エントリー

2020年02月06日の記事は以下のとおりです。

ミノルタオートコードの修理~その1:シャッター編

 今,目の前に,ミノルタオートコード初期型,があります。
 張り皮が剥がされ,前後左右の板も外されて,歯車を露出させています。

 そう,とうとう,中判に手を出してしまおうというのです・・・

 事の起こりは,昨今のフィルムカメラブームです。

 ここでも何度も書いているように,昨年のまだ暑い頃にRollei35を今にして思えば随分高価な値段で手に入れ,オーバーホールに手こずって再起不能を何度も覚悟しながらも,なんとか実用レベルに復活させたことがありました。

 小さいくせに良く写る,小さいくせにメカメカしていて所有欲をくすぐる,小さいくせに重い,小さいくせにフルマニュアルというフィルムカメラなのですが,使っていて楽しいカメラであり,以後すっかりデジタルカメラを使わなくなっています。

 10年ぶりに自家現像を復活させましたし,長巻をパトローネにつめることもやりました。ストップウォッチを睨みながら現像タンクの前にたたずむことで期せずして始まる事故の対話には,なにか宗教的なものさえ感じます。

 にわかに盛り上がってきたフィルム&自家現像熱は,私の手持ちのフィルムカメラの点検を行う絶好の機会となり,何の不安もないF3やF100,やっぱり壊れていたMZ-10,FA43mmLtdの素晴らしさを再認識したSFXnやSuperA,それでもやっぱり馴染まないXE,ファインダーの暗さに絶望したES2,他人事だった2019年問題が実は自分にも関係があったと思い知ったF70Dと,想像以上にいろいろな刺激を与えてくれました。

 しかし,その刺激は,過去にすでに体験したものです。

 MZ-10のように壊れていたものを再度修理したケースもありますが,それだけの手間と時間をかけたところで,元通りになるだけの話です。

 足りない・・・刺激が足りません。新しいことに挑戦したい。

 新しいマウントに手を出すのも1つでしょう。CONTAX AXなんて死ぬまでに一度は使ってみたいカメラですよね。RolleiFiexというのも面白そうです。でも,結局35mmです。撮影体験として考えて見たら,そんなに違いはないように思います。

 ロシアレンズや中華カメラに手を出すのもありでしょう。でも,最近結構高くなっているようですし,それに当たり外れが大きいこれらのレンズやボディーに私はあまり魅力を感じません。

 え,ライカですか?うーん,そりゃM5とかM6あたりなら,程度の悪い物ならなんとかなるかも知れませんが,レンズがねえ・・・破産しますよねぇ。

 大判・・・ぜひ一度でもいいから,やってから死にたいものです。感動するだろうなあ,シートフィルム。

 中判に手を出すと破産するという言い伝えを私は疑うことなく生きており,これはなんとしても踏みとどまらなければ家族全員を不幸にすると信じてここまできました。


 ・・・とまあ,いろいろ考えているうちが楽しいわけですが,某オークションに出ている6x6の2眼レフに,縁があればと安めの値段であれこれ入札しておいたものの1つが,忘れた頃に落札されていました。

 それが冒頭に出てきたミノルタオートコードの初期型です。

 ジャンクで価格は4000円弱。安いとは言っても,まあジャンクならこんなもんでしょう。どんな程度かはっきりしなかったので敬遠されたんじゃないかとも思うのですが,実際私もドキドキでした。

 届いて見ると,そんなに悪くはありません。

 キズも多く,汚れていて汚く,かび臭いです。張り皮は変な本革に貼り替えられているのですが,素人仕事でヨレヨレです。これも変な臭いがします。

 レンズも汚かったのですが,とりあえずカビはなさそうです。しかしキズは結構あり,クリーニングを行ってもあまり綺麗にはなりませんでした。

 ファインダーは暗く,確認するとミラーが曇っています。

 巻き上げ機構は正常で,これは問題なし。ピントレバーも折れていません。

 シャッターもとりあえず速度は変化しているようで,シャッター羽根も絞り羽根も綺麗なものです。油の滲みはありません。

 付属しているとうれしかったのにと思ったものは,レンズキャップとスプールでした。レンズキャップはフジの37mm用キャップを代用(1つ100円ちょっと)しましたが,スプールは手持ちはありません。

