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ミノルタオートコードの修理~その5:あろうことかイスから落とす

 せっかく直った(というより直ったことにしてある)オートコードですが,イスから落としてしまいました。

 詳しい話はしませんが,60cmほどの高さからフローリングに落下させてしまいました。一緒に落ちたMZ-10なんかそっちのけ(これはこれで可愛そう)で,オートコードを確認すると,とりあえずシャッターは切れます。

 しかし,シャッタースピードを調整するツマミが動きません。よく見ると,前面がへこんでいます。床に付いた傷痕から察するに,頭から機銘板にかけて床にぶつかり,そのあと前面を打ち付けた感じです。おかげでレンズの周りが奥に押し込まれて変形し,シャッタースピードのツマミが動かなくなっているようです。

 他に破損がないのは幸いでしたが,とにかく変形箇所を元に戻してやらなければなりません。分解し,前面部分を取り外して,裏側から指で外側にぐいぐい押します。プラスチックと違って元に戻りませんので,指で元に形に戻して行きます。

 なんとか形にしてからスムーズにツマミが動く事を確認して組み直します。しかし微妙にネジの位置が変わってしまっています。まあ仕方がないでしょう。

 シャッタースピードの確認を再度行ったところ,こちらは問題なし。2回測定した結果を書きます。

1回目
1 920ms
1/2 484ms
1/5 194ms
1/10 98ms
1/25 36.8ms
1/50 19.2ms
1/100 12.2ms
1/200 4.00ms
1/400 2.92ms

2回目
1 940ms
1/2 472ms
1/5 174ms
1/10 110ms
1/25 40.4ms
1/50 20.0ms
1/100 13.4ms
1/200 4.84ms
1/400 3.60ms

 まあ,こんなもんでしょう。1/400秒が結構いい数字になってきていますし,おおむねJISの範囲に入ってきているので,安心しました。

 ただ,1/10秒で誤動作がありました。1/5秒から1/10に切り替えた時に,1/60秒程度で切れてしまうという問題です。これは落下させたせいかどうかわかりませんが,切り替えるときにガンギ車がジャッと動く音がすれば問題ないので,気を付けて使うことにします。

 続けて無限遠のテスト。こちらも問題ありません。

 ということで,試写だけはやり直さないといけませんが,今のところ無事です,カメラを落とすなど絶対にやってはいけないことで,2回も落とす(実はオートコードは入手時にも一度落としている)などということは,もう絶望的な注意の欠如です。

 ところで,これまでのネガをいちど全部D850で取り込みなおしました。

 つくづく中判の情報量の多さに惚れ惚れします。モノクロでも十分な情報量をもっていて,無理や意地を張らなくても面白いと胸を張って言えると思います。

 

ミノルタオートコードの修理~その4:なんとか完成編


 先日から修理に取り組んでいたミノルタオートコードですが,ようやく動き始めました。いやー,今回は過去に例を見ないくらい大変でしたし,こうして修理が終わっても,きっとすぐにダメになってしまうんじゃないかという不安につきまとわれてしまっています。

 前回までに,別のジャンクを入手し,シャッターをそのものを交換したことを書きました。ただし速度が全然出ていなくて,セルフタイマーも動作しなかったために,分解清掃を行いましたが,それでも高速シャッターは満足な速度が出ず,あきらめて本体に組み付けたのでした。

 とりあえずこれで進めようと思って最終テストを行っていると,最高速の速度がどんどん落ちていくことがわかりました。最初は1/400秒で4.5ms位だったものが,5msを越え,8ms,そして10msを越えるようにきました。そしてとうとう閉じなくなってしまったのです。

 ゆっくり動かして見ると,大変摩擦が増えて動きにくくなっています。別に油が染み出た感じもありませんので,これはなにか引っかかっているのかも知れません。

 いずれにせよこのままでは使い物にならないので,また分解です。

 問題を見つけることは出来なかったのですが,シャッターの羽根をもう一度ベンジンで清掃し,組み直します。すると4msを切って,3.4msくらいまで安定して出るようになったのです。これはありがたい。ガバナーも組み直して全速そこそこ出るようにしたのですが,数時間もすると速度が落ちてきます。一晩経つとまたシャッターが閉じなくなっています。

