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2018年06月15日の記事は以下のとおりです。

AF-S 24-70mmF2.8E ED VRへの買い換えは正義なのか

 手に入れてから数日経過し,楽しいと言うよりも不良を見つけなければと言う焦りから,買ったばかりのAF-S24-70mmF2.8E ED VRを触っています。

 このレンズ,品薄で飢餓感を煽っている感じもなくもないのですが,一方で手放しで絶賛というわけでもなく,かなり否定的な意見も散見され,それらが一様に筋が通っていたりするので,実はあまり信用していないのです。

 とりわけ,既に手元にない前世代のAF-S24-70mmF2.8G EDが「あたり」で,目の覚めるような画質に感激したことが強烈な記憶として残っており,これを基準として新しいレンズを評価すれば,その差が小さいために印象が薄くなるだけでなく,ちょっとした欠点や不良がとても気になってしまうことに繋がります。

 ですので,どうも疑いの目を向けてしまい,気が付いたら自分自身の気持ちがすり減ってしまったりするので,どうもいけません。

 いろいろ見ていくと,新旧2つの24-70mmF2.8という標準ズームは,標準といいつつも得意不得意が結構あるレンズで,万能レンズではないのだという意見が多いです。光学特性が改善され,設計が進化していくと欠点がなくなり個性も消えるというのが正論なのですが,この2つについては高画質で良い設計をしているという評判の一方で,AF-S24-70mmF2.8Gについては像面湾曲が大きいとか,AF-S 24-70mmF2.8Eではテレ端での近距離で解像度が落ちるとか,常に頭に入れておかないと失敗しそうな個性の存在が話題に上っています。

 ニコンの公式の見解ではありませんし,測定器で数値を出しそれをもとに評価した結果ではなく,あくまで使った人の感想に過ぎませんから,問題のある現象の原因としてこれらがマッチするかどうかも不確かですし,そもそもそれは個体不良の可能性もあるわけで,気にしても仕方がなく,あくまで使う人がその使い方で問題を感じたら個別にメーカーに相談,というスタイルでしか解決出来ない気がします。

 まあ,もしニコンが公式に「近距離でぼけます」なんていっちゃったら,近距離撮影をしたい人は買わないようにするだろうし,自分が手にした個体のボケ具合が強くて気に入らない場合でも相談しにくくなりますわね。そう考えると,ニコンが公式な見解を出さないでおいてくれることは,とりあえず相談という形を取る事ができるわけで,むしろありがたいことなのかも知れません。

 てなわけで,AF-S 24-70mmF2.8E ED VRを短い時間ですが触って見ました。これまでの印象を書いておきます。


(1)大きさと重さ

 1つ前のGに比べて今回のEはもはや別物という印象です。以前のレンズはそれでも標準ズームだなと思いましたが,今回はフードまで付けるとすでに望遠レンズの風格で,これでそこら辺をウロウロしていると通報されそうな勢いです。

 それもそのはずで,フィルター径は82mmともはや一般的とは言えないくらいのサイズとなり,鏡筒も太くなりました。全長も伸びているので,並べておけば一回り膨らんだように見えます。

 以前何かで読んだのですが,Gタイプは鏡筒を細く作るアイデアが出たことであの大きさを実現出来たそうで,それがあのレンズの個性の1つだと思っているわけですが,今にして思うと鏡筒が壊れやすいとか華奢だという評価は,やはり多少の無理をしたからだったのかも知れません。

 いずれにせよ,機械的な面と光学的な面において大型化するのが最善との判断がこのレンズの現実に現れているわけで,我々はそれらを改良したことと一回り膨らんだことを天秤にかけて判断することになると思います。

 重さについても大きく増加していて,以前が約900gだったのに,今回のEタイプ(なんかジャガーみたいですね)は1070gと,とうとう1kgの壁を突破しました。1割の重量増加はさすがに気のせいでは済まなくて,数字以上に重くなったという印象を与えるに十分です。

