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2007年02月の記事は以下のとおりです。

真空管アンプのリニューアルに取りかかる

  • 2007/02/18 01:45
  • カテゴリー:make:

 ハンマートーン塗装というのをご存じでしょうか?金属の表面をハンマーで叩いたような質感を得ることの出来る特殊な塗装なのですが,これを手軽にスプレーで実現できる塗料が,以前は東急ハンズに売ってたそうなのです。

 真空管アンプのシャシーの塗装には,このハンマートーン塗装は定番で,戦前のアンプの名機をモチーフに,道具としての質実剛健さを目指した印象を与える塗装が今日でも好まれるというのは,やっぱり真空管アンプの世界ならではといえるのかも知れません。

 で,その塗料ですが,今はさすがに在庫はなく,取り寄せになるというので,先月渋谷に出るついでに,注文しておきました。ずっと探していたので,手元にあるといろいろ面白いことが出来そうです。

 そして,気になっていた一件が・・・

 300Bシングルの真空管アンプを作ったのが2002年2月。昨年の冬にはみっともなかった塗装をやり直そうとして,余計にみっともなくなってしまい,音の良さの反面で見た目の悪さがずっと気になっていました。

 以前知人に写真を見せたところ,いかにも素人の工作だと罵られ,がっかりしていました。やはりシャシーは安物を使ってはいけません。

 それでもこのシャシーをハンマートーン塗装すればましになるだろうと思っていたのですが,せっかくですのでシャシーをもう少し小振りなものにして,強度的にもしっかりした,高級感のあるシャシーに作り替えようと考え至りました。

 ご存じのように真空管アンプにはプリント基板など使いません。つまりシャシーを作り直すということは,すなわち配線をやり直す,ひいては「いちから全部作り直す」ということと同義語です。

 さすがにこの決断は勇気がいったのですが,数年に渡る懸案事項でもあったので,先日秋葉原でシャシーを買ってきました。今はなき鈴蘭堂の定番シャシーで,今はタカチが引き継いで生産してくれているSLシリーズのなかから,SL-8HGと選びました。約1万円。手のかかった塗装や質感を考えると,この価格は安いと思います。

 今までのシャシーが横幅400mmで,SL-8が340mm程度ですので,かなり小さくなります。ただ,常識的に300Bのシングルでこのサイズが小さすぎるということはないでしょうから,厳密な検討もしないまま,決めて買ってしまいました。

 さて,2mm厚のアルミを加工するのは,なかなか骨の折れる作業です。そこで今回は,綺麗な仕上がりも期待して,新しい電動工具を2つも導入することにしました。

 どちらも手頃な大きさと価格で,あまりいい印象を持ってなかったPROXXONのものです。

(1)マイクロニブラー

 ニブラーという工具があります。金属板を自由自在に切り抜く工具ですが,私は手動のハンドニブラーを持っていました。

 ところが刃先を破断してしまい,交換しないといけない状態です。今回のシャシー加工には,電源トランスの大きな角穴が必要で,ニブラーなしでは時間がかかって仕方がありません。

 ところがこのニブラーの交換刃が3000円ほどもするんですね。それで結構使いにくいこともわかってますので,どうしたものかと思っていたところ,電動工具にあることを知って通販で買いました。うまい具合に昨年秋に値下がりしていて,1万円を切る値段で買えました。

 アルミ板の切り出し,くり抜きなど,手間のかかる作業が楽々出来ます。厚みが2mmくらいになるとなかなか手こずるものですが,この工具は板厚に関係なく作業を進めることができます。

 ただ,結構傷が付くのですね。養生用のテープは必須です。それと,角で方向を変えることが出来ないので,トランスの角穴を開ける作業では,ちょっと頭を使いました。

 それと,切り子をまき散らします。家の中でやると,嫁さんの怒りを買うことは必至でしょう。


(2)ベルトサンダー

 以前職場で,布ヤスリをベルト状にして回転させるヤスリを使ったことがあります。角穴はヤスリで仕上げるのが基本なので,私は平ヤスリ1本でどんな穴でも開けてきましたが,冷静に考えるとこのベルトサンダーの小型のものがあれば,実に楽が出来そうです。

 探してみるといろいろ出てます。パワーが小さいのが心配でしたが,太さが9mmという小型であることを評価して,PROXXONのものを買いました。幸いにして新品がオークションで安く出ていたので,これを買いました。約1万円。