 また分解するも,最初こそ快調なシャッターもシャッターを切る回数が増えるとどんどん遅くなっていき,やっぱり最後には閉じなくなってしまいました。

 これはおかしい。

 どの摩擦が増えているのかを確かめて見たのですが,どうもセクターリングが回りにくく引っかかったような感じになっています。セクターリングも分解して清掃してみましたが,結局改善せず。最初こそ快調ですが100回ほどシャッターを切ると急激に速度が落ちてきます。

 冷静になって,目の前のバラバラのシャッターを眺めてみます。

 セクターリングが擦れた部分は塗装がはげ,金属が欠けています。かなり摩擦が大きくなっていたんでしょう。なら注油するしかない,ということで,注油をしてみました。

 するとウソのように症状が改善。確かにシャッター羽根に注油することは厳禁ですが,他の部分に注油してはいけないということはなく,私の場合ベンジンで綺麗に油膜を落としてしまっていたので,問題が出たんですね。

 ベンジンで薄めて注油しましたが,量が多かったらしく一晩経つと羽根に油が回っていました。それでも速度はきちんと出ていますので,見通しは明るいです。

 今後こそと分解し,羽根をベンジンで清掃,セクターリングの注油も慎重に行い,完璧に仕上げました。今度は大丈夫です。あれから数日経っていますが,速度も出ていますし,油の滲みも出ていません。

 しかし,ここまでですでにもうかなりの疲労が溜まっています。もうダメかも。

 次にガバナーです。ガバナーは今回のシャッターをそのまま使うことにしたのですが,どうもガンギ車のあたりで速度がばらつきますので,前のガバナーを移植します。しかし微妙に手加工で削った部分の大きさが異なり,テンプをガンギ車から離す機構がうまく動作せず,1/10秒が大きくばらつくという問題が出ました。

 ここは調整を行って解決。かなり速度も揃ってきました。

 そしてとうとう完成。本体に組み付け,最終テストです。

 ところが今度はシャッターがチャージされなくなってしまいました。

 がっかりして原因を調べると,プロンター型に特徴的な,チャージバネによって回転するオウムのくちばしから伸びた,セクターに引っかける爪のバネが折れてしまっていました。

 いやはや,このバネの破断はよくあることと聞いていましたが,あと少しだったのにと思うと,もう残念でたまりません。

 しかし再度分解。バネを交換するために1つ1つ部品を外して行きますが,結局ほとんどの部品を外す羽目になり,しかも難易度の高いシャッターチャージバネまで外す必要が出てしまいました。

 もう泣きそうな気分でバネを交換し,そして最難関のチャージバネを組み立てます。これ,かなりのテンションで巻き付けないといけないうえに,きちんとおさまっていないと組み付けられないという代物で,とにかく時間がかかりました。たっぷり2時間ほどもかかったでしょうか。

 でもこれが終わってしまえば,あとはさっと進みます。とはいえ,途中で別のバネをなくしてしまったりして大変だったのですが,それもなんとかクリア。

 しばらくすると,目の前に組み上がったシャッターユニットが現れました。

 疲れ果てたので翌日はもう触らず,二晩寝かせてテストをしますが,とりあえず問題なし。あとは本体に組み込んで速度のテストと無限遠の確認です。

 まずシャッター速度です。

3回測定しました。やっぱりバラツキが出ますからね。

1回目
1 940ms
1/2 484ms
1/5 194ms
1/10 105ms
1/25 40.4ms
1/50 21.2ms
1/100 13.8ms
1/200 5.08ms
1/400 4.44ms

2回目
1 910ms
1/2 468ms
1/5 162ms
1/10 85ms
1/25 39.2ms
1/50 21ms
1/100 13.6ms
1/200 5.12ms
1/400 4.36ms

3回目
1 880ms
1/2 452ms
1/5 164ms
1/10 105ms
1/25 36.8ms
1/50 20ms
1/100 12.3ms
1/200 4.96ms
1/400 4.0ms

 最高速は今ひとつで,1/200よりも僅かでも高速だというのが救いです。まあ実力は1/250程度だと思っていた方がよいと思います。

 あとはまあ,結構いい数字に揃っていると思います。1/10が大きくばらつきますし,実はまれに半分くらいの時間になることもあるのですが,深追いするとろくな事がないので,もう割り切ります。

