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2016年01月05日の記事は以下のとおりです。

DTC-59ESJにDDS4を使って死んだ話

 新しい年が始まりました。自分の好きなこと,楽しいと思えることを持っていることはとても幸せな事だと,つくづく感じた昨年でしたが,いずれ私が死んだときに,この大量のがらくたを,どうやって処分してもらおうかと,そんな不安も同時に感じて,ふと気分が沈むことも増えました。

 事故や病気で突然死んでしまう場合は,準備もなにもあったものじゃないでしょうからあきらめもつきますが,これからどんどん歳を取り,体もいうことを聞かなくなる中で,10kgも20kgもあるような大きな機材は使うも捨てるも大仕事です。

 いやね,ちょっと前まではお金と場所と技術力がある人間は,古い物品の保存に努めるのが社会的使命だとか,そういうことをいっちょ前に考えたりしたんです。それは,美術品がそうであるように,今やマンガやプラモデルといった,大量生産品であっても同様だと思うのです。

 とりわけ,昔のゲームを楽しむことが,それらを動かすハードウェアが貴重なものになることで難しくなっていく現状は深刻で,一昔前は粗大ゴミで出された古いパソコンやゲーム機が,一部のマニアによって維持されていることは,とてもよいことだと思っていたのです。

 戦後の機材をコレクションするには,動くように維持する必要があるわけで,そこには当然修理などの技術が求められます。だから,ただただ好きというだけではどうにもならなくて,お金と場所と技術が揃っていないと手が出せないのです。

 おそらく美術品も大昔はそうだったのだと思いますが,技術はお金で買うことが当たり前になっているわけで,このあたりさすがに歴史と伝統を感じます。ゲーム機や古いパソコンも,最近は専門のお店が出来てきていますので,どうもお金で技術を買うことの出来る時代が,ようやく訪れたということでしょうか。

 これら古い機材については,私は今持っている物を出来るだけ使える状態に維持することが,持っている者の責務となかば考えている節があります。たいしてお金もかからず,場所も塞がず,私のような人間には好都合なのですが,頑張っても新しい物が増える,新しい事が出来るわけではないので,最終的に手に入るのは「現状維持」にすぎず,ここが耐えられない人もいるんじゃないでしょうか。

 閑話休題。

 さる1月2日と3日には,NHK-FMで昨年秋に行われたTokyoJazz2015のダイジェストを放送していました。毎年年始にやっている放送だそうですが,私は今年から聴く事にしていました。

 というのも,いつもの生放送では,翌日に行われるライブが放送されず,ここ数年私が聞きたい人達がさっぱり放送されなくなってしまい,寂しい思いをしていたからです。特に1月3日の放送は,まさに夢のような人達が登場するものでした。

 両日とも朝11時から夕方4時45分までの放送で,この間ニュースも中止という徹底っぷり。これを途中で分断して録音するなど愚の骨頂です。

 しかし,私のDR-100mk2は2GBの制限があり,3時間ほどでファイルが分割してしまいます。これはつまらないです。そこで,320kbpsのMP3で録音することにしました。MP3ですから,音質の劣化は避けられません。320kbpsですからそんなに劣化はないのですが,精神衛生上しっくりこないのも事実です。

 番組として丸ごと録音したいという欲求と,リニアPCMで残すという欲求を同時に満たすにはどうすればいいか・・・

 放送まであと1時間というところで考えついたのは,DATで録音するという作戦でした。

 いやいや,DATは通常2時間,長時間でも3時間が限度で,これ以上だとLPモードをないはずだ,3時間だったら2GB以内なのでDATなんか意味がない,とちょっと詳しい人なら思うでしょう。

 しかし,禁じ手があるのです。それはDDS4のテープを使うというものです。

 よく知られているように,民生用オーディオ機器として登場したDATは,その価格と性能から,コンピュータのストレージのバックアップとして使われていました。これがDDSです。

 オーディオ機器としてのDATが今ひとつ市民権を得ないまま収束していく一方で,バックアップ機器としてのDDSは,ハードディスクの大容量化に対抗していく形で,次々にバージョンアップを重ねて,最終形態はテープ幅を倍にして,形まで変わってしまうという大変化ぶりです。もはやそれはDDSではないんじゃないのか・・・

