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2013年09月11日の記事は以下のとおりです。

やっとまともなFMステレオ標準信号

  • 2013/09/11 09:51
  • カテゴリー:make:

 絶滅して久しい「高級FMチューナー」を愛でる一部の奇特な人々にとって,その調整が経年変化でずれてしまったり,故障してしまって初期性能が出なくなってしまうことほど,悩ましいものはありません。

 調整は10年もすれば大きくずれるものですし,ずれてしまえば強烈なカタログスペックを誇る高級FMチューナーも,ラジカセ以下に成り下がります。これは不本意で悔しいことに違いありません。

 昨今,インターネットでFMラジオを聞くことが出来ますので,FMチューナーの役割はもう終わったかなと思う所もありますが,100kHz近い帯域を効率の悪いアナログ変調で贅沢に使ったFM放送は,本気になればビックリするほど高音質です。

 ただ,アナログですので,条件が揃わないと音質の劣化が激しいため,ラジオ=音質が悪いという一般的なイメージは,変わらないのではないかと思います。

 そんなわけで,私もパイオニアのF-757というチューナーを若いときに買って現在も保有する以上,ベストな状態を維持するために必要な保守は,もはや義務となったと自覚しています。

 そこで初めてオークションでジャンク測定器(略してジャン測)に手を出したのが,SSGであるVP-8191Aです。これは一般的な無線機の調整に使う事を目的にしたSSGのようで,AM変調とFM変調がかかり,下は90kHzくらいから,上は130MHzくらいまで発振できるものです。

 一応シンセサイザ方式ですので,それなりの精度が出ているものだと思いますが,FMチューナーの調整に欠かせないステレオ変調機能が搭載されておらず,VP-8191AだけではFMチューナーの調整に使えません。

 にもかかわらず手に入れたのは,手頃で程度の良さそうなSSGにあたる可能性がそうそうあるとも思えないことと,内蔵のステレオ変調機の性能は高級FMチューナーの調整にはちょっと物足りないものが多いこと,それにモノラルの段階ですでに大きく調整がずれている私のF-757にとっては,VP-8191Aで調整出来る範囲でさえも,大きな成果を得ることが出来そうだという期待があったからです。

 この春に手に入れたVP-8191Aで調整を行ったF-757は,大きく調整がずれていることがわかったのと,可能な限り再調整を行い,かなり状態は良くなりました。しかし,FM復調の調整が出来ないことは大変フラストレーションがたまりますし,実はFMステレオの復調は音質に大きな影響を与えるので,やはりちゃんと調整出来ないとつらいのです。とにかく,現在の状況もわからないというのは,気持ちが悪いです。

 ロームのFMステレオトランスミッタICを使って,簡単な変調器を作って見ましたが,あまり性能は出ず,気休めに過ぎません。せっかくオーディオアナライザも手に入れたことですし,VP-8191Aを買うときにも「そのうちFM変調器を買えばいいや」と思っていたこともありますから,オークションでの出品状況を見てみました。

 すると,安いものが見つかりました。VP-7635Aです。

 VP-7635Aは,VP-7633Aというこの時代の標準的なFM変調ユニットに対し,北米や欧州で使われていた渋滞情報をFMラジオで伝達する方式をチェックする機能が付いている,上位機種です。

 FMステレオ変調ユニットとしてはVP-7633Aと全く同じように使う事が出来るのですが,この時代のものですのでそんなに突出した性能があるわけではありません。しかしSSGに内蔵されたものよりはずっとよい性能を持っていて,歪率0.01%,セパレーション66dB以上,S/N90dB以上となっています。

 これをVP-8191Aと組み合わせると,一応高級FMチューナーを綺麗に調整出来そうです。欲しい。

 ジャンクに手を出すのはオーディオアナライザで懲りたはずですが,3000円ほどでしたので入札しておいたところ,うまく落札できました。

 届いたものを見てみると,やっぱり汚いです。なんでこうも汚いんですかね。

 通電して一通り試して見てから,分解して水洗いをします。気持ち悪くないように磨いたら再度組み立てていきます。

 ただですね,これ,ぱっと見ただけでは使い方がさっぱりわからないんですよ。今まで触ったこともないような測定器ですし,FMステレオの仕組みをちゃんと知らないといけないわけですから,動作を見て正常か壊れているのかを判断することも難しいです。