 ぎりぎりJISに入っている結果がでたこともあり,もう壊れないことを祈りつつ,無限遠を確認しますが,こちらは問題なし。すぐに撮影に入れそうです。

 各部の点検を行って,いよいよフィルムを通します。

 結果は上々。すべてのコマで濃さも揃っていて,シャッター速度について,不必要に不安を持つことはしなくて済みそうです。

 しかし,今回の修理は,組み立ててはバラし,また組んではバラしてを本当に何度もやりました。経年変化で折れてしまったバネも2本ほどありましたし,油ぎれか汚れかのどちらかで動きが悪くなった部品もたくさんありました。

 以前も書きましたが,さすがに1950年代の工業水準で,精度が出ずにすりあわせと手加工で組み上げる職人技に加えて,材料の質も良くなくて特にバネの耐久性が良くなかったことが,今回よく分かりました。

 やっぱり,日本製が高品質であるという意識が常識化するまで,日本の製品は長持ちせず,よく壊れる物なんだなあと思った次第で,これ以前と以後では日本の製品は全然違う物だったという事を体験しました。

 ニコンF2の精緻な感じは私の知る日本製の品質ですし,Rollei35は1960年代ですがさすがはドイツ製と思わせる素材と加工の良さを肌で感じます。

 そう,Made in Japanが安かろう悪かろうであったことは,私も知識としては知っていますが,これを実際に体験出来るとは思っていませんでした。

 今回こそホントにダメだと何度も思いましたが,なんとかここまで持ってきました。あと何本,フィルムを通せるでしょうか。このオートコード,もう本当にギリギリの所で動いているとしか思えません。

 

ミノルタオートコードに関係する諸々のこと

 修理中のミノルタオートコードですが,故障していない時期に計画し手配した物が壊れてから届いたりしています。

 このあたりの話を先に書いておきます。

(1)フィルター

 レンズ保護のために私は明らかな画質低下がない限りフィルターをする人です。オートコードも例に漏れず,基本的にフィルターで運用するつもりなのですが,なにせ見た事もないような形をしているレンズにどうやってフィルターをするのか,そこから勉強です。

 どうもローライ互換の30mmのバヨネット型というものが適合するらしく,調べてみると今でも新品がケンコーから買えるそうです。ただし受注生産で,直販のみです。

 受注生産のありがたさで,いろいろな種類も選べるわけですが,価格は約3000円。フィルターは消耗品なので中古という選択肢もあったのですが,今回はUVフィルターの新品を手配します。

 もともとモノクロフィルムは紫外線に感光します。しかも紫外線は波長が短いので,可視光線では十分に補正した収差も,紫外線になると大きく出る傾向があります。そうすると線が太くぼやけてしまい,解像度もコントラストも落ちます。

 我々の目は紫外線を見る事が出来ないので,紫外線を記録する必要などないわけで,だからこそ紫外線をカットする必要性があるというのですが,冷静に考えると通常のガラスは紫外線を透過しません。(厳密に言うと波長の長いUV-Aだけは透過する)

 だからフィルムに紫外線が届くことはそもそもなく,UVフィルターなど必要ないというのが定説です。

 まあ,UVフィルターはUV-Aもカットするので,全く意味がないかといえばそうでもないのですが,ただの保護フィルターももったいないので,ここはクラシカルにUVフィルターです。

 10日ほどで届いた特注品のフィルターですが,思いのほか枠が太く,キャップが出来ません。幸いフード(中古で純正品を購入)はそのままでも使用可能なのですが,ちょっと考えないといけません。


(2)フォーカシングスクリーン

 6cm四方のガラス板に投影される美しい景色に見慣れてくると,初期型のオートコードの欠点であるフォーカシングスクリーンの暗さが気になってきます。ただのすりガラスですから,ピントはあわせにくいし暗いという事で,後期型はフレネルレンズを併用しています。

 しかし,フォーカシングスクリーンの歴史は明るさを見やすさとピントのあわせやすさとを両立する歴史でした。有機ガラスとも言われるアクリルを自由に整形できるようになってからの進化は大きく,本来2眼レフほどこうした新しいフォーカシングスクリーンが似合う物もないんじゃないかと思います。

 そこで交換。しかし,新品がほぼ生産されていない6x6の2眼レフ用のオプションがあるわけはなく,流用や加工が前提です。それだって,そもそも中判のカメラが少なく,使えそうな見やすいフォーカシングスクリーンは入手が困難です。