 ならハンドリングはどうか,という話になるとこれが不思議で,全然ダメだとか,違う気分で持ち歩くしかないという気分にはならず,それでも標準ズームだという気分で使えるので,このあたりはさすがにうまくまとまっているなと感じました。

 長時間持つ時の疲労の度合いにちょっとした差があることもわかったので,それでようやく新しいレンズが巨大化したことを実感するわけですが,持ちやすさや重量配分から,少なくとも持ちにくいとか使いにくいという感想は出てこないと思います。

 そうはいってもこの大きさですから,被写体との距離が短いときに相手に与える威圧感は強烈ですし,狭い空間ではレンズの大きさが強調されて,あきらかに「邪魔」という空気を作ってしまいます。

 よく,レンズの大きさを議論するのに持ちやすくないからOKとか,使う人の視点でのみ語られることが少なくないようですが,使う人はたった一人でも,その周りで影響を受ける人は複数いるのが不自然ではないので,周囲に与える印象や影響を考えてレンズをデザインすることが新しい流れになって欲しいと,私は以前から思っています。

 ニコンはどうもこの視点に欠いていて,それが画質優・先性能優先というストイックなイメージと相まってファンに支持されているきらいがあると私は見ていますが,繰り返しますが撮影現場において撮影者はたった一人であり,ゆえにカメラとレンズのデザインは撮影者のためではなく,周囲の大多数の人に向けて行われるべきです。

 この点において,AF-S24-70mmF2.8E ED VRは,あえて改善の余地のあるレンズと私は思います。例えは良くないかも知れませんが,ルートセールスの営業車にベンツのSクラスは相応しくないわけで,画質や性能面からだけではなく,AF-S 24-70mmF2.8E ED VRは万能レンズとはいえない,使えるシーンに制限があるレンズだということを,ニコンは認識すべきでしょう。

 ごく個人的な話でいえば,以前の細い鏡筒は持ちやすくて気に入っていただけに,今回のサイズアップは残念です。これは,VRがあるからとか光学性能が改善したからとか,そういう理由であきらめてよい問題ではありません。私がとりわけ残念だったのは,この性能と機能だからサイズアップは仕方がなかったと言ってしまえる,撮影者しか見えていない設計者の傲慢とも言える姿勢でした。


(2)質感,使い勝手

 と辛辣なことを書いた後でいうのもなんですが,質感と使い勝手はさすがにニコンです。質感は1つ前のGタイプも高く,満足感も高かったのですが,今回のEタイプも悪くなく,手に馴染みます。

 とはいえ,触った感じのプラスチッキーな感じは強まっていて,一部に高級感がなくなったとかペラペラになったという意見があるのは,そのせいでしょう。

 デザインも以前ものを踏襲しつつ,大きくなってしまった外観をできるだけ小さく機能的に見せる工夫が成されていて,デザイナーは苦労しただろうなあと思います。

 あと,フードですね。以前のフードも悪くはなかったですが,今回のフードは格好良くなりました。レンズ本体との間に段差がなくなり,付属物ではなく一体のものだという主張がはっきりしました。これはすばらしいです。

 ズームリングの焦点距離の刻印も,撮影者から見やすいテーパーを切った斜めの面に成されており,格段に見やすくなりました。さすがです。

 持ちやすさも犠牲にはなっておらず,こと使う人の視点では不満はありません。

 しかし,困った事もあります。

 フォーカスリングに触れやすくなっているのです。このレンズは恒久連zに当たり前となった,マニュアルフォーカスにシームレス切り替える機能があります。AF動作中でもフォーカスリングが動けば,そこからマニュアルに切り替わります。

 つまりフォーカスリングはAFとMFの切り替えスイッチの役割をしているわけですが,その重要なスイッチが今回随分巨大化し,これを避けて持つ部分が大幅に減ってしまいました。