 これは本当にかってよかったです。今まで手が痛くなって時間もかかったヤスリの作業が,効率よく進みます。パワーも2mmのアルミくらいなら全然問題はありません,

 掃除機のホースを取り付けることが出来て,削りカスを吸い込んでくれることもありがたいところです,。

 ただ,やっぱり手動の平ヤスリとは違い,小回りがききません。細かいところを削ろうとして手元が狂い,ベルトがガガガガーと別の部分を走り回って傷だらけにするということを,何度も経験しました。

 でも,これは本当に楽です。


 とまあ,こういう2つのパワーツールを導入したのはいいんですが,300Bの取り付け用に50mmの大穴を開ける際,コンパスのような構造のホールソーを電動ドリルに取り付けて使ったのですが,もう少しで穴が開くというところで油断をして,刃先を全然関係ない部分に当ててしまい,大きな傷を付けてしまいました。

 せっかくのヘアライン加工&アルマイト仕上げのシャンパンゴールドが台無し・・・これは凹みました。

 私は,こういう金属加工が好きな割には,下手なのです。基本的に不器用なんでしょうね。

 再塗装することも考えましたが,せっかくのアルマイト仕上げですので,格好悪いですがこのままいきます。

 シャシーの下側は黒色で塗装されていますが,ここはやっぱりハンマートーンです。穴あけが済んでからハンマートーンのブラックでさっと塗装してみたのですが,この塗料はすばらしい。厚塗りすることなく,綺麗なハンマートーンが実現出来ます。まさに期待通りというところでしょうか。

 とりあえず今日のうちにすべてのシャシー加工が終了しました。ここから旧シャシーから部品を外し,新しいシャシーにマウントしつつ,配線を間違わないようにしていかなければなりません。この作業がなかなか大変です。

 今回は,300Bのフィラメントを,レギュレータで安定化してリップルをさらに減らす計画も盛り込むつもりです。

 今から完成が楽しみです。

CaptureNXは使えるツールなのか

 昨年の秋だったのですが,Nikon純正のRAW現像ソフト「NikonCapture」の正規ユーザー向けに,次世代の現像ソフト「CaptureNX」への優待販売がありました。

 私もせっかくだからと申し込んだものの,銀塩カメラの修理やらフィルムのスキャンやらで全然触っている時間もなく,今になってようやくじっくり使うようになりました。

 登場から時間を経て,それなりに評価も出そろってきているCaptureNXですが,全体的にネガティブな意見が多いように思います。使い込んだ道具ほど,手放すのが惜しいものです。そんな職人達の感情を逆撫でするような,新しいデジタル一眼への対応が古いNikonCaptureで見送られるという事に対する反発も大なり小なり影響しているように思います。

 ただ,NikonCaptureに比べて重いとか,ツール類のレイアウトが大きく変わったとか,保存時のデフォルトフォルダが毎回リセットされるとか,そういうまっとうな意見もあるので,一概に好みの問題と言えない部分もあるでしょう。

 私は逆に旧世代のNikonCaptureをほとんど触っていません。ですからCaptureNXには自然に入っていけたのですが,その印象はかなりよいです。

(1)コントロールポイント

 Photoshop(自慢じゃないですが私はVer.3.0以来CS2まで毎回アドビ税を払い続けている優良顧客です)にしてもなんにしても,フォトレタッチという作業は結局の所,範囲選択に始まり範囲選択に終わります。

 ところが,この範囲選択という作業にはそれなりのスキルも必要ですし,手間も時間もかかる場合があって,結構緻密で面倒な作業なわけです。

 「魔法の杖」ツールのようにこの作業を半自動化するものもありましたが,それではどうしても狙ったとおりにならないため,投げ縄ツールでコツコツと選択範囲を指定する人も多いと思いますが,現実の暗室作業で行われる範囲選択はもっと簡単で,もっと直感的です。(あたりまえですね)

 CaptureNXのコントロールポイントが素晴らしいのは,デジタル暗室に不可欠だった範囲選択という作業が必要ない,ということです。範囲の選択は自動で行われ,それをユーザーが意識することはほとんどありません。この「自動で行われる」というところに気持ち悪さを覚えるかも知れないと思いましたが,実に良くできています。

 空の色をもう少し青くしたい,顔にもう少し光を当てたい,といった修正は日常的に行われますが,コントロールポイントのうちの1つであるカラーコントロールポイントを使えば,空に,あるいは顔にポイントを置き,明度やコントラスト,彩度をスライダでちょちょっと変更すれば,自分の狙った範囲にだけその効果が現れます。これは実に見事です。

 不自然な結果になるかもしれないとか,意図しない部分にまで効果が及ぶとか,そういう心配もありましたが,やってみるとおおむね自分の思ったとおりになるのは大変助かります。