 DDS1は民生用DATとテープもメカも共通です。ゆえに最大2GBが記録出来ます。今や2GBのSDカードなんか,二束三文ですよね。

 DDS2はテープを薄くし記録方式を変えて4GBに,DDS3はテープの長さは変えずに記録方式で12GBまで容量を増やしました。DDS4ではさらにテープを薄くして150mもあの小さなカセットに押し込んで20GBまで対応しました。

 このあと,DDS5と言われていた規格がDAT72と呼ばれるようになって36GBになりました。圧縮すると倍の72GBまで記録出来ますが,それでもSDカード以下というのが泣かせます。

 この後,テープを薄くして長さを稼ぐのは限界と感じたのか,テープ幅を倍にするという暴挙に出てDAT160とDAT320となりました。DAT320では圧縮時に320GBまで記録出来るようになりましたが,秋葉原で2TBのHDDが8000円くらいで買えることを考えると,もうその役割は終わったと言えて,すでにDDSの開発は行われてとのことです。

 で,もともとDATと同じ先祖を持つDDSです。もし150mもの長いテープがDATで使えたら,ウハウハものです。そう,120分のDATは60mですから,120mのDDS2でも4時間,150mのDDS4なら実に5時間も連続録音できるのですよ。

 昨今,ICレコーダーでも4GBまで1ファイルで録音できる物が出てきたので,そうなると全然うれしくないのですが,私のDR-100mk2は2GBまでです。5時間も録音できたら,それはもう録音した物を1度聞くだけでも大仕事です。

 ただし,そうは問屋が卸しません。DDS4はDATが死んでから生まれたものですから,DATでの使用など全く考慮されていません。動かないだけならまだしも,レコーダを壊してしまうかもしれません。

 民生品とはいえ,日本がバブルに沸いた時期に開発されたDATは,メカ精度も要求が高く,高度な専用LSIがバンバン投入された複雑な電気回路に,信号処理やメカ制御,果てはサーボにソフトが応用された,まさにメカと電気とソフトの三つどもえの機器です。

 DATの前後の機材では,すでに3つの技術が高次元で融合している必要がないものに変わって来ていて,カセットテープレコーダーがソフトを必要とせず,ICレコーダーがメカ的な要素を全く持たないことは,この端的な例でしょう。

 というわけで,個人的には「よくもまあこんなややこしいものを製品化した物だ」と呆れてしまうくらい,複雑なシステムであるDATにとても愛着があったりするわけですが,出てくる音はCDそのものなわけで,音質は現代にも通用するものがあります。実用品として使えるのだが,前世紀的なバランスでなんとか動いているというのが,DATだと言えます。

 このDATにですよ,DDS4をかけようというのですから,もはや無茶苦茶です。実際DDS4に関する資料を読むと,テープの厚みはDATに比べて半分以下,材質もポリエステルからPETになっているとのことです。このため,極薄のテープを安全に扱うためにメカ精度をさらに追い込み,その結果DDS1との互換性を失ってしまったとありました。

 一方,DDS4のテープで5時間,LPモードで10時間の録音を楽しんでいる人もいるようで,私も興味本位で数年前にDDS4のテープを1本買っておいたのでした。

 あいにく180分のテープは手元になく,120分のテープでは録音時間が短いということで,DDS4にチャレンジです。

 テープを先日修理したばかりのDTC-59ESJにセット,録音を開始します。別に問題なく録音が進んでいる様子で,私はあまり心配せずに,子供の昼寝に付き合っていました。

 3時間後,様子を見に行くと,問題なく録音は続いています。すごい。

 放送が終わったところで一度テープを止めますが,最後まで録音しきった方がいいだろうとおかしな事を考えて,ここからさらに録音を再開します。

 そろそろテープが終端になった頃だろうと,おやつを食べた後に見に行くと,テープが止まっています。よしよし,これでばっちり・・・

 ・・・あー,テープが出てこない!

 そうです。テープが巻き込まれてしまい,取り出せません。放送が終わった段階では問題なかったのですが,そこで巻き戻すなり取り出すなりしておけばよかったと後悔してももう遅い。

 とにかくテープを出そうとしますが,全く出てきません。無理をすると壊してしまうので,家族に非常事態を宣言し,自室に籠もることにしました。

 ラックから引っ張り出し,先日閉めたばかりの上蓋を取り外してみます。見事にテープが絡まっています。実は巻取側の摩擦が増えて,止まりがちになっていたのを見ていたのですが,どうにかなるだろうと放置したのがまずかったようで,巻き取られなかったテープがそのままドラムに巻き付いたようなのです。

