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2016年11月14日の記事は以下のとおりです。

KT-1100Dの顛末~番外編

 KT-1100Dをいろいろ調べているうちに,受信周波数のズレは検波部にある,コイル(俗にディスクリコイルと呼ばれている)の不良である可能性があることがわかって来ました。。

 検波した結果をそのまま音声信号に使うチューナーではないKT-1100Dのことですから,同調点を見つけるだけのものだと油断していたのですが,その安定度が受信性能に大きく影響することも実際にいじっていくうちにわかってきました。

 KT-1100Dの(同調点を探すための)検波部は,一般的なクアドラチュア検波です。位相を90度ずらすために特殊なコイルを使うのですが,修理に出したらこのコイルが壊れていたので交換されたとか,他機種ですが受信周波数がずれてどうしようもなかったのに,これを交換したらスカッと治ったとか,まるで胡散臭い健康食品みたいな話がWEBで出てきます。

 私は高周波とコイルには大した知識もないので,コイルなんてのは銅線をグルグル巻いたものだから壊れるわけがないと思っていたのです。

 ですが,この検波用のコイルの劣化というのは,内蔵のコンデンサの不良によるものなのだそうです。まあ,この世界にいれば常識なんでしょうが,私は知りませんでした。

 先日比較用に手に入れたKT-1100Dは,L9というコイルを調整しきれないという問題を抱えていたわけですが,まさにこれがこのコイルの故障です。内蔵コンデンサが劣化していて,調整範囲に入ってこないという理屈です。

 だったらコンデンサを交換すれば済む話じゃないかと思ったのですが,これが実に甘かったのです。

 コイルは正の温度特性を持っています。これを相殺するために負の温度特性を持つコンデンサを内蔵してあるのですが,この負の温度特性のコンデンサというのが,なかなか簡単には手に入りません。

 これを通常のセラミックコンデンサなどに交換してしまうと,正の温度特性を持っていて,かつ盛大に狂うため,温度の変動で簡単に共振周波数が変化してしまうわけです。

 容量は大体100pF程度なんだそうで,これはまあどうにかなるとして,温度特性だけは材料の問題ですので,工夫でどうにかなるようなものではありません。困りました。

 セラミックコンデンサというのは,材料をうまく調合することで,様々な温度特性を持つものを作る事ができるのですが,残念な事に温度特性をきちんと管理したものは以前のような旺盛な需要がなく,特に負の温度特性を持つような温度補償用コンデンサは,現在ほとんど生産されていないのだそうです。

 いや,確かに温度補償コンデンサと銘打ったものは現在も作られていますが,これは温度特性が±0のものがほとんどであり,正の温度特性を持つコイルの補償につかうような負の特性を持ったコンデンサは,さっと探してみてもなかなか売っているお店がないのです。

 負の特性といっても-200ppm/℃くらいですから,±0ppmのメジャーな温度補償コンデンサに比べても僅かな変動でしょう。そこで先日,コイルを基板から外し,内蔵のコンデンサを取り外してから基板に戻して,基板上で100pFのCH特性のものを付けてみました。

 目論見通り,ちゃんと調整範囲に入るようになり,正常に動作するようになったのですが,そのまま朝まで放置して置くと,盛大に周波数がずれてしまい,放送波を受信出来なくなっていました。

 CH特性ではだめなんですね・・・

 ということで,負の特性を持つコンデンサを手持ちから探してみましたがありませんでした。SL特性という,+300ppmから-1000ppmという,大きなバラツキ範囲を持つものならあったので,これに交換してみました。容量は少し小さめの91pFです。

 結果,前回ほどの大きなズレはおきませんでした。朝になっても放送波をきちんと受信していましたが,その翌日には完全に受信周波数がずれてしまっていて,結局このコンデンサはあきらめました。

 受信周波数のズレというのは,無線機器にとって致命傷であり,基本性能の1つを欠いていることになりますから,このコンデンサは非常に重要な部品であるといえて,早急にちゃんとした部品に交換したい所なのですが,前述したようになかなか手に入りません。

 で,再度手持ちの部品を確認すると,なんとまあ小学生の時にテレビから外したセラミックコンデンサがいくつか出てきて,これがオレンジや紫色のペイントがなされた,負の温度特性を持つものだったのです。

 容量も,100pFや68pFという美味しいところが見つかり,試して見ることにしました。

 交換したのは,オレンジのペイントがある100pFです。

 オレンジのペイントということは,-150ppm/℃ということです。別の言い方をすればPH特性ですね。実は,コイルメーカーのとある「ディスクリコイル」の仕様書を見たことがあるのですが,これに内蔵されたコンデンサが,まさに100pFのPH特性でした。

 早速試してみます。

 83MHzをSGで作り,指定されたテストポイントの電圧を測定し,0VとなるようにL9を調整します。フタを閉じ電圧を見続けて,どのくらいの電圧のズレがあるのかを確認していきます。

 同じ事をSL特性のコンデンサでもやったのですが,随分と変動をしていました。しかし,今回のコンデンサではほとんど変動しません。大きくずれても4mV程度で,それもいつのまにか0Vに戻っています。

 常用機のKT-1100Dにも同じテストポイントに電圧計を取り付けましたが,その変動はほとんど同じでした。受信周波数の温度特性については,2つのKT-1100Dはほぼ揃い,どちらもほとんどずれないという結果を得ました。

 今回入手したKT-1100Dは動作保証という触れ込みでしたが,結果はL9の故障で受信周波数がずれていて,しかも調整不可能な状態でした。修理にはL9の交換しか方法がなく,それは素人には無理です。

 私の場合,L9を分解して劣化していた内蔵のコンデンサを取り外し,外にそのコンデンサを取り付けて修理を行ったわけですが,L9の詳細も不明,修理のための部品も入手が難しいですし,修理出来たかどうかを確かめる方法も簡単ではないことを考えると,このKT-1100Dを修理して使えた素人さんがどれくらいいるのか,甚だ疑問です。なんだか心配になってきました。

 せっかくですので修理を終えたKT-1100Dの他の調整をぱぱっと済ませて,常用機と同じ程度の性能が出るようにしておきました。セパレーションは50dB弱と言うところですが,これ,電波の強度が強いと良い値が出てきますので,アンテナやブースターと言った受信環境の改善がまず先にくるように思います。

 現在,2台のKT-1100Dが82.5MHzのNHK-FMを50時間ほど連続受信していて,時々SGにつなぎ替えては諸特性を確認しています。理想を望めば切りがなく,実用レベルとしてこんなもんかというあたりで2台が揃ったところで,FMチューナーの検討はおしまいにしようと思います。

 ちょうど今週は,寒くなるときもあるそうです。25度近い暖かい部屋と,10度近くになる寒い部屋で状態を確認出来る貴重なタイミングでもありますので,今週は継続して様子をみていきます。

 KT-1100Dの検討は10月頃から取り組んでいますので,延べ1ヶ月もこんなことを続けていました。ロシアからMC1495のパチモンを買ったり,わざわざ秋葉原の若松へLA3350を買いに出かけたりといろいろあったわけですが,目標に届かない結果に対しても納得出来るだけのことをしましたし,データも揃いました。

 それにしても,温度補償コンデンサというのは大事な部品ですね。それに本当に綺麗に温度補償が出来るのです。大昔のアナログ無線機の温度特性をこういう方法で維持していたのだと思うと,すごいなあと感心します。

 さて,この修理をしたKT-1100D,まずまずの性能になっていますが,どうしましょうかね。もうちょっと手元に置いてから,部品取りにするか,予備機にするか,友人に進呈するか,考える事にしましょう。

 

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