 探し回ったところ,マミヤRZ用のフォーカシングスクリーンを中古で買えました。4400円。ちょっと高いですが,送料込みで程度も悪くありません。

 これを元のガラス製のフォーカシングスクリーンと同じ大きさに切り出します。Pカッターで余分なところをカットし,紙やすりで整えます。

 幸い失敗なく,綺麗におさまりました。

 しかし,厚みが元のガラスから変わってしまうので,フォーカスの調整はやり直しです。オートコリメータで確認するとやはり狂ってしまっていたので,再調整して完了です。

 いや,見やすいです。人によってはこれでも「ダメ」と言う人がいるんですが,明るいし見やすいしピントもあわせやすいしで,もうファインダーを覗き込むのが楽しくて仕方がありません。素晴らしい。


(3)レンズキャップ

 レンズキャップは付属しなかったのでなにか手段を考えないといけなかったのですが,まずはフジの安いキャップを2つ買って,ビューレンズと撮影レンズに別々に被せることにしています。

 かわうそ商店さんでローライにもオートコードにも使えるという触れ込みで,樹脂製のキャップが買えたのですが,届いてみれば微妙にサイズがあいません。2つのレンズの間が少し広くて,キャップがうまく被さりませんでした。

 ある時,ヤシカのキャップがを中古で見つけたので買ってみると,これがピッタリ。やっぱりかわうそ商店さんに騙されたんだなあと,笑って済ませることにしました。

 ですが,前述のフィルターを常用することにしたので,このキャップもほとんど使うこと無しにお蔵入りです。ということで,フィルターを常用するときのキャップをどうするか,現在思案中です。


(4)カラーネガ

 モノクロは楽しいですし,自家現像も出来るので良いことずくめなのですが,この解像感,この情報量でカラーだとすごいだろうなと言う妄想からは逃げ切れず,定番たるフジの160NSを5本買ってあります。

 問題は現像で,10日以上もかかるだとう120フィルムの現像を外に出すよりは,こういう時こそ備蓄してあるナニワカラーキットを使って自家現像するべきだろうと,その準備もしています。


(5)デジタルデータ化

 D850でデジタル化をする話は以前にも書きましたが,まだ改良の余地がありました。1つはガラス板をのせることによるもので,ガラス板の汚れが映り込んでしまうという問題です。

 また,ライトボックスに密着しているので,ライトボックスの表面の傷が映り込んでしまうという問題もありました。10ミリでもいいので,浮かせたいところです。

 また,ガラスを被せるので,ネガを送る時に面倒とか,傷を付けるとかいろいろありました。そこで,引き延ばし機用のネガキャリアを買いました。

 これ,抜群に良いです。安定性もよいし,光源から少し浮くので問題なし,ガラスを被せないので実に綺麗です。心配していた平面性も問題なく,念のためにと一緒に買ったガラス製のネガキャリアが無駄になりました。

 もう1つ,遮光が出来ておらず,黒が浮くのです。こればかりはネガとマクロレンズの間を遮光しなくてはならず,部屋を真っ暗にするか,筒でも付けるかしか方法はありません。

 三脚との高さの調整も必要だったりするので,まだこれといって決定打が出ているわけではないのですが,当面は部屋を暗くして作業することになりそうです。


 とまあ,まさかこういう準備を進めているときに本体が壊れるなんて思ってもなかったわけでして,飽きてしまわないうちに本体をさっさと修理し,これらの課題を片付けたいところです。鉄は熱いうちに打て,です。

 他にも仕掛かりがあって,例えば程度のいいRollei35LEDを手に入れたのでこれをメンテしたいとか,せっかく赤外線領域にも感度があるRetro400Sを使っているんだしと手に入れたIRフィルタを試してみたいとか,いろいろあります。

 そうこうしているうちに,日差しが春のそれに日に日に代わり,花粉が飛び始めました。インフルエンザは成りを潜め,しかしながら新型のコロナウイルスが猛威をふるっています。

 なかなか落ち着かない中ではありますが,それでもこうして趣味があることは,とてもありがたい事だなと思います。

 さて,今日も頑張るかね。

 

ミノルタオートコードの修理~その3:また壊れた編

 ここのところ,すっかりモノクロフィルムが日常になっているのですが,その最右翼たる中判2眼レフ「ミノルタオートコード」が,早速壊れてしまいました。

 気が付いたのは先週の頭。なにげなく空シャッターを切って至福の時間を過ごしていると,ふとシャッターが閉じきっていない時があることに気が付きました。

 これはシャッターを閉じるバネが折れるという定番の故障かもと思ったのですが,巻き上げの時にはきちんと閉じますし,きちんと閉じる時もありますので,バネの破断ではなさそうです。

