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2006年10月の記事は以下のとおりです。

在りし日の姿を偲んで

 以前いた職場には,パキラという観葉植物の鉢植えがドンと置かれていました。水やりなどの管理は一応私と友人の2名で行うことにしていたのですが,数年のうちに人の背丈を超える高さに伸び,若い枝を落としても落としても1週間もあれば元に戻るといった,とても元気な木でした。

 この木も,いろいろな状況を乗り越えてきました。

 この木がやってきたのは7,8年も前のことでしょうか。当時のえらいさんが「職場が殺風景だから」と観葉植物を各職場に購入したのがきっかけで,私がいた職場にやってきたのがこのパキラでした。

 他にもドラセナも数本,一緒にやってきました。

 しかし,観葉植物も生き物ですから,水やりは当然のこと,虫が付いたり病気になれば世話をしなければ枯れてしまいます。ただ,それも観葉植物に興味や関心がないと気が付くこともなく,やがて枯れてしまうわけです。

 そもそも多くの人にとって観葉植物は,世話をしたいから買うわけではなく,緑が欲しいから買うものであるわけで,私に言わせれば「そんな都合のいい話」と馬鹿馬鹿しくなるのですが,現実というのはこの程度の無責任なものです。

 購入後割り振られて私の職場にやってきた観葉植物は,大した興味も関心も惹かず,手狭になる職場で半ば邪魔者扱いされ,出入り口のそばや部屋の隅っこに追いやられるようになりました。

 買い切りの観葉植物にはいわゆる保守サービスなどありませんから,水やりなどの世話は職場の有志(といっても庶務さんくらいのものですが)が,人知れず行ってくれていました。

 そんな中,いつの間にやら新しい観葉植物が並んでおかれるようになりました。手入れも行き届いており,生き生きとしています。

 見ていると,週に一度くらいの割合で花屋さんがやってきて,水やりから鋏による枝の手入れ,葉の掃除をやってくれています。仕事の細かさから考えて,それなりの知識や技能,それ以上に植物に対する愛着があるように感じる,好感の持てるお仕事ぶりでした。

 ところが,驚いたことに,隣に並んでいる「買い切りの観葉植物」には,目もくれません。細かい手入れをすることはなく,水すら一滴たりも与えてはくれません。

 当時私は,これがレンタルの植物に対する保守サービスであることを知らなかったのですが,それにしてもこのあからさまな差に,現実の厳しさを知ったのでした。

 この保守サービスの存在によって,職場の多くの人がすべての観葉植物の手入れがきちんとなされていると錯覚するようになりました。結果として,誰の手入れも受けなくなった買い切りの観葉植物は,哀れなことに次々に枯れていきました。

 枝にはカビが生え,虫が付いてドラセナは1つを残してすべて枯れてしまいました。植木鉢を蹴飛ばされ,土が半分なくなっても補充されることなく,たちまち茶色くなっていったものもありました。

 パキラの鉢も同じような状況です。土は乾いてひび割れ,カチカチにかたまっています。パキラのような強い木でも,徐々に元気がなくなって来るのがわかります。

 それでも,自分たちの仕事ではないとばかりに,保守の人たちはただの水一滴さえ与えてはくれません。同じように生まれた同じ種類の木であり,縁あって同じ場所に置かれてとなり同士並んでいても,方や手作業による枝葉の低入れ,方や水さえも与えられる事なく死ぬのを待つのみ,です。この差は一体なんだろうと,そんな風に考えました。

 私はパキラを自分の席の近くに置くことを願い出て,自分で水やりと手入れを行うことにしました。

 専門家ではないので出来ることは限られますが,元来植物はあるがままにあるべき,という主義の元,邪魔にならない範囲で枝も葉も伸び放題です。

 水を与えてやると,パキラはしゃきっと枝葉をのばし始め,新しい芽を次々に出すようになりました。1cmほどの小さな芽が日を追うごとに倍,さらにその倍と大きく広がり,10日もすると立派な大きな葉になっていく様を見ると,そのたくましさに励まされるような気がしました。

 なんどか職場の引っ越しがあったのですが,その度に私はこのパキラの木を自分の席のそばに置くことにしていました。いつしか,私の身長を超える高さになっていました。

 一緒に面倒を見ていた友人はドラセナの面倒を見ることにしてくれていたのですが,一昨年と昨年の2回,なんと花を咲かせました。非常に強い香りを発して,隣の部署の人にさえ知られることになったドラセナも,仲間がことごとく枯れていったことを知っているのでしょうか。