 レンズが曇っている,バルサムが切れている,という致命的な問題があれば,もう修理しないで勉強用に分解して終わりにしようと思っていましたし,シャッターが壊れていたらもう経験の浅い私には重いだろうと,これも修理しないつもりでした。バネの破断や部品の欠品があっても,私はさくっとあきらめる予定でした。

 しかし,届いたものはなんとかなりそうな代物です。

 急遽,ブローニーのフィルムを何本か手配しました。スプールは現像したら必ず1本出てくるわけで,すぐに不要品として溜まるものを,今わざわざ買うのもバカバカしいですから,とりあえず1本ほどいてスプールを取りだし,フィルムだけで保管しておき,後日スプールが余ってきたら巻き直して復活させることにします。

 
 とまあ,まずは汚いことをどうにかしないといけないわけで,汚い皮をはがしました。そしてわかりそうな所から分解し,アルコールで汚れを落としていきます。

 ある程度進んだら,勉強も兼ねてメカの分解をします。

 この時代の二眼レフですので,シャッターは別のユニットして完全に独立しています。ならまずはシャッターです。Rollei35を3台ほど分解したので,レンズシャッターの調速の仕組みも少しはわかってきましたし,アレルギーもなくなっています。

 ミノルタオートコードの初期型は,シチズンのMXLという,プロンター型のシャッターが搭載されています。最高速度1/400秒で倍数系列ではない旧世代のシャッターですが,最高速も無理なく出る設計で優秀なのですが,分解と調整はなかなか面倒で,どうやら敬遠される傾向があるようです。

 これ,ちゃんと動いていそうなものだったのですが,油染みは見えないところにあるものなので,きちんと分解清掃しようと思ったのです。Rollei35もそうしてうまくいっていますからね。

 しかし,これが失敗でした。

 分解し,ベンジンで羽根を洗います。結論から言うと油染みは見られませんでした。奇跡です。

 綺麗になった羽根を並べ,まず絞りから組み立てます。

 しかし,9枚の絞り羽根を並べていくのですが,どうにもうまくいきません。残り3枚ほどで,必ずどこかの羽根が穴から外れて浮いてきます。よくよく見ると,絞り羽根が少し変形していて,重ねていくと厚みで浮いてしまうようです。これは困りました。

 土曜日の夜22時頃から始めますが,ピンセットで並べては崩れ,並べては崩れ・・・まるで賽の河原です。「もう無理だっ,こんなの組めるわけがない!」と正気を失った私は絶叫し,風呂に行ったのが朝の5時です。

 嫁さんが「死んでいるんじゃないか」と期待半分に心配し,わざわざ起きて風呂まで様子を見に来たくらいです。

 しかし,徹夜の時の脳というのは,突然アイデアが振ってくることもあります。体はくたくたなのに,どういうわけだか頭はスッキリしていて,またその頭もまるで自分の頭ではないような違和感を感じながら,ぱっと閃くことがあります。

 今回は久々にそれでした。閃いたのは,接着剤で絞り羽根を外れないように接着するというものでした。絞り羽根から出ているピンをベースに差し込み,ベースの裏側から少量のゴム系の接着剤を塗ります。完全乾くと面倒ですが,生乾きなら簡単に完璧にとれるのがゴム系の接着剤です。羽根が外れないので並べるのも簡単でしょう。

 湯船に浸かっていると,なんだか妙な自信が湧き上がってきます。失敗する気がしません。

 風呂から出て,そのアイデアを試してみると,驚くほど簡単に絞り羽根が並びました。開閉リングとベースで挟み込むの簡単で,接着剤を取り除いて絞りを開閉すると,何事もなかったように綺麗に開閉します。

 これはすごい。わずか10分で作業完了!

 しかし,徹夜というのは恐ろしいものです。ベースを裏返して組んでいました。やり直しです。

 今回は間違わないように,裏表に印をつけて組み立てます。

 しかし,また裏返していました。同じミスを2度続けて,しかも2回目はあれほど注意して,何度も確認したのに,それでも裏返していました。どこで裏返ってのか,さっぱりわかりません。

 すでに6時を回っています。ああ,朝日がまぶしいです。ここで寝たらもう起きられません。このまま続けます。

 今度こそベースの裏表を確認し,組み立てていきます。もう慣れたものです。今度こそうまく組むことが出来ました。朝7時です。もう二度とやりたくありません。

 このまま作業を続けますが,家族が起きてきて朝ご飯になりました。シャッターまでは組むことが出来ませんでした。

 そして夕方,続きに取りかかります。シャッターの羽根が5枚です。しかしこれは変形もしておらず,綺麗に簡単に並べることができました。組み立ても問題なく,簡単にできます。