 しかも,閉じきらないのは,5枚ある羽根のうち決まった1枚だけです。これはシャッターそのものがおかしいに違いありません。

 このままでは使えないので,早速分解します。

 シャッターをボディから外してしまわなくても修理出来るといいなあと,ボディから外さずに分解しますが,やはりシャッターの羽根を組み直さないといけないようなので,意を決してボディから外して分解します。

 この段階で,シャッターが閉じないときはシャッターの動きが重いこと,そして閉じようとするとなにかに引っかかった感じがすること,勢いよくシャッターを閉じれば閉じるようになること,そして巻き上げを行えば閉じることがわかってきました。

 シャッターを分解してわかったのは,閉じなくなる羽根だけ,外れて落ちてこないことでした。よく見ると,シャッター羽根を固定する支点のネジ(シャッター羽根を動かすセクターリングではない方ですね)の細い隙間に,シャッター羽根が潜り込んでいます。

 ネジの緩みを疑いましたがしっかりしまっています。でも,紙一枚が入らないくらいの狭い隙間は見えていますし,ここに薄いシャッター羽根が挟まって無理に動かされたために,羽根も変形してしまっています。

 あちゃー,これは致命傷です。

 とはいえ,捨てるのもあきらめるのも惜しいですし,とにかく目の前にあるもので対応しないといけないですから,修理を試みます。

 まず,セクターを固定しているネジを入れ換えて,隙間がないようにします。そして羽根も場所を入れ換えます。

 これで組み立ててみると,もう問題は再現しません。これでいけそうです。

 案外簡単に修理出来たなと思っていたのですが,やはりそうは問屋が卸しません。

 組み立てて意気揚々とシャッター速度を測ってみたのですが,特に高速が出ていません。1/400秒も4msを越えていて,1/200秒と違いがないくらい遅いです。

 レンズシャッターは,最高速からガバナーを使って速度を落としてシャッター速度を作っています。だから,ガバナーの調整や取付位置の調整で多くの速度は調整が可能ですが,最高速だけはなにもしない状態,つまり裸の特性がそのまま出てきますので,ここが狂っているともう打つ手がないのです。

 前回の完成時のテストでは,1/400秒で3.4msという速度が出ていて,それでも妥協したつもりでいたのですが,シャッター羽根が引っかかった時点で,すでにこの速度は出ていなかったんじゃないかと思います。

 そこで,徹底的にオーバーホールです。シャッタをもう一度分解し,前回やらなかったセクターリングを外してベンジンで清掃です。

 ここまでやって組み立てても,やはり4msより短くなってくれません。時に10ms程度になることさえあります。

 まずいことになってきました。

 注油もやりましたが改善せず。何度も分解し組み立てますが,やはりだめです。8msや9msになることはありますが,5msを出す事もなくなりました。

 どうせこのままでは使い物にはならない,バネを強化しようと,素人が陥るもっとも危ない誘惑にまけ,チャージレバーにかかるバネを強化することにしました。

 まあ,これも予想通りの話で,バネが変形してしまい,うまく動かなくなりました。そこでバネを1mm程度ずつ短く切って反発力を上げていくのですが,それで結局出て速度が4.6ms。

 後になってこのくらいの数字は妥協しないといけないことがわかるのですが,この時点で他のバネを2つほどなくしていますし,シャッターの変形も怖いので,もうこのシャッターユニットはあきらめて,新しい物を調達することに方針を変えました。

 またオークションで,ジャンクのオートコードを探します。前回よりも外観は綺麗ですが,やや高いジャンクを手に入れました。

 ここでつくづく思うのは,前回のオートコードは見た目の程度こそ悪かったとはいえ,中身は割にしっかりしていて,良い買い物だったということです。しかも見た目の悪さから価格も破格で,慣れていない人間が分解したシャッターがしばらくの間とは言え高速がしっかり出る程になっていたことは,奇跡的なことであり,つくづく惜しいことをしたものだと,後悔しました。

 新しいシャッターはシリアルナンバーが3000ほど進んでいるのですが,案の定細かい部分で違いがあって,部品に互換性のないものがいくつかありました。基本的にはニコイチや移植をしないで,できるだけもとのシャッターの部品を使って修理をする方針です。