 転機は昨年やってきました。また職場が引っ越すことになりました。新しい職場は高層ビルの一室です。ビルのオーナーの意向により,植物を含めた「生き物」を置くことが全面的に禁止されており,観葉植物もすべて造花です。

 さすがにここに持ち込むことは出来ず,私と友人は泣く泣くパキラとドラセナを我々の後に入る人々に託して,出て行くことになりました。

 ご存じの方もいらっしゃると思いますが,パキラもドラセナも,挿し木で増やします。それなら,この立派になったパキラとドラセナから枝をもらい,これを育てることは出来ないでしょうか。

 私はそう一計を案じて,パキラとドラセナから枝を切り取り持ち帰りました。

 残念ながらドラセナは根が付かず,早々に枯れてしまいました。しかしパキラはさすがに強い木です。小さな植木鉢にさして置くと,根が付いたようで次々に新しい芽を出すようになりました。

 うちに来たときには1つの葉しかなかったのに,3ヶ月ほどたった9月初旬にはこれだけの葉を持つようになったのです。

ファイル 48-1.jpg

 毎日毎日,新しい芽が出ていないか,昨日の目はどれくらい大きくなったかと楽しみに水をやっていたのですが,写真を撮ったこの日は,久々に太陽に当ててあげようと,外のエアコンの室外機の上に置いておきました。

 これが失敗だったのです。

 非常に良いお天気で,日差しも強かったせいか,翌日見ると若い葉はすべて黄色くなり,枝もしおれて垂れ下がってしまいました。見ると,土がからからに乾いています。

 うっかり水やりを忘れたことも何度かありましたが,わずか1日でここまで事態が悪化したことはありませんでした。慌てて水をやりますが,もう手遅れでした。数日中にすべての葉と枝が落ちてしまい,丸坊主になったパキラは,次第に縮んで小さくなり,黒くなって枯れてしまいました。

 日差しのせいで,土の温度が上がりすぎたせいかも知れません。こんなに簡単に死んでしまうとは,私は驚く暇もないほどでした。

 実は実家に,生け垣に使われるスギ科の木が種を付け,なんとこれがたくさん芽を出していたので,1つもらって来たのですが,めでたく根が付き,少しずつ新しい枝が出ている中,パキラと同時に枯らしてしまいました。

 正確に言うと,まだ枯れていると判断しているわけではありません。成長も遅い分,変化がなかなか現れてこないのですが,葉が日に日に茶色になっていくので,もうだめなんじゃないかと思います。これも楽しみにしていたのですが,本当に残念です。

 私は実家が農家で,母が園芸を趣味にしていたこともあり,植物を愛でるのが好きな方だと思っていましたし,実際これまでに枯らしてしまったことはほとんどありませんでした。

 それが,今回,これほど劇的に植物を殺してしまったことにショックを受けましたし,なによりかわいそうなことをしたと,反省することしきりです。ちょっとした不注意が,こうした取り返しのつかない結果を招いてしまいます。

 本当に残念なことをしてしまいました。

フィルムスキャナを買いました

  • 2006/10/15 23:01
  • カテゴリー:散財

 散財しました。

 今度の散財は,フィルムスキャナです。

 ニコンのCOOL SCAN V EDというモデルです。

 ご存じのように,私は今銀塩カメラが楽しくて仕方がありません。機材を修理することも,その違いを比べるのも面白いわけですが,私のような多くのアマチュア写真家にとって,現像とプリントのコストは頭の痛い問題です。

 私の場合,カラーネガも自家現像しますので現像までのコストはそんなに大きくないのですが,プリントは大変です。紙が増えて収納に困る,全部を紙に焼くと膨大な数になるという問題点があってプリントは基本的にしないのですが,とはいえ引き延ばしが前提の35mmフィルムでは,撮った写真を見ることが出来ません。

 そこでフィルムスキャナでコンピュータに取り込むことにしたのですが,押し入れから引っ張り出してきた私のスキャナは10年ほど前に購入したScanMaker35tというものです。当時,本物のPhotoshop3.0が同梱されて39800円だったと記憶しています。今でもそのPhotoshopからのアップグレードでCS2にしていますので,十分元は取ったかなと。

