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2015年08月19日の記事は以下のとおりです。

今どきのアイロンの修理

  • 2015/08/19 15:02
  • カテゴリー:make:

 大人の夏休みがどんどん短くなっていくなあと,今年も思ってしまった夏休みですが,短いなら短いなりに密度を上げようと考えるのが大人で,この夏休みも私はなかなかいい仕事をしました。

 ネタは4つありますので,4日に分けて書くことにします。

 最初は,アイロンの修理です。

 2011年に買ったアイロンは,パナソニックのNI-WL600という機種で,前と後ろの両方が尖っている,ダブルヘッドアイロンというタイプの第一弾モデルです。それまでのアイロンと全く違った形状から,本当に使いやすいものでない限り,一発屋で終わってしまうだろうなあと思っていたら,今年も主力商品として後継機種が出ているようです。

 実際,このアイロンは使いやすく,慣れてくればますます効率よくアイロンがけが出来るようになります。うちはどうしたことか,嫁さんがアイロンがけが好きだという人なので,最近は嫁さんに任せることが増えましたが,たまにかけると自分もアイロンがけが上手になったと錯覚することがあります。

 先日,久々に自分でアイロンがけをすることになったのですが,どうもアイロンの具合が良くないのです。温度設定用のLEDが薄暗く,スイッチを入れてもカチカチ音がして温度が上がりません。

 何度かいじっているうちに温度が上がったのでそのままアイロンがけをしましたが,後日嫁さんが,とうとう「こわれた」と言い出しました。

 嫁さんはものを壊す名人なので,この故障もきっと自分のせいだろうと落ち込んでいたようなのですが,購入後4年もすれば壊れてもおかしくはないわけですし,今のアイロンは昔のアイロンと違って,華奢になっていますから仕方がないところでしょう。

 とはいえ,それなりに高価だったアイロンですので,やはりここは修理を試みるのが,エンジニアの矜恃です。

 そういえば,40年ほど前の技術家庭科の教科書なんかには,アイロンの構造とか点検方法がのってました。中学生でこういうことを勉強したというのもびっくりですが,当時のアイロンは温度で伸びる率が異なる2枚の金属を貼り合わせた「バイメタル」によって,ヒーターをON/OFFして温度調整を行うという原始的な方法でしたし,動きも故障も目で見て分かるものですから,診断も修理もたやすいでしょう。

 ですが,ボタンで温度を設定するアイロンの内部構造をみたことは,そういえば一度もないことに気が付いて,こりゃ手探りになるなあと覚悟したのでした。

 冷静に考えてみると,このアイロンはボタンで温度設定を行いますから,おそらくマイコン内蔵です。コードレスアイロンでもありますので,スタンドから離れている間(つまりアイロンがけ作業が行われている間)は,電源供給が断たれています。

 でも,スイッチの状態がリセットされることはなく,スタンドに戻せば設定した温度のLEDがきちんと転倒しているのですから,状態の記憶が行われているはずですし,そのためにバックアップ電源が内蔵されているか,あるいは不揮発メモリが使用されているか,いずれかという事になります。

 アイロンの本体は高温になりますので,電池などを内蔵する場所はちょっと難しいです。一番温度が上がらない場所に仕込むのですが,それはおそらく取っ手の部分です。この窮屈な場所に,熱に弱い部品をすべて仕込むのは,結構大変でしょう。

 と,ここまで考えていざ分解です。

 最初に,スタンドと本体の接点を磨きました。メッキを剥がしてしまうとまずいので,3Mから出ている回転式のクリーナーをリューターに取り付けて,磨きます。ピカピカになったところで動作チェックをしますが,状況は変わりません。

 スタンドを先に分解し,テスターで断線などを確認しますが,こちらも委譲はなし。こうなると本体の問題です。

 本体を分解しますが,ボタンのシートで隠れたネジが1つあり,そのためにシートを剥がさねばなりませんでした。すべてのネジが外れて,はれて中身を見ることが出来ました。

 マイコンやボタンは片面の基板にのっており,これが取っ手の中に納まっています。スタンドとの接点から直接基板に繋がっているので,この基板でAC100VをDC5V程度に変換して使っているのでしょう。ただし,トランスでの絶縁はされていないので,このマイコンの端子にさわると,感電するかも知れません。こわいこわい。

 基板に2ピンのコネクタが出ており,これがヒーターのあるベース部分に繋がっています。よく見るとガラスシールされたダイオードのような部品に繋がっています。これがどうやら温度センサのようです。

 私は今どきのアイロンの回路図を見たことがなく,この温度センサがどんなものか,まったくわかりません。200度以上の温度を測るセンサですから,半導体ではないと思いますが,かといって熱電対のような微弱な出力では扱いづらいですから,なにか便利な他のものだろうと調べてみると,なるほど,こういう用途に作られたサーミスターがあるんですね。250度くらいまでなら動いてくれるもので,形状もそっくりです。