 そこでシャッター速度を測定すると,やっぱりボロボロです。高速側は10msよりも少し短い程度ですし,低速側もばらつきます。なにより動きが渋く,汚れと油ぎれが深刻でした。

 まずはガバナーをベンジンで清掃します。次にシャッターを分解して高速が出るようにします。テストを行うと,大体4ms程度は出るようになったみたいです。それでも3.4msなんていう速度は,全く出てきません。

 ガバナーを組み付けて低速を測定しますが,どうもうまくありません。1/200秒が1/100秒になってしまいます。また1/10秒が1/25秒になったりします。

 これでは使い物になりません。

 そこでもう一度がバナーを清掃,薄い油をひいて潤滑を改善します。また,ガバナーの位置が悪くて1/10秒が出なかったので,位置を慎重にあわせます。

 そして位置決めを時間をかけて行いました。最終的に1/400秒は全く出ませんでしたし,1/10秒も7msから10msでバラツキます。以前のシャッターよりも結果は悪いです。

 でも,これ以上いじっても改善は難しいでしょう,ここら辺が引き際です。

 セルフタイマーは汚れがひどくて動かなくなっていたので,これまでのシャッターから外して交換します。これもなかなかうまくいかずに作業は難航しました。

 最終期にすべてのテストを終えて,シチズンMXVシャッターが完成です。

 本体に取り付けてみます。しかし,クランクを回してもチャージが終わらないことがあります。どうもチャージレバーを目一杯押し下げる事で出来ないようで,これもシャッターを交換したからでしょう。

 このように,当時の部品の精度は今では考えられないほどばらついていて,現物あわせも日常的に行われていました。同じ商品の同じ部品だからと交換をしても,うまく動かないのです。

 仕方がないので,シャッターユニットを右に目一杯回して本邸に固定します。これでようやくチャージが確実に出来るようになりました。

 一応,ここまでで修理完了です。最終的なシャッター速度は今後測定しますが,おそらく故障前の速度の方が高速だったと思います。

 というわけで,このまま完成としてもよいのですが,ちょうど手配していたマミヤRZ用のフォーカシングスクリーンが届きましたので,これを加工して取り付けましょう。(この話は後日)

 ということで,シャッターの羽根が新しくなったことは大きな前進,しかし高速が出ず,低速も大きくばらつくという問題があるのは後退です。しかも元の値段よりも高いジャンクを買う羽目になったことも失敗です。

 そりゃ今かr60年以上も前のカメラですし,追加工で現物合わせをして作っていた当時の工業製品ですので,現代的な感覚として精度を信じることなどしてはいけないものだと思います。

 ただ,モノクロネガなら少々のずれはなんとかなるものですし,大らかな気持ちで撮影するのも,また2眼レフの面白さです。使ってみてわかったのは,実用的な速度が1/25から1/200秒程度であること。このあたりのシャッタースピードがきちんと出ている事が分かっていれば,安心して撮影出来ます。

 さて,完成までもう一息。シャッター速度が狂ってなければいいなあ。

 

D850をもっと活用

 ミノルタオートコードで中判を初めてワークフローにのせることになったわけですが,できるだけ新規の投資はしたくありません。そこで,今ある機材とノウハウでなんとかしのげない物かと工夫を試みるわけですが,ここでD850というカメラがとても力になってくれました。

 今もってトップクラスの性能を誇り,プロからもアマチュアからも大きな支持を集めるD850ですが,冷静に考えて見るとその性能はもはや検査機器や測定器レベルです。

 普通に撮影しても高精細な画像を吐き出しますが,そのために要求される精度レベルは高く,しかも今どきの使いやすさが随所に見られます。

 今回の中判デビューにあたり,D850のおかげでうまくいったことを2つ紹介して起きます。


(1)オートコリメータ

 いきなり耳慣れない言葉が出てきましたが,平行光を作る機械のことです。平行光というのはつまり無限遠からやってくる光のことで,この光にピントが合うようにすれば,無限遠が出ていると言えるのです。

 レンズ分解のあるあるの1つに,無限遠のマーキングを忘れてヘリコイドを分解,と言うのがあるんですが(え,私だけですか),仮にマーキングをしても元々が正確に出ていたかどうか怪しいですし,やっぱり確かめておきたいじゃないですか。