 Scanmaker35tは35mmフィルムを2800dpiで取り込めるものではありますが,光学系がプアで色ずれがひどいし,周辺光量の低下もひどいです。そしてボケボケでシャープさがなく,コントラストも低いです。ちょうどピンホールカメラで撮った感じといえばわかりやすいでしょうか。取り込み時間も随分長くかかります。

 ただ,買い直すとなると大変ですし,我慢して使っていたのですが,これだけカラーフィルムを買いだめしてあって,今後も写真を続けていこうと思っているのなら,今のうちにきちんとしたものを買っておくべきなのではないかと考えて,買うことにしました。まあ,中判に手を出すことはおそらくないでしょう,おそらく・・・

 で,現実的まところで,現在フィルムを取り込むには,ニコンとエプソンから出ているフィルムスキャナを使うか,フラットベッドスキャナのうちフィルムのスキャンに対応するものを使うほかないわけですが,ニコンのフィルムスキャナ以外はフラットベッドスキャナに毛の生えた程度らしく,画質の差は一目瞭然です。

 もともとカメラメーカーのパソコン周辺機器など信用しない私ですが,フィルムスキャナは光学系が命。わざわざニッコールを名乗るレンズ(しかもED)を内蔵するというニコンのCOOLSCANは,評判を聞いても入手性を考えても,もはやこれ以外の選択肢はありません。

 数ヶ月前に調べたときには軒並み在庫切れということ諦めたのですが,その時聞いたある程度の注文がたまったら一気に作るという話を信じて今回調べたところ,今ならどこでも在庫があります。

 結構信憑性の高い話では,もうニコンはフィルムスキャナの新規開発を行っておらず,現行のものもいつまで作るか分からないとのこと。そもそも世界的にフィルムカメラやフィルムの生産規模が縮小しているのに,フィルムスキャナがいつまでも手に入るなんてのは確かにおかしいです。

 価格や性能から,上位機種は必要なし。でも最も安い「COOLSCAN V ED」でも,上位機種との差は小さく,コストパフォーマンスは最高だと思います。実売6万円弱でここまでの性能というのは,ニコンもかなり思い切ったことをしてるなあと感心しました。

 昨日届いたのですが,さくっとつかってみたところの感想です。

・画像
 取り込んだ画像については,とりあえず期待通り。文句はありません。最高画質では銀の粒子が目立ち,かえってがっかりするほどです。設定についてはそんなに細かくないので,ほとんど自動でよいと思ったのですが,暗部を勝手に引き上げたりするのが気に入らず,結局あまり自動補正に頼らなくなりました。

・自動給装
 これは便利ですね。ScanMaker35tはスリーブでもホルダーにいれて手動で一コマ一コマ動かしていましたから,ずっとそばについていないといけなかったのですが,COOLSCAN V EDでは6コマを自動でスキャンしてくれます。

 縦位置が混在する場合はどうなるのかと思いましたが,最初にどのコマが縦かを指定しておけば,勝手に縦で取り込んでくれますので,これが一番助かっています。

 ただ,問題がないわけではなく,この自動給装が使えるのは2コマ以上のスリーブのみ。1コマの場合はスライドマウントが必要になるので,24枚撮りで25枚撮れた場合などに出てくる1コマだけのスリーブの場合,買った状態では全く手がありません。オプションを買えと書いてあるのですが,こういう事態って普通の人でも簡単に起こりうることで,困るんじゃないかと思います。

 精度ですが,結構いいみたいです。パーフォレーションの数を数えてコマ送りを仕組みのようなので,古いカメラのようにコマ位置のばらつきが多い場合にはどうなるのだろうと思っていましたが,あまり気にすることはないようです。

・速度
 遅いです。ScanMaker35tよりは速いだろうと思っていましたが,あんまり変わりません。処理によっても変わりますが,私の場合は1コマのスキャンに4分ほどかかっています。読み取り解像度を落としても,4000dpiでスキャンしてから縮小をかけるようで,時間が短くはなりません。