 少なくとも,空の色を変えたいのに山の色が勝手に変わるというわかりやすいケースではほぼ確実に動作してくれますので,「これくらいわかりきった範囲指定は自動化して欲しいよなあ」と思いながら空をぐるぐると範囲指定していたような人には,作業を簡略化してくれる強力な武器になると思います。

 ブラック/ホワイト/ニュートラルコントロールポイントも,単に明度の最小と最大を指定したり,ホワイトバランスの規準となるグレーを指定するだけのスポイトツールではなく,その点をどの明るさにするのか,という操作が可能なので,思い通りのダイナミックレンジをヒストグラムを見ながら調整することができます。

 赤目の修正も同じようにコントロールポイントで一発。不自然にならないように修正するには範囲選択をうまくしないといけなかったですし,それに集合写真のように数をこなさないといけないケース(一人あたり2つありますからね目玉は)では,非常に楽ちんです。

 CaptureNXの最大の特徴はこのコントロールポイントにあると言えると思います。CaptureNXはRAWだけではなく,JPEGやTIFFも扱えますので,怠け癖のある私などはついつい,JPEGのレタッチにもCaptureNXを使うようになってしまいました。

 単なるRAW現像ソフトから汎用レタッチソフトとして私にとっての位置付けが変わってしまったと言っても良いのですが,考えてみるとこれをニコンが15000円ほどで販売してくれているというのは,とてもありがたいことと言えるかも知れません。


(2)角度の修正

 ついつい画面が傾いた写真を撮ってしまった経験は誰にでもあると思いますが,これを修正する作業はPhotoshopでも簡単に行うことができます。

 同じようなもんだろうと思っていたらCaptureNXはちょっと違っていました。CaptureNXでは,2点を指定し,この点を結ぶ直線が垂直になるように傾きを自動で調整してくれます。

 例えば,電信柱が傾いてしまってみっともない場合,電信柱の上から下にすーっと直線を引くだけで,電信柱がまっすぐに修正されます。目測で「こんなもんかなー」とマウスをぐるぐる回すことはしなくてよいのです。

 ただ,目測が便利な場合もありますね。自動で修正してくれた後の微調整は,角度を打ち込む方法しかないので,修正の結果自分の狙ったとおりにならない場合は,2点を指定し直すか角度を打ち込むしかありません。これはちょっと面倒です。


(3)ノイズ除去

 私のD2Hがノイズまみれの画像を吐き出す(w)とかそういう話は少し置いておいて,フィルムのスキャン画像や携帯電話のカメラで撮影した画像のように,カラーノイズが目立つ場合,これを軽減することがかなり良い感じに出来ます。

 原理的にシャープネスが失われ,階調もつぶれてしまうので塗り絵のような画になりがちですが,CaptureNXではエッジノイズリダクションのようにエッジを潰さないようにノイズを軽減することも可能になっていて,丁寧に調整すればかなり悪い画像でも復活させることができます。


(4)アンシャープマスク

 アンシャープマスクはシャープネスを高めるための古典的な手法ですが,効果が絶大である一方で画質の劣化も大きい,まるで副作用の強い薬のような存在です。

 どのくらいアンシャープマスクをかけるかはなかなか判断が難しく,ここでもセンスが問われるわけですが,CaptureNXでは色を選択してかけるという技が使えます。

 アンシャープをかけたい対象物の色だけにかければ,他の色にはかかりにくくなりますし,対象物への効果も穏やかで,自然にシャープネスが改善されます。

 人の顔の場合は赤だけにアンシャープをかけると,画質の劣化を抑えて,きりっとした顔になってくれます。


(5)白黒変換

 白黒変換って,単純に彩度をゼロにすればよいと思っているとそれは大間違いです。人間の目は緑色の感度が高いので,RGBそれぞれのレベルに重み付けをきちんと行って最終的な明度を決定しないといけません。

 モノクロのフィルムや印画紙でも,どの波長に反応するかで個性があるのは事実ですし,もっと積極的に赤や黄色のフィルターを取り付けてコントラストを調整したりしますので,白黒への変換というのは実に奥が深いのです。

 Photoshopでもこのあたりは結構弱く,さすがにカメラメーカーのソフトだなと感じるのですが,モノクロの写真を表現の1つとして積極的に使っていこうと思う場合,CaptureNXの自由度の高さは非常に魅力的でしょう。


(6)範囲選択

 それでも範囲選択は不可欠な作業ですが,Photoshopなどの場合,投げ縄ツールで範囲選択を行うと,次の作業がその範囲で実行されます。しかしCaptureNXではそうはなりません。