 だからオートコリメータは是非とも欲しいわけです。

 ただ,本物はとても大きく重たく,扱いが難しい上に高価で,全然現実味がありません。

 なので,アマチュアは昔から工夫をしてきました。きちんとピントが出ている一眼レフに,きちんと無限遠が出ているレンズを取り付け,無限遠に回しきってから,調整したいレンズを覗き込むのです。

 調整したいレンズもあらかじめピントの出ているボディに取り付けておき,すりガラスをフィルム面において裏側から照明を当てておきます。

 そしてレンズを無限遠の出ている一眼レフで調整したいレンズを覗き込んで,すりガラスがくっきり見えるところが,無限遠です。

 この方法は理にかなっていて,周りにある機材で手軽に無限遠を作る方法として知られていますが,すりガラスのザラザラをきちんと見るためには無限遠を出しているレンズの焦点距離が長くないといけなくて,ざっくり目安として相手の3倍の焦点距離が必要と言われています。

 50mmのレンズを調整したいなら150mm以上の無限遠の出ているレンズが必要なのですが,言うは易し,でも実際には大変です。

 まず,近頃のAFレンズやズームレンズは,無限遠が出ていません。オーバーインフと言って,フォーカスリングが無限遠で止まらず,無限遠よりもさらに回った位置まで回ってしまいます。

 AFなんだからその都度ピントをあわせるのでこれで問題はありませんし,むしろ無限遠でストップされる方がAFの仕組みによっては問題を起こすので正しい対応ですが,我々はレンズ回しきったところが無限遠になっていると信じているわけなので,こうしたレンズは使えません。

 それに,調整した焦点距離ごとに,いくつも無限遠の出ているMFレンズを揃えておけません。もし200mmのレンズを調整したいなら,無限遠の出ている600mmのレンズが必要になるのですが,そんなの非現実です。

 しかも,無限遠が出ているレンズは出来るだけ明るく,かつボディのファインダーは見やすくないと,無限遠が出ているかどうか判別しにくくて仕方がありません。

 調整したいレンズと無限遠が出ているレンズとの距離が近くないと調整作業も出来ませんし,何だかんだで条件がきびしいのです。

 そこでD850です。

 もともとコンパクトデジカメを使ってオートコリメータを作る人はいたようですが,ではそのコンパクトデジカメの無限遠はどうやって出すのよ,と言う難問が残ります。

 ですがD850を使えばすべて解決です。

 私の場合,無限遠の出ているレンズとしてAi-Nikkor105mmF2.5を使っているのですが,これをD850に取り付けて,無限遠にしておきます。

 そして向かいあわせに調整したいレンズを置いて,ライブビューを動画モードで起動します。

 さらに拡大ボタンを連打して,すりガラスのザラザラがくっきり見えるように調整をすれば,もう無限大無限遠が出ています。

 明るさもシャッター速度で変更出来ますし,ファインダーを覗き込むこともなく,作業もとても楽ちんです。拡大するので見やすいですし,105mmのレンズ1本で様々なレンズの調整が出来ます。

 しかもライブビューですからね,ピント精度は抜群ですし,画素数といい明るさといい,もう十分な性能です。

 こうしてミノルタオートコードの撮影レンズとビューレンズを調整しましたし,ついでにRollei35のピントも確認することが簡単にできました。


(2)フィルムスキャン

 私はCoolScanVEDというニコンのフィルムスキャナを長年使っていて,35mmについてはこれでコンピュータへの取り込みをやっていますが,中判デビューの最大の難関は,どうやってコンピュータに取りこむかでした。

 CoolScanVEDは35mm専用で,残念ながらブローニーには使えません。

 お店で現像の時にデータ化してもらうのも手ですが,自家現像の時に困りますよね。かといって,今さら透過原稿ユニット付きのデスクトップスキャナを中古で探して買うというのもハードルが高いです。

 一度ベタを焼いてからスキャンするのも手ですが,印画紙の現像という新しいプロセスが入り込むのも大変です。

 そこで考えたのが,D850のネガ取り込み機能を使うことです。

 D850には,マイクロニッコールを使ってネガやポジを取りこむ機能があります。特にカラーネガはベースのオレンジ色をうまく補正することが出来るので,とても優秀で便利です。

