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2019年09月18日の記事は以下のとおりです。

Rollei35の修理

 東急百貨店最後の「世界の中古カメラ展」で思わず買ってしまったRollei35,3連休で分解と修理を進めました。

 分解して程度を確認した印象で言えば,正直なところ,35000円という価格に対して十分見合った価値があるとは思えません。もう3000円出せば整備済みのものが買えたりするわけで,この値段でこれだけ問題を抱えた個体を売っている業者は,そんなに良心的ではないとも思えます。

 もちろん,修理も点検もサポートすることをを約束してくれている(その上着払いで送ってくれれば構わないとまで言ってくれている)し,その信用に対する価格が随分上乗せされているのだと思う訳ですが,見方を変えると業者も修理費用を負担してしまえば即赤字になるような個体を売ったりすることはないはずで,さすがに50年も経過したカメラが現時点でどんな状態にあるのが「普通」なのか,私にはつかめていません。

 つまり,修理を行うにしても部品交換が必要なほど深刻な不良はなく,修理を前提としたベースモデルとしては十分だという意味で,この値段が付いていると考えるのが適当かも知れません。それにしては高いですかね・・・

 ただ,これもちょっと疑問があって,レンズは一見すると綺麗ですが,後玉には傷かカビの跡かがありますから,写りに問題ないという実際の問題とリセールバリューとは別の問題とすれば,やはり買うときに教えておいて欲しかったなあと思います。

 これまでに判明した問題点は,以下の様な感じです。

・ファインダーのクモリ
・巻き上げレバーのクッションの破損
・1/2秒が出ていない(実質1秒)
・露出計の指針がシャッタースピードや絞りと連動しない
・露出計の狂い
・ピントリングのグリス抜け
・全体的に動きが渋い
・巻戻し時に使うリリースレバーがきかない

 まあでも,この程度で済んでいるんだから,随分ましなんでしょうね。

 修理中に私が壊した箇所は2つで,1つはレンズの分解を行う時にピントリングの回転を制限するストッパーの爪を折ってしまったこと,もう1つは巻き上げレバーの飾りネジを折ってしまったことです。

 巻き上げレバーの飾りネジは無理をして壊したわけではなく,突然ポロッと取れたと思ったら,ネジが折れていたという感じです。

 
(1)ファインダーのクモリ

 これは購入前に聞いていたことではありますが,気にしないだろうと思っていたらやっぱりとても気になるので,上カバーを外してファインダーブロックをを取り外して,分解清掃を試みました。

 あくまで推測ですが,このファインダーにはセロテープが貼られており,かなり劣化が進んでいました。糊の部分がファインダーブロックの隙間に貼られており,ここから発生したガスがファインダーを曇らせているような感じです。

 シンガポール製なのでプラスチック製だろうと思いましたが,私には3つの光学部品はすべてガラス製に思えました。

 分解出来るようになってはいないのですが,慎重に分解し光学部品を取り出します。銀蒸着を傷つけないようにアルコールで両面を拭き,クモリはなくなりました。

 元のように組み直し確認をしてみましたが,クモリも軽減され,ゴミもなくなって綺麗な視野が開けてくれました。ファインダーが綺麗なのはいいですね。


(2)巻き上げレバーのクッション

 これは修理の終盤で対策したのですが,手元にあった1mm厚のウレタンテープを切って貼り付けました。もともと柔らかいゴム製の丸いポッチが取り付けられているのですが,これが劣化して破れてしまうのが持病として知られていて,そうなってしまうとレバーが上カバーを叩いて傷だらけにしてしまいます。

 張り付けたウレタンスポンジのテープは大変調子がよいです。


(3)1/2秒が出ていない

 そもそもレンズシャッターのシャッター速度って,どのくらい正確で,調整はどの程度出来る物なのか,分解も調整もやったことがない私にはさっぱりわからなかったのです。

 本来,レンズシャッターは丸い鏡筒に収まるように調速機構も仕込むのですが,Rollei35の場合専用設計になっていることから,調速機構などは本体側に搭載されています。

