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2014年04月04日の記事は以下のとおりです。

aitendoのDSPラジオ

  • 2014/04/04 15:03
  • カテゴリー:make:

 私の親しい友人の一人に,ラジオ好きが高じて電子工作に目覚めた人がいます。彼はもともと機械屋で,電気関係には抵抗がある人だったのですが,どういうわけだか自宅には立派なオシロスコープも鎮座してあり,いっぱしの電気設計者です。

 そんな彼がある時,aitendoなるお店の話をし始めました。私に知っているか?と尋ねるので,ああ,買い物をしたことはないけど知ってるよというと,ここで買ったラジオが動かなくて困ってるんだと,言い出しました。

 aitendoは,最近出てきた電子工作の部品を扱うお店なのですが,きちんとしたものを扱っていると言うよりは,なんだかよく分からない怪しげなもの(主に中国製)を,安価に売っているというお店です。仕様書とか説明書とか,そういうものはほとんど用意されておらず,かといって自力で調べる事が出来るほどまともな部品でもないため,まるでパズルを解くかのような非論理的な世界が,一部のマニアの心を鷲づかみにしているようです。

 彼の場合,年始にaitendoの福袋を店頭で買ったことが事の始まりだったらしいですが,とにかく謎だらけで,先に進まんとぼやいていました。そこで,私に助けを求めたという事のようです。

 私もラジオは好きですし,一応この道30年のベテランですから,aitendoくらいなんでもないと思っていますので,彼が特に困っているといっている,DSPラジオを買うことにしました。ポリバリコンの背中にすべての機能が収まった基板がくっついている,超小型のラジオモジュールですね。

 日本ではラジオは完全に旧世代の遺物で,新規開発はもう行われていないに等しいわけですが,実は海外では革命的な進歩が起きています。それが,DSPラジオです。

 従来のラジオはLC共振回路で作った同調回路で電波を選び,これをある周波数に変換してから,復調して音を出していました。もう何十年もこの方式です。

 ところがDSPラジオは,まず手当たり次第に電波を取り込み,A-D変換でデジタル化し,これをDSPに突っ込んで欲しい周波数の電波を選び,復調します。欲しい電波を選ぶ事も,復調することも,実はちゃんと数式で書くことが出来て,計算で行うことが出来ますが,複雑な計算をリアルタイムで,しかも安価に行う方法など存在せず,それらを行う部品を使って処理していたわけですね。

 いわば,数学的な処理が近似された特性を持っている部品を探してきたり作り出したりして,ラジオを作っていたわけです。

 話が逸れますが,これはアナログコンピュータとデジタルコンピュータとの違いのようなもので,微分をするのに,微分をする回路を作って電圧を測ったのがアナログコンピュータ,微分を近似して計算して求めているのがデジタルコンピュータです。

 単純な繰り返しの計算を猛スピードで行うことで,それなりの速度とそれなりの精度が得られるようになれば,値段も下がるし信頼性もあがるし扱いも楽になるしで,いいことずくめです。こうしてこの20年,我々の身の回りのものはデジタル化が進みました。

 ラジオの世界は,ここ10年ほどでようやくDSPの性能がラジオに使えるようになったことで,まずは軍用の無線からDSP化されるようになってきたのですが,民生用の短波ラジオくらいなら,もうDSPは当たり前なんですね。

 数学的に計算されるのが理想なラジオの世界を,近似した特性を持つ部品で代替していたのがこれまでの状況ですから,正確無比な演算で処理できれば,これに勝るものはありません。ですから,今回のDSPラジオも,500円で超小型で中国製で,回路もなにやら怪しいにもかかわらず,動き出せば実に高感度,高音質でビックリしました。

 受信周波数を選ぶプロセスも演算ですのでバリコンのような部品を使うことはないのですが,そこはチューニング=ダイアル=バリコンという固定観念があるのか,無理にバリコンを使っているような回路です。

 こんな最新のDSPラジオでも,音声出力は謎の仕様で,ステレオ出力時は左右で位相が逆になっています。これは,モノラルスピーカーの出力と兼用になっているからのようで,スピーカーの出力を稼ぐためにBTLになっているせいです。

 BTLの時には,片側の位相は逆にして突っ込みますが,ステレオのヘッドフォン出力の時には,GNDをコモンにしたシングルエンドでないといけないので,位相を戻さねばならないのに,さぼっています。

 ヘッドフォンの接続を逆にした,専用品を作ればこのままでもいいのですが,それでOKにしちゃう中国製品の思想に,私は驚愕しました。私は結局,ヘッドフォンによるステレオの受信はあきらめ,モノラルのスピーカー専用ラジオに仕上げました。

 小さいプラケースに詰め込み,なんとか形にしましたが,AMはもちろんFM,そして短波も受信出来る優れもので,大きな音がスピーカーから出てきます。

 日本にいると,ラジオが20年前からちっとも進化せず,もう終わった存在に見えてきます。しかし,世界的には完全に世代が移行した新システムが普及期に入っており,その性能の向上は圧倒的なものがあります。そしてそれらは,スマートフォンなどに内蔵されたラジオICに応用されており,実は我々は気が付かないうちに,DSPラジオのユーザーになっているのですが,誰もそんなラジオの事を気にかけるわけではなく,子供たちも興味を持たずに,古い知識だけが年寄りによって口伝されるという,悲しい現実が,まさに起きています。

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