 失敗だなと思うのは,フォーカスリングの回転部分がゴムリングの部分だけにとどまらず,鏡筒の一部も一緒に回ってしまうことです。そこはゴムリングよりも径が大きいので,少し指がかかれば動いてしまうくらいです。

 実は,一日に一度くらいの割合で,AFが動かないという問題に悩まされたのです。初期不良を疑いましたが,三脚では問題が出ない事から,フォーカスリングではないかと疑い,AF-ONを押した瞬間に少し動かしてみるとAF動作をしないことが判明しました。手がフォーカスリングに触れていて,AF-ONを押したと気にカメラが動いて,フォーカスリングも回ってしまうのですね。

 MFに切り替わらないようにここを避けようとすると,本当に持つところに困ります。脇があかず,顔にカメラを押し当てるに最適な場所は人によって違いますので,むやみに持つ部分を減らす事には慎重であるべきです。


(3)フード

 フードはロック付きで質感も高く,なにより本体の一部と主張するまとまったデザインで,とてもよいです。大昔はフードにも個性があり,アルミで出来たシャープな角形フードを広角レンズに取り付けたりすれば,それはそれは格好のよいものだったのですが,ズームレンズが主流になり,フードも腫れぼったいプラスチックで出来た花形フードになると,「どうせ誰も使わないんだし」というあきらめムードの漂う,とりあえず付属しましたというような,本体との一体感のない不細工な安っぽいものが普通になりました。

 これがますますフード離れを招いていると私は踏んでいますが,ニコンは最近やたらと「フードを付けろ」と言うようになりました。光学性能の改善もそうですが,フードを付ける事でぶつけたときの破損が軽くなることも,期待しているのでしょう。

 意地悪な言い方をすれば,レンズの機械的強度を本体だけでは確保出来ず,フードにも任せようということになるのですが,ニコンが偉いのはそのためにずっと取り付けたくなるようなフードを実際に添付するようになったことです。

 そう,フードありきで性能を語るなら,フードを常時付けてもらえるような格好いいデザインにしないといかんことに,気が付いたということです。さすがです。

 前述のように,本体とのつなぎ目は緩やかなテーパーがあり,一体感を演出していますが,ロック部分は平面で繋がっていて,これがむしろ左右非対象な格好良さを醸し出して,私は気に入っています。

 また,レンズとの取り付けもちょっと窮屈なくらいになっていて,一体感があります。少し外形が大きいフィルターを付けると,フードがはまらないくらいです。

 しかし,フードの付け根にはスリットが開いていて,フードハットを被せたときに空気が抜けるようになっているので,着脱がとてもスムーズです。これもさすがです。そしてこのスリット,大きさと言い長さと言い,格好いいですよ。

 まだまだ格好良くなると思います。フードを格好良くすることのメリットに,多くの人が気付くきっかけになるこのレンズで,今後ますますフードが格好良くなることを期待したいと思います。


(4)AF

 1つ前のGタイプも感激しましたが,今回のEタイプはもう俊足です。素晴らしいです。

 EタイプのAFは,絶対的な速度もそうですが,加減速が洗練されています。こんな速度で立ち上がって止まれるんかよ,という不安をよそに,すぱっと止まります。

 もう他のレンズには戻れません。


(5)VRの利き具合

 これも想像以上でした。24mmや35mm付近ではそんなにありがたいと思いませんが,中望遠域になる70mmや,50mmくらいでもVRの恩恵は十分に受けられると実感しました。

 もちろん被写体ブレは防げませんから,暗い所で使えるなんて甘い期待はしませんが,止まった被写体ならとても有効で,手持ちでラフに撮っても1/8でぶれないというのは,新しい撮影スタイルが開拓されるのではないかと思います。

