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2011年07月04日の記事は以下のとおりです。

SONY Readerを触ってみて

 私が読む本と嫁さんが読む本との間には共通点がありません,結婚時の蔵書の合算の結果,重複なく正味2倍の冊数になったことでも,それははっきりしました。

 私が面白いと言っておすすめしても途中で投げ出すし,嫁さんが面白そうに読んでいる本を私が読み始めても数ページで閉じてしまうので,ここまで違う物かと思うことがあります。

 そんななか,私の蔵書で嫁さんがいたく気に入った本が「闘うプログラマー」です。ちょっとまえに復刻された本で,DECのスタープログラマのデヴィッド・カトラーがビル・ゲイツに三顧の礼で迎えられ,WIndowsNTの開発を率いるというドキュメンタリーです。

 ご存じの通り,WindowsNTは現在のWindowsを根本から支える基盤ですが,カトラーは気高い思想で,WindowsNTの開発に邁進しました。「闘うプログラマー」という本は,スペシャリストであるカトラーが全力投球する姿を描き,最新のOSが生まれる瞬間を捉えた作品であると同時に,大規模なプロジェクト特有のスリルと興奮を,余すことなく伝えた名著です。

 余談ですが,ソフト開発のドキュメンタリーであるこの本と双璧を成す,ハード開発のドキュメンタリーとして「超マシン誕生」があげられます。本国アメリカでは単なるコンピュータ開発物語としてではなく,ピューリッツァー賞を受賞したノンフィクションとして,現在も賞賛されロングセラーを続けています。いずれも復刻版が出た現在,この2つはコンピュータに関わる人なら読まねばならない本でしょう。

 私は,カトラーという有名人の個性に惹かれてこの本を面白く読みましたが,ソフト屋として百戦錬磨の猛者である嫁さんは,大規模プロジェクトへの妙な親近感から,その臨場感がたまらないといいます。

 私はこれをスキャンしてPDFにしてあるのですが,嫁さんが久々に読みたいと言い出しました。通勤途中で読みたいという事だったので私のKindle3を貸してあげたところ,想像以上に好印象だったようで,自分のマシンを買おうと言い出しました。

 Kindle3は安価で,入手も難しくありません。しかし,初期不良や修理などのサポートが国内で受けられず,これが負担になるため私は他の人にはお勧めしていません。

 代わりに私が話したのが,SONY Readerです。

 Kindle3とReaderとは,できる事出来ない事の違いはもちろん,そのコンセプトも全然違う端末ですが,自炊したPDFを読むという事に限って言えば,そんなに違いはありません。800x600ドットのe-inkパネルはPRS-650なら6.5インチでKindle3と同じです。

 内蔵のストレージにPDFを突っ込めば良いだけで,この点での使い勝手に差はありません。同じ世代のパネルですし,それ程表示品質に差もないでしょう。

 ソニーのポイントもいくらか持っていた嫁さんは,私が絶賛するKindle3の向こうを張って,Readerを買いました。PRS-650,6.5インチの「Touch Edition」です。

 日曜日に届いたので私も少し触らせてもらいました。以下その感想です。先に結論だけ書いてしまうと,自炊した本の受け皿としては,Kindle3とDXの圧勝です。

 Wi-Fiなどの通信機能,キーボード,amazonかReaderStoreか,対応フォーマットの違いや,WIndows専用かプラットフォーム非依存かなど,カタログを見比べれば分かることについてはここでは触れませんが,それらを抜きにしてもKindleの勝ちだと思います。

 なお,データはScanSnapS500を使ってスキャンしたPDFで,2値は600dpi,グレースケールは300dpiでスキャンしてあります。設定は文字を太くする以外,デフォルトのままです。大きさは文庫からA5のハードカバーまでの数種類ですが,B5より大きな画像やカラーの画像は扱っていません。


・第一印象

 色はブラックを買ったのですが,大変にスタイリッシュで格好はいいです。金属製の筐体はヒンヤリするため「本」らしくないと書きましたが,そのソリッド感は決して不愉快なものではなく,「本」とは別の物,と考えてしまえれば,そんなに否定的にはならずに済むでしょう。

 KindleはとてもカジュアルでTシャツにジーパンのようなものです。Readerはノーネクタイでスーツという印象で,どっちを「かっちょいい」と思えるかは完全に趣味の世界だと思います。私はGeekなKindle3が大好きです。

 Kindle3のようにキーボードがなく,スッキリしたデザインですが,タッチパネルのせいでパネルが随分奥にあって,画面の縁の高さが数ミリあることが,画面を覗き込むような感覚が残念です。これはKindle3が圧倒的にいいですね。


