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2016年09月27日の記事は以下のとおりです。

DC45をまた修理する

  • 2016/09/27 13:32
  • カテゴリー:make:

 クリアビンを交換して絶好調なうちの主力掃除機ダイソンDC45ですが,先日の休みの日にまたまた壊れてしまいました。モーターヘッドのモーターが回らなくなってしまったのです。

 最初は,逆に回りっぱなしでした。トリガをゆるめて本体が止まっても,モーターヘッドだけは回り続けているという奇妙な状態だったのですが,とりあえず掃除だけ先にすませてしまおうと,そのまま掃除を続けていたのです。

 そのうち,別の部屋でゴム紐のようなものを巻き込んでしまいました。止まってしまったモーターヘッドからゴムを取り外したものの,今度は全く動かなくなってしまいました。

 DC45などのコードレスクリーナーは,吸引力の低さを,モーターヘッドでゴミをかき集めることでカバーして掃除機としての能力を維持していますから,モーターヘッドが壊れてしまえば,それはもうただのハンディクリーナーに過ぎません。

 これは困った。

 時間のない中で修理を試みます。

 まずはモーターヘッドが壊れていないか確認です。安定化電源を繋いだところ元気に回転しましたので,これはシロ。

 次に本体から電源が供給されているかどうかを確認します。そうすると電源ONでも0Vのままです。これならモーターは回るはずがありません。

 そして接点を確認です。確認したところ,クリアビンと本体との間の接点には問題がなく,やはり本体から電源が来ていないことがわかりました。

 こうなると分解です。

 ダイソンの製品はかなりしっかりと爪で引っかかっていますので,分解はかなり大変ですが,なんとかこじ開けました。見れば,トリガスイッチ付近に小さい基板があります。本体のモーターは元気よく回っていますので,どうもこの小さな基板があやしいです。

 基板は小さく,回路規模も大きくはありませんが,今どきの製品らしくマーキングのないチップ部品が多用されていて,回路図や部品の仕様が見つからないDC45の修理は,どうもお手上げになりそうな予感がします。(この段階で私は8割方あきらめていました)

 とりあえず,クリアビンのコネクタと基板の間の配線の断線を確認しましょう。結果はシロ。となるともう基板の中の話になります。

 パターンを追いかけていくと,8ピンのSOPの半導体にモーターヘッドが繋がっています。これがスイッチング用のMOS-FETでしょう。モーターが回らないのですから,これが壊れている可能性が大きいです。

 この半導体の品名を見ましたが,パッケージには「4620」と見慣れないロゴが刻印されています。これではさっぱりわからないのですが,試しにgoogle先生に4620で聞いてみたら,SI4620とAO4620の2つが,このパッケージでFETであると教えてくれました。

 SI4620はビシェイのN-ch MOS-FETですが,3Aクラスのショットキーダイオードも一緒に入っています。一方のAO4620はAlpha&OmegaSemiconductorという私の知らないメーカーのもので,N-chとP-chの両方が入っています。

 基板のパターンから推測するに,どうもSI4620ではないかなあという感じです。それに単純なブラシモーターを一方向に回転させるだけの話ですので,N-chとP-chを組み合わせる必要はありません。

 もう一度ロゴを見てみます。レーザーマーキングですので細かいところは潰れていますが,よくよくみると左右に膨れた中に縦棒が1つ入っています。

 もしやと思って,SI4620のオリジナルメーカーを調べて見ると,シリコニクスでした。シリコニクスはビシェイに買収されたのですが,そのシリコニクスのロゴが,まさにSの中にiが入っているものだったのです。


 基板のパターンを追いかけても矛盾はありません。

 これで間違いないでしょう。このFETは,ビシェイのSI4620DYと断定しました。

 SI4620のデータシートを見て,これに相当するものがないか探しましたが,残念な事にショットキーダイオードも入っているようなものはありませんでした。

 もうちょっと真面目に探したところ,どういう訳だか旧NECのMOS-FETが見つかりました。uPA1727です。耐圧60Vでドレイン電流が10Aもありますので,SI4620に比べると余裕があります。

 ショットキーダイオードは別に用意して外付けしますが,3Aクラスのですので手持ちのCMS01を使います。

 SI4620とuPA1727とは,FETの部分はピン互換ですので,そこも考えながらさっさと交換です。外したSI4620を半導体チェッカーで調べると,壊れていることがわかりました。uPA1727はちゃんとMOS-FETと判定されますので,チェッカーを信じてよいでしょう。

 交換が終わってドキドキしながら通電します。バッテリを差し込んだ瞬間,バッテリ端子から火花が出ましたが,まあそんなこともあるだろうと気にしません。そしてスイッチを入れますが,やっぱり電圧は0Vのまま。当然モーターも回りません。

 やっぱりダメか,と思ったところで,突然基板から「ぱちっ」という嫌な音がしました。すぐに電池を外しましたが時既に遅し。あの嫌な独特の臭いがします。

 外したuPA1727をチェッカーで調べると,ショートしていると出ました。ショットキーダイオードは無事だったのですが,MOS-FETは壊れてしまったようです。

 ということはですね,モーターが回らないのはMOS-FETの不良ですが,そのMOS-FETを壊してしまう別の理由がどっかにあるということです。その根本原因を見つけないと,修理は出来ません。