 説明書があれば勉強しながら使えるようになるのでしょうが,そんな気の利いたものはありません。手に入れたのは当時のカタログくらいのもので,搭載された機能が簡単に紹介されているだけのものです。

 面白いのは,VP-7635AはGP-IBを搭載しているのに,マイコンを内蔵していないことでしょうか。CPUなんてそんなに高価なものでもなかったし,安い製品ではなかったことを考えると,どうしてCPUを使わなかったのか疑問ですが,まあそれはいろいろ事情があったんでしょう。

 ですから,電源を入れれば以前の状態に復帰せず,必ず決まった状態からスタートしますし,初期設定はすべてフロントパネルから触ることが出来る半固定抵抗です。GP-IBについてもリスナのみで,簡単なものしか実現出来ていないようです。

 とにかく,その初期設定を行わなければ調整作業に進めません。ほとんど唯一のヒントとも言えるVP-8191Aの説明書を見ながら,なんとか使えるようにします。

 ところで,FMステレオ放送の原理は,左右のチャネルの信号の和信号と差信号を送信し,受信したらこの2つの信号から左右の信号を分離するというものです。

 なんでそんなことをすんの?と思うでしょうが,そうしないとモノラルしか受信出来ないラジオで,正しい音声が出なくなってしまいす。

 L+Rというのはモノラルの信号ですから,モノラルのラジオでこれがそのまま再生されるように電波に乗せる信号を作っておけば大丈夫。一方ステレオのラジオの場合は,L+RとL-Rを加算するとL信号が,引き算すればR信号が出てきます。

 ミソは,L-Rの信号をどうやってモノラルのラジオに影響を出さないように,また現在の放送システムと互換性を取りながら一緒に送信するのか,です。そこで考え出されたのが,現在のFMステレオ放送の方式です。

 2つの信号の和(L+R)と差(L-R)を作り,和信号は通常の音声として,差信号は38kHzのキャリアで振幅変調をかけ,しかもキャリアを抑圧します。DSBという変調方式ですね。

 そしてキャリアの半分の周波数である19kHzをパイロット信号として用意しておき,この3つを合成してコンポジット信号として,電波に乗せます。

 コンポジット信号は,モノラルのFMラジオの帯域にL+Rが存在するので,そのままモノラルラジオでも音を出すことが出来ます。L-Rは38kHzで変調されたので,38kHzというずっと高い周波数を中心に,低いところと高いところの両方の側波帯が出来ます。この結果,23kHzから53kHzまでがL-Rの信号となります。

 そしてここに19kHzのパイロット信号がのっかります。これがFMステレオのコンポジット信号の正体です。

 ここで,モノラルのFMラジオならあまり気にしなくても済んだ,音声信号の周波数帯域に気をつけなくてはいけないことに気が付きます。少なくとも19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんから,音声信号の周波数帯域は19kHz以下に制限されます。実際には15kHz以上はカットされます。

 これはもう1つ理由があり,38kHzで振幅変調をかけるL-Rの帯域制限です。38kHzの両側に±15kHzの側波帯が出来るのですから,低い方が19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんし,高い方も他の信号にぶつかってしまうとまずいのです。

 この両方の理由から,音声の周波数帯域は15kHzまでに制限されているわけです。

 ついでにいうと,その昔,ドルビー方式のノイズリダクションを搭載したカセットデッキで,マルチプレックスフィルタというローパスフィルタを搭載するものが高級機種では多かったのですが,これは周波数によって録音レベルを可変して聴感上のノイズを減らすドルビー方式のノイズリダクションが,19kHzのパイロット信号によって誤動作することを防ぐ目的で用意されていました。

 せっかく20kHz以上を録音できる高級機種で,高域をカットするのはもったいないと思うのは早計で,19kHzのパイロット信号が存在するのはFMのステレオ放送だけで,そのFMステレオ放送は15kHz以上の高域をばっさりカットされているのですから,積極的に使うべき機能でした。

 もっとも,FMチューナー側にも19kHzをカットするフィルタが搭載されているのが普通ですから,あまり実害はなかったのかも知れないし,FMステレオのS/Nがかなり条件の良い場合でも60dB程度だったことを考えると,ドルビーを使う意味がそもそもあったのかどうか,今にして思えば疑問ですね。