 投げ縄ツールで範囲を選択しても,実際には選択されたことにはなっていません。そのあと「塗りつぶしツール」を使って囲った範囲を塗りつぶすときに,選んだ機能で塗りつぶされるのです。

 その機能がカラー化なら選んだ色で塗りつぶされます。つまり,

  範囲選択->機能選択->塗りつぶし

 という操作によってようやく機能が有効になるのです。

 Photoshopだと,塗りつぶしというのは「色で塗りつぶす」機能のことを言いますが,CaptureNXでは独立した機能ではなく実行コマンドのような扱いになっています。ですから,Photoshopでは範囲選択->機能選択で済んだ処理がもう1ステップ増えるわけです。

 このことに,私は今でもしっくりきませんし,慣れてもいません。範囲選択->明るさの変更という流れで操作しても,全く明るさは変化せず,ここからさらに塗りつぶしを行って初めて,変化が反映されるのです。

 なぜこういう仕組みになったのは,私にはわかりませんが,よくこれでみんな混乱しないものだと思います。

 ただ,この方法にはメリットもあって,塗りつぶしの代わりにグラデーションツールを選ぶと,選択された機能の効き具合がグラデーションにあわせて強弱がついてくれます。

 一方で選択ブラシを使うと選択と機能実行が同時に行われるという自然な流れになっているので,選択ツールとして分類されているものでも,その挙動に違いがあることは非常に不自然だと思います。

 よって塗りつぶしとグラデーションについては,選択ツールに分類するのではなく,機能実行という別の機能として独立させるべきだったのではないかと思います。

 

(7)スタンプツールがない

 CCDについたゴミとかネガの傷やホコリとか,ちょっと修正をしたいと思うことは普通にあることで,そういう場合に使うのがスタンプツールです。

 しかし,信じられないことに,この機能がありません。CaptureNXはそもそも何のためのソフトなのかをよく考えて欲しいなと思います。

 よく知られているように,スポイトツールで色を合わせて,ブラシで塗りつぶせば一応似たようなことは出来ます。しかし色が少しずつ変化する部分に線状に入った傷を消す場合,極端に言えば1ピクセルごとに色を合わせないといけないわけです。

 スタンプツールがあれば,この問題は解決します。やっぱり必要な機能でしょう。

 CaptureNXはPhotoshopと併用しないといけないと言われるのはこのあたりのこともあるのだろうと思います。価格が10倍近くも違うツールですから,出来ることに差があっても当然だとは思いますが,CaptureNXがもう少し高い目標を持ってくれていればなあと,残念です。


 ざっと思いついたところを書いてみると,こんな感じです。私の場合バッチ処理を行うことはほとんどなく,たくさん撮った写真から,良さそうなものを選んで現像していますので,プロのように大量の写真を現像するようなことはしません。バッチ処理に有利なのがNikonCaptureの強みだったというのですが,CaptureNXがどうなったのか,私は試せてはいません。

 15000円という価格でここまで出来るというのはかなりお得だと思います。このソフトを理由に一眼レフをニコンにするというは十分価値があると思いますし,デジカメがニコンでなくても,使ってみる価値はあるのではないでしょうか。

 Photoshopはプロ用のツールで,印刷原稿を仕上げるために不可欠な機能も多く含まれています。そんなものは普通の人には全く必要ありません。多くの方はPhotoshopElementsの方が関係が深いと思いますが,CaptureNXももう少し頑張れば,十分対抗馬になると思うのですが・・・惜しいなあと思います。

LPレコードを久々にならして思ったこと

 昨日,久々にLPレコードをかけてみようという気になりました。数年も使ってなかったのでちゃんと動くか心配になりましたが,幸いなことに,記憶にあるLPレコードの音と違っていません。

 一気に聴いたThe BeatlesのABBEY ROADですが,20年ほど前に購入した再販された国内版で,当時のもの(考えてみるとオリジナルの発売から40年近くが経過しているわけですね)とは違うのですが,実は先日から読んでいた「ある本」に看過され,やはりThe BeatlesはCDではなく,アナログレコードでなければならないかも知れないな,再販ものとはいえCDよりはエンジニアが込めた魂を感じることが出来るかもなあ,とそんな風に考えたのが,手間をかけてもLPレコードを聴いてみようと思ったきっかけです。

 ジャケットはすっかり黄色くなってしまいましたが,中のレコード盤は当時のまま。ターンテーブルの電源をいれ,レコード盤を置き,さっとクリーナーでホコリをぬぐって,針を落とします。

