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2017年08月21日の記事は以下のとおりです。

amazonで買える部品だけでケルビンクリップを作ってみる

  • 2017/08/21 13:57

 このところ,技術的な検討に消極的な状況が続いていて,どうも知的好奇心の薄い毎日を送っています。

 相変わらず家事と子育てにバタバタしていることには変わりはないのですが,仕事も昨年比べると忙しくなっているのは事実ですし,子育てについても子供の急激な成長にその意味合いも内容も変化が大きく,否が応でもその興味が子供に向いてしまうものです。

 今日が昨日と変わらず,明日が今日と変わらないことを何より価値のあるものと考える大人としても,毎日必ずどこかに変化のある子供と時間の許す限り一緒に過ごすことを,今日と同じ一日は二度とやってこないという強迫観念のみならず,純粋に子供の話を聞いていると面白いわけで,すでに私の時間は目一杯になっているというのが,今の生活だとつくづく思います。

 まあ,こういう趣味や興味に関する波というのは往々にしてあるもので,数年周期でカメラ,電子工作,オーディオ,楽器,模型,という具合にグルグル回るものですが,不思議とどれにも没頭していない状態というのは,ちょっと珍しいかも知れません。

 そんな中でも,夏休みに工作をしないというのは,私の人生ではあり得ません。小学校の頃から続いている習慣ですし,なにより夏休みにと言うだけで,自然に工作したくなるものです。

 今年は,懸案だった「ケルビンクリップ」を作る事にしました。

 ケルビンクリップというのが正しいのかどうか自信がないのですが,ほら,4端子法による抵抗測定に使う,あのクリップにリードが付いているやつです。

 私の持っているマルチメータ,HP34401AやDL2050には,4端子法による抵抗測定機能があります。これを使えば,特に低い抵抗での測定誤差を小さくすることが出来ます。

 オームの法則はE=IRで,電圧と電流を測定すれば抵抗がわかります。テスターで抵抗を測定する機能はこれを利用しているわけです。

 2端子法というこの方法は,電圧計と電流計の内部抵抗の影響がどうしても出てしまいますし,リード線が持つ抵抗も測定誤差の原因になります。

 それでも,1kΩとか10kΩといった抵抗なら影響は小さいですが,これが1Ω以下の抵抗を測定したり,100Ωで0.5%の誤差を考慮しないければならない場合などでは,無視できなくなってしまうわけです。

 そこで,かのケルビン卿が考えたと言われている方式が,4端子法です。

 測定したい抵抗に直列に電流計を入れて,電源を繋ぎます。当然電流が流れるわけですが,ここで電圧計を繋ぐ場所を,抵抗の両端にします。電流計が繋がる端子が2つ,電圧計が繋がる端子が2つで4端子法と言われます。

 どうしてこれで正確な抵抗が測定出来るかを考えてみましょう。

 まず電流です。電流計は直列に入れるものですから,どこに挟まっていても同じ値を示します。もちろん,リード線に抵抗があれば電流も変わってしまいます。

 しかし,思い出して欲しいのは,先程電圧を測定したのは,まさに測定したい抵抗の両端だったということです。リード線の抵抗の両端の電圧はここには含まれませんから,電流計のリード線の抵抗がどれだけあっても,関係ないのです。

 電圧計のリード線の抵抗は無視できないだろうという声が聞こえてきそうですが,これも心配ご無用。電圧計の内部抵抗が極めて大きい場合,電圧計と,電圧計に繋がっているリード線にはほとんど電流は流れません。

 電流が流れないという事は,リード線の抵抗がどんな大きさであっても,電圧計の値には影響がないということですから,こちらもリード線の抵抗がどれだけえあっても,関係ないのです。

 見事にリード線の影響を無視できる測定系が完成しました。すごいですね。

 しかし,これには結構重要なポイントがあります。電流を流す端子と,電圧を測定する端子は,共用されていてはいけないのです。

 共用されれば,共用された場所に大きな電流が流れてしまい,ここで起きる電圧降下によって電圧の値に誤差が出ます。

 ですから,電流を流すミノムシクリップに接触しないように,かつできるだけ知覚に,電圧を測定するミノムシクリップを取り付けないといけないのです。これって,なかなか難しいです。

 そこで,専用のクリップが作られました。これがケルビンクリップです。

 洗濯ばさみのような大きなクリップの先端は,上と下に別々の金属で作られています。閉じれば接触していますが,開けば接触していませんので,絶縁されています。

 そして,上側と下側に,電圧計と電流を流す回路とを繋げておきます。これを2つ作り,測定したい抵抗を挟みます。

 そうすると,上側と下側は直接接触せず,それぞれ抵抗の足に接触するだけです。接触せず,できるだけ近くという難しい問題を,挟むだけで解決してしまうんですから,なんとまあアイデア商品なことでしょうか。

 ところがこれ,測定器メーカーから出ている完成品は結構なお値段がします。数千円から数万円と,さすがに手が出ません。それに,もともとmΩやμΩといったオーダーの超低抵抗を測定する専用の測定器を前提にした物だったりするので,実に真面目に作られています。

 マルチメータの機能ですから,そこまでの低抵抗を測定する力はそもそもありませんし,そんなにおかねのかかったケルビンクリップを買うのも,出番が少ないだけにバカバカしいです。そこで私は昨年,ミノムシクリップのついた普通のリード線を4本用意し,これを使って4端子法による抵抗測定をやってその場しのぎをしました。

 これでもそれなりに意味があったわけですが,何せ手間がかかります。そこで機会があったらケルビンクリップを自作しようと思っていたのです。

 今回はサブテーマとして,amazonから調達可能な部品で作る,というのも加えてみました。最近のamazonは,こうした特殊な部品も入手出来るようになってきました。

 まず,クリップ本体です。ただのでかいワニグチクリップを買うと泣きを見ますので,慎重にケルビンクリップを探します。すると2個セットで777円のものが見つかりました。安い。

 次にバナナプラグです。BNCコネクタではなく,あくまで34401Aに繋ぐバナナプラグが必要で,4つ使います。これがなかなかいいものがありません。スピーカーの端子としてよく使われている関係もあり,オーディオ用のものはあるのですが,普通のものはどうも安価に買えません。

 そんなとき,テスターリードが150円ほどで売られていることに気が付きました。これを2つ買えば,バナナプラグ付きのリード線が300円で手に入ります。

 合計で1000円ほどの材料費で,4端子法のケルビンクリップの材料が揃いました。

 ケルビンクリップははるばる中国から郵便で届きました。テスターリードは国内の業者から届きましたが,いずれも問題なし。

 早速作って見ます。テスターリードの先端を切り取り,ケーブルの皮を剥いてはんだめっきをします。そしてケルビンクリップにハンダ付け。たったこれだけです。

 早速試してみましょう。100Ω程度の抵抗でも,2端子法と4端子法では誤差の出方が違います。概ね0.3Ωくらいの測定差が出るようで,これは結構大きいですね。

 ということで,あっけなく完成したケルビンプローブ。これで超高精度な抵抗測定が出来ると喜んでいたのですが,冷静に考えるとそもそものマルチメータの精度がどれくらい出ているかを考えないといけません。

 DL2050と34401Aでは,4端子法による測定値にも差があります。その差は2端子法と4端子法の差以上のものです。これでは,4端子法を使う以前の問題です。

 一応,電圧リファレンスによる精度確認で34401Aの方が高精度であることが分かっているので,こちらを信用することになると思いますが,まさに測定器というのは底なし沼です。追い込んでも追い込んでも,納得出来ません。ああ恐ろしい。

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