 フォーカルプレーンシャッターと違って,幕速とスリットの幅でシャッター速度が決まる世界と違いますから,複雑な調速機構をあちこちいじって調整するんだろうなと思っていました。

 とはいえ,すでに調整済みで出荷されているわけですので,そんなに狂ってしまうわけではなく,古いオイルを抜いて新しいオイルをさしてやれば,それなりの速度が出るだろうと思っていたのです。

 1/2秒であるはずなのに,1秒くらい開いているこの個体は,このままでは使い物にはなりません。ということでサービスマニュアルをしっかり読み込んで,調整をします。

 サービスマニュアルによると,スローガバナーの脱進機のシャフトがぶつかるタブを適当に曲げて,脱進機の速度を調整することで1/2秒を調整出来るとあります。

 うーん,こんな方法でいいかいなと思って半信半疑で試しましたが,なるほどちょっと曲げるだけで大きく変化するのがわかります。

 F3の1/2秒と同じタイミングでシャッターが閉じるように,このタブを少しずつ曲げておよそ0.5秒になるようにしておきました。後日ですが,シャッター速度の測定を行ったところ548msと出てきましたので,まあそれなりにシャッター速度が出ていると言うことでしょう。
 
 Rollei35が,その後の廉価版シリーズと大きく異なるのが,このスローシャッターの搭載の有無です。わざわざ高価なRollei35を買ったのは,スローシャッターを使いたかったからですし,ここはきちんとしておきたいです。;


(4)露出計の指針の連動

 これは購入前に気付くべきでした。家に持って帰ってから気が付いた大問題です。

 Rollei35の露出計の指針は,機械的な仕組みによってシャッタースピードと絞り値とISO感度に連動しますが,この連動機構が動かないようです。

 分解して見ると,露出計の指針を動かす機構が曲がって動かなくなっています。分解しないとこういうことは起きないと思いますので,素人が分解してそのままにしてあったんじゃないかと思います。

 ここに限らず,もう2箇所ほど,大きな力がかかって曲がったレバーがありました。きっとかなり無謀ないじられ方をしたんでしょう。

 問題の場所は指でちょいちょいと逆方向に曲げることで,無事に連動して動くようになりました。


(5)露出計の狂い

 生きていれば狂っていることは問題ないと割り切っていましたし,電池を水銀電池ではなく酸化銀電池にすると決めた以上,電池電圧に依存するRollei35の露出計の仕組みから考えて,露出計は再調整が必要だと思ってはいました。そう,水銀電池は1.35Vでほぼ一定,酸化銀電池は1.55Vでほぼ一定だからです。

 ここで,LR44などのアルカリ電池を使うと,1.6Vから1.2Vくらいまで電圧が緩やかに変化しますので,どの電圧で調整するべきか悩む結果になります。

 なので,現在手に入る電池として定電圧特性に優れている酸化銀電池を使うしかありません。

 私がオマケで付けてもらったアダプターは,関東カメラサービスのものと思われるのですが,電圧調整機構がないものです。ただ,この電圧調整機構というのもちょっと眉唾で,一定電圧に安定化してくれる物ではなく,抵抗かダイオードの順方向電圧のドロップ分で電圧を下げているだけのもののようです。

 安定性は電池の特性に頼っているので,水銀電池にはやっぱりかないません。

 で,酸化銀電池と水銀電池の電圧差は公称値で0.2Vです。この0.2Vというのはなかなか難しいもので,うまく作る方法を思いつきません。ダイオードの順方向電圧は,実は流す電流に大きく依存し,その変化率はリニアではありません。

 それに,シリコンで0.6V,ショットキーで0.3Vから0.4Vですので,0.2Vを作る事はできませんし,0.2Vのゲルマニウムダイオードを使っても,温度によっても大きく変化するので,結構怪しいのです。

 それくらいなら,1.55Vで露出計をあわせ込んだ方がよほど合理的なはずで,この方向で調整を進める事にします。

 まず,露出計を守る上カバーのカバーガラス(といってもプラスチック)に大きなクモリがあって,このままでは使えそうにありません。そこでこれを外す(といいますか外れなかったのでドリルで抜いた)ことにしました。そして,透明な0.2mmのプラ板を張り付けておきます。

 上カバーはCdSへの光の入射角を決めているフードの役割も担っているので,おかげでカバーを外すと3段ほど明るい表示になってしまいます。しかしカバーを外さないと調整用の半固定抵抗を触れませんので,専用のジグが必要になりそうです。

 実はこういう無理がRollei35には散見され。私はもうちょっと設計を練って欲しかったと思うのですが,世の東西を問わずこのカメラの設計者には合理的な設計だと賞賛がやみません。私はこういう細かいところで失敗があることを知っているので,ことさら設計者を持ち上げることはしません。

 とりあえず上カバーを外してCdSにシールを貼り付け,おおよそカバーありの時と同じような値になるようにしておきます。ここで,7EVと13EVでの調整を2つの半固定抵抗で繰り返し行い,なんとなくあわせ込んでいきます。

 そもそも外光式ですし,ラチチュードの広いネガで使う露出計ですので,精密な調整には意味はありません。子孫であるGossenのDigiSixを反射式露出計にして,似たような値になるようにすればOKとしました。

 幸いなことに,高輝度側も低輝度側も,ほぼ揃いました。仕組みも特性も異なるF3と比べても,ほぼズレていません。いい感じです。


(6)ピントリングのグリス抜け

 距離計がなく目測でピントをあわせるカメラとはいえ,やはりピントリングの回転のしっとりとした感触はこの時代の高級カメラの証です。抜けてカスカスになっている感触はよくありません。

 そこで分解しグリスアップをするのですが,このレンズの分解に随分手間取りました。みんな簡単にやっているようなので,なんで出来ないかと焦りもあって,ますます分解出来ません。

 わからなかったのは,飾り環をどうやって外すのかです。

 通常,飾り環はレンズ名やスペックが刻印されていて,ゴムで回転させて外します。その下には3つ程度のビスが顔を出し,ここを外すことでレンズの分解が始められます。

 なのにこのTessarは,刻印のある部分をいくら回しても回ってくれません。ゴムがゆるゆると滑ってしまって回らないのですが,油がきれているのか,鏡筒が歪んでいるのかと必死で反時計回りにひねっているときに,突然ポリッという感触が・・・

 その後,無限遠で回転が止まらなくなりました。どうもストッパーを折ってしまったようです。あーーーー!

 ますます焦っている自分をなだめ,深呼吸をして先人達のWEBをもう一度読み直します。すると一部「細いドライバーで外すと」と書かれています。

 もしや,と思い,刻印のある部分ではなく,一番表にある輪っかの,0.5mm程の小さな穴にピンセットを突っ込んでみたら,なんとプカプカと浮くではありませんか。

 そのままこじると,ペリペリと接着剤が剥がれる音がして,見事にそのまま輪っかが外れました。もちろんその下には,3つのビスが顔を出しています。ふふふ,とうとう見つけた!

 何のことはない,飾り環はプラスチック製で,接着でした。外すには小さな切り欠きに細い針を差し込んで浮かせます。

 わかってしまえばなんてことはないのですが,その被害は甚大でした。

 うれしさのあまり考えもなく,反射的に3つのビスを外してしまいました。出てきたのは前群をピントリングに固定するネジを受けるバネについている,無限遠側のストッパーがくきっと曲がって折れている姿でした。

 あわてて前群を外し,この前群をくわえ込んでいるバネを取り外してストッパーを逆方向に曲げますが,当然ポロッとおれてしまいました。万事休す。

 この日はここで精神的にも体力的にも力尽きて寝てしまいました。

 翌朝,この部品の役割と修復方法を考えて見ました。

 このバネは前群の外周をくわえ込んでいますが,同時にピントリングとネジ留めされます。ネジを締めると前群の外周に掘られた溝に密着し,固定される仕組みです。これで無限遠を出して固定するのですね。