 ただ,フィルムを平行にレンズと対峙させるオプションであるES-2はブローニーには対応しません。

 そこで,ES-2を使わないように,ネガを取りこんでみる事にしました。

 D850にはAF-S Micron-Nikkor60mmF2.8を付けて,三脚に乗っけておきます。

 レンズと平行な位置にライトボックスを置き,その上にネガとガラスの板をおきます。

 そして動画モードでライブビューです。フィルム取り込みモードに設定すると,綺麗に中判のネガが反転されています。

 あとはこれを撮影するだけです。わずか12枚ですのであっという間におわります。

 まあ,嫁さんなんかは,わざわざフィルムで撮影してデジカメで取りこむくらいなら,最初からデジカメで撮影すればいいのに,といったりするわけですが,それこそ愚問で,銀塩フィルムというフィルタが入った画像を鑑賞しているわけで,D850で撮影しても普通の写真になってしまいます。

 ちょっと計算してみましょう。D850の画像サイズは8256x5504ピクセルです。上下をフィルムにおさまるようにして撮影すると,ざっと5000x5000ピクセルの画像になります。

 6x6版のコマサイズが56mmx56mmですので,5000/2.2 = 2272dpiです。

 CoolScanVEDが最大4000dpiですので解像度という点では及びませんが,画面サイズが35mmよりも遙かに大きいので2000dpiもあれば十分で,拡大率が大きくない分,光学的にも有利な条件で,5000x5000ピクセルという大きな画像を作ってくれます。

 優秀な画像処理とネガポジ反転のおかげで,出てきた画像は35mmの見慣れた画像ではなく,いかにも中判という滑らかな画像です。

 ただし,ブレには注意が必要で,安定した三脚が必要ですし,リモートケーブルも必須です。揺れが止まってからそっとシャッターを切らないと,ぶれて眠たい画像になります。

 わずか12枚ですから,あっという間に取り込みが終わります。取り込んだ後は思う存分PCの画面で鑑賞出来ます。

 確かに,粒子が見えるほどの解像度はありませんし,中判のデジカメが1億画素に達していることを考えると,2500万画素で取りこんだ今回のケースでは1/4程の情報量しかありません。まあ,ギリギリというところでしょうか。

 参考までに,35mmフィルムからA4サイズ,350dpiの画像を得ようと思ったら,ざっくり2800dpi程度の解像度で取り込む必要があります。これを考えると,ずっと大きな中判で2200dpiというのは,A3ノビくらいまでは十分に引き延ばせると考えて良いと思います。(えと,エプソンのWEBサイトを見ていると,2400dpiの場合,35mmでA4,6x7でA3ノビが目安とあります。)

 4800dpiのスキャナで56mmx56mmをスキャンすると,およそ10000x10000ピクセルの画像となり,ようやく1億画素になります。D850で35mmを取りこむとざっと5800dpiとなり,もう十分過ぎる解像度となりますが,そこまでの解像度で拡大しないで済むくらい元の画像が大きいことも,中判のメリットなわけです。

 まあ,本気で中判に挑むならこのくらいの情報を吸い出さないといけないかも知れませんし,冷静に考えると中判で撮った画像を35mmサイズに縮小して複写しているわけで,結果として35mmサイズに落とし込んでいるのと変わらないという,なんともまあ興ざめなことに気が付きます。

 それでも,中判というフォーマットに75mmのレンズで撮影されたことだけは35mmに縮小されても揺るがないわけで,D850の性能の高さと粒子サイズが大きくならないこと相まって,中判の美味しいところはきちんと取り込めていると思います。

 とはいえ,D850での取り込みが万能かというとそうではなく,まず赤外線を使ったゴミやキズを消すことが出来ません。CoolScanVEDを使う最大のメリットは,この赤外線によるゴミとキズを消す機能なわけで,これは本当に便利だと思うのですが,残念な事にモノクロでは有効になりません。

 また,自動的にコマ送りをやってくれません。35mmだと6コマを自動で送ってくれますが,ブローニーでは3コマですから,自動であってもあまりうれしくないし,全部で12コマですから大した手間ではありません。

 ということで,D850を買った時には考えてなかったような用途で有効に利用することが出来ました。オートコリメータはオールドレンズ,オールドカメラの修理にとても役立ちますし,中判のスキャナ代わりにD850を使うというのは性能も便利さも楽しさも十分な物を持っています。

 D850は高価なカメラですが,その性能ゆえに様々な被写体,様々な条件に対応出来る柔軟さを持っています。その上今回のような使い方も出来たりすると,本当に便利な道具だなあと思います。買って良かった。

 

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