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2016年11月11日の記事は以下のとおりです。

KT-1100Dの顛末~その2

 KT-1100Dを常用できないなあと思ってはいても,横幅43cmもあるFMチューナーをそこらへんに放置して置くわけにもいきません。場所ふさぎで目障りですし,空席になっているFMチューナーというポジションのレギュラーの椅子を埋めなければなりません。

 KT-1100Dは先日も書いたように,セパレーションが大きく変動してしまい,ピーク時には70dBを越えるのに,時々刻々と値が悪化して,30dB台にまで悪くなってしまいます。悪いなら悪いままで安定してくれた方がまだ手が打てると思うだけに,途方に暮れていました。

 加えて,回路図がなく,元の状態を記録していないので,こうなった原因が部品の交換によるもの(交換ミスも含む)のか,あるいは故障してしまっているのか,そうではなくもともとこんなものだったのかが,すでに分からないという事が問題になってきました。

 そこで2つの方法を検討します。

 1つはかつての常用機であるF-757を復活させること。オーディオアナライザに19KHzのフィルタを装備しましたし,ステレオエンコーダーにMSG-2170を導入しましたので,調整は以前よりも綺麗に出来ると思います。どこまで性能が追い込めるか,チャレンジです。

 もう1つは,先日書いたように,別のKT-1100Dをもう1台手に入れ,これと比較することです。セパレーションの変動がもう1台でも起きるのか起きないのか,部品の付け間違いはないかを比較するという目論見です。

 しかし,KT-1100Dは人気機種です。オークションでも1万円程度で取引されることも多くあるわけですが,今回の目的程度では1万円はさすがに出せません。

 しかし,運良く安く(といってもそれなりに高かったんですが)動作品を手に入れる事が出来ました。

 改造品だと今回の目的を達成出来ないので,壊れていないことと改造されていないことを祈っていましたが,届いたものをドキドキしながら確認すると,幸いにしてそれは杞憂に終わりました。



(1)F-757の再調整

 F-757はチューナーとしては高価でしたし,パイオニアにおけるフラッグシップモデルでしたから,そんなに悪いものではないはずなのに,今ひとつ評価が低いです。

 銅めっきのビスにハニカムシャシーと,いかにもバブルな趣向を凝らしたモデルで,しかしながらメンテナンス性は最悪で部品の交換もやる気が失せるほどですし,カタログや取説に書かれたスペックはどう考えてもウソで,知識も技術もなかった30年前の私でさえも「これはあやしい」と疑ったほどです。

 デザインは悪くないし,電波環境が良ければ音質は良いと思うのですが,今にして思えば電波の質が良くないと,性能を発揮できないモデルという事になるのでしょうね。このチューナーの評価が分かれるのも,無理からぬことです。

 ただ,FMチューナーというのはオーディオ機器である前に,無線機器です。受信機として電波をつかまえる性能が高くないと話にならないわけで,そこはさすがに定評のあったケンウッドにはかなわないということでしょう。

 とりわけ,都心部におけるマルチパスへの耐性であるとか,混信であるとか,電波は強いんだけども質が悪いという地域での性能の高さは使って実感するほどずば抜けていて,F-757ならジュルジュルというマルチパスで発生するノイズが全く出ないなど,頭一つ抜け出ている感じがしました。

 たかがFM放送になにを,と私も思うのですが,これだけの違いがあると認めるしかないなあと思います。

 とはいえ,私もF-757の長年のユーザーです。実家ではマルチパスも少なく,極めて高音質でエアチェックが出来ました。どこまでKT-1100Dに迫ることが出来るか,頑張ってみましょう。

 調整の結果,こんな感じになりました。

・NORMAL時
 歪率 L: 0.0686dB  R: 0.0688dB  MONO: 0.0782dB
 S/N L: 74.27dB  R: 74.33dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 57.49dB  R->L: 55.89dB
 
・SUPER NARROW時
 歪率 L: 0.299dB  R: 0.294dB  MONO: 0.302dB
 S/N L: 74.47dB  R: 74.40dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 40.76dB  R->L: 43.24dB