 さて,コンポジット信号をのせた電波を受けたラジオでの話ですが,モノラルのラジオの場合は和信号がそのまま再生されますので問題なし。

 ステレオの場合は19kHzのパイロット信号を2逓倍して38kHzを生成,これを元に差信号を復調し,和信号と差信号を加減算して,もとの左右の信号を得ます。この方式をマトリックス式といいます。

 復調の方法にはもう1つあって,19kHzのパイロット信号の2倍の周波数である38kHzを作り,この周波数で復調したコンポジット信号をそのままスイッチングして左右交互に出してやります。

 そうするとあら不思議,38kHzがHighの時とLowの時に,それぞれ左右の信号が出てくるんです。これをスイッチング方式と呼んでいます。

 なんで?と思うでしょうが,この2つは実は同じ事をやっています。変調時に38kHzのキャリアで振幅変調を行って,キャリアを抑圧しましたが,これは平衡変調器を使って実現します。

 平衡変調器というのは,2つの周波数の和と差を出力するものですが,それぞれの周波数は平衡しているので出てきません。そもそも振幅変調というのは,2つの信号の和と差を作る作業ですから,キャリア抑圧まで一緒にやってくれる平衡変調器というのは,とても都合が良いのです。

 ここで,2つの周波数の和と差というのは,2つの信号の積になるという事を,高校の時に習った数学で思い出して欲しいと思います。

 38kHzの信号が+1から-1まで変化するとし,もう1つの信号である(L-R)を平衡変調器に入れると,38kHzに同期して(L-R)と-(L-R)が交互に出てきます。これがFMステレオの信号には含まれているわけですね。そしてこの38kHzに同期して入れ替わっていることが,振幅変調そのものなのです。

 この信号を復調する時には,まず普通にFM検波を行ってコンポジット信号を手に入れます。コンポジット信号には,(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R),そして19kHzのパイロット信号の3つが含まれています。

 そしてパイロット信号である19kHzを2倍して38kHzにしてやり,この周波数で(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R)が混じった(言い換えると加算された状態の)コンポジット信号をスイッチングします。

 38kHzが+1になったときには,(L+R)+(L-R)=2L,-1になったときには(L+R)-(L-R)=2Rとなり,混じった信号から左右の信号を分離することができました。

 別の見方をすると,コンポジット信号を,1秒間に38000回のスピードで左右を切り替えて出しているのが,FMステレオです。人間の耳にはこの速度で左右を切り替えられても区別が出来ず,一緒になっているように聞こえるわけです。

 また,この38kHzで左右を切り替えるわけですから,送信時の38kHzとぴったり同期している必要があります。周波数は当然ですが,位相もぴったり合わないと左右の信号が漏れてしまいます。

 こうしたアナログ技術てんこ盛りな信号処理を使った方法は,お金をかければそれなりの性能が出ますが,お金をかけないと全然性能が出ません。高級なFMチューナーの性能がずば抜けていたのには,こういう理由もあるわけです。

 そりゃ,世の中デジタルが歓迎されますわね。余談ですが,このくらいの周波数をデジタル演算で処理する事は,今なら簡単にできます。大体,変調や復調というのは,純粋な数学の世界の話ですから,DSPを使ってもいいし,FPGAで作っても良いのですが,数式通りに実装してやればほぼ理論値に近い結果が得られるデジタル処理を行うことで,究極のFMチューナーが出来る時代です。

 やっと時代が追いついたんですが,悲しいかな,今そんな高性能なFMチューナーに需要はありません。
 
 話が逸れてしまいました。

 それで,FMチューナーを調整するには,日本のFM放送の規格に準じたコンポジット信号を作って,それをFM変調してやらねばなりません。SSGはFM変調をかける機械ですので動作は単純ですが,変調されるコンポジット信号を生成するVP-7635Aは,この規格に従った信号が出るように設定をしなければなりません。

 調べてみますと,日本のFM放送は,モノラル時最大75kHzの偏差で変調されることになっています。つまりこれが100%変調ということですね。

 そしてステレオ時には,主信号であるL+Rと,副信号であるL-Rの合計が90%,19kHzのパイロットが10%でなくてはなりません。75kHzの90%ということは,67.5kHzの偏差です。ステレオ信号をモノラルのラジオで受信すると,モノラルの信号を再生するより,少し音が小さくなるんですね。