 ただ,私のマシンはPowerPCG4-1GHzと低いスペックなので,今時のマシンならこの半分ほどの時間で処理できるのではないかと思います。

 ところでインターフェースはUSB2.0になってます。ただ,スキャナという製品の性格上,あまり恩恵を受けているようには思いません。

・大きさ
 大きいです。5インチハーフハイトのHDDが入ったケースのような感じです。また結構重いです。

・音
 結構うるさいです。スキャン中のゴゴゴゴという音が結構するので,深夜など気になるかも知れません。ScanMaker35tと比べて同じ程度ですから,私はそれほど気になりませんが・・・

 そうそう,ファンレスなので,風切り音は全くありません。これは非常に助かります。

・ウォームアップと経年変化
 光源がLEDですので,蛍光灯のようなウォームアップ時間もありませんし,経年変化も小さいでしょう。

 蛍光灯は,結構短い時間で色が変化します。RGBそれぞれの蛍光体のウォームアップ時間や寿命の違いによるのですが,LEDが光源だとそこを考えずに済むのが素晴らしいですね。熱も出ませんし,紫外線によるフィルムの劣化を気にすることもありません。(スキャン中だけの露光なので紫外線は気にしすぎかなと思うのですが,自動給装でないScanMaker35tの場合,1コマだけずっと蛍光灯が当たりっぱなしになりますので,出かける前に仕掛けていく,ということが出来ません。数時間も熱と紫外線にさらされると,さすがに多少は影響が出そうですから)

・ソフトウェア
 私はMacOSXで使っていますので,そのお話しか出来ませんが,今時Carbonってのはないよなーと思います。ぜひ作り直して欲しいです。(ニコンは保証していませんが,Rosetta環境でも動作したそうです。)

 登場してから数年たっているソフトなので安定しているかとおもいきや,結構落ちます。あまり軽快に動くというものでもないので,満足とは言えません。

 しかし,わかりやすいとは思います。VueScanに比べても使いやすく,設定もうまくまとめられているので,なにをどうすればいいのか,どこをいじればいいのかは直感的にわかります。

・まとめ
 たくさんのネガがある人,過去の資産をデジカメで撮影した画像と同じ流れで管理したい人,これからも銀塩と共に過ごそうと思っている人は,今のうちに買っておいてください。この先,この値段でこの性能の製品が出てくる可能性は低いと思います。

 確かに,WindowsVistaへの対応や,新しいMacOSXにどこまで対応できるか疑問ですが,ソフトウェアは古いOSと併用するなりVueScanを使うなり,Photoshopのプラグインで逃げるなりしてどうにか出来ても,ハードウェアだけはどうにもなりません。

 フラットベッドスキャナなら今後もフィルムスキャン機能はつくだろうと思っている人も,その性能差は雲泥の差ですからおまけぐらいに考えておくべきです。写真屋さんに頼むわ,と言う人も,それがいつまで出来るのか,覚悟しておく方がいいと思います。

 銀塩フィルムに関するあらゆる製品開発速度は非常にゆっくりになっています。ですから,フィルムスキャナについても,これから先,劇的な進化は期待できません。今買ったからといって,あとで後悔するようなことはないと思います。そんなことより,買えなくて後悔したということの方がむしろ心配です。

 てなわけで,先日購入した105mm/F2.5で撮影したネガをスキャンしてみました。上は105mmそのまま,下はTC-16A(1.6倍のテレコン)付きです。上は1段絞ってF4,下はテレコン付きなので開放でF4です。

ファイル 47-1.jpg
ファイル 47-2.jpg

 なかなかいい感じですよね。

 テレコンバータという光学系がどういう影響を与えているかはっきりしないのでこんなことをいうのも何ですが,どうもこの105mmというレンズは絞り開放の方がいい感じのようです。1段絞れば被写体はしゃきっと,背景は適度にぼけるかと思ったのですが,結局どっちつかずになった感がありますね。

 それと,この写真はF3で撮ったのですが,F3のテンポのいいことこの上なし。ファインダーの明るさ,広さはシャッターを切るまでの作業がとても楽で素早く出来ますし,巻き上げのなめらかさは次のシャッターを切る意欲を削ぎません。

