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2011年11月11日の記事は以下のとおりです。

歪率計と低周波発振器の設計ミス

  • 2011/11/11 19:34
  • カテゴリー:make:

 秋も深まり,気温も下がって,日中も20度前後になる毎日,すっかり調整びよりです。

 夏休みに作った歪率計と低歪み低周波発振器は,秋になったらもう一度再調整をしようと考えていましたので,まずは調整が必要かどうか,確認をすることにしました。

 歪率計の完成後に出来上がった周波数カウンタを使って1kHzと10kHzの発振周波数を測定すると,ややずれている感じです。再調整はやっぱり必要だなあと,100Hzを見てみると発振していません。

 あれ,おかしい。波形を見ると,1kHzもクリップしていますし,100Hzも全然発振しません。調整がそんなに狂ったのかとVRをグルグル回しますがほとんど変化無しです。

 出力調整のVRを絞る方向に回すと,少し回しただけで大幅に振幅が小さくなります。もちろん波形はクリップしています。

 壊れたのかなあ・・・こういうときは電源電圧の確認だと,電圧を測定してみました。

 歪率計には±17V,発振器には±15Vが供給されているはずなのですが,今測定するとどちらも±14V付近です。どっかショートしているのかも知れないと確認しますがそういう場所も見つからず,電源回路を確認すればトランスの2次側が16Vrmsまで下がっています。三端子レギュレータを通れば3Vのドロップがありますから,このくらいの電圧は妥当です。

 どうやら,トランスが小さすぎたようです。16V-100mAの小型のトランスを使ったのですが,そんなに大きな電流が流れないアナログ回路ですから,トータル100mAも流れないだろうと高をくくっていました。

 確かに無負荷時の電圧を測定すると,ちゃんと±17Vと±15Vが出ていますが,特にリレーの載っている入出力基板が繋がると,途端に電圧が下がります。トランスの2次側が下がるので,±15Vも引っ張られて下がるのですね。

 こりゃーいかん。

 もう少し電流に余裕のあるトランスか,もう少し2次側の電圧の高いトランスに交換する必要があります。探してみてもそんなものはあるはずがなく,これは買うしかないとあきらめました。

 しかしトランスは現物を見てみないと大きさのイメージもわきませんし,値段もバラバラですので,通販はちょっとこわいです。(とはいえ真空管用のバカでかいトランスを持って帰るのは愚の骨頂なわけですが)

 背に腹は代えられません。まともなメーカーのトランスを800円ちょっとで購入。これは24V-100mAが2回路で,少し大きくなりますが,まあなんとか入るでしょう。

 トランスを注文して届くまでの間,少し状況を整理してみます。

 周波数カウンタを外せば,クリップもなくなるし,出力調整ボリュームも正常に動作します。ということは周波数カウンタに原因があるということです。

 周波数カウンタの入力アンプに問題があるとすれば,これはまた厄介な話です。せっかく上手く動いているのに,また検討しないといけません。

 まさか,と思い,ケーブルを周波数カウンタから外してみたのですが,やっぱり波形はクリップしたまま。ということは,どうもケーブルに問題があるようです。

 調べてみると,ケーブルがどこかでショートしているらしく,テスターであたれば,芯線と網線の間に数百Ωの抵抗が見えます。ケーブルを曲げればその値も変わりますので,間違いないでしょう。

 さすが,古いオシロのプローブの再利用です。ケーブルが内部でショートしているとは思いませんでした。ショートしている部分はケーブルの真ん中当たりのようで,これはもう捨てるしかありません。

 うーん,細身で曲がりやすく,かつ50Ωの同軸ケーブルって手持ちがないのよねえ。

 ということで,発振器の波形のクリップの原因は電圧の低下ではなく,周波数カウンタのケーブルのショートでした・・・

 しかし,電源電圧が正常ではなかったことが発覚した以上,ほっとくわけにはいきません。トランスが届いた翌日,さっさと組み込んで見ました。

 単純に交換しただけですので問題はないと思いますが,それでもAC100Vの部分ですのでやっぱりこわいです。

 恐る恐る電源を入れると,「パンッ」という何が破裂する音がします。なにか青白い火も見えました!

 あわてて電源を切って,ちょっとぼーっとしていたのですが,気を取り直して電源基板を見ても,どの部品も壊れた様子がありません。おかしいなあと思い,今度は電圧計を繋いで電源を入れてみます。電圧は正常値を示すのですが,5秒ほどするとまた「パンッ」という音が・・・

 これは確実にアウトです。でも,基板の上の部品には変化がありません。なにが破裂したのか確認するのに,さらに破裂をさせないといけなくなりました。しかし,以後は破裂音はしなくなりました。

 もしや,と思い基板を裏返すと,やっぱり・・・チップコンデンサが焦げていました。

 最近私は,パスコンなど0.1uF程度のパスコンには積極的にチップセラミックを使っています。取り付けも楽だし,ICの足下に置けますので性能も出ます。

 ところが,この手のチップセラミックって,耐圧が16V程度なわけです。部品に書いていないので記憶をたどるしかありませんが,例えば16Vだったら,今回のトランスの変更で入力電圧が30V近くになるわけですから,耐えきれなくなったんでしょう。

 負電圧側は同じ電圧がかかっていても破裂していなかったので,中途半端に壊れずにあるより,はっきり壊れてくれてむしろ助かりました。

 チップセラミックはせいぜい25V程度ですので,ここは50V耐圧のリード型のセラミックを用意して,これにすべて交換します。

 通電,電圧チェックをしますが,問題なし。回路の動作も問題なく,電圧が上がった分だけこれまで怪しかった動作が改善されているようです。

 しかし,三端子レギュレータに触ってみると,かなりの発熱です。これまでは発熱などほとんどなかったのですが,今回は50度を超えている感じです。

 ざっと計算してみますか。三端子レギュレータ(LM317)での電圧ドロップが10Vあって,電流が100mAとすれば,単純に1Wが熱になります。

 今回のLM317はTO220パッケージですので,仕様書からその熱抵抗を調べてみます。熱抵抗というのは文字通り熱の伝わりにくさを示す数字で,℃/Wという単位になります。1Wあたりの温度上昇を示しているわけですね。