・e-inkパネル

 kindle3と同じ世代の「PEARL」を搭載していると聞いていたので,余り気にしなかったのですが,比較のためKindle3と並べてみると,全然違うものです。

 まず,背景の白色が全然違います。Kindle3は本当に白いのですが,Readerはやや黄色みがかっています。結果として,ぱっと見た時のコントラストに大きな差を感じ,Readerの画面が「なにやら薄暗い」という印象を持ってしまいます。

 文字色である黒色にそれ程の差はありませんが,やっぱりまぶしいような白色であるkindle3の方が綺麗だと思います。

 ただ,実際の紙の色に近いのはどっち,と言われればそれはReaderであり,もしもこの色味が紙に近づけたこだわりの結果であったなら,なるほど納得出来る話ではあります。長時間の読書で疲れないかも知れませんし,明るい部屋ではKindle3の方が見にくい可能性もあるでしょう。

 最終的には好みの問題になるように思いますが,今のe-inkでも紙にはまだまだ遠い表示品質であり,色味を合わせることでもしもコントラストが下がっているなら,そういう調整はまだ早いというのが私の感想です。


・パッチパネルと操作感

 Touch Editionと名前が付いているだけあって,パネルを直接触るという直感的な操作を実現しているのは,Kindleシリーズにはない特徴です。

 本を選ぶ,ページをめくる,文字を入力するなど,画面を直接触って操作することは,確かに理想だと思います。しかし,Readerに限って言えば,e-inkの描画速度が遅いことや全体のレスポンスがやや緩慢であることから,タッチパネルの利点を生かせていないと感じました。すぐに反応がないので,本当に押したのかどうか分からないのです。

 加えて,よく言われるパネルの汚れは想像以上にひどく,大変目障りです。

 タッチパネルになったことで,ハードキーが大幅に整理されてしまい,BackボタンやMenuボタンもタッチパネルで操作しなければならないため,1つ前の画面に戻るとか,やり直したい時にさっと操作できず,イライラします。これは嫁さんも同意見でした。

 ページめくりのジェスチャーは,指を横方向にスライドさせるものです。Kindleは本体の左右の縁に付いたボタンを押すことでページをめくりますが,私はこの「大きな操作」でページをめくるというのが煩わしく感じました。ちょっとボタンを押すだけで済むことが,なぜわざわざ指を動かさねばならないのか。肘はおろか,肩までも動かさねばならないかも知れません。片手でめくることも出来ませんから,不便でしょう。

 それが分かってか,Touch Editionでもページ送りと戻しについては,ハードキーが用意されています。ただ,嫁さんにいわせると,ハードキーがあると持ち方が制限されるので,ジェスチャーによる操作は思いの外快適だという事でした。

 実は,もっと深刻だと思ったことがあります。Kindle3の場合,右綴じだろうが左綴じだろうが,ページ送りのボタンを押せば先に進み,戻しのボタンを押せば戻ります。送りのボタンは大きく,押しやすくなっていますが,どんな本でもとにかくこれを押せば先に進むという仕様です。欧米には左綴じの本しかありませんからね。

 これがReaderではとてもややこしいです。右から左へのスライドでは,左綴じの本(つまり横書き)の場合にはページ送りになりますが,右綴じ(縦書き)の本の場合,ページ戻しになります。

 左綴じか右綴じかは,実際に綴じられた本ではすぐにわかりますが,電子書籍ではそもそも綴じていません。ということは横書きか縦書きかの違いでページの進む向きが違ってくる訳ですが,1ページがドンと表示されている次が,左にあるか右にあるかを一瞬考えてしまいます。

 本を作る方からの反発を受けることは承知の上で,電子の本についてはそもそも綴じていないわけですから,右向きの矢印で進む,左向きの矢印で戻るで統一する方がよいのではないかと,私は思います。

 なお,Readerでは,スライドする向きとページがめくられる方向を,縦書きと横書きのそれぞれで設定することが可能です。ですので電子書籍らしいページ送りも出来ます。

・処理速度と操作感

 処理速度は可もなく不可もなくで,サクサク感はない代わりに,イライラすることも少ない物でした。細かいところは別にして,速度上の操作感の印象は,Kindleとそんなに変わりません。

 ただ,SDカードの認識に時間がかかったり,メニューを出したりするときの一瞬遅れたような動きは,Kindleにはありません。ましてハードキーを持たないReaderですから,確実に操作されたというフィードバックがないため,動作が遅れているのかそれとも操作されていないのか,どちらか分からず,不安になります。無反応の時についうっかり連打すると,,あとで一気に操作が有効になって,訳が分からなくなります。これはちょっと考え直してもらいたいことです。