 いいカメラだなあとつくづく感じました。

 もしフィルムスキャナのことが気になっているのであれば,急いだ方がよろしいと思います,ほんとに。

AiAF28mmの修理完了

ファイル 46-5.jpg

 先日購入したAiAF28mm/F2.8ですが,修理が終わりました。

 欠けた部分を修繕するだけの作業だったわけですが,出来としてはまあ60点くらいでしょうか。遠目に見ればばれないかな,という程度に仕上がりとなってしまいました。

 方法としては,先日の通り欠けていない部分で型を取って,それを欠けた部分にあてがい,プラリペアを流し込むというものです。

 これが,修理前の状態。

ファイル 46-1.jpg

 見ての通り,結構派手に欠けてますね。フィルタをねじ込んだら大きな隙間が出来てしまい,光が入ってきてしまうほどです。

 そしてプラリペアで欠けた部分を補い,削って塗装まで済ませたものが次のものです。

ファイル 46-2.jpg

 塗装はセミグロスブラックをまず吹きつけ,その後半光沢のクリアで仕上げました。

 ちなみに,欠けた部分の内側は次のようになっています。

ファイル 46-3.jpg

 一応ねじ山も再現されています。

 記銘板もフィルタもきちんとねじ込むことが出来まして,遠目にはばれないレベルになったと思います。

 D2Hだと42mm相当ですから,ちょっと広角気味の標準レンズとして扱うと面白そうです。明日にでも試し撮りをやってみましょう。

レンズ沼に自らはまれ,と神の啓示

  • 2006/10/12 16:58
  • カテゴリー:散財

 えと,先日いつもの中古カメラやさんで,またレンズに手を出してしまいました。でもでも,今回は割とまともですよ。(相変わらずワゴンに入っていたものですが)

・Ai Nikkor 105mm F2.5

 ホコリ,と書かれたシールが貼られていて,お値段は5500円。前玉を見ても後玉を見ても,一目で大口径レンズとわかるレンズです。

 昔から中望遠の大口径レンズを一度手に入れてみたくて,でもそういうレンズって使い方が限られている上に結構高いので,ずっと手に入れることなしに来たのですが,今回5500円(しかもカビはなさそう)というのは,きっと神が与えたチャンスに違いありません。

 ちょっと悩んだのですが「買わずに後悔するより買って後悔しろ」という指令が私の脳に直接ズビビと届くや否や,体が制御不能に陥ってしまい,気が付いたら店の外でした。

 まずこのレンズ,非常に有名なんです。「ニッコール千夜一夜」という,ニコンのファンなら死ぬまでに100回は読むと言われる,とても楽しい本がありますが,ここに登場するレンズの1つなのです。(ちなみにニコンのホームページでも無料で読めますのでまだの方はぜひどうぞ)

 これによると,過去30年以上基本設計が変わっていない息の長いレンズであるということ,変形ガウス型(クセノター型)であるということ,ポートレート向けに収差をあわせ込んだレンズであることが書かれています。なんとMFレンズが絶滅危惧種になっている中,このレンズは現行らしいです。

 調べてみると私が購入したレンズは現行のAi-Sレンズではなく,1つ前のAiレンズのようです。おそらく70年代ですね。年代相応の汚れや傷みがあります。ワゴンに入れられていたので後玉にも指紋がベタベタ。

 あー,許せん,レンズやCDやフロッピーの表面を素手で触る輩を見てると,真空跳び蹴りをお見舞いしたくなります。

 ただ,それ以外の光学系の傷は,見た目に大きなものはなさそうです。なんで安いのかなあと思うのですが,もともとそんなに高いレンズでもないので,こんなものなのかも知れないですね。

 私の場合,プログラムモードやシャッター優先モードが使えるマニュアルフォーカスのボディをそもそも持っていない(FAやFG20なんかも面白そうですが・・・)ですし,仮に使えたとしてもどうせ使いこなせないので,Ai-Sである必要はそもそもありませんし,光学系の改良もないような息の長いレンズなら,古くても全然構いません。コーティングの違いはあるかもしれませんが,70年代以降のいわゆるマルチコートレンズならそんな差はないんじゃないかと思っています。

 それにしても,52mmのフィルター径に目一杯大きい前玉,ずっしり重いガラスの塊を印象づける重量感,このころのレンズにはストイックさがありますね。
 
 持ち帰ってから,詳しく点検です。

 まず外側を拭き掃除します。フォーカス環のゴムリングは外して中性洗剤で丸洗いです。これだけでも随分違います。

 かなり汚い汚れがどんどん取れていくのは気分の良いもので,それまで他人の所有物だったものが自分のものに名実ともになる,いわば儀式です。

 次にレンズを磨きます。まずホコリを飛ばし,油汚れはアルコールで拭き取ります。その後アルコールの乾いた跡を取る目的で,はぁーと息を吹きかけ適度な湿り気を与えてから,シルボン紙でゴシゴシ拭きあげます。