 SSGであるVP-8191Aには外部入力端子がありますが,正確に75kHzの偏差で変調できるように,レベルインジケータがついています。OVERとUNDERのLEDが両方消灯するようにレベルを調整して入力すると,日本のFM放送でいう100%変調がかかるようになっています。

 ここまでわかれば,VP-7635Aの初期設定を始める事ができます。

 まず,VP-7635Aの出力レベルツマミを引っ張り,右に回しきります。このツマミは,押し込めば半固定抵抗が有効になり,設定した出力レベルになりますが,引っ張り出せば暫定的に値をツマミで調整が出来るようになります。

 そして,内蔵発振器を1kHzにセットし,変調モードをMONOにします。つまり,ただの1kHzの発振器の状態です。つまりこれが100%変調されると,75kHzの偏差になるわけです。

 VP-7635Aのレベルメータがフルスケールになるように,発振器の振幅を半固定抵抗で調整します。レベルメータはフルスケールで100%になるようよう,目盛りを切ってありますので,直読出来るようフルスケールにあわせます。

 続けて,内蔵発振器をOFFにし,パイロット信号をONにします。そしてNORMというボタンを押して,この時のレベルが10%になるように,半固定抵抗を調整します。ありがたいことに,VP-7635Aはパイロット信号だけ出力しているときには,レベルメーターはフルスケール15%のレンジに切り替わってくれます。

 普段の測定には使いませんが,ついでにパイロット信号のレベルを少し増やした状態と少し減らした状態を設定しておきましょう。+ボタンを押して11%に,-ボタンをおして9%になるように,それぞれの半固定抵抗を調整します。

 さて確認です。パイロット信号をNORMにし,内蔵発振器を1kHzにセット,変調モードをL=Rにします。そうするとレベルメータは100%になっているはずです。なってなければ,故障しています。

 これも普段は使いませんが,変調度が一発で30%になるようにしておきます。変調をMONOに切り替え,REDUCEDボタンを押します。そしてレベルメータが30%になるように半固定抵抗を調整します。

 そして最後に,パイロット信号の位相を合わせます。オシロスコープをX-Yモードにし,Xにパイロット出力,Yにコンポジット出力を繋ぎます。

 そして,変調をOFF,パイロット信号をONにします。この状態で,オシロスコープに出ている斜めの線が,綺麗に1本になるように,SCOPE PHASEと書かれた半固定抵抗をあわせます。この調整は,オシロスコープが最初から持っている位相差を含む,系の位相差を補正するものです。

 次に,内蔵発振器を1kHzに,変調をL=-Rにします。すると画面上にリボンのような図形が出ます。周波数比が1:2の時の図形ですね。

 画面の真ん中に,菱形の部分が出ているようなら,これがなくなって,2つの線が交差するような状態になるよう,PILOTと書かれた半固定抵抗を回します。

 ということなのですが,FMステレオモジュレータにおいて,この調整は一般的なもののようで,後継機種であるVP-7637Aの説明書にも書かれていました。私の場合,PILOTを回しきっても菱形を消すことは出来ず,最も小さくなるところで妥協せざるを得なかったことも記しておきます。

 また,これも面白い事なのですが,VP-7635Aは19kHzを手早く正確に合わせるための,周波数計を搭載しています。METERと書かれたボタンを押すとメーターが周波数計になり,パイロット信号を出力していたBNCコネクタが入力端子になって,ここの周波数が19kHzだとメーターがセンターに来るというものなのですが,入力端子になにも繋がない場合には内蔵の19kHzが校正用に入力されるらしく,SCOPE PHASEが調整済みの場合には,ぴったりセンターに来るのです。

 調整がずれることを覚悟してSCOPE PHASEを回せば,メーターが大きくセンターから外れるのですが,波形を見れば斜めの線が重ならず2本の線になっています。

 偶然かも分かりませんが,周波数計の校正に使うのはSCOPE PHASEで,19kHzのパイロット信号出力と,38kHzのコンポジット信号との間の位相差をゼロにすることで,周波数計の校正が出来る仕組みなんじゃないかと思います。

 それで,PILOTを調整して菱形を消すことが出来ないのは,私のVP-7635Aの不良ではないかと思います。内部を見たのですが,たくさん調整箇所があります。調整位置を示すマーキングから大きくずれている半固定抵抗も多数あり,再調整されたのか,それともでたらめに誰かが触ったのか不明ですが,いずれにしても完調ではないということでしょう。