 ということは,私は前群をあわてて外したので,無限遠の位置がわかりません。

 あちゃー,やってしまいました。

 無限遠の位置で固定するストッパーを修復すること,そして無限遠を出すという,とても難しい問題を2つも抱えてしまったのです。

 まず,ストッパーの修復です。

 いちばんいいのは,バネごと交換です。しかし交換するバネをもっていないので却下。

 では自分で作る,しかし,この複雑な形状を,最適なバネ圧で作るだけのスキルも工具も材料ももっていません。却下。

 代用の部品を探すというのも考えましたが,全く思い当たらずあきらめました。

 万策尽きたように改めてバネを観察すると,幸いなことに真鍮にメッキであることがわかりました。真鍮ならまだ手はあります。ハンダ付けです。

 ストッパーのような応力のかかる部品を小さい面積でハンダ付けしても,すぐにとれてしまうでしょう。そこで,別の銅板を切ってあてがい,ハンダを盛って固定します。特に力がかかる反対側には,ハンダを多めに盛って強化します。

 最後に他の部品と干渉しないように削って,完成です。

 試してみると,それなりに強度もあり,他の部品との干渉もなく,実にいい感じです。ハンダ付けも綺麗に仕上がっており,削ってでてきた断面をみると,きっちり接合しているのがわかります。

 よし,とりあえずこれでいこう。

 最悪,部品取りにジャンクのRollei35を探すかと思っていましたが,そこまではとりあえずしないで済みそうです。

 次に無限遠ですが,目測式で精度を全く問われないわけですから,実際に無限遠を見てピントを合わせるという方法でも構わないくらいです。しかし,なんとなく気持ち悪いですし,近距離での誤差が大きくなるこの方法では,目測でも失敗するほどズレるかも知れません。

 そこで,面倒がらずに,もう1台のカメラを使ったオートコリメータを組み立てて,無限遠を出します。

 10年ほど前に同じ方法で無限遠を出しているので恐るるに足らず,なのですが,この時使った300mmF4の無限遠がきちんと出ている望遠レンズは知り合いにあげてしまって手元にありません。

 調整したいレンズの焦点距離に対し,最低でも2倍の焦点距離が欲しいと言われるので,100mmくらいのレンズがあればいいのですが,手持ちのレンズはどれも無限遠が出ている保証はありません。

 唯一昔1度だけ確認したSMCTakumar135mmF4を引っ張り出し,ピント精度が出ていると思われるSuperAにアダプターを介して取り付けて,これでシステムを組み上げていきます。

 プラ板をサンドペーパーで擦ってすりガラスのようにして鉛筆でマーキング,これをRollei35に張り付けて,そのレンズを三脚に取り付けたSuperAで覗き込みます。

 SuperAのレンズを無限遠にすれば,平行光に対してくっきりとした像を結ぶはずなので,Rollei35のレンズを回転させて,鉛筆のマーキングがくっきり見えたところがすなわち無限遠の位置となります。

 ですが,SuperAとこのレンズ,絶望的に暗いし見にくいです。しかもRollei35の調整が難しく,どうも正確に合わせ込めません。

 そこで方針変更,F3にAiNikkor105mmF2.5に交換です。これで随分見やすくなりました。裏側からライトで照らしてさらにピントの山をつかめるようにして,代替このくらいかなと思う所で固定できました。試写しないとなんども言えませんが,無限遠もほぼ出ているだろうし,近距離でも目測で外してしまうほどズレていないと思います。


 とまあ,いろいろあったのですが,あとは通常の洗浄と注油でかなり動きも軽くなりますし,正確に組み立てれば完成のはず,なのですが・・・

 続きは後日。すんなりいかないものです。

 

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