 ただ,そこはサーミスターですから,初期値も温度に対する抵抗値の変化もたくさんの種類があります。このサーミスターがどんなものか分からない限りは,好感は出来ません。

 とりあえず,このコネクタを外し,サーミスターが繋がっていない状態で電源を入れてみます。結果は,全く変化無し。LEDは薄暗く,カチカチとリレーの音がして,しばらくすると電源OFFのLEDが点滅します。ということは,サーミスターの断線の可能性があります。

 ああ,サーミスターの不良なら交換出来ないし,残念だけどここであきらめて捨てるしかないなあと思ったわけですが,一応抵抗値を測定しておこうとテスターで測定したところ,最初は200kΩ以上あった値が,指で触ったりアイロンの温度がちょっと上がったりすると,抵抗値が大幅に小さくなることがわかりました。

 これはおそらく,このサーミスターは生きています。生きている確証はありませんが,死んでいると決めつけるには惜しい挙動なので,このまま修理を続行です。

 次に確認したのは,ハンダのクラックです。無鉛ハンダは脆く,温度が高い場所で使うと案外ひび割れたりするものなのですが,そういうものをいちいちみるのも大変なので,怪しい部分はとにかくハンダを付け直します。

 後日書きますが,前日に購入した実体顕微鏡が早速役に立ちました。

 ハンダ面は絶縁のためか,シリコーンが塗られて固められており,これを剥がしての作業になりますが,作業後の確認では,やはり改善せず,まったく同じ挙動です。原因はこれではなかったようです。

 気を落とさずに,次は電解コンデンサの確認です。電解コンデンサは名前の通りケミカルなものですので,温度が10度上がると寿命が半分になります。取っ手の温度はちょっと熱いと思うくらいになっていますから,内部の温度はそれなりに上がっているでしょう。

仮に25度で3000時間使えるなら,45度なら700時間ほどになります。5日で1時間とすれば3500日であり,およそ10年で必ずダメになります。

 それくらい脆い部品ですが,これも工業製品故に当たり外れがあり,すぐに壊れるものもいれば,案外長持ちする奴もいて,どっちにしても電解コンデンサは電子部品の中でも良く壊れる部品の1つだと思っておいた方がいいです。

 基板には,3つの電解コンデンサがあります。47uFの35V,47uFの50V,そして1000uFの6.3Vです。3つしかありませんので,取り外して容量を確認してみることにします。

 最初の47uF-35Vは,35uFくらいに容量が減っていましたが,一応機能している様子です。劣化が進んでいるので交換しなければなりませんが,交換しても直ることはないでしょう。

 次に1000uFを調べます。800uFくらいに減っています。これも原因ではないようです。最後に47uF-50Vですが,容量計の値をみて目が点になりました。1800nFです。ほとんど容量が抜けています。何度計っても結果は同じです。

 これだけ劣化していると,これが原因で故障している可能性が高いです。交換してみる価値はあります。在庫を調べると,あいにく47uFの50Vは,オーディオ用のFineGoldしかありません。アイロンに金色のオーディオ用というのももったいないですが,仕方がありません。

 交換して試して見ると,おお,LEDはしっかり点灯し,リレーがカチカチいうこともなくなりました。ちゃんと温度が上がり,規定の温度になったらヒーターが切れるようになりました。動作は正常です。やったー,直りました。

 これは推測ですが,この電解コンデンサは,電源の平滑用だったんじゃないでしょうか。5Vか3Vか,そこらへんの直流を作るのに,ダイオードで半波整流し,これを平滑するものだと考えると,この電解コンデンサの容量が抜けて,電源が脈流になってしまい,これがマイコンに供給されたことで,マイコンの動作電圧以下になって誤動作をしていたということでしょう。

 LEDが薄暗くなりちらついたのは電源が50Hzで0V付近まで下がり,しかも半波整流だと半周期はずっと0Vですから,この間マイコンは動作せず,LEDも薄暗くなったのだと思います。

 他のコンデンサ,1000uFはおそらくスタンドから本体を外したときの短時間の記憶用のバックアップ電源でしょう。これが800uFくらいになっても,大した問題は出ません。あいにく交換用の在庫がないので,このまま使う事にします。

 もう1つの47uFが気になりますが,予防的に交換しておきます。

 これで動作を最後に確認し,問題がなさそうなので組み立てて,最終チェックをします。ちゃんと温度設定も出来るし,スチームもバンバン出ますので,これでよしとします。

 ちょっと遊び心が出てきてしまい,温度設定表示用のLEDの色を少し変えてみました。OFFが緑で,低中高は黄色,オレンジ,赤です。カラフルで面白くなっただろうと期待して組み立ててみましたが,案外つまらないのでがっかりしました。

 修理後の嫁さんの感想も上々で,これでアイロンは修理完了です。

 今どきのアイロンの構造など全然知らなかっただけに,いい勉強になりましたが,バイメタル方式のアイロンと違って,こうした電子部品を使うことが寿命を短くし,信頼性を下げてしまうのだなあと,つくづく思いました。

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