 メーカーによって結構数字が違うのですが,ここではJRCの数字を使って見ます。LM317のオリジナルメーカーであるナショセミの仕様書は,随分緩いんですね。だから厳しいJRCのものを使うのですが,調べてみると,70℃/Wとあります。

 今回の回路では1Wが熱になるわけですから,TO220パッケージでは70℃まで上昇するな,とこんな風に考えるのです。

 では,何度まで上昇していいかを考えてみましょう。シリコンのジャンクション温度の最大値は150℃とされていますが,150℃になると確実に壊れるので,一般的に保存温度の最高値である125℃を限界と考えます。

 そして,周囲温度はどうするかですが,密閉空間ということもあり,50℃くらいまでは動いて欲しいなあと思いますから,ここは50℃とします。すると許容される温度情報は125-50で,75℃となります。

 先程,1Wの電力ではTO220パッケージは70℃まで温度が上がるとなっていました。温度上昇は75℃まで許容できるのですから,今回のケースではヒートシンク無しで大丈夫そうです。

 ということはですね,75℃の温度上昇がある時の電力は1.07Wとなります。これは電圧ドロップが10Vの時107mAに相当しますので,ちょっと余裕がなさ過ぎです。

 もしも,温度上昇の最大値を超える発熱があるのであれば,周囲温度を下げる(強制空冷や水冷),ジャンクション温度を上げる(シリコン以外を使う),あるいは発熱を下げる(電流を減らすか入出力電位差を小さくする)ことになります。しかしいずれも出来ない場合がほとんどですので,その場合にはパッケージの熱抵抗を下げて,1Wあたりの温度上昇を小さくするしかありません。ヒートシンクを取り付けるというのは,このことに他なりません。

 今回のケースでは,どうやらヒートシンクなしでもギリギリ大丈夫という結論ですが,かなり熱いのは事実ですし,出来れば少しでも温度を下げた方がいいと考えて,1.0mm厚のアルミ板をL字に曲げて取り付けました。

 これもざっと概算してみます。

 1.0mm厚のアルミ板を今回の40mmx25mmにしたとき,その熱抵抗は,あるデータによると,ざっと40℃/Wだそうです。

 この放熱器を取り付けた場合のトータルの熱抵抗は,ジャンクションとパッケージの接触面までの熱抵抗θjcと,パッケージ接触面から放熱器の表面までの熱抵抗θCHと,放熱器の熱抵抗θHSの和です。

 TO220のθjcは5℃/W,θCHは絶縁シートや締め付けトルクに寄りますが,一般的に0.4℃/Wを使います。故にトータル45.4℃/Wとなります。これが75℃になるのは1.65Wとなりますので,10Vの電圧ドロップ時には165mAとなります。まあ,これくらいなら少しはゆとりもあるでしょうか。

 一方,±15V系を計算して見ます。電圧ドロップが12Vで電流が30mAとすれば0.36Wです。78L15のパッケージであるTO92の熱抵抗はJRCの仕様書にある数字を採用すれば,200℃/Wということですので,温度上昇は72℃となりました。

 そして,許容される最大温度上昇については,先程の計算と同じで75℃です。ギリギリです。

 電圧ドロップが12Vと大きいので,ここを17Vから生成できればわずか2Vとなりますので,相当余裕が生まれます。しかし78L15の最低電位差は1.7Vですので,こちらも結構ギリギリです。難しい所ですが,ここは17V系の消費電力が上がってしまうことも気になりますので,少々危険ですが現状のままとしましょう。

 ところで,このTO92の熱抵抗ですが,ナショセミの数字を見ると,足の長さを基板から10mm程伸ばした場合には180℃/Wとのことで,これを3.2mm程まで近づけると,160℃/Wまで下がるんだそうです。奥が深いですね。

 で,電源電圧が変わったのですから,これはもう再調整しかありません。まず発振器をざっくり調整します。ざっくりといっても,周波数だけは真面目にあわせます。

 そして,歪率計を1kHz,10kHz,100Hzと調整をしていきます。調整箇所から大きく外れていないようですが,トータルゲインだけは少しズレがあったので再調整です。

 歪率計が調整出来たら,再度発振器です。周波数は調整済みですので,今度は帰還率と積分器を調整します。歪率を下げると発振がなかなか安定しないので,そこそこのところで妥協しますが,その結果これまでの値よりも若干悪くなってしまいました。

 発振器の最終結果です。

0.00064%(1kHz)
0.00205%(10kHz)
0.0038%(100Hz)

 これまでの最終値は,

0.0005%(1kHz)
0.0022%(10kHz)
0.0031%(100Hz)

 というわけで,10kHzを除いて若干悪くなっています。まあ誤差みたいなものですし,もともと低い値ですので,これくらいはもう気にしません。

 さて,これで歪率計・低歪み低周波発振器の検討は,本当に終了。あとは実戦配備のみです。しかし,実際に歪み率の測定をやってわかったのですが,結構大変なのです。時間もかかるし,同じ作業を何度も繰り返すので,ついうっかり手順を間違えてそのまま先に進んだり,測定中に条件が変わったりするようなことがあると,どうも値が綺麗に出てこないので,また測定し直しになったりします。

 それでも,温度や経年変化に対する変動の実力が案外小さいことが分かったので,一安心です。これでなにを測定しようか?

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