 ここで9割方くじけていたんですが,もうちょっと頑張って見ようと,改めてモーターヘッドの配線を調べて見ました。これまでここに電圧が出ているかどうかだけを見ていましたが,ふと導通を見てみたところ,ショートしています。

 MOS-FETもショットキーダイオードも外し,それでもショートしていますから,これはおかしいです。

 そこで,途中に入っている5mm x 10mmくらいの大きな部品を外してみました。すると導通はなくなります。なんとなく手応えを掴んだ私は,その部品のパターンを追いかけてみました。

 4端子のその部品はどうやら,コモンモードチョークのようです。コモンモードチョークですから,端子間の導通はあって当然なのですが,この部品については,4つの端子がすべて導通しています。LCRメーターで確認すると,長手方向の端子間には12uHのインダクタンスが見えていますが,短手方向の端子間は完全にショートです。

 ここまでの推測に自信はありますが,断定するにはまだ弱いです。そこでこの部品を分解してみました。すると,やっぱり2組の巻線がトロイダルコイルに巻かれている,コモンモードチョークで間違いありませんでした。

 そうすると,2点間のショートは部品の不良ということになります。

 どうせこの部品は壊れているんですから,さらに分解です。巻線を少しほどくと,ショートがなくなりました。どうも,巻線の被覆がちょっとだけむけてしまう,レアショートが起きてしまっているようです。

 この前提で,これまでに起こったことを整理します。

 まず,なんらかの原因でモーターヘッド制御用のMOS-FETが壊れてしまい,常時ONになってしまいました。このためトリガースイッチを離して本体のモーターを止めても,モーターヘッドだけは回り続けていました。

 そしてそのまま掃除を続けたわけですが,ゴムを巻き込んでしまいました。ここで普通なら保護回路が働き,モーターヘッドは止まるのですが,MOS-FETが壊れているため,保護回路によってモーターへの電源供給を止める指示をマイコンが出しても,モーターは止まってくれません。

 そのうち過電流がばーっと流れてしまい,コモンモードチョークの温度が上がっていきます。やがて高温のために被覆が溶け,ショートしてしまったところでモーターは停止,そして今度はMOS-FETに大電流が流れてMOS-FETが常時OFFで壊れたというわけです。

 だからモーターヘッドへの配線は導通してしまっていますし,MOS-FETを交換してもすぐに壊れてしまいます。

 ここで,私が推測したモーターヘッドの制御回路を記します。

20160927133331.jpg
 BBというのはモーターヘッドに繋がる配線で,基板にあったシルク印刷をそのまま書いています。

 ドレインと電源の間に入っている低抵抗(R050と書いてあるので0.05Ωでしょう)は,おそらく電流検出用の抵抗です。この抵抗に発生する電圧をマイコンが監視し,過電流を検出しているんだと思います。

 モーターとFETはバッテリーに直結されていますから,事故が起こると大惨事になるかも知れず,ちょっと怖いですね。

 さて,修理を続けましょう。まずはこのコモンモードチョークをどうするかが問題です。マーキングを見ても「WE 100」と書かれているだけでどんな部品かよくわかりません。

 ですが,DCブラシモーターに入っているコモンモードチョークと言えば,ノイズ対策です。ブラシと整流子が擦れるところで発生するノイズを押さえるために入れるものなので,私(というか我々家族)が使う分には,気にしなくていいでしょう。

 ゆえに,ここは直結です。

 あとはFETを交換して,一応完成。

 またもドキドキしながら動作確認をすると,今度は無事にモーターヘッドが回転します。よかった。修理出来ました。

 元のように組み直して(これがまた大変でした),動作確認をしてみると問題なく動作してくれています。

 ということで,どうも『巻物」に苦手意識がある私ですが,今回の故障もこいつが話をややこしくしたということで,やっぱり苦手意識は払拭出来そうにありません。

 今後,ノイズがひどく出ていて実害か出たらチョークを取り付けることにしますけど,それもまあ安全性との兼ね合いもあることですし,頭が痛いところです。

 先日のクリアビンに続き,基板のモーターヘッド制御回路まで無理に修理して延命されてしまった,我が家のDC45。私は不可能を可能にしたスーパードクター気取りで達成感もあったりするのですが,考えてみたらDC45は可愛そうなもので,そう簡単に死なせてもらえず,何度も何度も組成されて酷使されるというのは,なんだか不憫に思えてきました。

 まあ,DC45に変わる最新機種は随分と高価ですし,まだまだ頑張って欲しいというのが本当の所ですので,本体のメインモーターが死なない限りは,出来るだけ頑張って修理しようと思います。

 それにしても,回路図もない中で,よく修理できたと思います。

 

追記:

 コモンモードチョークですが,少し調べて見るとWurth Elektronikという会社のWE-SL2という部品の10uHのものであることが判明しました。データシートをみると,形状といい大きさといいマーキングといい,まさにビンゴです。


 でもこれ,信号用のもので,パワー用ではないんですよ。電流も1.6Aが最大ですし,これを1Aくらいまで流れてしまうモーターのラインに入れるのは,ちょっとどうかなあと思います。

 

 

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