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2015年07月24日の記事は以下のとおりです。

念願のKENWOODのFMチューナーをレストア

  • 2015/07/24 09:12
  • カテゴリー:make:

 今でこそFMラジオなんて見向きもされませんが,ステレオ放送が始まった1960年代以降,30年から40年くらいは,それはそれは貴重な音楽ソースでした。

 スイッチを入れておくだけで,その道のプロが選んだ曲を,解説やコメントと一緒にどんどん流してくれるFM放送は,当時高価だった音楽を無料で手に入れる機会だったと同時に,自分からは買うことがないだろうと思うような,様々なジャンルの音楽に触れる,お試しの場でもありました。

 ここから,どれだけの音楽を知り,聴く事になっただろうか・・・

 書いていて思ったのは,これと同じメリットを声高に,今のAppleMusicやAWAなどのサブスクリプション音楽サービスが,叫んでいることでしょうか。音楽との出会いに,詳しい人の力をあてにしているというのは,いつの時代も変わらないということです。

 で,1980年代は日本がバブル景気にわいた時代で,ものを作って並べれば,なんでも飛ぶように売れた時代でもあります。オーディオ機器もしかり。今だと考えつかないですが,FMラジオを超高級化してHi-Fiオーディオ機器とした「FMチューナー」が,各社から発売されていました。

 安いものはラジオの毛が生えた程度のもので2万円くらいから,超高級機だと20万円近いものまでピンキリだったのですが,高級機と呼ばれる5,6万円程度くらいのものを買えば,放送局側がしっかりしていれば,かなり良い音でFM放送が楽しめました。

 楽しめました,と過去形なのは,もうこうしたFM放送を音楽を愉しむ道具として新品を購入することはほぼ不可能だからです。特に評価の高かったケンウッドは完全撤退しています。

 ケンウッドはもともと通信機のメーカーですから,FMチューナーに得意なのはなんとなく分かっていましたが,高周波機器としてのチューナーの性能以上に,オーディオ性能が卓越していた事実を私は21世紀になってから知る事になります。

 1990年頃だったか,展示品が安く買えるという理由でパイオニアのF-757を買いましたが,これはそれなりの値段がした割に,回路構成も音も高級機とは言えず,後日がっかりするわけですが,そのころから「やっぱケンウッドのチューナー欲しいなあ」と思うようになりました。

 ある友人が,私の持っていたSGをあてにして,KT-3030を持ってきたのですが,どうも呼称しているらしく調整が追い込めません。それでもその端整なデザインと高級機にふさわしい回路構成に,私はすっかりクラクラしてしまい,ずっと手に入れる機会を狙っていました。

 ふとしたことから,KT-1100Dという,定評のある高級機の中古品が手に入ったのが2週間ほど前です。値段は1万円ほどですが,ちょっと高かったかなあと思います。

 傷あり汚れありで外観は程ほどですが,無改造の完動品ですし,うまく調整をして性能を追い込めたら1万円の価値はあると納得しました。なにより欲しかったケンウッド,欲しかったKT-1100Dです。

 さっと動作確認とデータ取りを行い,正常動作をしていることを確認します。そして,この時期のケンウッドに多いとされる,電解コンデンサのショートや容量抜けを警戒して,すべての電解コンデンサを交換します。

 大した価格差もありませんので,出来るだけ音響用として売られているものを使います。今回は秋月で買えるものという理由で,ニチコンのFineGoldを使いました。バイポーラについてはこれも秋月で買えるMUSEですが,FineGoldで揃えられなかった容量も,このMUSEを使う事にしました。

 また,1uFや0.33uFや0.22uFなど,フィルムコンデンサが使えるところはあえて電解コンデンサから変更しました。

 もう1つ大事な交換作業として,半固定抵抗があります。友人のKT-3030もそうだったのですが,プラスチックの部分が割れていて,値が不安定になることがありました。こういうものは言うまでもありませんが,正常なものであっても,調整のしやすさから多回転型を使いたいところで,可能な限りベックマンの25回転型に交換します。

 OP-AMPの交換も行います。KT-1100Dには安価なNJM4560Dが大量に使われていますが,これはあんまり特性が良くないとされているのですね。もっとも,このOP-AMPで音作りをしているんだとしたら,無闇に交換するのは考え物ですが,気分の問題ですから,ちょっと高級なものに交換しましょう。

 検波基板は,NJM5532にします。上位機種ではこの部分に5532を使っているという話を聞いたからですが,私はあまりこの5532というOP-AMPが好きではありません。

 他の4560は,4580DDに交換です。回路構成やファミリーとしても似ているし,4580DDの低歪みは私も体験済みということもあり,その割に安いことから,もうあれこれ考えずに交換です。

