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2020年01月21日の記事は以下のとおりです。

GR1再評価

 1996年に登場し,高級コンパクトカメラブームの一翼を担ったリコーのGR1。

 プラスチックで出来ていて,押すだけでそれなりの写真が撮れるという,フィルム交換式「写ルンです」ともいえた安価なコンパクトカメラか,大げさな一眼レフしか選択肢かがなかった当時の日本のカメラ世界において,

小さいけど良く写る
小さいけどいろいろな撮影モードを持つ
小さいけど高い
レンズ交換できないしズームでもない

 という,それまでになかった撮影体験を提供したのが,一眼レフ並みの価格だった高級コンパクトカメラです。

 まあこれも,フィルムカメラが終焉に向かう中,突然起こったブームだったのですが,カメラの市場が縮小する中で多くのメーカーが参入し,それぞれにファンを獲得していました。

 カラーネガが主役で,ハガキよりも小さな同時プリントを数人で見る事がほとんどだった当時の多くの人にとって写真の画質など大した問題ではなく,まして写真を表現手法ととらえる人は今よりずっと少なかったこの時代,高級コンパクトカメラが一大ブームになったことを私は偶然と見ていますし,またそれは後世に非常に優秀なカメラを残してくれた点で,感謝すべきことでした。

 あれから25年,すでに製造メーカーが存在しなくなっていたり,逆に未だにコンセプトとブランドが継承されているものがあったりと,たどった軌跡にはさすがに時間が経過したなと思わせるものがありますが,変わらないのはそれぞれの機種への評価です。

 評価は直接的な賞賛もそうですが,なんといっても中古価格が正直です。CONTAX Tシリーズ,TC-1,そしてGR1シリーズなどは,おいそれと手を出せない,まさに憧れの対象です。

 私は当時のブームをリアルタイムで見ていた人ですが,なにせ一眼レフを使う事で精一杯で,撮影領域の拡張方法として小型軽量で迅速簡単な機材を導入するよりも先にやるべき事があり,あまり興味を持っていませんでした。というより,写真やカメラの本質であるとか,良し悪しについての見識が非常に貧しかったのだと思います。

 1997年の秋,あるきっかけから海外へ持ち出すカメラを選ばなくてはならなくなり,荷物を軽く小さくする必要性と,滅多にない機会ゆえ色や空気感をきちんと記録したいという相反する要求を満たすために,高級コンパクトカメラを買うことになったのでした。

 目的からカメラを選んだのは,これが最初で最後だったかも知れません。

 一声10万円の,システムとして完結している小型カメラを買うことに抵抗は強く,本当にいるんだろうか,使うのは今回だけじゃないのかと自問したり,レンズ交換はおろか,オプション類もほとんど出ていないカメラを増やしてどうする,と言う気持ちもあって,なかなか買えなかったのです。

 ふと目にとまったのは,GR1です。極端に小さく軽く,しかし雑誌の広告が謳うのはレンズと画質。デザインはそこら辺のコンパクトカメラと変わらず,メカメカした道具としての魅力も備えていません。

 でも,それがいい。

 レンズが良い,写りが良い,リバーサルで使える,プロが使っている,などといろいろな評判が聞こえてきますし,広告の写真もまた素晴らしい。コンパクトカメラなのに絞り優先AEが使える事が決め手になって,GR1は私の愛機になったのでした。

 しかし,GR1は私の手には馴染みませんでした。どうも使いこなせないのです。AFがあわない,被写界深度がわからないので絞り込んでパンフォーカスで使えないというハードウェアの問題もそうですし,出来上がった写真が自分の好みや撮影時のイメージと異なっていて,毎度がっかりしたことから,苦手意識にも似た感覚が根付いてしまいました。

 一度たりとも「よく写るなあ」と思った事がないのですから,多くの人の評価とは真逆です。きっと私の使い方がまずいのでしょう。あるいは,この眠たい,寒色系の色合いの写真が世に言う「高画質」なのかも知れません。

 そんなわけで,あまり使う事なく20年以上が経過しました。
 
 私の個人的感情は別にして,世の中ではGR1が絶賛されています。中古価格も下がりません。昨今のフィルムカメラブームでまた評価が上がったようです。

 そんなGR1ですが,Rollei RETRO400Sで撮影をしてみました。

 なんとシャープで,なんと高いコントラストで,なんとグレイトーンが粘ることか。

 私はすっかりGR1に魅せられてしまいました。これはすごい。

 気に入らなかった色合いは,モノクロなら関係がなくなります。フィルムが持つゴリゴリとした質感を,このレンズは十二分に引っ張り出しています。

 露出も最適で,AFも問題なし。これだけの性能をこの大きさに凝縮しているGR1への印象は,完全に変わりました。

 GR1は,RETRO400Sとの相性が抜群なのでしょう。本当に惚れ惚れするような描写です。同時にRollei35でも撮影しましたが,どう考えてもGR1の圧勝です。

 ということで,再開したモノクロ写真の主役はGR1となりました。長く壊れないでいて欲しいと思いながら使っていますが,このカメラが究極のスナップシューターと呼ばれて愛されていること,そして私自身がその言葉を今になって体感できたことで,私もようやくGR1を使っています,と言えるようになったのだなあと,思いました。

 

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