 この,息を吹きかける,というのは御法度とされていて,最初は私も恐る恐るやっていたのですが,ホコリを飛ばして油さえ取れば,ゴシゴシ力を入れて拭いても傷は付きません。心臓の弱い人が見たら卒倒しそうなほど強烈に拭き上げます。そうすると,ふっと摩擦が激減する瞬間が出てきます。完全に汚れが取れた合図です。

 拭き終わって見てみると,前玉の中央部に0.5mm程のコーティングの剥がれが2カ所ありました。結構目立ちますが,まあこの程度なら写りに関係ないだろうと,あまり気にしません。5500円ですしね。

 次は文字にスミ入れします。つや消しのエナメル塗料を流し込み,乾いてからうすめ液をつけた綿棒で余計な部分を拭き取ります。

 前面の記銘板も取り外してスミ入れを行おうとしたとき,妙に前玉がガタガタいうので確かめてみると,前群がゆるんでいました。前群を外して見たところ,厚さ2cmもあろうかという貼り合わせレンズを固定する枠もゆるんでいます。

 まるで,素人が分解をした跡のようです・・・でも,分解痕は全く見あたりません。

 とりあえず全部締め直して,組み立てます。終わったらボディに取り付けてみましょう。

 まずニコマートEL。ガチャガチャをやってからファインダーをのぞくと,ちょっとした感動があります。中望遠の距離感にずっしりとした重たさ,そしてフォーカスを合わせるしっとりとした感覚。改めて外観を見渡してみると,ニコマートによく似合っています。

 次にF3。ちょっと鏡筒が長いのですが,やっぱマニュアルフォーカスのボディは,52mmのフィルター径が似合いますね。空シャッターを何度か切りました。比べてはいけないのですが,F3のファインダーの見やすさは病みつきになります。(そういえばうちのF3はF4用のスクリーンを入れてありました)

 そして最後にD2H。おお,これは一番格好いいかも。ボディが大柄なので,このくらいのレンズだとバランスとしてちょうどいい塩梅です。

 何枚か撮影してみます。さすがに開放でF2.5ですから,室内でも1/30秒程度は確保出来ます。ステージの撮影などには重宝しそうです。そして点光源の柔らかなボケ具合。真円のままぼけていきます。これってなかなか重要なことなのではないかと思います。

 私の印象では,特にカリカリということもなく,でもきちんとピントはきていて,ボケは無理がなくとても自然です。D2Hでは160mm相当になってしまうので中望遠とは言えない微妙な所にきますが,この個性はやっぱり人物を撮影するのに使うべきレンズだと思います。

 お遊びで,先日のTC-16も試してみました。言うまでもなくAFレンズとして動作しました。だけど250mmのF4相当って,別に普通の望遠レンズです・・・
 そんなわけで,このレンズは私にとっては大当たりです。タムロンの90mmF2.8マクロと競合するかと思いましたが,これはもう全く違いますね。よかったよかった。


・AiAF Nikkor 28mm F2.8

 AFレンズで,定番の28mmです。Dレンズではありません。鏡筒の前,フィルタがねじ込まれる部分が2cm程欠けてしまっています。それ以外にカビや傷など光学的な問題はみあたりません。ニコン純正のスカイライト付きで6500円。

 たぶん落っことしたかぶつけたんでしょうね,この欠け方は。フィルターをしていればこんな風になることもなかったのでしょうが,前のオーナーはフィルターを使わない男らしい方だったようです。

 レンズでぶつける,落とすはもう御法度で,私個人もそういうレンズは信用したくないところではありますが,6500円ですからね,やはり迷いました。買うにしても105mmと28mmのどちらか一方にせねば・・・

 そんな風にちょっと悩んだのですが「買わずに後悔するより買って後悔しろ」という指令が再び私の脳に直接ズビビと届くや否や,体が制御不能に陥ってしまい,気が付いたら両方抱えて店の外でした。