 真空管のパワーアンプと,自作のイコライザアンプはもう十分に暖まっています。

 自分の耳にさっぱり自信のない私ですが,The Beatlesのアルバムでも,特にRevolver以降については,LPレコードで聞くとまるでヴォーカルが目の前にいるような,そんな錯覚に陥るのです。

 中学生だった私は,オーディオマニアだった私の叔父がV15typeIIIで聴かせてくれたLet It Beのヴォーカルの生々しさに,それまで自分が使っていた安物のオーディオシステムとは別世界の音を垣間見て心底感激したことがあります。

 以後,私の目標は,The BeatlesのLPを生々しく再生できることに置かれることになるわけですが,理屈の上ではCDの登場によってこの目標は軽く達成されるべきだったはずです。

 しかし,私個人の主観的結論で言えば,そうはなりませんでした。

 数値上の比較において,やはりCDとLPレコードでは明らかにCDが勝っているということは否定出来ません。加えてLPレコードは再生に使う機材によって音が大きく変わるので,どれが正しい音(正しい音の定義は難しいですがここでは原音と一致する音,ということにします)なのかがはっきりしません。機材の価格が上がれば原音に近づくと言い切れるわけでもありませんから,非常に不安です。

 その点,CDは再生に使う機材で変化する音の差が小さいですから,多少の差異はあっても作り手の音がほぼストレートに出てくるものだと考えて良いわけです。

 そこまで頭で分かっていても,やはり改めてLPレコードを聴くと,目の前にヴォーカルが現れます。CDでは残念ながら,それはないのです。

 思いこみでしょうね,どう考えても。LPレコードをかけるまでにかかる手間が呼び込む心理的影響とか,大きな円盤がゆっくり回っている視覚的な効果によるものとか,そういうものも大きなバイアスを与えているはずです。

 それでも,仮にそれらのせいであったとしても,また作り手の意図とは違った音に再生されてしまっているのだとしても,結果としてLPレコードの方が私にとって心地よいなら,もうそれでいいと思うのです。

 考えてみると,原音に忠実な再生を目指していたのはいつの時代も同じであったはずなのに,カートリッジ1つで大きく音が変わる世界を許容し続けていたかつてのオーディ業界は,そもそも矛盾していたのではないか,と思います。V15にはV15の,DL103にはDL103の,SPUにはSPUの音があったわけで,それらを交換して楽しむというLPレコードの面白さは,実は原音再生という基本方針に背く可能性もあるのです。

 このことをどう考えたらいいのか,私はちょっと困っています。作り手はここまで生々しいヴォーカルを感じて欲しいわけではないかも知れません。しかし私はCDを規準にした場合において,大きくかけ離れ,色づけされた再生音を心地よいと感じてしまっているのです。

 許されることがあるとすれば,頭の形も部屋の大きさも,もちろんこれまで生きてきた環境も時間も違うから,同じ音でも人によって違って聞こえるということが前提にあり,その上で経験が支配的な「感性」の問題として,作り手と聞き手の「心地よさ」が一致するためには再生音の物理的データが異なっていて当然,という結論でしょうか。

 この物理的データの違いを,もしも「好み」というのであれば,オーディオはある水準から上は,すべて好みの問題ということになります。(水準に満たないシステムは論外で,そのためにある程度の経済的負担はやむを得ません)

 私はエンジニアという仕事柄,数字で表現されることを第一に考えてきたのですが,最近それだけでは片付かない問題が多いことに考え込むことが増えました。それらをなんでもかんでも「好みの問題」で片付ければ楽ちんですが,もう一歩踏み込んで,その好みの差の存在を胡散臭い印象から遠ざけ,気持ちよく肯定するにはどうすればよいかを,しばらく考えていたのです。

 昨日LPレコードで聴いた時に,考えついた結論は,前述のようなものでした。こうすれば,作り手も,CDも,そして音がコロコロ変わるLPレコードも,すべての世界を肯定することが出来ます。

 そして最後は個人的な好みがすべて。好き嫌いがきちんと許された世界観とは,なんと気分の良いものでしょうか。

 かくして「原音からどれくらい変わったか」を肯定的に楽しむLPレコードの面白さが正当化されるに至り,その懐疑的な意識は薄れ,自由な楽しみ方を得たような気分になったわけです。

 そう考えるとますますLPレコードが面白くなるものですね。目標は原音に忠実にあることだけではなく,私にとって心地よい音であること,です。

 心地よさは原音に忠実ではないという後ろめたさに悩まず,胸を張ってオーディオを追求していきたいなあと,気持ちを新たにした,そんな午後でありました。

 ある水準,は,CDのようなディジタルオーディオでは非常に低く,LPレコードのようなアナログオーディオは非常に高いものです。

 同時に,CDは水準を超えた所からの「心地よさ」への追い込みが,差が小さいだけに難しいのに対し,アナログオーディオは,お金をかければ,あるいは工夫をすれば,どんどん音が変わっていきます。ある水準に達するのが大変でも,そこからどんどん追い込めるアナログオーディオは,本質的に異なる世界なのかも知れません。

