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2018年05月09日の記事は以下のとおりです。

シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その3

 2mの高さから箱ごと落下させ,その内壁に接していたスタイラスガードが持ち上がるほどの衝撃を受けて左chのレベルが2割も下がった,私の大事なV15typeVxMR。

 なんとか修理しようと試みるも原因にさえたどり着けず,結局あきらめる羽目になりました。

 中古ショップもオークションにも同じ物は見当たらず,万策尽きたと思っていた所で,私はV15typeVxMRの出自についての,重大な秘密を知ることになります。


 google先生にV15typeVxMRのことをいろいろ聞いていたところ,ふとある記事を目にしました。

 V15typeVxMRは,V15シリーズにあらず。

 うーん,以前からそういうことを言われていたので,今さらという気もするのですが,ちょっとよく読んできます。

 V15シリーズはシュアが送り出した高級MMカートリッジのシリーズで,その音質はもとより,LPレコードの再生技術の発展に技術的解決策を与えて大きく貢献してきた,ファンの多い名機の血統です。

 特にV15typeIIIはモダンジャズのピークに登場し,ジャズファンの心を掴んで離しませんし,V15typeVはその集大成として,とても素晴らしい完成度を誇りました。

 時は既にCDの時代。typeVは比較的短命に終わり,V15シリーズ不在の時代が長く続いた2000年台,復活を望む声に応える形で登場したのが,復刻版と銘打ったV15typeVxMRです。

 私はようやく社会人になって自分のお金が使えるようになっていたこの時期,長年の夢であったV15シリーズの購入を決断し,この復刻版を買ったのです。

 その音は確かにV15であり,私はとても満足していました。V15の血統であることに疑問を持ちませんでした。

 しかし,記事には耳を覆いたくなるような事実が書かれています。

 V15typeVxは,V15にあらず。

 外見的な特徴から,V15typeIからV15typeVまで続くいわゆるV15シリーズには,V15typeVxを含めることは出来ないのだそうです。それは電気的特性においても同じで,シュアは公式に語ってはいないが,どうもV15typeVxは「別の血統」になるということです。

 これ,なるほど説得力があるので私も信じるのですが,ならV15typeVxは誰の子供なんだよ,となるわけです。V15を名乗る以上は,それ相応の血筋でないと困るのです。

 記事では,衝撃的な事実が書かれていました。

 まず,シュアはアメリカの量販店であるRadioShack向けにOEMをやっていました。Realistic V15 RSというOEMカートリッジがそれですが,もともとRadioShackは世界中の工場で作った良品を自社ブランドで安価に売るということをやっていたので,このカートリッジも悪いものではないと思います。

 そういえば,PC-8201で知られるポータブルコンピュータは京セラのOEMですが,これもRadioShackに供給され,TRS-80model100として人気があったという話です。似たような話でしょうね。

 で,OEM用に作られたRealistic V15 RSを自社ブランドで売る際に,シュアはVST IIIという名称を与えます。VSTとはV15 Series Technologyの略らしく,1980年代後半にVST Vと共に,ほんの一瞬だけ市場に出た幻のような製品です。

 公式には,VST IIIはV15typeIIIを,VST VはV15typeVをベースとしたもので,当時の私もこの説明を真に受けて,V15typeIIIとV15typeVは音が違い,TypeIIIの音が忘れられない人向けに出たものなんだろうくらいにしか思っていませんでした。

 超楕円針を持っていたVST IIIは短命に終わり,相変わらずV15typeVがフラッグシップとしてその完成度と音質を誇っていました。

 しかしそのV15typeVも生産中止。おそらく金型が壊れたか,ベリリウムの毒性の問題で生産できなくなったんだろうと思いますが,それでもV15復活を望む声は強く,白羽の矢が立ったのが,あのVST IIIでした。

 想像ですが,この段階でもまだRealistic V15 RSは販売されていたか,販売はされていなくても金型が使える状態にあったかで,すぐに生産できるそれなりのグレードのカートリッジとしてVST IIIを使い,V15を復活させようとしたのでしょう。

 かくして,VST IIIはV15typeVの最終形態であるマイクロリッジ針を奢られ,V15typeVxMRとして,V15シリーズに並んだのでした。

 確かにVSTはV15の血統だといっていますし,これを使ってV15を復刻するのはウソではありません。しかしもともとRadioShack向けの傍流であり,本家の筆頭V15を名乗っていいのかというなにかモヤモヤしたものは当然あると思います。

 V15typeVとV15typeVxに,交換針の互換性は全くありません。それどころか,V15ypeVxとM97系列との間には,交換針の互換性があったりします。これがV15typeVxはV15にあらず,という話につながるのでしょう。