 28mmのニッコールレンズは実はマニュアルフォーカスでは持っていたりします。これはF3を買ったとき,3本目のレンズとして10年前に中古を購入したもので,後玉にコーティングの剥がれが少しある難あり品でした。15000円しましたが,それでも当時としては破格のお値段だったのではないかと思います。

 なにしろ,当時の私は,一眼レフは50mm以下は未体験,コンパクトカメラを入れても35mm以下には踏み入れたことがないという状況でしたから,この28mmが与えてくれた新しい視点には,とにかく感謝するしかありません。

 絞り込んでパンフォーカス,ノーファインダーでスナップ,PLフィルターで真っ青な空,斜めに道路を入れて広さを強調,などなど,学んだことは数知れずです。今になってCLEを手にし,広角レンズと相性がいいレンジファインダー機の良さを知ることが出来たのも,この28mmがあってこそ,でしょう。

 ですから,D2Hになっても28mm相当の画角は外せないと思っていました。ただ,ズームレンズでカバーできることと,単焦点レンズで28mmを狙うこととは気分的に全然違うことにも気が付きました。ブームレンズを絞り込んで,パンフォーカスで撮影するなんてこと,あんまり考えつかないんじゃないですか,みなさんも。

 今回,6500円のAFニッコールで28mmを手に入れたのは,28mmという定番レンズをAFで持っておいても罰は当たらんだろうと思ったこと,現在持っているレンズには後玉に傷があって,ひょっとしたらこれが大きな影響を(特にデジタルで)与えている可能性もあるかもしれないと思ったことです。

 ただ,ちょっと書いたように鏡筒が割れていて,欠けています。AFレンズはプラスチックが多用されていて,質感も強度もいまいちなわけですが,実は自分でそこそこの修理が出来てしまうことをメリットと考えても良いのかもしれないですね。

 というわけで,記銘板を外し,割れている部分だけ取り外します。記銘板にひびが入っているのが分かったので,この部分を瞬間接着剤でくっつけ,はみ出た部分を2000番のペーパーで削ります。あとで半光沢のクリア吹き付けておけばばれないでしょう。

 レンズそのものは特に問題はなし。汚れているので先程と同じ手順でゴシゴシ掃除します。今回は分解せずとも十分綺麗ですし,ネジ類にもゆるみはありません。フォーカス環のゴムリングも外して中性洗剤で洗います。

 さて,割れている部分の修理ですが,現在行っているところです。いろいろ考えたのですが,この部分はフィルターの取り付けのために内側にネジが切ってありますから,それも復活させないといけません。

 そこで,割れていない部分で型を取り,欠けた部分に方をあてがってプラリペアを充填し,再生することにします。現在,型を取ってプラリペアを盛り上げたところまでは済ませて,荒削りをやっている途中です。

 削りすぎて失敗した部分もあったり,内側のネジがうまく合わなかったりと,なかなかうまくいかず,ひょっとしたらやり直しになるかも知れません。

 別に,割れた部分に黒いテープでも貼り付けてフィルターをはめ込んでおけば実用上何も問題はないと思われるのですが,そこは模型で鍛えた腕前もあります。やるだけやってみようと,取り組んでいるところです。

 ともかく,28mmはF70D(D70じゃないよ)の定番レンズとして使ってもいいし,D2Hの42mm相当の標準レンズとして使ってもよいでしょう。はたまたF3につけて28mmレンズとして活用してもいいだろうし,とにかく28mmのような使い道の広いレンズは,カメラの台数だけあっても困りません。(そんなことはないか)


 今回は合計で12000円と,ジャンクやカビ玉を狙う私としては思わぬ出費だったのですが,その分の見返りはあった買い物だったと思います。特に105mmは新しい世界への挑戦が可能になるレンズで,その個性を生かせる機会はそう多くはないかも知れませんが,しっかり使っていこうと思います。

収穫の多い秋

 新たに手に入れたジャンクのES2から取り外したCdSを使って,ニコマートELの露出計を改善しようと画策しました。

 前回の修理では,γの大きいCdSしか手に入らず,低輝度と高輝度で露出のずれが大きくなってしまい,使える範囲がどうしても狭くなってしまうという問題を残していました。