 ファインダー像が安定するまでの時間も大変短く,シャッターを切っていいかと待つこともなく,自分の体躯が強化されたと錯覚するほどです。

 先程,広角域ではありがたくないといいましたが,24mmでもぶれるときはぶれるわけで,ここで1/4秒を切れるかどうかは,大きな差になることは事実です。特に広角は絞り込んで使うことも多いでしょう。感度を維持して絞り込むときに,VRは強い味方になるはずです。

(6)画質

 これはまた微妙なのです。

 誤解のないように先に行っておくと,AF-S 24-70mmF2.8E ED VRは大変高画質で,多くの条件で破綻することなく,あらゆる光線を高純度でカメラに注ぎ込む絶対性能とそこから生まれる信頼感を,我々が裏切られることはないと思います。

 一方でGタイプも十分高画質でした。高画質という一言で片付けてしまうのはちょっとまずくて,色のりの良さと同時に,フォーカスが外れていくまでの変化がとてもなだらかで,合焦している被写体を独特な描画で浮かび上がらせる,個性的で主張の強いレンズでした。

 この点をもっと評価されてもいいと私は常々思っていますが,世の中の評価はそうではないようで,この個性と引き換えに残ってしまった収差を目の敵にする人が多いようです。

 Eタイプは,どうもその収差バランスを見直すことに方針が改まったのではないかと思うような画質の変化があり,一部の人が言うようにGタイプの後継ではなく,別のレンズだというのは,妙に説得力があったりします。

 色のりはさらによくなり,色収差も減りました。シャープさはさらに増し,周辺部での画質低下も減っています。周辺光量の低下も改善されて,電磁絞りになったことで絞りの精度も抜群です。

 ですが,フォーカスが外れていくまでの変化は平凡なものとなり,被写体の浮かび上がり方もごく普通になりました。

 そして,テレ端の近距離での画質低下が目立ち,絞りを開放にして近寄ってテレ端でアップで狙うときには,やや眠い平凡な写真になりがちです。この点,Gタイプでは強い個性が出てきて,とても楽しいものだっただけに,残念でした。

 言い換えれば,それ前提で撮影に臨まないといけない個性の強いレンズではなく,より汎用で,性能が全般に向上した優等生になったということなんでしょうが,便利で安心感がある反面で。個性が薄くなったことを素直に喜べなかったりします。

 まあこれも,こういう個性は単焦点レンズに任せてしまい,大三元の役割から切り離したとみれば納得なのですが,Gタイプが面白かったのは,ニッコールを代表する大三元に,そうした個性を盛り込んだことが許されたことにあったので,最新のレンズでの方針変更(の可能性)は,複雑な気持ちです。

 私の個体については,いろいろ試してみましたが,幸い初期不良も調整不良もなさそうで,とりあえずはこのまま使っていけそうです。設計が高度で生産が難しく,調整もシビアでなにかと大変なレンズであろうと想像されますが,発売から2年以上が経過して,ようやくこなれてきたのかも知れません。


(7)買いなのか

 今持っているGタイプのレンズが「あたり」で,VRの世話にもならず,その個性が嫌いでなく,ヘビーデューティーな使い方をしない人なら,買い換えてはいけないです。そのまま使い続けるべきでしょう。

 これから大三元を買う人は,Eタイプを選んだ方がなにかと幸せです。

 Gタイプの個性が嫌いな人,VRが欲しい人,乱暴に扱う人は買い換えるしかありません。また,気に入った個性を持つ単焦点を1本持っているなら,Eタイプに買い換えた方が幅が広がるように思います。

 なにより,すでに十分高画質なGタイプとの差額がこれほどあると,その差分に納得出来ないといけないわけですから,それが見栄だけで埋まらない人は,後継への買い換えではなく違うものに置き換えると考えて,慎重に検討すべきだと思います。

 その性能は価格に見合っています。大きさや重さも,撮影者は辛抱できるでしょう。

 でも待って下さい。

 このレンズの買い換えは,それ以上の要因をこれまでよりもずっと真剣に考えないといけないように,私は思いました。


 

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