 
・機能

 PDFの表示くらいしか試していませんが,多様なフォーマットに対応していることは評価すべきですし,英和辞書と英英辞書も最初から搭載しています。これは便利ですよ。

 それ以前に,講談社がコンテンツを提供するというのは,もうKindleなんかとは

 音声再生は,MP3やAACにも対応しており,MP3ですらオマケ扱いのKindle3に比べるとさすが,と言うほかありません。

 メモ機能もありますし,いろいろ出来そうなことは結構ですが,Readerを買う人がメモやAACの再生をどのくらいあてにするのか,私には疑問があります。

 むしろ,このことで使い勝手がスポイルされている点が問題です。

 トップの階層(ホーム)にはボタン1つで戻れますが,本を読むにはここから書籍選択画面に移動,さらに書籍を選ぶという手順になります。

 その結果,もしも別の本を読みたい時の操作が煩雑になってしまっています。

 ハードキーを使ってまずホームへ移動すると,そこからまた書籍選択画面を選ばねばなりません。さらに別の本を選んで・・・煩わしいです。

 本来なら,戻るキーをハードキーで用意しておかないといけないでしょう。Kindleは3もDXもそうですが,BackキーとHomeキーがハードキーで用意されています。HomeキーはReaderでいう書籍選択画面ですから,とにかくこれを押せば本を選び直せます。

 Backキーは,数字入力によるページ飛ばしに対しても有効なので,飛ばしすぎた場合などのUndoとして機能します。これは安心な機能だと思います。


・余白カットとズーム

 Readerの特徴的機能として,余白カットに注目した人も多いと思いますが,まず最初にKindle3では,この機能はデフォルトです。Fit to screenを選んでおくと1画面に収まるよう拡大縮小を行ってくれますが,この時印刷のない部分のカットもちゃんと行ってくれます。

 Readerの場合,この余白カットがデフォルトではありません。そこで余白カットをハードキーの拡大キーを押して設定する事になります。

 あちこちで酷評されていますが,この余白カットを設定したあと,本を閉じて再度開くと,余白カットされない設定に戻ってしまいます。別の本を読んだあと,元の本に戻ってくると,余白カットがされないため,いちいち設定をし直さねばなりません。Kindle3では本ごとに設定が記憶されますので,こんな煩わしいことはありません。

 ズームに至ってはさらに最悪です。

 拡大キーからズームを選び,画面を拡大したり縮小したり出来るのですが,ほどよい大きさに設定した後戻ると,設定がキャンセルされてしまいます。つまり,ズームモードでだけ有効ということですね。

 ズームでは,横幅いっぱいと縦幅いっぱいを自動設定する機能もありますが,せっかくそうやって拡大した画面はその画面だけで有効に過ぎず,記憶もしてくれません。

 ページロックを行えば,その拡大率と拡大位置を維持したままページ送りが可能ですが,目障りなことに「ページロック」と書かれた大きなアイコンが右隅に出たままで,これに本文がかぶってしまうこともしばしばです。このアイコンを避けるように拡大率を下げると,ほとんど拡大できず,大きな余白が出来てしまいます。何のためのズームなのかわかりません。

 本当にこれでいいと思ってるのか,作った人は使ったことがないんじゃないのか,と首をかしげたくなる最大の欠点が,これです。わずか800x600しか画素がないのですから,もっと大事に使いたいです。

 Kindle3はこのあたりはごく当たり前の仕様になっていて,余白カット,ズームは本ごとに記憶してくれます。


・よみやすさ

 2値で600dpi,グレースケールで300dpiで作られたPDFを,わずか800x600ドットで表示するのですから,見にくくなるのは避けられません。

 Kindle3の場合,その見にくさをカバーするため,コントラスト調整機能があります。コントラストといいつつ,文字を太くする機能も担っており,特に2値のデータの場合は,PCでの事前の加工を必要としないくらい,読みやすい表示を得ることが可能です。

 グレースケールの場合は文字も階調を持つので,文字が薄めに出てしまい,細い線などは消えてしまうことがあります。この場合,PCによる事前の処理が不可欠です。

 Readerの場合はどうかというと,2値でもグレースケールでも文字が細く薄く見にくいです。それで,表示品質の設定で調整を試みますが,どれもかえって見にくくなる設定ばかりで,結局標準が一番ましという結論になってしまいました。カスタムという明るさとコントラストを自由に調整出来る設定もありますが,あまりに操作性が悪く,またどうすれば最適点になるかがさっぱり分からないので,まるで使い物になりません。