 しかし,シャッターは最終組み立てで固定されるんですね。だから,他がおかしくて再組み立てを行うと,シャッターもバラバラになってしまうのです。

 これで何度か組み直しをしました。2時間ほど作業し,ようやく形になりました。

 長い戦いだった・・・

 しかし,シャッターを動かして見ると,どうも速度が出ていません。1/10秒と1/25が同じ程度です。こりゃなにかがおかしいです。ここで力尽きて翌日に持ち越しです。

 翌日も作業を続けます。

 シャッタースピードを測定すると,やはり出ていません。1秒が0.6秒くらいでしたし,1/10秒は1/25秒と同じです。1/200秒もおかしいですが,幸いにして1/400は極めて正確でした。

 これはガバナーに問題ありです。ガバナーはベンジンで洗浄したので外したのですが,組み付けに問題があったのでしょう。何度か試行錯誤をしますが,原因はわからずです。

 力業でカムを少し削ってみたり,ガバナーの通り付け位置を調整しますが追い込めません。しかも1/10秒は値がばらつきます。何かが間違っているから調整範囲に入ってこないのでしょう。

 もう一度ガバナーを外して確認します。するとガバナーの下に,ストロボ用の接点が見えてきますが,これがどうも曲がってガバナーに接触していたようです。まっすぐにもどしてガバナーを組み付けて確認すると,どの速度も決まった速度にまとまるようになりました。

 位置調整で速度を追い込み,どうにかこうにかJISの範囲に調整が終わりました。

 さっさとレンズを磨き,シャッターと組み合わせてボディにはめ込みます。

 ようやく山場を越えました。いやー,とてつもなく苦労しました。みんなこんなのよくやるなあ。

 そして現在,巻き上げ機構をオーバーホール中です。幸いサービスマニュアルが手に入り,きわどい調整も出来るようになったのですが,なにせスプールもなければダミーフィルムもありませんから,巻き上げ機構が正しく動いているかどうかを確認出来ませんし,どういう動きをしているのか観察することも出来ません。

 一度フィルムを通したいのですが,高価なフィルムを無駄にするのも悔しいですし,どうした物か思案中です。

 とまあ,カメラの修理の鉄則に「寝たら死ぬ」があるわけですが,寝ないとそれはそれで死ぬわけで,歳を取ってくると寝ないで死ぬことの方が怖いです。

 連動箇所が少なく,内部機構が簡単で格納が独立しており,サイズも大きく修理しやすい2眼レフですが,冷静に考えると70年ほど前のカメラです。

 部品の精度も低く,全体のガタも大きいですし,多くの部品が手加工で仕上げられています。指にかかるバリも気になりますし,全体的な加工精度は現在のそれとは雲泥の差であり,この時代はまだ戦前の技術の延長にあることがしみじみわかります。

 そりゃそうです,戦争が終わってまだ10年も経ってないころの部品ですから。

 そんなわけで,組み立てやすさであるとか,耐久性であるとか,精度であるとか,そういった物がまだ十分に考慮されておらず,また各社に共通した規格や水準もなさそうで,銘々勝手に作っていた感じがします。そしてこれが当時の重要な輸出品であり,外貨の稼ぎ頭だったということにゾッとして,確かにこれでは安かろう悪かろうと言われるよなあと,思った次第です。

 そう,日本製が高品質の証である時代しか知らない私は,日本製が粗悪品の代名詞であった時代の生き証人に出会い,その話がどのくらい真実だったのかを直接聞くことが出来た気がします。

 絞り羽根を組み立てられず,あきらめて風呂に行った時点でもうあきらめ,シャッタースピードが出ないところでまたあきらめと,何度も「今度こそ本当にあかん」とあきらめたミノルタオートコードも,ようやく目処が立ち,ゴールが見えてきました。

 もちろん試写して問題が出ない事が確かめられないとだめですが,今のところ問題なく,部品の紛失も破損もないので,順調にいけば中判デビュー出来そうです。

 次の巻き上げ機構は目処が立ちました。次のヤマは無限遠が出ているかどうかです。ヘリコイドを適当に組んだので,多分ダメでしょう。またばらして組建て直しでしょうね。

 ああ,しんどい。

 

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1

ユーティリティ

2020年02月

- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed