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2019年11月20日の記事は以下のとおりです。

Rollei35LED,前玉を研磨(あるいは移植)

 Rollei35LEDですが,決着していません。出口のない検討にもういい加減疲れてしまっていて,すでに惰性でやっている感が強いです。

 露出計をきちんとあわせ一段落,とした前回から,今回までの流れです。

 試写をした結果,条件にもよりますが,まるでキヨハラのソフトフォーカスのような画になることがわかり,愕然とします。被写体の回りが白くぼやけ,コントラストが著しく低下して,黒も白もグレーになります。近いところから遠いところまでまんべんなくぼやけており,絞ってもほとんど改善しません。

 これはもう複数の理由が重なっているためだとしか言いようがないのですが,それにしてもこれだけひどいのに,レンズそのものは綺麗なのです。

 手詰まりになり,もうこのカメラはこんなもんだ,と割り切る決心をしたところで,ふとシャッターをバルブにして,後玉からレンズを覗き込んでみました。

 ん?

 なんだか,画像が波打っているようです。

 逆さまに写った景色をよく見ると,全面にわたって波打っています。クモリこそないのですが,直線がまっすぐ写っていません。

 おかしいと思って目をこらすと,どうもレンズが波打っている様子です。もしかしてと思い,前玉を表側からよく見ると,なんだかデコボコしているような感じです。

 さらにルーペで表面を見て,私はくずおれました。

 前玉の表面が,まるで月の表面のように,デコボコなのです。それは表面の全域にわたって広がっていて,角度によっては見えにくくなりますが,横から覗き込むようにすると,まるでニキビ面の中学生のようです。

 はっきりしたことはわかりませんが,少なくともこれだけデコボコになっていて,かつ画像が波打っているですから,これで綺麗に写真が撮れるはずがありません。

 もともと私の手元にきたときに,コーティングが剥げており,クモリも派手に出ていたわけですが,その後いろいろ調べて,これが硝材の問題の可能性であることを知りました。

 光学ガラスを溶融して作る際,ガラスに様々な材料を混ぜて性能を出します。この時,それらが均一に混ざって冷えてくれればいいのですが,濃度に差があったりすると,フッ化カルシウムなどが白く濁って,クモリの原因になります。

 更にひどいと,それらがガラスの表面にデコボコを作ってしまうそうで,ガラス製造時の問題である以上は,もはやどうにもならないそうです。

 確かに表面の研磨を行うとクモリやデコボコは消えますが,一般論としてこういう品質の悪い光学ガラスはまたクモリを生じてしまうものだそうで,あきらめるしかないということでした。

 目の前のTriotarの前玉は,まさにこれでしょう。

 レンズのガラスが劣化し,内側からコーティングを破壊してクモリとデコボコを生じています。表面のクモリをキイロビンで取り除くことは出来ても,デコボコまでは研磨しきれなかったということです。

 しかし,研磨は素人が手を出すようなものではありません。専門の設備と技術を持つ職人でも,「公差」に入る限界ギリギリまでしか研磨が許されない世界です。

 昨今,バルサム切れまでは素人でもなんとなく修理が出来るようになっていますが,さすがにレンズ研磨は高い壁で,google先生に聞いてみても「失敗しました」という話しか引っかかりません。これは厳しい。

 ここで私は2つの行動に出ます。1つは以前から最終手段として考えていた,前玉の交換です。同じTriotarを搭載するRollei35を手に入れ,前玉を移植します。同じRollei35LEDからなら大丈夫でしょうが,B35やC35など時代も異なるカメラで互換性があるかどうかはわかりません。

 それに,互換性があっても他のレンズとの組み合わせが破綻しますし,光軸もずれているので,おそらくうまくいかないでしょう。

 てなことを考えていたら,B35をジャンクで入手。Rollei35LEDの倍の値段がしてしまいました。なんだかバカバカしい・・・


 もう2つは,レンズの研磨です。酸化セリウムの研磨剤であるガラセリウムを手に入れていますから,これを使ってリューターで一気に研磨します。失敗する可能性は高いでしょうが,どうせこのままでは使い物になりませんし,もう怖いものはありません。
 
 ということで,先にこちらからやってみます。

 多くの人がレンズ研磨に失敗するのは,それが正しい曲率で研磨出来なかったからです。部分的な研磨で失敗するのは当たり前で,全体をくまなく研磨すれば(公差の範囲なら)大丈夫なはずです。

 確かに非球面ならお手上げですが,球面のレンズであれば,同じ曲率の雌型を作り,ここに研磨剤を塗って回転させればよいはずです。

 雌型を作るのも簡単ではないので,ここは「型取りくん」を使います。熱湯で熱を加えれば年度のように柔らかくなり,常温で固まります。固まっても弾力があるので,こういう用途には向いているかも知れません。

 なかなかうまく型が取れなかったのですが,試行錯誤で型を取り,中心付近にシャフトを取り付け,リューターで回転させます。少し小さめに作ったので,リューターをグルグルと動かしながら,全体をまんべんなく研磨することを心がけます。

 やってみると,なかなかうまくいきません。わかっていたことですが,研磨剤が回転で飛び散ります。小さめの空き缶の底にレンズを張り付けて研磨することで,外に飛び散るのを防ぎましたが,調子に乗って研磨していると摩擦熱で型が柔らかくなって変形してしまいました。

 指で変形を修正しながら研磨を続けます。のべ20分ほども研磨を続けたと思いますが,いい加減飽きてきたので,水洗いをしてみます。

 指で触ると滑らかな表面です。これはいけるかも,と油断したところ,洗面台にレンズを落としてしまいました。

 カランと排水口に吸い込まれるレンズ。この後トラップを外して救出して事なきを得ます。

 水洗いをして綺麗に水気を拭き取ります。ドキドキしながら結果を確認すると,レンズを通して見た時の波打った画は,ほぼ解決しています。研磨が浅かった周辺部にまだ残っていますし,深いへこみは取り切れていませんが,中央付近は綺麗なものです。

 ルーペで表面を見てみますが,あれだけあったデコボコがかなり平坦になっています。前述のように周辺部にはデコボコがありますし,深いへこみは結構のこっています。

 また,少なくとも目視でわかるような偏った研磨は行われていません。全体を回転で研磨したので,それは大丈夫だろうと思います。

 こうしてレンズを研磨しましたが,曲率は変わってしまっているでしょうし,コーティングもありません。それでもデコボコが完全に消えているわけではありませんから,これはもうゴミ同然です。

 そうこうしているうちに,B35が届きました。沈胴せず,シャッターも切れないというジャンク品でした(その割には高かった)が,いじっているうちに正常動作をするようになりました。張り皮の程度も悪くないし,レンズも綺麗です。

 でもよく見ると,前玉の周辺部にカビがあります。がっかりです。うーん,ここにあるカビなら絞れば大丈夫かなあ。

 で,当初の予定通り,前玉の移植で。前玉の枠ごと交換出来ると踏んで入れ換えますが,LEDとB35で枠の互換性はなく,あえなく失敗。そこでレンズだけを交換する作戦に切り替えです。

 B35のレンズは枠から簡単に外せるのですが,LEDのレンズはなかなか外せません。内枠がかなりきつくはまっているので,これを取り外すのが一苦労なのです。

 先の尖ったものを差し込み,内枠を変形させながら外に引っ張り出しますが,ピーンと跳ねて飛んでいくこと数回,その度に「もう二度と出てこないだろう」と絶望しつつ,見つかった時の奇跡に感謝して,レンズを交換しました。

 これで無限遠を出し,2つのレンズを撮り比べです。

 結論から言うと,研磨レンズは大健闘です。コントラストの低下は完全に解消していませんが,気になるようなシーンは少なくなりました。解像度不足も気になるのですが,これも随分ましになっています。

 被写体の周辺がもやーっと白くなることも減りましたし,研磨の弊害として心配した片ボケやどこにもピントが来ない,と言う問題もなく,トイレンズそのものだったこれまでに対して,ようやくトイレンズを卒業した感じです。これなら実用になるでしょう。

 一方B35のレンズですが,他のレンズとの組み合わせが破綻しているにもかかわらず,さすが3枚構成のシンプルなトリプレットだけあって,ちゃんと写っています。

 ただし,あまりキリッとした画像ではなく,無難に写っているという感じです。発色は悪くないし,コントラストも研磨レンズよりずっとよいですが,それでもTessarよりは数段落ちます。

 これでとうとう決着かなあと思っていたのですが,動き出したB35を触って見ると,なんだか手に馴染むのです。露出計も確認するとバッチリあっていますし,なんかこのままおいておくのももったいない・・・

 そして私は,B35の後玉をみて,その綺麗さに感激しました。LEDの後玉はややクモリがでていますし,中玉にもカビの跡があります。

 B35の前玉は,もしかするとB35の後玉や中玉でこそ使ってやらねばならんのじゃないか・・・

 B35のレストアに取りかかるのは,もう時間の問題でした。

 続きは次に。

 

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