 うーん,悪くない数字,というよりなかなか良好です。確かに突出した性能とは言えませんが,FMチューナーとしては十分過ぎる性能です。

 ただし,放送波を受けてみるとジュルジュルというマルチパスによるノイズの発生が時々ありましたし,音質も硬い割には輪郭が曖昧でぼやーっとしています。FMラジオの延長にある音です。

 この性能が安定して出るんだから,なんだかもうF-757でいいんじゃないかと思った時もありましたが,KT-1100Dの音を聞いてしまうと,やっぱりもうちょっと頑張ってみようと言う気になりました。F-757はこのまま押し入れにしまうことにします。

 ところで,FMチューナーの心臓部である検波の調整を行う際に,なかなか歪率が0.3%以下に下がらずとても苦労しました。きっとコツがあるのだと思いますが,素人が試行錯誤でいじっているだけではなかなか収束しません。アナログと高周波の難しさを味わったことを欠いておきます。


(2)もう1台のKT-1100Dと比較する

 届いた2台目のKT-1100Dは傷も多く,あまり程度が良いとは言えないものではありましたが,とりあえず受信はしますし,中を見ると改造もされていません。故障していなければ,今回の目的を達成出来ますから,傷には目を瞑りましょう。

 SGで信号を入れて見ると,周波数のずれが大きくて,調整がかなりずれてしまっているようです。このままでは前に進まないので,まずは調整からです。

 ところがここで問題が発生です。検波段のコイルの調整(L9)なのですが,ここはテストポイントの電圧が0Vになるように調整をしなければなりません。なのに,0Vになってくれないのです。

 0Vに近いところまで動かすと,もうコアが飛び出して外れそうになります。それにその状態ではうまく受信が出来ない様子です。

 検波段をきちんと調整しないと,その後の性能が出ないので頭を抱えましたが,とりあえず折り合いを付けて調整を進めます。じっくり検討するのは後です。

 歪率もぱぱっと調整し,セパレーションも69dB位を出したところで蓋を閉じて1時間ほど放置すると,やはり40dB台まで悪化していました。再調整しても1時間ほどでずれてきますが,50dB台を下回ることはなく,偶然かもわかりませんが50dB程度で落ち着くポイントで調整が出来たような感じです。

 発熱も結構ありますし,叩けばセパレーションが変動します。基板をたわませても同様です。程度の差はあれ,KT-1100Dというのは,温度変化でセパレーションの性能が大きく変動するものと考えて良さそうです。

 また,気に担っていた左右のレベル差についても,今回のKT-1100Dでも8mVほどありました。

 ケンウッドのチューナーは,高価なアナログ乗算器を使ってまでステレオ復調の理想を追いかけた回路になっています。アナログで,しかもディスクリートですから,温度や電圧,部品のばらつき,経年変化などの影響を強烈に受けるのは間違いなく,「よくもまあここまでやるよなあ」と私などは思います。今ならDSPで一発ですからね。

 まあ,セパレーションも実用上40dBが出ていれば問題なしと言われていますし,70dBが50dBになったことに,普通の放送波で気が付く人などいないと思いますから,きっと当時はクレームもなかったんだろうと思いますが,複雑なアナログ回路を手なずけることの難しさを痛感しました。今ならこんな回路は却下されるだろうなあ。

 さて,次です。部品の交換が正しく行われているかを確認します。特に抵抗です。

 2台のKT-1100Dの基板を交互に見て,抵抗とコンデンサの確認を1つ1つやってきましたが,これはありがたいことに,交換ミスは見つかりませんでした。


(3)結局のところ

 まず,セパレーションの変動は「こんなもんです」が結論です。実用上折り合いの付くところで調整をするのが対応になりそうです。

 そして部品の付け間違いはありません。左右のレベル差も,いずれのKT-1100Dにも同程度ありますので,こんなもんでしょう。

 とまあ,1台目のKT-1100Dが「こんなもんだよ」となったところで,調整を適当な所で落ち着け,うちのレギュラーに戻すことになったわけですが,そうと決まったからには効果のなかった電源用のトランジスタを内部に戻すことをやります。