 ES2のCdSは当然カメラ用ですので,γは小さめのものが使われているはずで,そこを期待していました。

 そこで,ニコマートELをばらしてCdSを付け替えてみることにしました。さくっと交換して調整をするだけと思っていたのですが,結論からいえば甘かったです。

 確かにγは小さめだったのですが,抵抗値の絶対値が全く異なります。どちらかというと抵抗値は小さめに出るのがES2のCdSで,その代わり暗部ではあまり抵抗値が大きくなりません。これをそのままELに使っても,全体に明るめになってしまうため,適正露出が得られないことになります。

 半固定抵抗で調整できるかも知れないと思いましたが,あまりにかけ離れていたため無理でした。

 そこで,元に戻すことになったのですが,なにせ半固定抵抗をいじってしまった後です。結局前回と同じ検討を余儀なくされました。

ファイル 44-1.jpg

 これはELのペンタカバーの下にある基板です。フレキシブル基板などなかった時代ですが,生意気にガラスエポキシの両面スルーホール基板が使われています。

 左上の半固定抵抗は露出計の調整,その下の半固定抵抗はシャッター速度の大まかな調整です。ここでの調整はオート時とマニュアル時の両方に有効です。

 露出計はES2のように低輝度と高輝度別々に調整を行う仕組みにはなっていません。CdSの特性の違いを細かく調整できるのがES2であるなら,ELはCdSの特性に依存しているということが言えそうです。

 左側に2本並んだ抵抗は私がCdSの補正用に並列に取り付けたもので,確か430kΩです。これを取り付けると,CdSの低輝度時の抵抗値を制限出来ると共に大きくかけ離れる低輝度時のズレを小さくすることが出来ます。一方右側にある抵抗は39Ωで,直列に入っています。これは高輝度時の抵抗値を制限します。前回の調整では39Ωは入っていませんでしたが,今回新たに追加してみました。

 ここで大まかにあわせてしまえば,あとはカバーをしても調整できます。

ファイル 44-2.jpg

 ペンタカバー前面をあけるとこんな感じになっています。左側はオート時のシャッター速度を,右側はマニュアル時のシャッター速度をそれぞれ個別に調整する半固定抵抗です。ただし,ペンタカバーの下にある半固定抵抗をきちんとあわせておかないと,この抵抗では調整しきれません。

 なんとか追い込んだのですが,CdSの特性の問題だけはどうにもならず,高輝度で0.5から1段程度,低輝度では1段程度の誤差を含み,しかも低輝度の測光範囲が3EVから4EVとかなり厳しい制約を受けることになってしまいました。暗いレンズの場合,さらに使える範囲が小さくなります。

 ここを割り切って使うしかありません。

 翌日,とてもいい天気になったのですが,多摩川に出かけて,友人とお弁当を食べてきました。バーベキューのような元気なことは出来ないひ弱な我々ですが,外で食べるお弁当はまた格別です。

 そこで早速使ってみたのが,この写真です。

ファイル 44-3.jpg

 ニコマートEL,絞り優先オート,Ai-P45mm/F2.8,F11,1/1000秒程度です。あれ,と思った方は結構詳しい方ですね。Ai-P45mmはカニ鋏が絞りリングに着いていないので,Ai方式に対応しないニコマートELには使えないのです。そこで「ガチャガチャアダプタ」と名付けた,AiレンズをニコマートELで使えるようにするアダプタを自作しました。

 このアダプタ,試行錯誤の末に作ったものだったのですが,今回あいにく壊れてしまい,残念なことに作り直す必要に迫られました。

 それにしても正気なめてましたね,Ai-P45mmもニコマートも。こんなにいい写真が撮れるなんて,考えてませんでした。単純なオートで撮っただけなのですが,露出もきちんとあってますし,青色が綺麗に出ています。かたすぎず,柔らかすぎず,45mmとい焦点距離も面白いですが,とても考えさせられる写真だなと思います。

 ついでに,先日完成したES2。

ファイル 44-4.jpg

 SMC-Takumar28mm/F3.5,絞り優先オートです。

 Takumarの28mmは私が一番好きなTakumarですが,この写真も自分の見たとおりの世界を写し込んでくれました。期待を裏切りません。

 そんなわけで,ジャンクカメラそろい踏みで出かけた多摩川ですが,天気も良く,秋の空のさわやかさをうまく持ち帰れたと思います。これだからカメラの修理はやめられませんねえ。

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