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2018年05月14日の記事は以下のとおりです。

シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その5

 カートリッジ祭りの最後は,どうしても試してみたくなった新しいカートリッジの話です。

 前回も書きましたが,私はシュアとオルトフォン,オーディオテクニカとデノンという当たり前のメーカーのカートリッジしか使っていませんでした。MCは言うに及ばず,MMのような量産品でも数多くのメーカーがその個性を競うカートリッジの世界は広く,楽しいものであるはずなのに,なんと私はもったいないことをしていることか。

 ただ,一方でOEMが多い世界でもあるので,メーカーは違うが中身は同じ,と言うものが多いのもまた事実です。あれこれと手を出すことの意味のなさも分かっているつもりです。

 そんな中で,カートリッジの老舗であるグラドが目に入ってきました。好むと好まざるに関わらず,売り上げを立てるのにDJ用は外せないカートリッジの世界において,グラドはDJ用途のものを作っていないんですね。

 かといって保守的な高価なものばかりかと言えばそんなことなく,1万円くらいから多くのラインアップを持ち,またモデルチェンジも頻繁にあって,都度新しい技術と音に挑戦しています。

 私などは「大丈夫かいな」と心配になってしまうほど,私のような庶民にはありがたい存在なグラドですが,つい先日まで「聞いたことはあるけど」という程度の認知度でした。

 しかし,1万円程度の安いMMカートリッジでも,周波数特性は50kHzまで伸びるというウソのようなスペックを謳っていますし,チャンネルセパレーションも他のカートリッジの頭一つ飛び抜けている値が書かれています。

 グラドはMMというよりMI型ばかりをラインナップしていますが,セパレーションが良好なのもMI型の個性の1つです。

 つい,この3月にエントリーレベルが新製品で一新された事も知り,ならば試してみる事にしました。改良を重ね最新の設計で楽しむアナログレコードというのも楽しいもので,現代のスピード感のある音がアナログで楽しめるかも知れません。

 たくさんあるラインナップのうち,私が選んだのはPrestige Blue2というものです。

 Prestigeシリーズはグラドのエントリーレベルのラインナップですが,数と言い価格レンジと言い,まさにグラドのメインストリームではないかと思います。

 最廉価のBlackは3ピースのカンチレバーで,GreenはBlackの選別品です。Blueは4ピースのカンチレバーで,選別品はRedになるそうなのですが,私はその価格差から選別までは必要なく,そのかわり4ピースという高級機と同じ構造の音を聞いてみようと思いました。

 聞けば,グラドは現代のMCカートリッジを発明した人なんだそうです。しかし今のグラドにMCのラインナップはなく,これはMCに限界があり,これを越えるのが彼の考案したMI型(FB型というそうです)だという結論に至ったから,らしいです。

 まあ,この手の話にはウソも混じるので真に受けるわけにはいかないのですが,ウソでもそこまでいうならぜひ聞いて見たいものです。

 ということで,それでも1万円ちょっとで手に入ったBlue2を早速試してみます。

 MIらしい芯のあるしっかりした骨組みに,ワイドレンジで密度の高い音がを均一に纏っている印象です。高解像度,高コントラストで鮮やかな音は現代的で,伝統的なカートリッジとはちょっと風味が違いますが,似た傾向のオーディオテクニカほど尖っておらず,多量の情報がすっすと頭に入ってきます。

 派手な音にありがちな歪みっぽさはなく,きめの細かい音がしており,それは大音量でも破綻せずしっかり粘ってくれます。目の前の霞やもやが一気に晴れたような感じがあり,からっとした湿気の少ない風のような心地よさです。

 ちょっとサ行がきついかなあと思いますが,欠点はそのくらいです。

 聴き疲れることもなく,かといってメリハリの強い音で常に興奮状態にあるわけでもなく,とても自然に鮮度の高いが耳に入ってくることは音楽を愉しむには理想的とも言え,個人的にはジャンルと問わないオールラウンダーだと思いました。

 あまりに楽しいので,一気に2枚ほどアルバムを楽しみました。この音がこの価格で買えてしまうのに,もっと話題になってもいいと思うのですが,そこはやっぱり保守的なアナログオーディオの世界だけに,シュアとオルトフォンとデノンでいいや,ということになっているのかも知れません。

 確かにこのあとM44Gと比べてみたのですが,M44Gの肉太な押し出し感の強い音は,それはそれでとてもエキサイティングで楽しいです。不思議なことに,PrestigeBlue2を聞いた後では,いつも感じるようなM44Gに対する物足りなさや一種の妥協のような感情が全く顔を出さず,心底「いい音だなあ」と聞き惚れてしまったのです。

 方や最新の設計による現代の音,方や半世紀を経た古典的設計の伝統的な音,しかしどちらもいい音だと,そんな風に思えることがとても面白く感じました。

 このあたり,レンズと似たようなものがあるかも知れません。古いレンズは解像度も低く,その時の製造技術で量産可能なもので妥協した設計をしていますが,それはそれで個性的で味わい深いものである一方で,最新の設計と高度な量産技術で磨かれた最新のレンズは,今のトレンドをきちんと掴んだ高解像度,高コントラストです。

 思うに,50年前の設計者も,きっと高解像度を目指していたんだろうけども,諸処の事情でそれが許されずに妥協を重ねたんだろうと思うのです。だからもし,その50年前の設計者に今の最新の設備と技術を提示したら,きっと現代的なレンズを作ると思うんですね。

 カートリッジも同じで,違うのは相手がLPレコードという古い伝統的なものであるということです。レンズが相手にする被写体はまさに目の前にある「最新」のものですから,このあたりはちょっと考え方が違うかも知れません。

 ちなみに,あまり聞いていなかったオルトフォンの2M REDも真面目に聞いてみました。なぜかうちではこのカートリッジは針圧を3g以上かけないと歪みが消えず,あまり長時間使えないなあと思ったわけですが,腰がしっかりと座った,いかにもMMという太い音を持ちながら,現代的な解像度の高い音がしていて,アンバランスさを感じるほどです。

 アンバランスさと書きましたが,このあたりPrestigeBlue2は見事で,MMの個性と現代的な音が一体感を持っており,不自然さが全くありません。素晴らしくまとまっています。良し悪しではありませんが,この点で2M Redはちょっと息苦しさがあります。(この重さは針圧が大きいことから来ている可能性もあり,針圧を軽くするともっと軽やかな一体感のある音になるのかも知れません)

 ということで,常用していたV15typeVxよりも澄んだ音が欲しい,DL-103よりも伸びのある音が欲しいと,常々思っていた所にPrestigeBlue2がこのすべてを満たして現れました。

 なんやかんやで最後にはV15TypeVxやDL-103に付け替えて終わるのに,PrestigeBlue2だけは2枚のアルバムを聴き通したわけで,これでもう常用決定という感じです。

 いつでも同じ音が出る信頼性や,セッティングによって音がどれくらい変化するかというセッティングの難しさなど,まだ分からない事も多いのですが,大変魅力的なカートリッジに出会いました。

 必ずしも高価である必要はなく,定評あるロングセラーでなくても,とてもいいものがあるということを,今回のPrestigeBlue2は私に教えてくれました。

 使いこなしの難しさがあるかも知れないのでまだ断言出来ませんが,この価格でこの音は大変素晴らしく,もしおすすめを聞かれたなら,このPrestigeBlue2を真っ先にあげることにします。

 

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