 きちんと調整を済ませたいところですが,なんの半固定抵抗かわかりませんし,回路図もない,調整方法もわからないので,かえって悪くする可能性が高いです。ここはぐっと堪えて,現状のままでいくことにします。

 後述しますが,F-757の調整の結果,セパレーションは60dB近いのです。VP-7635Aのスペックでは66dBとありますが,F-757は60dB程度ということですし,完璧ではないにせよ,このVP-7635Aを使えば60dBくらいの性能が受信側でも出るという事がわかっているので,変にいじるべきではないと判断しました。


 さて,いよいよ仕上げです。VP-7635Aの出力レベルツマミを押し込み,出力端子をSSGに接続してSSGを外部入力モードに設定,変調をFMにして変調度を75%にします。この状態でUNDERとOVERの2つのLEDが消えるように,VP-7635Aの出力レベルの半固定抵抗を調整します。大体レベルメータの読みで40%くらいのところのはずです。

 これで,VP-7635Aの設定は終わりました。1kHzを発信させ,MONOにしたりL=RにしてもSSGのUNDERとOVERが消えていることを確認してみて下さい。

 私のVP-7635Aは結構怪しくて,発振周波数を切り替えるとOVERになったりUNDERになったりします。まあ,1kHzと400Hzくらいしか使いませんし,実は手に入れたVP-7635Aは改造品で,切り替えられる周波数が標準品とはちょっと違っています。あんまりこだわるのも面倒なので,もうこのままいきます。

 ところで,この内蔵発振器の性能についてですが,周波数はほぼ正確です。歪率は標準的で,0.002%くらいでした。VP-7722Aに比べると悪い値ですが,FMチューナーの調整には申し分ないです。

 では,早速F-757の再調整をしてみましょう。モノラルの調整は前回と同じです。しかし今回は左右同時測定可能なオーディオアナライザに高レスポンスのDMMがあります。実にスムーズに確認と調整が進みます。いいですね,気分がいいです。

 そしていよいよステレオの調整です。F-757はステレオ時に歪率を補正する回路があるそうで,ここを調整して歪率を下げていきます。そしてセパレーションが最善になるように,マルチプレクサの調整もします。

 そして,19kHzの漏れが小さくなるように,キャリアリークが最小になるようにします。

 この結果,以下の性能になりました。

・歪率
 MONO:0.0552%
 L:0.1%,R:0.1%

・セパレーション
 L->R:58.72dB,R->L:57.72dB

・S/N
 MONO:77.2dB
 L:61.4dB,R:61.37dB

・キャリアリーク
 -61.33dB

 おいおい,カタログスペックからすれば,全然ほど遠い結果です。取説に記載されている仕様によると,歪率はモノラルで0.005%,ステレオで0.008%です。一桁以上悪いです。

 セパレーションは70dB,S/Nはなんとモノラルで100dB,ステレオでも92dBとCDなみです。これはいくらなんでも盛りすぎですわね。FM放送のポテンシャルやF-757の回路形式を考えると,これは無理です。

 日本の取説にはありえない神スペック(嘘スペック)が書かれているので無視するとしても,正直で現実的な海外仕様のスペックに対しても実は届いていません。特に歪率が0.1%というのは,ちょっと悪いなあと思います。

 これなら,F-757を大事に調整して使うのではなく,別の中古のチューナーを探して買い直すのも手かも知れないですが,なんだか本末転倒ですね。

 あるいはF-757の不良箇所を調べて修理するという手もあるでしょうか。電解コンデンサは20年もすれば,悪くなっているものもあるでしょう。交換するだけで随分良くなるような気もします。

 9月になると,毎年恒例の東京Jazzの生中継がFMで行われるはずです。これに間に合うようになにか手を考えてみましょう。

 VP-8191AにVP-7635Aと,まあ滅多に使わない測定器をよくも揃えたものです。代用の利かない測定器で,これがないと全く話にならない,でも持っていても滅多に出番がないという,つぶしの利かない面倒な存在ですが,あまりこじつけて無理に納得することはしないで,FMチューナーをベストな状態にするために必要なものだったと,割り切ることにしたいと思います。


 測定器の話は,あと最後に1つ,2465Aの調整のために新品を買った,ファンクションジェネレータAG-1022のお話を次回にして,やっとおしまいです。

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