 また,一部交換を忘れていた抵抗を金属皮膜に交換します。また,スチロールコンデンサをマイカコンデンサに変えます。スチコンも温度特性に優れたコンデンサですが,マイカコンデンサの方が温度特性は良好です。

 そして,検波回路のスチコンも交換です。今回いじっていて分かったのは,検波回路の調整がずれているとセパレーションも急激に悪化するという事です。また,セパレーションがずれた状態で,SGの周波数を僅かに前後させると,セパレーションが70dBを越えるような状態になったりします。

 つまり,セパレーションというのは,セパレーションの調整がずれるだけではなく,受信周波数のズレや検波の性能で大きく変わってくると言う事です。

 そこで,検波基板のコンデンサもマイカに交換しました。

 こうした対応をしたのですが,再調整をしてもやっぱりセパレーションの変動は大きいです。とはいえ,通電をして機内が十分に暖まってからだと50dB以上を確保しますし,面白いのはそこからジワジワと良くなっていき,68dBくらいまで改善したりすることもあるのです。

 結局そこから悪化してしまうのですが,それでも50dBを割ることはなくなってきました。うまく調整が出来たんだと思います。

 もうこれでいいです。これ以上いじっても良くなるような気がしませんし,この音なら多少の問題があっても常用機の価値があります。

 あとは,常時電気を食っているのを防ぐ為に主電源スイッチを追加すること,安全のためにヒューズを追加すること,AMアンテナの端子をプッシュ式に交換する改造をやって,この件は終わりです。

 そうそう,KT-1100Dにはトリマコンデンサが3つ使われていますが,ことごとく劣化していたので,秋月で売っている20pFの赤色のセラミックトリマに全部交換しました。すっきりです。

(4)最終性能

 うちの常用機の椅子に引き続き座ることになったKT-1100Dの最終性能です。

・WIDE
歪み    L:0.0075%    R:0.0074%    MONO:0.0068%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:64.2dB    R->L:64.5dB (Max 74dB)

・NARROW
歪み    L:0.0167%    R:0.0153%    MONO:0.0174%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:62.2dB    R->L:61.8dB


 歪みの少なさが素晴らしいですよね。このことでざらつきのない,解像感を強く感じるきめ細かな音が出てきます。そのくせ輪郭ははっきりしていて,聴き疲れしないというのは多くの人が異口同音に述べるように,本当だなと感じます。

 セパレーションについても,このKT-1100Dの最高値は74dBをたたき出すのですが,それは短時間でずれてしまい,24時間で見てみると50dBから68dB位の間を変動しているような感じです。

 dBで見れば大きな変化なのですが,漏れてくる信号のレベルを考えてみると,100%変調時の出力が0.65Vなら,たった2mV漏れてくるだけで50dBですし,70dBといえば200uVなんですよ。

 確かに片チャネルが無音の状態で漏れてくる音はわかりますが,両方から出ている放送波の受信状態で,50dBと70dBの近いが分かるかと言えば,わからないと思います。

 それに,50dBでも漏れてくる音よりもステレオ復調時のノイズの方が耳障りだったりします。あまりこのあたりでカリカリするのは,精神的に疲れてしまうのでやめようと思います。

 ただ,40dBになると楽器が中央に寄ってくるのではっきりわかります。ボトムとして50dBはキープしたいところです。


(5)最後に

 もう1台のKT-1100Dですが,役割を終えた今,どうしようかなと思っています。オークションで流すというのも面倒だし,誰かにあげようかと思うのですが,それもちゃんと調整をしてからにしないといけませんし。

 MC1495やらFL表示管のような貴重な部品も入っているので,部品取りとしておいておくのも手だなと思いますが,それにしても置く場所ももったいない・・・

 安いものではなかったので,捨てるという選択肢は考えたくありません。お世話になっている友人にFMチューナーが好きな人がいて,彼はかつてD3300-Tを手に入れたはいいが,故障のため調整を追い込めなかったという苦い経験をしているので,彼がまだFMチューナーに興味を持っているようなら,調整済みで差し上げようと思っていますが,調整が終わるのがいつになるか・・・

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