 そして,4558相当とされている割に案外高音質なM5218も,4580DDに交換です。

 これで,OP-AMP自身が性能を劣化させている部分があるとすれば,かなり改善されることでしょう。


 そうそう,FMのアンテナ入力端子も交換です。この時期のケンウッドのチューナーは,F型コネクタとはちょっと違う端子を使っているので不便です。そこでこれをF型コネクタに交換するのですが,元々RCAプラグが先端についた同軸ケーブルが基板から出ていますので,RCA-F型の変換コネクタを使ってやれば,問題は解決です。

 背面のコネクタ繋がりで,ACコードも直出しからインレットに交換しました。これだけで随分メンテナンスが楽になります。

 あとは分解し,可能な限り洗剤と水で荒いって汚れを落とします。

 買い忘れや間違いがあり,交換作業に1週間ほどかかってしまったのですが,とりあえず作業は終了。ドキドキしながら電源を入れ,SGで動作確認をしてみますと,問題なく動いているようです。

 この流れで調整を始めます。

 VTの電圧が随分狂っていたりしたのですが,これは調整点がずれたと言うよりも,どうやらトリマーが壊れてかかっていて,大きく値が狂ってしまったことにあるようです。交換すべきなのですが,なんだか面倒になって,再調整で今回はすませます。

 案外スムーズに調整は進んだのですが,最終的な性能をみて私はがっかりしました。

  WIDE
歪率 MONO:0.025% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:53.7dB R->L:53.6dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB
キャリアリーク 67.3dB

 NARROW
歪率 MONO:0.035% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:50.2dB R->L:50.3dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB


 悪い数字です。モノラル時の特性は,この機種としては良くないとはいえ,許せる範囲です。しかしステレオ時の特性,特に歪率とセパレーションの悪さは信じられないレベルで,F-757よりも劣っています。

 信じられなくなり,もう一度調整をやり直しましたが,やはりこのくらいです。しかも,筐体を閉じて機内温度が上がると,特性が急激に悪くなり,セパレーションなど40dB近くまで悪化します。

 ハズレを引いたのか,それとも部品の交換に失敗しているのか。どっちにしても作業前に再調整をきちんと行っておくべきだったと反省しています。まさかこんなに悪いとは思わなかったもので・・・

 実際に音を聞いてみました。F-757と比べるまでもなく,実に心地の良い音です。サシスセソも濁らず,ノイズも少なくて,ギュルギュルというマルチパス妨害によるノイズも出ません。

 F-757はざらざらと荒っぽい音で,これは聞いた瞬間にわかる違いなのですが,数字で見るとF-757の方がちょっと良い成績なんですよね。

 モノラルの時の性能はきちんと出ている(歪みもKT-1100Dが0.025%,F-757が0.056%)のですから,これはやっぱり,FMステレオモジュレータの問題だろうと思います。

 私のVP-7635Aは非常に疑わしいもので,まずはっきりしている点としてパイロット信号の位相が調整しきれず,ずれたままになっています。なんとかしたいのですが,回路図もないし,あれこれと内部の半固定抵抗をいじっても変化がないので,もうあきらめています。

 パイロット信号の位相がずれていると,セパレーションが極端に悪くなり,歪率も悪化します。スペック上は,1kHzで歪率0.01%以下をうたっていますので,実力でも0.05%くらい出て欲しいところです。セパレーションも,スペック上は66dB以上ですから,やっぱり60dBくらいは出て欲しいです。

 ステレオ時の歪率とセパレーションは,F-757でもKT-1100Dでもほとんど同じ程度ですので,やっぱり測定器の問題だろうと思います。

 ここで,滅多に使わないけども,ないとどうにもならないFMステレオモジュレータを買い直すのが良いか,それとも今の環境で最良点になっているはずなので,実力はもっと上のはず,という勝手な予測でこのままにしておくか,大いに迷うところです。

 もう1つ,やっぱり東京FMが歪みます。これこそマルチパスじゃないかと思うのですが,どうにもなりません。F-757でも出ていた問題ですし,F-757ではNHK-FMでもダメでしたから,KT-1100Dで改善していることは間違いないのですが,これ以上はもうアンテナの向きを調整するなりしないと,手に負えない思います。

 どっちにしても,KT-1100Dの実力は噂通りのものがあり,聞いていての心地よさ,人の声のリアリティなど,アナログ技術の集大成とも言えるFMステレオ放送の送受信システムのポテンシャルの高さに,納得するという結果になりました。

 9月に毎年放送されるTokyo-Jazzも,これで録音することになるでしょう。昨年までは,F-757でも十分と思っていても,実際に聞いてみるとやっぱり悪いところが耳についたものですが,KT-1100Dであればそれもないでしょう。楽しみです。

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