 恐ろしいことに,ドラムのロータとステータの隙間にグルグルと何度も巻き付いています。ドラムが死んだことも覚悟しながら,慎重にゆっくりほどいていきます。

 ようやくほどけました。恐る恐る他のテープをかけてみます。大丈夫,ちゃんと音が出ます。ドラムは壊れていないようです。(もっともヘッドは死んでいるかも知れません。DATは2つあるヘッドのうち,1つが壊れてしまっても,とりあえず音は出ますから。)

 くしゃくしゃになった部分は最後の方なので,カセットを分解してそこから最後まで捨てることにし,切った部分を供給側リールに挟み込みます。元のように組み立てれば完成,といいたいところですが,ここで鈍くさいことに,バネがぱちんと跳ねてしまい,部品がばらばらと外れてしまいました。

 ピンセットで組み直して,一応完成ということになったのですが,これを再生するとどうもテープがガイドの縁に乗り上げて,折れてしまったり裏返ったりします。そして最後にはテープを切られてしまいました。

 むー。テープはあきらめるとしても,このリニアPCMで録音されたFourplayだけはなんとかサルベージしたいものです。

 しかし,なんどやってもテープがまともに走りません。

 万策尽きて,この日の当番である晩飯を作りにキッチンに向かいます。さっさと食事を済ませて,子供を風呂に入れるまでの10分で,再度カセットの分解にチャレンジです。

 よくよく見てみると,ライナーが裏返しになっているような感じです。これが原因かもなあと,裏返して組み手立て直すと,今度はまともに走ります。

 もちろん,とても危なっかしく,特にキャプスタンの手前にある巻取側のガイドなど,かなり強いテンションで引っ張られているのがわかりますし,やっぱり時々テープが折れてしまうことがあります。

 しかし,危なげな様子でもテープが走っている間は,ノイズもなく綺麗に音が出ています。サーボとエラー訂正,どんだけ強力やねん,すごいなあ。

 翌日,嫁さんに懇願し,2時間自由時間をもらいました。そして約1時間のFourplayのステージをDR-100mk2に取り込みます。だいたい失敗するものだから,半分あきらめながら録音をしますが,全く問題なし。綺麗に録音が出来ました。

 この調子でもう1時間,他のアーティストのステージも録音に成功したところで時間切れ。もうこのテープは捨てることにしましょう。

 思いの外うまくいったのですが,ここでまた余計な事をしてしまいました。巻戻しです。もう捨てるんですから巻き戻す必要はないのですが,こういうところで生真面目な私は,躊躇なく巻き戻しました。

 しかし,途中で止まります。テープも出てこなくなりました。またトラブル発生です。

 今度は,どうもローディング機構が動かなくなっているようで,テープが出てこなくなっているようです。

 ああ,メカデッキを分解しないといけなくなりました・・・テープパスが狂ってしまい,調整すると泥沼に・・・という最悪の展開が目に浮かびますが,このまま放置は出来ません。

 それに,調整の不安など,修理が出来ればの話です。この時期のソニーのDATのメカはプラスチックが多用されていて,割れてしまうともう修理不可能です。

 メカデッキを外し,分解を始めます。焦る気持ちを抑えて,ゆっくりと分解していきます。すると,ローディングポストを動かすギアが外れています。さらに見てみると,このギアを固定するプラスチック製のワッシャーのような部品が外れており,筐体の底の方に転がっておりました。

 これが割れてしまうのも,このメカの持病のようなものらしく,同じような症例がgoogleで調べるとたくさん出てきます。

 代わりの部品もありませんし,どうにかするしかありません。

 そこで試行錯誤をしたのですが,結局落ち着いた方法は,0.3mmのプラ板に1.5mmの穴を開けた5mm角くらいの板を作り,これでギアが外れないようにするというものです。1.5mmの穴だとちょっと窮屈なくらいで,押し込めば入る感じです。

 これを2枚重ねて,最後に接着剤で固定です。

 接着剤はいまいち効果がないようですが,なんとか大丈夫そうです。我ながら,なんとかやってしまうものだなと感心します。

 寝たら死ぬという格言を胸に,夜中の1時まで頑張ってメカデッキを組み立て,本体に仮組みすると,ちゃんと動作するようになりました。清掃と注油,コンデンサの交換もしておいたので,スムーズに動きます。

 と,ここまでで力尽きて布団に直行。新年早々なにをやってるんだかと呆れながらも,目処が立ったことで安堵して,眠りにつきました。

 長くなったので,続きは後日。

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