PM-G850を使ってみて

  • 2007/02/09 19:17
  • カテゴリー:散財

 先日購入した新しいプリンタPM-G850ですが,購入までの経緯はそろそろおいておいて,プリンタそのものの評価をしたいと思います。

 まず,13000円という入手価格についてです。エプソンのプリンタに限らず,インクジェットプリンタはインクの価格を高く設定してある(といわれている)ので,本体の価格がこれで妥当かどうかは難しい問題があります。

 しかし,冷静に考えてみると,インクの価格に関して高価であるという第一印象があるのはその通りだとしても,実際こんなものかも知れないなあと思うだけの要因があります。

 確かに6本セットで6000円は高いなあと言う印象がありますが,1本あたり1000円というのは,流通や管理費用などを考えると,下げられても800円くらいまでなのではないでしょうか。切れたインクから交換できるメリットを考えると,そんなに法外な値段とは言えない気がします。

 インクが高いという人の主張の1つに,プリンタを安く売り,インクで回収するというビジネスモデルがあるということがありますが,これも単純にそうだね,というのが難しいです。

 というのも,インクカートリッジの値段は,今も昔もそれ程変わっていないからです。

 例えば,キヤノンのベストセラープリンタにモノクロ専用のBJ-10vというモデルがありました。このインクは2800円だったと思います。モノクロ1つで約3000円ですが,このプリンタの価格は確か4万円ほどだったと記憶しています。

 HPのDeskWriterCでは,本体の価格は7万円近く,黒インクが3000円近くで3色のカラーインクは5000円ほどしました。DeskWriter550Cでは10万円の本体にモノクロとカラーのインクの両方を必要としていたので,インクの合計は8000円近くにもなり,当時のユーザーも悲鳴を上げていました。

 単純な比較は構造の違いがあるので出来ませんが,ドットインパクトプリンタのインクリボンでも軒並み2000円程度でしたし,カラーのインクリボンの場合5000円ほどしたものも多かったはずです。

 比較的消耗品の価格が安いと言われた熱転写プリンタでも,インクリボン1巻が800円ほどでしたから,今のエプソンのインクカートリッジの値段がべらぼうに高いかと言えば,そんな風にもいえないのです。

 一方で本体の価格は劇的に下がりました。20年前,カラーのインクジェットプリンタは25万円でも安いと言われた(この時のインクは1本1000円以上)のに,今はその1/100です。

 こうかくと,1本のインクで印刷できる枚数が今と昔では全然違う,頻繁にインクを買い換えないといけないから,結局インクの値上げと同じだ,と言う人がいるかもしれません。

 私はどれくらいの枚数を印刷できるかを同じ条件で比較していないのでこのことに確信があるわけではありませんが,仮に昔に比べて印刷できる枚数が少なくなっていたとしても,10枚や20枚でインクが切れてしまうようなものではない,ということを考えると,ホームユースに最適化された結果だと考えても良いのではないかと感じています。

 エプソンのインクジェットプリンタの名機HGシリーズは,インクカートリッジが小型の弁当箱ほどの大きさがあり,普通の人は一生かかっても使い切れないほどのインクが入っていました。それでも価格は3000円か4000円ほどだったので,コストパフォーマンスは非常に高かったと言えるでしょう。

 インクそのものがしめる原材料費など安いものですから,インクの量を増やしても減らしても,それほど最終価格には影響を与えません。その点で本来エプソンは,今のプリンタのカートリッジの寿命を2倍にしてもよかったとは思います。

 ただし,インクの量が多ければよいか,といえば単純にそういうわけでもなくて,月に数回程度の使うだけの人にとって,そんなに大きなインクカートリッジを用意しても,使い切る前にインクが劣化し,印刷品質や本体の性能を維持できなかったりする方が深刻です。個人的には,インクカートリッジと印字ヘッドが一体になっていて,インクと同時にヘッドも新品に交換される方が,安心感があったりするくらいです。

 家でたまに使う素人さんに適当な寿命であるのが,素人さん向けのプリンタにふさわしい事であると考えると,エプソンが長い時間をかけてカートリッジの寿命を今の値に収れんさせてきたと,言えなくはありません。

 残念ながら,ヘビーユーザーにはインクが高くついてしまいます。メーカーの肩を持つわけではありませんが,その代わり本体は素人さん向けの価格で買っている訳ですから,両方安くというのはちょっと虫が良すぎるかもなあと感じます。

 ランニングコストの安い,その代わり本体の価格が高いプリンタは,それはそれで存在しています。初期導入費用と維持費用がトレードオフにあって,その使い方で最終的な損得が決まる世界は,別にプリンタの世界に限ったことではありません。

 残念なことは,先程のヘビーユーザーに最もお得なプリンタが,実は世の中にほとんど存在しないということでしょう。ここは各メーカーの開発努力が足りないように思いますが,彼らはそれほど大きな数ではないため。なかなか用意しにくいのが実情ではないかと思います。

 私個人は,大した枚数を印刷することはありませんので,これで十分です。本体を1万円ちょっとで買い,2,3回カートリッジの入れ替えをやったあたりで,本体が壊れるか,新しいPCやOSに対応できなくなって,買い換えることになると思います。

 次に大きさとデザイン。これはもうおかしな期待をしない方がいいと思います。古今東西,カッコイイプリンタなど存在しません。大きさや重さ,デザインに最も制約のきついメカトロニクス製品として,よくやってるよなと思うくらいです。

 大きさはもう少し小さくして欲しい,薄くしてもらいたいという気持ちもあります。たまにしか使わないものが,これほどかさばるのははっきりって邪魔です。理想的にはBV-10vなんかだと思いますが,モバイルプリンタとして売り出さずとも,あの大きさで今のプリンタの性能を保てたら,またこの世界がわっと盛り上がるのではないかと思います。

 そして画質です。どこまで期待するかによるとは思いますが,13000円のプリンタであればもう十分ではないかと思います。ドットごとに階調を持たないインクジェットプリンタとしては,もう粒状感もほとんどありませんし,メカ精度に起因する縞模様の発生も皆無です。

 AdobeRGBの色域を実現していることだって,少し前には考えにくかったことです。こんなに簡単にAdobeRGBを扱えるようになるとは,まさに隔世の感があります。ただ,やはり白から黒へのグラデーションには厳しいものがあり,コンパクトデジカメのようなピントがびしっと来ている写真では目立たなくても,一眼レフでレンズのぼけを積極的に活用した写真では,どうしても限界を感じてしまいます。

 染料系のインクジェットプリンタでは,特に黒がねずみ色になる傾向があり,その結果全体のコントラストが低下するものでしたが,ここまで改善されたか,と思うほど,黒色もくっきりしまって出てきます。赤色も鮮やかで,先程のグラデーションの問題がなければ,私の目には完璧なプリンタと映ったことでしょう。

 紙によって結果が大きく違うのにも驚きました。高価な紙は,確かにそれだけの価値があるようです。昔はあまり気にしなかったのですが,量販店にあれだけの種類の紙が用意されているのを見せつけられると,みんな目が肥えてきたんだなあとつくづく感じます。

 耐水性,耐候性についてですが,最近の染料系のインクって,水でも流れないんですね。これならあまり水に濡れることを気にしないで済みそうです。耐候性については買ったばかりなので分かりませんけども,一応きちんと管理すれば本物の写真程度には持つのではないでしょうか。日光に当てると1週間ほどで色があせる写真は論外ですが,染料インクでもかなり改良されたこのプリンタのインクがどれほどの実力を持っているか,注意してみていこうと思います。

 カラーマッチングについてですが,私の場合,少なくともD2Hとモニタとプリンタできちんとマッチングが取れました。プリンタで印刷紙か結果が青っぽいと思われたのは,きちんとした光源の下で評価をすると解消し,赤みを帯びたモニタに近い色になってくれることがわかりました。

 演色性が99以上で,色温度が5000Kの蛍光灯は,カラーマッチングを意識する人にとって,まず手に入れなければならないものであると確認しました。(私の場合蛍光灯スタンドが15Wでちょうど適合するものがなかったことから,ビューワー用と称する5200Kのものを買うしかありませんでした・・・)

 付加機能についてですが,CD-RやDVD-Rのレーベル印刷が大変面白いです。今更何を,と思われるでしょうが,私にとってこういうおまけ機能が搭載されたプリンタは初めてで,今回もこれを期待したことは一度もありません。

 ただ,せっかくだからと試してみると,なかなかいいんですよね。手書きだったタイトルを印字するだけでも全然立派に見えます。大した手間もかからないので,積極的に使ってみようと思わせる楽しい機能です。

 動作音は大きめだと思いますが,かつてのPX-V700よりは静か。むしろかつてのドットインパクトプリンタが大変耳障りだったことを我々は思い出すべきなのかも知れません。

 動作中の音もそうですが,びっくりするのは給紙の時に発生する「バコン」という大きな衝撃音です。これが和らいでくれればいうことありません。

 精神衛生的な面で,ヘッドのクリーニングや目詰まり防止の仕組みには,ちょっと疑問を感じます。インクを無駄に吸い出すプロセスがこれらの対策に有効なのはわかりますが,この方法を考えてついて採用した当時,これが未来永劫ずっと使われ続けることになると思わなかっただろうと思います。

 ここがインクカートリッジの寿命を短くしている最大の理由であるとすれば,メーカーがすることは真っ先にこれを改良するべきでしょう。このままでは,事実はどうあれ,消費者の悪い印象を払拭できないように思います。

 そんなわけで,購入時点でいろいろあったのですが,結果として満足しているという感じです。上を目指せばきりがありませんが,自分の必要とするものがこのくらいの価格で買えれば,文句の言いようもありません。この倍くらいの値段がしても,疑問を持たないと思います。

 ただ,今のプリンタが写真の印刷に最適化されていることは少々残念で,かつてプリンタは文字や図形を印刷できることに価値がありました。それぞれの仕組みに得手不得手があるのは当然として,なぜここまで写真画質のプリンタが家庭に入り込み,素人さん向けのプリンタとして君臨することになったのは,ちょっと不思議な気もします。

 

CLEのちょっとした改良

 先日の土曜日,久々にCLEを使ってみたのですが,1コマだけシャッター速度が明らかにスローになったことがありました。

 非常に不穏な動きをするので心配になったのですが,露出計が正しい値を示すまでに時間のかかる場合があり,露出計の出力をPICマイコンが読み込むタイミングとずれてしまうと,遅いシャッターが切れてしまう場合がないわけではないのですが,悪いことにその時露出計の指針を見ておらず,どういう状況になっていたのかを明らかにはできません。

 直接の原因ではないと思いますが,念のため電池の電圧を測定してみると,1つあたり1.25Vくらいまで下がってしまっています。2コで2.5Vですから,PICマイコンの動作範囲には入っています。ただ,電圧がここまで下がると,内部抵抗が上がってソレノイドの駆動など大電流が引かれたときに,電圧ががくんと下がってしまうことは十分に考えられます。

 なら,新しい電池に交換するなり,酸化銀電池をつかうなりすればよいと思うのですが,実は露出計の電源電圧が,余り高すぎてはまずいようなのです。

 現状では,電池の電圧がそのまま露出計のICの電源端子にかかるようになっています。電池が新しいときと古いときで,特に低輝度で,測光値が表示されるようになるまでの時間が明らかに違っています。電圧が高い方が時間がかかっているようで,新品の電池を入れると1秒くらい測光値を示してくれません。

 電源電圧が低くなるとレスポンスも良くなるので,そこから想像するに,この露出計は電池の電圧よりもずっと低い電源電圧で動作するように設計されているのだと思います。

 で3すから,本来なら高性能な酸化銀電池を使いたいところではありますが,そのためには露出計に加わる電圧を下げる必要があります。もし無理に高い電圧で使い続けると,ストレスによりじわじわとICが破損してしまい,取り返しのつかない事が起こってしまうでしょう。

 そこでちゃちゃっと考えたのが,露出計の電源供給ラインにダイオードを入れることです。シリコンダイオードは電圧降下が0.7Vほどありますから,1.55Vの酸化銀電池を2つ使ったケースでは,露出計にかかる電圧を2.4Vまで下げることが出来ます。

 電池電圧が下がった場合に問題が出そうな気もしますが,酸化銀電池は電圧の変動が小さいため,あまり心配しなくても良いような気がします。

 もう1つ心配なのは,2.4Vで動く露出計と,3.1Vで動くPICマイコンとの接続に関しての問題です。もし,PICマイコンから露出計に対してなにか信号を出すようなことをやっていると,露出計の電源電圧以上の信号を加えることになるので,露出計が壊れてしまいます。

 冷静に考えてみると,PICマイコンが露出計から信号を受けるケースはあっても,その逆のケースはなさそうです。よってこの点も大丈夫。

 早速試してみましたが,とりあえず問題はなさそうです。露出計にかかっている電圧は確実に下がっているはずなのですが,測光値が出てくる時間があまり改善されていないような気がしますが,それでも確実にICの保護にはなっているでしょう。

 もう少し調べてみる必要はありますが,これでようやく酸化銀電池で駆動できるCLEになりました。さらに安定した機体になってくれることを期待したいと思います。

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