自分は関係ない,自分のノルマは達成されているのでむしろ同僚の成績が下がる分だけ好都合だ,と言う意識があることは,否定できないと思います。

 インターネットの出現前後で大きく変わったのが,実は売値は共通ではなく,みんなバラバラだったという事実を消費者が知った事と,どうやったら安く買えるのかというノウハウの共有化です。

 店員さんも人間ですから,綺麗な女の人に値切られたらあっさり応じますし,怖い職業の叔父さんにすごまれたら断り切れなくなるものです。その時々のお店の状況などから,値段は高くもなり安くもなるわけですが,昔はそれが公開されているわけではありませんから,内緒になるという不文律のもとで,価格交渉が行われていました。

 しかし,内緒にしておいてね,と言われた価格でも,kakaku.comにはでています。これだと店員さんは,外に値段が出ることを前提にして価格を出さざるを得ません。確かにそれがどれほど影響するかは分かりませんが,もし私が店員だったら,お客さんによって値段に差を付けるということが出来ない分だけ,マニュアル通りというか,もう自分の都合だけで商談してしまうんじゃないかと思います。

 そんな傾向もあってでしょうが,大阪で買い物をしても,店員さんと価格の交渉をするというプロセスを楽しむことが出来なくなってきたように思います。買い物の楽しみの1つが薄れてきたことを感じると,やはり残念かな,という気がします。

 ヤマダ電機もヨドバシカメラもそうなのですが,ポイント還元によってすべての商品を安くする工夫で「安いお店」というイメージを作り出しています。実際,安い商品が出ていることもあるのですが,多くは通販に比べて随分高く,ポイントまで考えても近い価格にさえなりません。

 つまり,家電量販店という所は,彼らが売りたい商品は安けども,それ以外は全然安くないということです。

 メーカーはせっかく,いろいろな消費者に向けて多くの種類の製品を用意してくれるのですが,価格の差があまりに大きく,実質的に種類を選ぶことが出来ないという事が起きてしまいます。実際,私が購入したパナソニックの洗濯機は,最上位機種が中位機種の売価を下回っていて,中位機種を買う理由がなくなっていましたが,メーカーの意図としては,上位機種から機能を削減して予算の厳しい人にも買ってもらおうということだったはずで,それがないがしろにされてしまっているのです。

 ここで面白い事に気が付きます。どの商品が売れるのか,と言う結果には,消費者が選んだもの,メーカーが改良を重ねて作ったものに加えて,販売店が売りたいと思うもの,の支配力が大きくなっているという事実です。

 欲しいものを買いにいっても値段が高く,特価の出ている他社同等品を買うことになったケースというのは珍しいことではありませんが,つまりどの商品がヒットするかは,お店がどの商品を売ろうと考えたかによるところが,大きくなっているというわけです。

 では,そのお店の売りたい商品とは,どうやって選ばれるのでしょうか。

 いろいろ要因はありますが,売りたい商品とはつまり,値段を下げられる商品です。しかし自分達の利益を下げてまで値段を下げることはありません。ということは,お店が安く仕入れることの出来る商品ということになります。

 これが,メーカーから,価格決定権を奪った最大の理由です。

 日本の製品は,同じ価格帯の製品ならどれも優秀であり,その差は少ないです。ですから,少しでも安いと言うことは大きな購入動機につながります。仕入れ価格を下げる,あるいは価格の補填をすると,その商品を安く大量に売ってくれることが期待できます。

 過剰な在庫を持ってしまった,利益よりもシェアが欲しい,という時などに,こういう心理が働きます。お店はそういうメーカーの気持ちを知っていて,安い仕入れを要求し,その代わりに力を入れて数を販売することを約束します。

 他社の製品,あるいは別の機種を買いに来た消費者は,価格の安さと店員のトークに誘導され,まんまと「お店の売りたい商品」を買うことになるというわけです。結果として,膨大な数を販売してみせます。

 ヤマダ電機は安い,ではなく,彼らが売りたいものに限って安いだけです。売りたくない商品はむしろ価格を高めにし,そちらを買わせないようにすることもあります。こうなると,もう我々消費者は,自分にぴったりの商品を選ぶという行為を否定されてしまったも同然です。

 ここまでくると,メーカーは,独自性を強め,高い値段でも売れるようにしようと頑張るようになります。量販店が出てくる前,つまり街の電気屋さんが主な販売ルートだった時代,各メーカーは個性と言うよりむしろ,他メーカーの系列店との比較で見劣りがしないように,価格や性能を横並びにしようとしていましたが,系列に関係のないお店が力を持つと,安売りされないように頑張るほかないのです。

 しかし,性能で差が付くことは少ないですし,個性的な機能は一方で避けられる要因にもなります。そうするとそのメーカーのブランドが力を持つようになるわけです。三菱電機の方には申し訳ないのですが,東芝と三菱のテレビがあって,同じスペックで同じ価格なら,どちらを買おうと考えますか?

 大きな販売力のある巨大量販店の価格支配力の増大,価格情報の共有化,この2つから起こった売り方と買い方をよく考えておかないと,随分損をすることになりそうだというのが,今回の私の感想でした。

 通販はすべての商品が安いです。しかし,量販店が売りたい商品につける価格にはかないません。通販はいきなり底値であり,とても公平です。しかし量販店では,どの店員さんにあたったのか,自分の話し方や態度はどうだったのか,そもそもその商品を売りたいと思っているのか,によって,随分価格が違ってきます。

 これを不公平というかどうかは,難しいです。

 買い物が難しくなってきたなあとつくづく思いましたし,買い物を楽しいと思わなくなるだけでなく,とても面倒なものだと思うようになりました。私のような人が,通販に流れているということも,実際あると思います。

 寂しいなと思います。

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