 なるほど,M97xEにV15typeVxMRの交換針を取り付けるとV15typeVxMRの音になりますし,先日書いたM97xEの針圧を増やしてトレース能力を上げるとV15typeVxMRの音に近づくという話も,なんだか辻褄の合う話です。

 日本はもとより,アメリカでもこの議論は盛り上がったらしく,騙されたとかRealistic V15 RSの値段を考えるとV15typeVxMRは高すぎるとか,いろいろな声があったと聞いています。

 ですが,私の耳にはあのV15typeIIIの音が聞こえていました。だからこそ,私はV15typeVxMRの音が気に入っていました。なるほど,VST IIIと同じ物で,針だけ良いものになっているなら,そりゃいい音するわなと妙に納得したのです。

 オルトフォンのように,本体は共通で針のグレードの違いで品種が別れているものを見ればわかりますが,実はMMカートリッジの価格にしめる針の割合は非常に大きくて,特に日本のメーカーでしか加工できないとされたマイクロリッジ針が,ベリリウムのカンチレバーとあいまって高価になるのは当然といえて,またその音質への貢献も針の性能に寄るところが大きいものです。

 だから,基本構造がV15に近似していて,音の傾向もV15typeIIIなら,その針を当時の最高級品にすれば,それは確かにフラッグシップモデルの復刻です。だから私はV15typeVxMRを,V15ファミリと思うのでしょう。


 閑話休題。

 ということではですね,本体を壊した私は,Realistic V15 RSかVST IIIの本体を手に入れればV15typeVxMRを復活出来るということになります。問題はVST IIIなどという超マイナーなカートリッジが手に入るのか,しかも安価なのかどうかです。

 ・・・ありました。某オークションにでていました。お望み通り針はありません。しかしそれなりの高価でした。

 いやー,VST IIIですよ。こんなものが手に入るなんて・

 届いたVST IIIですが,軽くチェックをしたところ問題なし,左右のバランスも正しく,音質もやっぱりV15typeVxMRのそれでした。

 ついでに,LCRメーターでコイルのインダクタンスを測定すると,どちらのカートリッジも460mH@1kHz近辺でした。まあ,インダクタンスまで同じならもう同一のものだと考えて良いですね。

 左側のレベルが小さいV15typeVxMRのインダクタンス2割ほど小さかったのですが,これが故障の原因だったのかも知れません。

 そのまま針だけ交換して使うことも考えましたが,そこはやっぱり見た目にV15typeVそっくりでないと悔しいので,中身を入れ替えてしまいました。

 V15typeVxと書かれたケースに,VST IIIの中身が収まっています。しかしVST IIIとV15typeVxの中身は同じ物なわけで,結局入れ替えていません,というオチになりますね。ああややこしい。

 中身を二つ並べて外見を見比べて見ましたが,製造時期の違いもあってか全く同じとはいえませんでした。大きさや端子などは同じでしたが,内部に隠れてしまうような部分で,リブが追加されていたりして細かい改良は行われていたようです。

 事前に塗装が剥げてしまってところを補修し,クリアラッカーで仕上げたV15typeVxMRのケースに,うまくVST IIIの中身が収まり,元のシェルに取り付けられました。これで完成。音出しも問題ありません。

 結局,落下によって壊したV15typeVxMRは,数千円の費用をかけて修理され,原状を回復しました。今私の手元には,VST IIIと書かれたケースと,V15typeVxの中身が,転がっています。

 出来上がったV15typeVxMRを改めて聞いて見ると,やっぱりこの音だなあとつくづく思いました。私もいろいろ聞き比べを楽しむ人間ですのでわかるのですが,違いが分かったうえでいい音悪い音を区別出来ることと,好きか嫌いかは全く別の話であり,特にいいなあ,これだなあと思うものというのはそのジャンルで1つだけになってしまうものです。

 V15typeVxMRに否定的な意見はまさにその通りで,私も同じ意見です。また,傾向としてシュアのものに共通するものがあって,そこが嫌ならもう全部アウトというのも頷けます。

 ただ私の耳には,同じ傾向とは言えV15typeVxMRとM97xEは同じくくりにはなく,その違いは歴然です。不思議なことに口では説明出来ず,また他の人に分かってもらうことは無理なんじゃないかと思ってきました。

 落下させ壊したV15typeVxMRが,こういう特殊な方法で原状を回復してくれて,本当に良かったと思います。針がすり減るなどセコいことを考えないで,どんどん使っていこうと決めました。

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