 画像処理のアルゴリズムによる違いでしょうが,結局読みやすくなるかならないかが全てなわけで,標準以外は全滅なんて,これ本当に試したのかと,2つ目の首をかしげたくなるポイントです。

 この段階で,私は嫁さんにReaderを買わせたことを,後悔し始めました。

 グレースケールについては,そのままのデータではKindle3もReaderも同じように読みにくいです。よって,PCで前処理が必要になります。


・メモリカード

 内蔵のストレージが約1.4GB,これにメモリースティックとSDカードのスロットが用意されているのが,PRS-650の最大の売りだと思います。Kindleにはメモリカードが使えませんので,いっぱいになったら本体から消さねばなりません。

 低価格化の激しい大容量メモリカードを入れておけば,自分の蔵書は全て入れておけるかも知れず,これはKindleを圧倒するメリットだと思います。

 ただ,メモリースティックはもういらないでしょう。

 ところで,SDカードへのPDFのコピーですが,別に専用のソフトを使う必要はなく,マスストレージでマウント出来るので,普通にマウントしたSDカードにPDFデータをコピーするだけです。どのパスにおいてもちゃんと検索されるようで,自分で管理しやすいようにする自由度はあると思います。

 Kindle3ではdocumentsとういフォルダに入れるしかなく,しかもそのフォルダの下にフォルダを作る事が許されていません。冊数が増えるとたくさんのファイルで汚くなります。これもReaderの方がよいですね。

 マスストレージでマウントしたメモリへのアクセスは比較的高速で,遅すぎてイライラするKindleDXはもちろん,大幅に改善されたKindle3よりも高速だと思います。これもReaderは良くできています。


・Windows専用であることとファームウェアのアップデート

 Readerの致命的欠点は,その用途に本質的に無関係な理由で,Windowsマシンがないと「使えない」ことです。

 マスストレージでマウント出来るので,Macでも自炊したコンテンツを読むだけなら困りませんが,それとて自己責任で行うものです。

 しかし,DRMの関係でコンテンツの購入には専用のソフトが必要で,これがWindows専用なために,うちの嫁さんはコンテンツ購入の手段が全くありません。10年前ならいざ知らず,今Windows専用というのは,メーカーも相当勇気がいったはずです。

 ここで3つ目の首をかしげたくなる点です。ファームウェアのアップデートが,Windowsからでなければ出来ません。

 いろいろ理由はあるんでしょうが,いかに自己責任だとはいっても,Windowsを使っていないユーザーにアップデートをする機会さえ与えないというのは,その姿勢を疑われても仕方がありません。

 例えばです,セキュリティ関係のアップデートがあったとします。その穴をふさぐアップデートをすぐに行わなければ深刻なことが起こる場合,Macで使っている人,Linuxで使っている人に,そうした機会がないことで,ユーザーにもメーカーにも,もしかすると第三者にも損害を出す可能性は大いにあります。

 それでも,メーカーは「Macだから,Linuxだから知りません」と言い切れるのでしょうか。

 タブレットやスマートフォンが全盛の今,PCなんか格好悪くて使えないという人が少しずつ増えてきました。こういう流れに乗るべきが電子書籍端末であるはずなのに,PC,しかもWindowsがないとアップデートすら出来ないなんて,こんなみっともない話はありません。


・まとめ

 総じて言えることは,ハードウェアとソフトの下回りは,良くできてると言うことでしょう。しかし,上位層に近いところは不満だらけです。最上位のUIや操作仕様の部分に始まり,画像の加工を行う部分あたりまで,Kindle3に勝てる部分はないのではないかと思います。

 Kindle3は今時のマシンとは思えないほど殺風景で,文字中心のUIですが,本を読むという単機能に絞ったことが功を奏し,それで別になんの不満もありません。

 表紙をサムネールで表示する機能はKindleにはない楽しい機能ですが,時間がかかる,一覧性に乏しい,そんなに綺麗に表示されるわけではないことで,コレクション魂を揺さぶられるわけでもなく,慣れてくるとかえって面倒になりました。

 まだまだ改良が進み,アップデートも行われる事と思いますが,伸びしろがあるという期待と考えておきたいと思います。

amazonは噂のタブレットに集中しているのか,Kindleには新しい物も出ませんし,アップデートすら行われていません。安定しているし不満もないので別に構いませんが,kindleが足踏みをしている今こそ,Readerが存在感をアップさせるチャンスです。

 それと,ファームウェアアップデートについては,全ての購入者を対象にして欲しいと思います。WIndowsを使っている人以外は,アップデートする資格すらないというのは,考えて直して欲しいと思います。

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